軌道エレベーターについて、私的な発想を紹介する「アイデアノート」の3回目。今回はコリオリ対策についてです。コリオリの説明と、軌道エレベーターに与える影響について、ここでは簡単な説明にとどめますので、詳細は「軌道エレベーター豆知識」の(22)をご覧ください。
さて、コリオリとは、回転する系の中にある物体が回転の中心に近づくか、あるいは遠ざかる運動をした際にかかる、横方向への慣性(力)のことです。地球上を例にとると、あなたが赤道直下のA地点から、北半球のB地点に移動したとします。地表にいるあなたは地球は自転に従って円運動をしているわけですが、A地点よりもB地点の方が回転半径が小さい。つまり東方向への運動エネルギーが小さく速度が低いので、B地点に行くほど、右(東)方向にズレていく力があなたに働きます。正確には、あなたに力が加わるのではなく、あなた自身が持っているベクトルが、まっすぐ進ませないのです。これは現実の生活においては人間が感じ取れるようなものではなく、打ち消されてしまうのですが、巨視的に見ると影響が観測でき、台風が渦を巻くのはこのためです。
軌道エレベーターにもこれが働きます。ピラーの上の方ほど回転半径が大きいので、昇降機が上昇すると、ピラー上部の運動エネルギーとの差から、昇降機がピラーに引っ張られます。そして相対的に小さいものの、ピラーの方も昇降機に引っ張られてしまい、軌道エレベーター全体の角運動量に影響を与えて不安定にさせるというものです。しかしながら、豆知識でも述べたように、私個人はコリオリをさして問題視していません。主な理由としては、
(1) 昇降機が降下する時には(積載量に差がなければ)まったく逆の力が働いて相殺される
(2) 近年の軌道エレベーターのモデルは遠心力の方を強めに設定しているため、ピラー全体が逆さにした振り子のような運動をすることによって長期的には回復する力が働く
──というものです。ついでに言うと、1mあたりの上昇で0.00007m程度横に動くだけ。平均時速60kmで上昇すれば、横方向の加速度は0.001m/s^2強くらいなので、昇降機の乗り心地にはまったく問題ないでしょう。もちろんマクロな視点で見たら、局所的な振動の原因につながるかも知れず、ピラー全体がピンと張った糸のように安定することはないでしょうが、はっきり言って軌道エレベーターの揺動の原因は、月や太陽の引力による摂動、駆動機関による細かい振動などの方がよっぽど深刻です。
それでもコリオリはやたらと問題にされるんですよね。私の考えるコリオリの解消策、図で見てもらうのが一番でしょう。
これでええんちゃう?
静止軌道から下のピラーを、重量が増えないように東西方向に枝分かれさせ、中央ピラーの係留索として使用するものです。静止軌道から上は、上述の振り子運動がより強く働きます。
言うまでもないことですが、枝分かれしたピラーも昇降機が行き来し、さらにこれを南北方向にも展開することで、中・高緯度地域からも昇れるようにする。また、どこか1か所のピラーが断絶しても、ほかの枝ピラーが応急的に全体を支えることで、摂動対策や倒壊対策、その他のリスク分散も兼ねています。あくまで一例であって、これをもっと複雑にして安定度を高め、かつ多機能化するのが望ましいですし、結局そうなるんじゃないでしょうか?
まあ実際は、静止軌道までの高さが地球の直径の3倍くらいあるので、横方向への足場が狭いというか、こうガッシリとは支えられませんが、オービタルリングで安定させるという手もありますし、ほかにもアイデアはありますので、また機会を改めて紹介します。
そんなわけで、やはりコリオリは大した問題じゃないんじゃないでしょうか。
さて、コリオリとは、回転する系の中にある物体が回転の中心に近づくか、あるいは遠ざかる運動をした際にかかる、横方向への慣性(力)のことです。地球上を例にとると、あなたが赤道直下のA地点から、北半球のB地点に移動したとします。地表にいるあなたは地球は自転に従って円運動をしているわけですが、A地点よりもB地点の方が回転半径が小さい。つまり東方向への運動エネルギーが小さく速度が低いので、B地点に行くほど、右(東)方向にズレていく力があなたに働きます。正確には、あなたに力が加わるのではなく、あなた自身が持っているベクトルが、まっすぐ進ませないのです。これは現実の生活においては人間が感じ取れるようなものではなく、打ち消されてしまうのですが、巨視的に見ると影響が観測でき、台風が渦を巻くのはこのためです。
軌道エレベーターにもこれが働きます。ピラーの上の方ほど回転半径が大きいので、昇降機が上昇すると、ピラー上部の運動エネルギーとの差から、昇降機がピラーに引っ張られます。そして相対的に小さいものの、ピラーの方も昇降機に引っ張られてしまい、軌道エレベーター全体の角運動量に影響を与えて不安定にさせるというものです。しかしながら、豆知識でも述べたように、私個人はコリオリをさして問題視していません。主な理由としては、
(1) 昇降機が降下する時には(積載量に差がなければ)まったく逆の力が働いて相殺される
(2) 近年の軌道エレベーターのモデルは遠心力の方を強めに設定しているため、ピラー全体が逆さにした振り子のような運動をすることによって長期的には回復する力が働く
──というものです。ついでに言うと、1mあたりの上昇で0.00007m程度横に動くだけ。平均時速60kmで上昇すれば、横方向の加速度は0.001m/s^2強くらいなので、昇降機の乗り心地にはまったく問題ないでしょう。もちろんマクロな視点で見たら、局所的な振動の原因につながるかも知れず、ピラー全体がピンと張った糸のように安定することはないでしょうが、はっきり言って軌道エレベーターの揺動の原因は、月や太陽の引力による摂動、駆動機関による細かい振動などの方がよっぽど深刻です。
それでもコリオリはやたらと問題にされるんですよね。私の考えるコリオリの解消策、図で見てもらうのが一番でしょう。
これでええんちゃう?
静止軌道から下のピラーを、重量が増えないように東西方向に枝分かれさせ、中央ピラーの係留索として使用するものです。静止軌道から上は、上述の振り子運動がより強く働きます。
言うまでもないことですが、枝分かれしたピラーも昇降機が行き来し、さらにこれを南北方向にも展開することで、中・高緯度地域からも昇れるようにする。また、どこか1か所のピラーが断絶しても、ほかの枝ピラーが応急的に全体を支えることで、摂動対策や倒壊対策、その他のリスク分散も兼ねています。あくまで一例であって、これをもっと複雑にして安定度を高め、かつ多機能化するのが望ましいですし、結局そうなるんじゃないでしょうか?
まあ実際は、静止軌道までの高さが地球の直径の3倍くらいあるので、横方向への足場が狭いというか、こうガッシリとは支えられませんが、オービタルリングで安定させるという手もありますし、ほかにもアイデアはありますので、また機会を改めて紹介します。
そんなわけで、やはりコリオリは大した問題じゃないんじゃないでしょうか。