軌道エレベーター派

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軌道派アイデアノート(4) デブリ根絶計画(中)

2011-11-10 23:48:10 | 軌道派アイデアノート
 「デブリ根絶計画」と大仰に名づけたアイデアノートの2回目。前回「あらゆるデブリは必ず軌道エレベーターは衝突する。この原理を逆用し、軌道エレベーターによりデブリを除去する」という主旨を述べました。今回はその具体的方法について説明します。

1. デブリのカテゴライズ
 大きめのデブリの多くは軌道が把握されていることもあり、 国際宇宙ステーション(ISS)では、直径が10cm以上のデブリはISSの方が避けて回避し、それより小さい物はふんばって耐えるのだそうです(ていうかそのくらいの大きさ以上のデブリならSSNで監視できているから)。
 軌道エレベーターによる除去についても、デブリを以下の3種類にカテゴライズしたいと思います。

(1) 大気圏に落とせば確実に燃え尽きる微細なもの
(2) そのまま大気圏に落とせば、本体または破片などが地上に落下する危険があるもの
(3) 上記(2)のうち、推進剤切れなどにより寿命が尽きた衛星の本体など、
 衛星の機能中枢を含み、回収すれば再利用が可能なもの

 以上のうち、今回は(1)について、対処法を分けて説明します。

2.オービタルシールド
 デブリと衝突することを前提とした耐衝撃材(バンパー)の上に、デブリが絡み付くような頑丈なネット(フィルター)を、低軌道から高軌道までレッグウォーマーみたいにピラーの周囲に筒状に巻きます。このバンパーとフィルターの筒状集合体、過去にも扱ったことがあり、ピラーの保護も兼ねているので、ここでは「オービタルシールド」と呼びます。ケレン味たっぷりな名前ですみません。このシールドにより、デブリが衝突してそこで食い止められたらそれでよし。食い止められず貫通したとしても、確実に減速しますから、その軌道よりは落下します。
 一般に、地球周回軌道上の天体は秒速2.5km以下になれば、確実に大気圏に突入すると言われています。十分に減速できなければ楕円軌道に推移する可能性もありますが、その場合でも、いずれまた軌道エレベーターに衝突することになりますから、次で再び補足か減速させる。これを繰り返してやがては大気圏に落下、突入して空力加熱で燃え尽きることになります。今回対象としている小さなデブリであれば、このやり方で除去できるというわけです。このような方法で、デブリを捕獲、あるいは減速させていきます。



 ちなみに、対デブリバンパーというのは現実にもあって、JAXAのISS実験モジュール「きぼう」にも使われている「ホィップルバンパ」などがその一例です。外側に巻くフィルターの方は、今研究されているデブリ回収衛星用のネットとか、ピラーと同系の素材がよろしいかと。少なくとも、見本となる素材はすでに存在しているわけですから、こうした部材を発展させたようなものの集合体だと思ってください。
 「こんな頑丈な筒なんぞ付けたら、ピラーが重量に耐えられない。装備するにはピラーの相当な巨大化が必要になる」と思われるかも知れません。この問題を、「軌道対称構造」によって解消し、ピラーに負荷をかけずにシールドを維持するわけです。また、デブリがバンパーまで貫通する場合、ピラーを直撃する恐れがあるので、ピラーは複数をまとめた構造にするのがよろしいかと思われます。

3. 再生産されたデブリも除去できる
 上述のように、シールドをデブリが貫通や衝突した際、デブリが破砕してさらに微細なカケラとなったり、シールドそのもの破片が生じる可能性は否定できません。フィルターはそれを封じ込める役割も兼ねているのですが、それでも多かれ少なかれ、外側に飛び散るでしょう。このカケラも軌道に乗れば必然的に新たなデブリとなってしまいますが、いずれは再び軌道エレベーターの下へやってきて衝突することになる。その時には前回より速度は落ちているので捕まえやすいし、そうでなくてもこのプロセスを繰り返せば十分に減速し、いずれは捕獲か落下することになります。これこそが軌道エレベーターの強みでもあるわけです。
 前回示した通り、同期軌道にあるデブリは軌道エレベーターと邂逅しないので、こうした軌道には多数のデブリが残るかもしれませんが、デブリは軌道修正などしませんから、太陽や月の引力、地上の重力異常など様々な影響で少しずつ軌道は変化していき、非常に長い目に見れば、いずれ軌道エレベーターにぶつかります。それが待てなければ、限られた軌道上の話であり、俗に言う「墓場軌道」の一種とみなし、いうなれば「道に沿って掃除」をすれば良いわけです。その軌道に沿って、現在取り組まれているようなデブリ回収衛星を打ち上げてもいいかもしれません。

 そして、軌道エレベーターは地上とつながっていますから、このシールドは常に交換やメンテナンスができます。デブリ回収衛星は使い捨てにせざるを得ないでしょうが、軌道エレベーターであれば、恒常的にデブリの除去作業が可能になる。デブリ問題を根本的に解決するにはピンポイントでやっても、常に発生し続けるデブリとの間で、終わりの見えないイタチごっこになってしまうでしょう。しかし地上から静止軌道を越えて伸びる軌道エレベーターであれば、あらゆる高度のデブリを常に待ち構えて対処できるのです。
 軌道エレベーターにこそできる、デブリ対処法ではないでしょうか。

 今回はここまで。次回は大型のデブリへの対処法と、ロケット使用の減少について述べてまとめます。ここまで読んでくださり、誠にありがとうございました。

今回のまとめ
(1) 軌道エレベーターの周囲に「シールド」を巻く
(2) このシールドでデブリを捕まえるか、あるいは減速させる
(3) これを続ければ、大気圏で燃え尽きるサイズのデブリは一掃できる

 (4) デブリ根絶計画(下)に続く
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