有川浩著 講談社文庫
<あらすじ>
野良猫の「僕」は
銀色のワゴンの上で寝るのが好きだった。
幸いにもこのワゴン持ち主は
「僕」が寝ていても、追い払うことはなく
供物をささげてから、「僕」を触るよくできた人間だった。
そして、「僕」がいなくても
ワゴンの後輪の近くに餌を置いてくれるようになり
良い関係を保っていた。
ある日、「僕」は交通事故に遭い、
思わず、その人間に助けを求めた。
それから、「僕」はその人間の飼い猫になった。
「僕」はナナと名付けられた。
人間の名前は「サトル」だった。
何年か暮らして、
サトルは僕と暮らせなくなった。
昔の友達と連絡を取り、
その友達のもとへワゴン車で
僕を連れてお見合いに行く。
賢い僕は人間の言葉がわかり、
友達を悟との会話で
サトルの今までの出来事を知るのだった。
僕の住み家を見つけるための旅は続く。
サトルの僕と暮らせなくなった理由とは。。。
<感想とネタバレ>
さくさくと読めてしまいます。
有川浩さんは愛猫家とは聞いていたけれど
猫の描写や、
猫の思っていることをうまく伝えてくれます。
海=餌がある。
願わくは餌をとってしまおうと
わくわくしていたナナ。
しかし、海原の音にビビり、
サトルの頭に退避。
それでも安全ではないと思い、
逃げる姿には笑っちゃいました。
また、お酒をかけたささみを
餌として出されたとき、
エアー砂掛けをして
お断りするところも。
エアー砂掛け。
多分、有川浩さん宅の猫は
気を使ってするんでしょうね。
ネタバレです。
完全なネタバレです。
サトルは末期のガンでした。
それでナナの棲家を
見つけるために
友達に連絡をとって
友達の家まで旅をしていたのでした。
けれど、サトルが直感的に
この家にはナナは合わないと思ったり、
ナナは意図的に、
その家の猫と合わないようにしたり、
または、ご主人様思いの犬が、
サトルの命が長くないことにおいで感じ、
ナナがいることで
ご主人様が苦しむんじゃないかと思い
拒絶したりと、いろいろな拒絶理由が
ありました。
そして、サトルは、
ナナの棲家を見つけることが
できなくて、
遠からず寝たり起きたりの生活に
なったときのために
マンションを引き払い叔母のもとへ
ナナと共に身を寄せることになったのでした。
日に日に衰えていくサトル。
ついに入院することに。
もう家に帰ってくることはないと
サトルは覚悟して、
入院準備をします。
ナナは旅行鞄に荷を積めるのをみて
「旅に出るんだ」と勘違いをして
自分から移動用のゲージに入ります。
サトルはそんなナナの姿をみて
切なくなります。
そしてサトルは、
ナナが追いかけてこれないように
ゲージのドア側を壁につけて
「ばかやろう」といって
家を出たのでした。
数日後、病室には入れないけれど
庭で会うならなら猫をつけてきても
良いという許可をもらい、
ナナはサトルの叔母のノリコに
つられてサトルに会います。
面会が終わり、
ナナをゲージにいれ車で待たせます。
その間に、サトルを病室に連れていきます。
ノリコが車のドアを開けた瞬間、
ナナは車から飛び出します。
ナナはその時を待っていたのです。
それからは野良猫となって、
病院の庭に出てくるサトルに
「面会」するようにになります。
そして、サトルの最後の時、
ノリコはナナを呼びます。
ナナはノリコの胸に飛び込み
サトルの病室にはいって
サトルの最後をみとるのでした。
感動ですよ。
ノリコが師長さんに
「猫をつれてきていいですか」と
聞いて、
「聞かれたらだめだというしか
ないじゃないですか」
と答える師長。
その言葉の意味をとらえて
ナナを迎えに行くノリコ。
病院中がナナのサトルに対する
思いを知って応援していました。
猫が飼いたくなる一冊です。