軌道エレベーター派

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軌道エレベーターが登場するお話 番外編(3)宇宙戦艦ヤマト2199(後編)

2013-09-30 00:48:20 | 軌道エレベーターが登場するお話

宇宙戦艦ヤマト2199
原作 西崎義展
宇宙戦艦ヤマト2199製作委員会
(2012年)


前編はこちら。

4. キャラ云々の続き(ガミラス、イスカンダル編)
(ガミラス)
アベルト・デスラー
 大ガミラス帝星総統。声をあてた山寺宏一さん、『宇宙戦艦ヤマト 復活編』では古代進の声を演じていたので、キャストが発表された時は何の冗談だと思ったものですが、古代より似合ってました。復活編が続いていたら一体どうなっていたのやら? ため息をつくような喋り方誰かに似てると思ってたらぶりぶりざえもんだった。
 旧作では裏表のない狂気の人でしたが、今作では人格的に何者だったのか、いまいち判然としない人物でした。ファンの間では諸評あったようですが、私はこういう二面性のあるキャラが好きなので、2199の中ではもっとも深みがあるキャラだったと思います。
 強大な星間帝国を統べる立場にありながら「ああつまんねえな」という態度丸出しで、シラケ世代の厭世的な指導者。明らかに帝国の運営を「くだらない」とシラケ切ってました。
 それもこれも、スターシャのためにやってるからなのでしょうか。彼の方法論では、宇宙の平和と統一には武力が必要であり(これは正しい)、口で理想を唱えるだけのスターシャに対し、自分はその汚れ役を買って出たようです。結局好きでやってるわけじゃないから心に虚無を抱え、いっつもつまんなそうにしてたのでしょう。
 「結局何がしたいんだよこの人」と思った人は多かったでしょうが、私には彼の言動は理路整然とし、正気を保っていたように見えます。帝国の統治という常人離れした所業をやるには、人間性を捨てて狂気を持たなければならないことを理解し、それに徹していたからです。
 しかしデスラーがそうするほど、スターシャの心は離れて行くのがわからないはずはないのに、それでも覇道に邁進したことは、彼の複雑な心理の表れに思えます。それだけに終盤で「欲しくなったのだよ、あの艦が」と発した裏には、波動砲を使って破壊と殺戮の限りを尽くしたにもかかわらず、スターシャに受け入れられたヤマトへの「嫉妬」があったのではないでしょうか。「私は戦争をしているのだ」という彼の最後の行為は、単なる私闘でした。
 最後は人格的に壊れた印象も受けましたが、これはデスラーが持つ振幅の範囲内であり、しっかり正気を保っていた。私の中では、ちょっと方向性はアレだけど、頑張りながら全然報われなかった人という位置づけになっています。

エルク・ドメル
 ガミラス軍上級大将。この男との闘いなくしてヤマトなし。今作では不利な条件(単艦のヤマトからすれば全然不利じゃねえだろと言いたくなるけど)で闘い、散っていきました。「このドメル、最後の最後で詰めを誤った」と反省してましたが、沖田艦長と無駄話して波動防壁を修復する時間を稼がせてしまうあたり、本当に最後の詰めが甘い。これは自己満足でしかなく、しかも「総員離艦」と言い放った時、格下の兵卒の表情は「イヤこの円盤が脱出艇なんスけど…」と言ってますねあれは。

ヘルム・ゼーリック
 ぶるああああ! この人はこれだけで十分ね。デスラーが「言いたいことはあるかね、ゼェェェェェェー」ってとこでモニターを撃って壊しちゃったんだけど、せっかく物真似してんだから最後までさせてやれよ。最後はよりにもよって、ゲールのような小物に殺されてしまった。

ミーゼラ・セレステラ
 宣伝相。アケーリアス文明の末裔だという民族ジレルの生き残りで、精神感応の能力を持つ。被征服民族だったらしく、レプタポーダで妹分のミレーネルと一緒にデスラーに解放され、忠誠を誓った。しかし忠誠というより、デスラーに精神的に依存しており、総統府に置いてけぼりにされたのに、ヤマト艦内で見境なくデスラーの元へ向かった。再会したら喜んでくれると思い込んでいたのか? 最後はそのデスラーに感応波を浴びせ、ギョッとして撃たれてしまい、この時ばかりはさすがのデスラーも狼狽し、「やっちまった」という表情全開でした。
 愛する人に殺されるというのは、本人にとって幸福なのか、不幸だったのか。彼女とデスラー、今やっていることの行く末に夢見た未来はないのだと、頭脳明晰な彼らに理解できないはずがない。そう考えると、「本当はわかってるけど後戻りできない」という、共通する精神性を感じます。
 閣僚の中でも差別されてたし、色々悲しい目に遭った苦労人ではありました。

ヒルデ・シュルツ
 2199キャラの出世頭 ( ̄▽ ̄) テロン討伐軍司令官シュルツの娘。孫の間違いじゃないのか!? あのハゲにこんな美少女の娘がいるとは宇宙の神秘だ。当初はホログラム映像だけで登場が終わるはずだったのが、予想外の人気が出て再登場に再登場を重ね、メイド服着てセレステラの侍女に就職。なんとフィギュアまで発売になった。人気が出た直後に公式サイトにアップされた画像はかなりデータが荒く、スタッフの「こんな人気出るとは思ってなかったんで用意してませんでしたサーセン」感が全開でした。最後にはヤマトに救われたガミラス人代表のような位置づけになってしまった。お前の親父殺したのあいつらだぞ。いっそのこと「デスラー・ユーゲント」なんてのがあって入団し、復讐を誓う残忍なキャラに変貌すれば面白かったのに(4/13付記:ありました。設定書見たら「デスラー少年団」と「ガミラス少女同盟」ってのがあるんだとか。設定凝り過ぎだろwww)。

レドフ・ヒス
 副総統。この人も株爆上げ。旧作では「デスラー機雷」がヤマトを沈め損ねると、

 デスラー「あの機雷はなんという名だったかね」
 ヒス「…ヒス機雷です (TдT)」


──とか散々な役回りで、さらに本土決戦に持ち込まれて敗色を悟り、デスラーにヤマトとの講和を進言したら撃ち殺されてしまった可哀想なお人でした。2199でも当初はセレステラやデスラーの侍女たちに小馬鹿にされていたのに、本人が目の前にいないと態度がデカくなりデスラーを罵倒。ヒルデを抱きかかえて助け、スターシャに対してヤマトを擁護してあげるいい人になりました。前半と後半で印象が違うという点では、南部に匹敵する。2199における出世キャラのベスト3は (1)ヒルデ (2)南部 (3)ヒス──だと思う。

ヴォルフ・フラーケン
 次元潜航艦UX-01艦長。さすがは旧作の続編『宇宙戦艦ヤマトIII』でヤマトに対し土つかずだったという潜宙艦のキャプテン、2199でも終始おいしいとこばっかり持ってった。最後に亜空間ゲート手前で浮上したシーンは劇場公開ではカットされてたので、わざわざ宇宙服着て顔出して、ゲールに「軍事法廷があんたを待ってるよ」とカッコよさ倍増。何と言いますか、粗野なんだけど気品がある。UX-01艦内自体が独立愚連隊みたいな雰囲気を醸し出していますが、副長のハイニもなんだか愛嬌があって憎めないキャラでした。藪改めヤーブを拾って仲間に加えてるし、いい奴だ。中田譲治さんの声がメチャクチャ渋い。とても別作品で「私はエロゲーが大好きだあああっ!」と叫んでいたお人とは思えない。

ハイドム・ギムレー
 親衛隊長官。側近の中でこの男だけは、デスラーがバレラスを破壊するつもりだったのを知っていて、上空の防衛線を甘くしてヤマトをバレラスに誘導した。セレステラやヒスは見捨てられたのに、何が分け目だったんでしょうね。独特の美意識にこだわっていたように見える人物(殺戮行為に美や快感を見出していたっぽい)。死生観も変わっていたのか、「なるほど、これが死か」と、さして恐怖を感じている様子もなく死亡。イマイチよくわからん人でした。

メルダ・ディッツ
 ディッツ提督の娘で軍のパイロット。 赤い機体が趣味らしい。地球の食べ物を食した初のガミラス人。地球のスィーツの味を知ってしまった彼女は、もう知らなかった自分には戻れない。ガミラスにスィーツ文化をもたらす人物として歴史に名を残すかも知れない。スタイル抜群だが、将来太るんじゃなかろうか。ガミラスはスィーツ文化が未熟であることを露呈した。

グレムト・ゲール
 ガミラス軍少将。ヤマトと何度も戦火を交えて生き残り、クーデターを画策したゼーリックを誅伐。バラン星の崩壊に巻き込まれた艦隊の残存兵力を再編し、軍を瓦解から救った名将。。。と、人物を知らずに結果だけ見れば、100年もたつと気まぐれな歴史の評価が180度ひっくり返り、こんな感じで教科書に載りそうなお人。本人は尊大、卑屈、卑怯、下衆などなど、およそ「小物」にふさわしい、人間性を否定するあらゆる表現が似合いそうな卑劣漢だったのですが、デスラーへの忠誠心だけは本物だったようで、ある意味忠臣の鏡なのかも知れない。自分の欲求に正直な人。それだけに死んじゃったのは残念だねえ。ちなみに旧作ではドメルの自決の巻き添えになって死亡した。

タラン兄弟
 「タラン、今までよく私につかえてくれた」
──と、『さらば宇宙戦艦ヤマト』で、デスラーにねぎらわれていた側近の将官。2199では兄弟に分割されてました。お互い兄弟が無事だったこと知ってたのかね?

(イスカンダル)
スターシャ・イスカンダル
 永遠の17歳。地球人やザルツ人と似たような肌の色なのに、青い肌を高貴なものとみなすガミラス人から、なぜか崇拝されているイスカンダルの女王。いやそもそも臣下も納税者もいない星で女王という肩書に意味があるのかと。どうせ自分の代で潰えるんだから、ガミラスと大統合でも大併合でもしてやればよかろうに。
 波動エネルギーを武力に用いた地球人に、コスモリバースシステムを渡すことを躊躇しましたが、ガミラスが隣にあることを黙っておいて、それで波動砲もなしでどうやってイスカンダルまでたどり着けというのか? それにこの人、ガミラスの国営放送で森をユリーシャと間違え、実物を見るとサーシャと間違えてました。上の妹と下の妹と赤の他人の区別がつかないような人の判断力など信じていいのしら?
 そもそも、デスラーに「あなたの言うとおりにするからやめて」と言えば、ぜーんぶ解決していた気がするのですが、色香で手玉にとるという芸当は苦手なんでしょうか。セレステラの言うとおり、どのみち自己犠牲はしない人なんでしょう。マジメに言うと、この人は本当に「口だけ」で、妹をパシリに使って死なせるし、自分じゃ何もしない人という気がします。デスラーの覇権主義による統治に不満なら、自分が呼びかけて各星系の代表からなる議会でも設ければよかったのだ。
 そしてコスモリバースの供与をためらっていたのは、古代守の記憶(あるいはコスモリバースの核となる意識か何か)を失いたくないからであり、波動砲のことは半分以上口実に過ぎなかったのではないか、とさえ思わせる、 深いエゴイズムを隠し持っていそうなキャラでした。いやまあ、地球人としては与えてもらう立場ですから、それでも文句は言えないんですけど。
 最後のあの仕種。。。サーシャ(妹ではなく古代守との間の子供)を宿してるのか? お前ケガ人相手に関係を持ったのかよ? 単にお腹が痛いだけだったのかな? とにかくちょっとねえ、救いの手をさしのべてくれたのに悪いんだけど、なんか色々文句いいたくなる人だったなあ。
 


ユリーシャ・イスカンダル
 ヤマトに「積み込まれ」ていたスターシャの妹。実際の地球の恩人ってこの人なんじゃないか? 「言葉ではなく、行動で…」って。。。結局金かよ! (´Д`) 遠回しにユスるヤクザじゃないんだから、こんな言い方されたら、日本人はそう考えてしまうのよ。とんでもない天然というかデンパ系で、お前の話周り置いてきぼりだぞ。友達いないんだろうな。ただしデンパの割にはM理論を完璧に理解していたらしく、真田さんと対等に議論を交わしたりして。。。やっぱりお前の話周り置いてきぼりだぞ。他人に憑依できるオカルト能力の持ち主。最後は新生ガミラスの統治に尽力するつもりらしいが、絶対政治向きじゃない。

5. BBY-01ヤマトの戦績に見るヒヤリ・ハット事案

ヒヤリ・ハット
 ヒヤリ・ハットは、結果として事故に至らなかったものであるので、見過ごされてしまうことが多い。(略)しかし、重大な事故が発生した際には、その前に多くのヒヤリ・ハットが潜んでいる可能性があり、ヒヤリ・ハットの事例を集めることで重大な災害や事故を予防することができる。(Wikipediaより)


国連宇宙軍BBY-01ヤマト 乗員999名 艦長・沖田十三宙将。人類初の恒星間航行能力を有する戦闘艦。真空偏極により航続距離は事実上無限であり、さらにワープ航行が可能。イスカンダルまでの往復において、ガミラスと幾度も戦闘を経験した。ここではヤマトの主だった戦闘記録を振り返り、ヒヤリ・ハット事案の有無を検証してツッコむものです。

メ二号作戦
 冥王星基地を破壊した作戦。山ほどある敵基地から艦載機で本丸を探し出し、砲撃を加えた。
 冥王星から新たな遊星爆弾を発射しても、次元波動エンジンが付いてるわけじゃないから地球に到達するまで優に1年以上かかるんじゃないのか(つまりヤマトの帰還の方が早いので、帰ってから対処を考えてもいいのではないかということ)、仮に1年以内に到達するほど加速してるなら、指数関数的な質量の増大で地球はイチコロではないのか、いやそもそも大マゼラン銀河は南天の天頂方向じゃないか、という疑問点は置いておきます。
 さて、ブリーフィング時に南部が波動砲で一掃することを具申し却下されますが、どう考えても南部が正しい。ただでさえ時間も資源も人命も惜しい、失敗の許されない立場なんだから、敵を冥王星ごと吹っ飛ばしてしまえば良かったのである。平時なら非難必至だけど、この場合は仕方ないよ。それができないなら冥王星をスルーしてしまった方が、まだマシとさえ言える。第一ヤマト本来の任務じゃないし、通信可能圏内なんだから国連ヤマト計画本部に判断仰ぐべきじゃね? (一任されてたんだっけ)
 そもそも地球を救うために冥王星を犠牲にして、何が問題なのだろうか? 2199の世界では人類は火星をテラフォーミングしたのですが、自分たちの都合で火星の環境を改造するのは良くて(しかも人類同士の戦争でボロボロにしてしまったらしい)、冥王星を消滅さてはいかんという理屈には説得力がない。冥王星救っても地球が滅びたら何の意味もないだろうが。だいたい、惑星間弾道弾に誘爆して結局冥王星もボロボロじゃねーか!
 さらに言うと、この冥王星での状況(反射衛星砲を使われる前ね)は、波動砲を使用するのには理想的だと思う。後述の七色星団やカレル163のような艦隊戦であれば、波動砲を撃った後の脱力状態で残党に攻撃される可能性があるけどれども、南部の言うように冥王星の場合はロングレンジで基地を破壊するんだから必要十分条件を満たしている(本作でも残存艦隊の奇襲を想定したために波動砲が使えなかったという指摘もあるのだけれど、だったら劇中で言ってくれよ)。
 それを沖田艦長、無数の拠点を偵察で調べるなんて成功率低すぎのバクチでしかない。実際、加藤が誤報を上げ、真田さんが注意喚起したにもかかわらず、「たとえ不確かでも、それに賭けねば勝てぬ戦もある」と、もう少しで戦力をそっちに割くところであった。賭けに出る状況じゃないし、賭けたら負けてたじゃん! 波動砲という選択肢があるのに運に頼った迂遠なやり方、作戦と言えんだろう。可哀想な南部 (´・ω・`)…代わりに私が言ってやる。いいじゃないか、星の二つや三つ! いいじゃないか、星の百や二百!!
 ただし冥王星を吹っ飛ばして、それがスターシャの知るところとなれば、逆鱗に触れてコスモリバースシステムはもらえなかったかも知れませんから、結果的にはこれで良かったのかも知れませんが。 私的には、エンケラドゥスのエピソードとくっつけて、「冥王星から友軍の救難信号を受信したから波動砲は使えない」という設定にすればよかったのだと思う。


次元潜航艦UX-01との対潜戦闘
 艦長不在で真田さんが指揮。潜宙艦の探知のため亜空間トランスデューサーでヤマトからピンガーを打つか、ソノブイで打つかで意見が割れ、結局母艦からピンして敵に居所を知らせてしまった。後に新見女史の言うには、真田さんは古代を死なせたくなかったんだとか。作戦の私物化じゃん。古代は古代で独断専行。結局、一士官の命令違反によって救われたのである。もう秩序崩壊状態。これ順序が逆(ソノブイで索敵しようとして、新見が勝手にヤマトからピンガー打って身バレ)だったらどうなってたか考えて欲しい。この頃より艦長自ら「それが命令であったとしても、間違っていると思ったら自分を貫く勇気も必要」と公言して憚らぬようになる。思ってても指揮官が言っちゃだめだよ(そのくせ七色星団では疑義を抱いた島や太田に「命令が聞こえんのか!」と怒鳴りちらしている。一体どうしろと?)。

カレル163星域会戦
 艦長不在で真田さんが指揮。ワープに入る直前にドメル艦隊の斥候艦に追撃を受け、まんまと罠に追い込まれた。戦略の基本中の基本である「戦場の設定」においてはヤマトは常に圧倒的に不利であり、これはもうワープ前に何とかするしかなかった。戦略的なマイナスを戦術で覆すのはまず不可能というのが定石なので、今回は闘う前に負けてたようなものですね。
 指揮を代わった沖田艦長は「敵正面に突入、これを突破する(略) 死中に活路を見出さねば、この包囲を破ることはできない」と一点突破主義で乗り切ろうとしますが、さらに包囲網の第二陣に追い込まれ、ドメルへの帰投命令がなければ沈んでいた。こりゃヒヤリハットどころじゃなく、運だけで助かったさいたる例でしたね。

バラン星の亜空間ゲート突破
 沖田艦長お得意の一点突破主義に、瑕疵の見当たらなかった稀有な例。ちゃんと戦闘の後、戦場を離脱するまでのことを考えてたからですね。これは文句無し。ちなみに、波動砲撃つ時は毎回この手を使えば、現場離脱が容易だと思うんだけど(特にメ二号作戦とか)、これはお約束ですね。

七色星団会戦
 劇場公開では短い感じがしたけど、TV放映で見たらなかなかボリュームを感じました。ドリルミサイル改め特殊削岩弾は、音も旧作とそっくりだったので感動したぜ! 今作ではガミラスの艦隊主力がバラン星から帰還中のため充分な兵力を割けなかったという、戦力差のバランスをとる展開を設けられました。しかし今作戦、まず最初の方針、

沖田「迂回コースをたどれば、それが油断となり、相手に反撃の時間を与えることになる」
真田「この危険な宙域を我々が突破するとは、敵も考え難いでしょう」
沖田「んむ」

 こーゆーのを油断と言うんじゃないか? 実際、
ドメル「ヤマトの艦長が私の思った通りの男なら、必ず七色星団を突き進んでくる」

 完全に読まれとる。沖田艦長は「もし敵が、あの時の指揮官だったら」とまで考えてるのに、前回もう少しで沈められるところだったのを忘れたのか。ただし、仮に遠回りしても、ガミラスに艦隊を立て直す余裕を与えた挙句、食いつかれていでしょうから、どのみちドメルとの決着は避けられなかったのでしょう。
 七色星団での勝敗はドメルの落ち度によるところが大きく、イオン乱流に上手く誘い込んだ沖田艦長の素早い状況判断は見事でしたが、やはり運に救われた部分が大きいのは否めないですね。ドメルは戦略家、沖田は戦術家に資質が偏っているように見えます。強いてツッコミたいのは、先遣させた航空隊本隊の隙を突かれた時のために、母艦の守りとして山本のα2を残しておいたわけですが、α1も出しゃ良かったじゃん、とおもいました。
 それにしても、波動防壁ってすごい防御力だな。旧作のヤマトは、自己修復性金属オリハルコン製という初期設定で、だから第三艦橋が、ドメルに爆破されてもガミラスの硫酸の海で溶け落ちても、早々に復活してたわけですが、今回は防壁のお陰でかなり助かってますね。

ガミラス星本土決戦
 往路最後のワープアウト直後に第二バレラスからデスラー砲で狙われ、何とか回避してガミラス本星の総統府に突っ込みました。
 まず先に「こうした方が良い」という点を述べておくと、

 (1)デスラー砲は亜光速の標的は狙えないらしい
 (2)第二バレラスはガミラス-イスカンダル系(逆?)のL1にある

──という条件から、最善の策はイスカンダルに直行直帰。 ほかにやることないだろ。ウラシマ効果は置いとくとして、亜光速まで出せるならすぐ戦場離脱できるでしょ? 全速でイスカンダルの影、すなわちデスラー砲の死角に入って回避し、降下してスターシャの元へ直行。もらうもんもらって再び死角から宇宙に出て、重力干渉が起きない距離まで離れたらワープ、さっさと地球へお帰りなさい。第二バレラスなぞ相手にせず、無視してしまえばよろしい。余計な犠牲が出ないからスターシャも賛成してくれると思うんだけど。「イスカンダルを盾にはできん」などと、誰の得にもならない美学にこだわるならガミラスの影に入る。いずれにせよ、とりあえず惑星の裏側に逃げ込んで安全確保するというのは、第二バレラスの位置を見れば素人でも最初に考えることでは? 
 しかし沖田艦長は「敵の懐深く入らぬ限り活路は見出せない」とまたもや一点突破主義。さすが期待を裏切らない! 航空隊を軌道上に置き去りにして帝都バレラスに降下し、艦首にピンポイント・パリア。。。もとい波動防壁を集中させて総統府にダイダロス・アタックをかける。艦長番組間違えてます。(そういや昔DAICONのアニメで左右の腕がヤマトとアルカディア号という凶悪なマクロスが出てたな)

 ここで謎なのが、この後どうするつもりだったのか? いやマジで。全火力を総統府の内外にぶっ放せば破壊できるかも知れないから、総統府そのものをいわば「人質」にもできたかも知れませんが、そうせずに白兵戦を仕掛けようとしていた以上、沖田艦長はほかのことを考えていたと思われます。となると考えられるのが

 (1)総統府全体を実力で制圧・掌握する
 (2)デスラーにターゲットを絞り殺害するか人質にとる
 (3)同じくデスラーに肉迫して停戦交渉を行う

──といったところですが、専制国家である以上(2)と(3)が効率的で、ひたすらデスラー1人を倒すために全力投入すれば勝機はあったのか。。。どのみち敵の本土なんだから、ここで決着をつけないと残党に蜂の巣にされたのは必至なわけで、本当に一体どうするつもりだったのかしら?
 でもって「古代、突入部隊の指揮をとれ」、森がデウスーラII世のコアシップに乗っているとわかると、舌の根も乾かぬうちに「古代、君の戦術長の任を解く」と朝令暮改。白兵戦の指揮どうすんだよ(ああ、藤堂長官が空間騎兵隊を乗艦させていれば。。。)。ちなみにコスモゼロって、大気圏離脱してL1まで飛べる航続距離あるのか。

 二つ目の謎。艦首を総統府に突っ込んで視界が塞がれた状態で、どうやって波動砲の照準合わせたんでしょう? そもそも633工区の映像どこで撮ってたんだ? (波動砲の測距儀は艦長室の左右にあるから、これでは標的の諸元が得られない。南部がトリガーを引くのにビビりまくっていたのは、実はターゲットスコープに何も映ってなかったからではなかろうか?) 海自のLINK-14みたいなシステムでも積んでて、上空に残した航空隊からデータもらってたのかねえ?
 結局、総統は死んだ(と思われてる)し、ガミラス市民を救ったことで、お咎めなしでイスカンダルへ向かえたわけですね。ここでも結果オーライであったわけで、極端なことを言えば、デスラーの暴挙のお陰でヤマトは助かったようなものです。
 とにかく沖田艦長という人、「死中に活路」とか「食い破る」とか、いつも退路を用意してないといいますか、単に「それ、落とし所考えてないだけじゃね?」といように見えます。
 
最後の闘い:亜空間ゲート内での白兵戦
 艦長不在で真田さんry) 亜空間ゲート直前で追撃を受け、「このまま(ゲートに)突入する」。カレル163でまったく同じ罠にかかり、あわや沈むところだったのに全然学習してねえじゃねえか! 誰かツッコめよ。
 それで待ち伏せしていたデウスーラII世こと新型デスラー艦に真上から取りつかれたわけですが、煙突ミサイル撃て。ここで使わなきゃ煙突ミサイルなんて出番皆無だろが何のためのVLSだよう! 主砲も仰角最大にすれば三式弾撃てるんじゃね? 魚雷もホーミングで当てられるだろ。まあデウスーラに大爆発でも起こされたら艦長室が危ないけどな(だから言ったんだよ艦長室無防備過ぎるって)。

 ここでどうすべきだったのかは難しいところですが、まずは真田さん罠を疑えよと。あとは、接舷されたら砲撃しながら艦体を高速回転させ(ヤマトは推進系を使わずに艦をロールさせられる)ガミロイド兵を振り落とし、デスラー艦も引きちぎるとかできないものかね? 何にしろ、敵兵が降下してくるのを迎撃もせずに黙って見てるとは、艦橋の連中なにやってたんだよ。

 以上、主だった戦闘を振り返りましたが、一点突破主義でヒヤリ・ハットの連続です。ほとんど運だけで旅を終えられたようなもんだわな。単艦だからしょうがないけどさあ。。。しかし、最大の ヒヤリ・ハット要因は、健康に不安を抱えた人間が艦長を努めてることだろ。健康状態の虚偽申告って軍規に反するんじゃないかと思うんだが。
 土方は沖田の体調を見抜いていて止めたのですが、気迫に押され、

「ならばもう何も言うまい」

 いや言えよ。匿名で藤堂長官にチクれ。佐渡先生もドクターストップかけろ地球の命運かかってんだから。
 実際、片道しか体調がもたず、イスカンダル到着時には病臥していてスターシャに挨拶できず、礼を失したわけですし(そもそも一種の外交交渉なのだから文民を乗せとくべきでしょうが、非常時だからまあこれは全権委任ということなんでしょう)。もし航海の途中で病死して、真田さんの指揮でドメル艦隊と闘ったりしてたらヤマトは沈んでただろう。しかし、この状況と体調で勝利して帰還できたんだから、やっぱり沖田艦長はスゴイ人だ。

──とまあ、揚げ足をとってしまいましたが、ピンチに陥って緊迫しないと面白くないからね、わかってますわかってます。ファンだからこそ意地悪くツッコんじゃうんだけど、楽しませてくれたことに大感謝です。

 最後に沖田十三艦長の人物についてですが、キャストでもトップにあるように、この人こそ本作の主人公なのですよね。物理学の博士号持ってて、学者になりたかったんだけど(じゃなんで士官学校入ったんだ)軍人の途を歩んだという稀有な人物。22世紀の日本において、どんな人生を歩むと自分を「ワシ」と呼ぶようになるのでしょうか? 子供を戦役で亡くしていて、まったく表に出さなかったものの、家族への思いで航海を乗り切ったのでしょう。お疲れ様でした。
 最終話、「地球か…何もかもみな懐かしい…」というセリフは当然入ると思ってましたが、個人的にはその直前の「佐渡先生…ありがとう」も残してくれたのは嬉しかったです。BGMも同じ曲使ってたし、もう大人の事情で生き返らせんなよ絶対。
 森を甦らせた古代守に代わり、沖田艦長がコスモリバースの核になったと解釈していいんでしょうか。すると、ヤマトそのものになったわけで、ひいては地球の守り神のような存在と化したのかもしれません(真田さんが語った「十分に発達した科学は魔法と見分けがつかない」というのは、軌道エレベーターの歴史に殿堂入りしているアーサー・C・クラーク卿の名言である)。

 七章の劇場公開では上映が終わると拍手喝采で、鼻すすってる人がたくさんいました。私も思わず目頭がうう。。。旧作への愛を感じさせつつ、21世紀のヤマトにふさわしい秀作として十分楽しませてくれました。お疲れ様です。

6.宇宙戦艦ヤマト2201はあるのか?
 こうして終了した『宇宙戦艦ヤマト2199』ですが、結論からいうと「2201を作れるように2199を作ってある。そのために玉虫色の解釈ができるシーンをたくさん挿入しました」というのがありありとわかる内容でした。
● ガトランティス帝国と国境紛争をしていて、収容所惑星で解放された中にはズォーダー大帝によく似た人物がいた
● 爆発したデウスーラからコアシップが浮上していたようにも見えた
● 次期艦長の土方が登場している
● 古代が将来の艦長っぽくなってきた(。。。らしい。単なる躁鬱病に見えるんだが)
● 沖田艦長がヤマトの守護神のような存在になったことで、『さらば』のラストシーンのような古代との対話もより自然になる
● スターシャが意味ありげにお腹に手を当てていた
最後の点は「ヤマトよ永遠に」の伏線なのですが、何か生かしようがあるかも。

たとえば、
 西暦2201年、地球の再生・復興を果たした国連宇宙軍は、新たな侵略に備えるための艦隊再建の名の下、スターシャとの誓約を破って(拡散)波動砲を装備した艦を量産。調子に乗って軍備増強の途をたどる。そのやり方に嫌気がさしたヤマトクルーたちの多くは軍を去るが、そこへ白色彗星帝国が攻めてくる。
 ガトランティスは、デスラー亡き後のガミラス(帝政から共和制に移行してるとか)の版図が力の空白状態にあるのにつけ込み、勢力拡大を図りガミラスやイスカンダルに攻略して瀕死の状態に追い詰め、次のターゲットを地球に絞ったのであった。
 で、増長していた地球艦隊は白色彗星に拡散波動砲をぶち込むが効かずに壊滅。かつてのヤマトのクルーたちはヤマトに集まり、地球の危機のためやむなく自ら波動砲の封印を解き、立ち向かう。。。とか。
 ちなみにデスラーはやっぱりガトランティスの子飼いに成り下がっているが、当然ヤマトと対峙することになる。2199は綺麗に終わったから、見たいような、見たくないような。。。もし作るなら、安易な予想をいい意味で裏切る作品にして欲しいよね。それからコスモタイガー出して。
 なお余話として、デスラーはガトランティスに制圧されたガミラスを実力で解放。引き止める人民に「私はもう君たちの主ではない」なんてスカして、宇宙のどこかへ去って行くのであった。さらにガルマンガミラスを築き、惑星破壊ミサイルを造って流れ弾を太陽にぶち込み、また地球を危機に陥れることになるのは言うまでもない。

 ──という原稿を書いた途端、来たよ「完全新作公開」。「2199」の「完全新作」だから、続編ではないのかも知れませんが、それはそれで楽しみです。ただ、旧作シリーズみたいに別の時間軸つくって続編を粗製乱造しないでね。
 来年公開とのことなので、観たらまた感想を書ければと思います。いやー、長くなった。ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました。
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