軌道エレベーター派

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はやぶさ2のスイングバイに思う

2015-12-02 20:47:29 | その他の雑記
小惑星探査機「はやぶさ2」が、間もなく地球に接近してスイングバイを行うとのことで、話題になってますね。観測しようという動きもあるようです。
 説明不要かも知れませんが、スイングバイとは、天体の運動エネルギーを利用して加減速する航法のことです。今回の場合は、地球が太陽を回る向きの反対側からはやぶさ2が接近して引っ張ってもらい、公転運動のエネルギーの一部をもらって加速し、軌道変更もあわせて行うというもので、「パワードスイングバイ」などとも呼ばれます。逆に天体の進行方向の前に回り込んで運動エネルギーを受け取ってもらい減速するスイングバイもあります。ちなみに、無視できるほど小さいほーーーーんのわずかな変化ですが、今回のスイングバイにより地球の公転速度は遅くなり、軌道が内側へ落ち込みます。

 メディアによっては「地球の重力を利用して」と言っていますが、肝心なのは宇宙機と天体が運動エネルギーのやりとりをすることなので、これは説明不足だと思います。
 また、スイングバイ自体は何十年も前から利用されているテクニックです。というより、衛星以外の宇宙機はたいていこれをやる。「パイオニア」も「ボイジャー」もそうですし、1997年に打ち上げられた土星探査機「カッシーニ」はいったん内惑星軌道へ向かい、金星で2回、地球、木星で1回ずつスイングバイを行っていますし、日本の月探査機「かぐや」も地球スイングバイを行っています。何より初代「はやぶさ」がやってるんですよね。
 にもかかわらず、はやぶさ2によるスイングバイが、なんだかまるで新技術による世紀の大チャレンジのように騒がれているのを見ると、ちょっと興ざめしてしまうのは、私がひねくれ者ということでしょうか。今回は地球近傍に接近するからという盛り上がりもありますが、それも有名人が地元に来るような騒ぎに似ているというか。

 失敗すると、スイングバイ・アノマリー(異常)などと呼ばれて後々のミッション遂行に大きく影響することもありうるので、確かに高い技術が求められる高度なミッションであり、JAXAや関係者の技術は誇るべきものです。しかし、ここまで注目されるのは、やっぱり「はやぶさ効果」というか、はやぶさ2を擬人化して自己を投影する心理の働きなんでしょう。宇宙への関心が広がるのは良いことですが、こういう時ばかり一過性のお祭りみたいになってしまうのは、少し複雑な気持ちにもなります。何はともあれ、ミッションの成功を祈るばかりです。