湊かなえ著 双葉文庫
あらすじ
県議の夫を持つ高倉陽子は、
夫の後援会の仕事などをして忙しく過ごしていた。
5歳になる一人息子の裕太に接してやる時間がない。
裕太が寂しくないようにと自作の絵本を描いた。
しかし、その絵本を後援会長夫人が、
話題性の提供のため、
勝手にコンクールに投稿してしまう。
大賞をとってしまい、時の人になる。
そんな陽子に付きまとう謎の女。
ある日、裕太が誘拐されて、
「世間に真実を公表しろ」と
脅迫状が届く。
真実とは県議の夫の過去?
それとも???
犯人は謎の女?
そこに新たな脅迫状が届く。
ヒントとしてある殺人事件の名が
書かれていた。
感想です。
ネタバレも含まれています。
殺人事件が起きた年に生まれ、
その殺人事件があった養護施設に
捨てられた子だから、
加害者と被害者の子になる。
すごく短絡的な発想。
自分は殺人事件の被害者の子、
相手は加害者の子と思い込む。
「ママはお空から見守っています」と
いう手紙だけで、
母親は死んだと思い込む。
母親が死んでいるから被害者の子。
まだ、顔写真があって
「似ている」ならともなくも、
被害者には子供がいたことも
わかっていないのに。
結局、被害者の子ではありませんでした。
すごい思い込みから事件が起きています。
緻密なストーリー構成の湊かなえさんとしては
短絡的ではありませんか。。。
また、誘拐した裕太くんをどこに預けたんでしょうか?
誘拐したあと、自分の家でお泊りさせた。
夜も「先に寝ていて」と寝かせ、
外出する。
子供にとっては夜は怖いもの。
何度も泊まったことがある家でも、
ひとりでいることができるのでしょうか?
翌朝早く、コンビニにいって、
それから、朝7時に高倉家に向かう。
高倉家で話をして、帰宅すれば
8時過ぎてしまう。
裕太くんは起きていると思います。
知らないところでひとり起きて、
作りおきのごはんを食べて、
おとなしく待っていられるものでしょうか?
その後も、待ち合わせて、
ランチして、養護施設に向かいます。
その間は、どうしているのか。
幼稚園に行かせる。
高倉家からお休みの連絡が幼稚園にいっているはずだから、
なのに登校させれば、
幼稚園側が動揺して動きがあると思う。
それ以外、どこかの一時保育に預ける。
子供だから知らないところは動揺して泣くと思うし、
自分の身上を話してしまう可能性がある。
天涯孤独であれば、
預かってくれる親兄弟はいないし、
友達でも預からないと思う。
まさか、テレビやゲームをさせて、
ひとりで留守番させた?
無理でしょう。
5歳児には。。
それも自分の家でも無理。
ほかの人の家となるとなおさら無理。
薬を飲ませて寝かせれば別ですが。。。。
つじつまがあっていないと思うのです。
ぐいぐいと「どうなるの?」と読み進められる半面、
犯行に及んだ理由が、しょぼい。。
湊かなえさんの作品は
後味が悪い場合はあります。
インパクトが強すぎるのです。
強すぎるから、
続けて湊かなえさんの作品を
読もうという気になれない。
そして謎も残る。
謎はわざと作っているのかもしれませんが、
今回の謎は、
謎、でなくて話の設定に無理があることにつながるので、
インパクトがない反面、
かなり残念な作品になってしまったような気がします。