goo blog サービス終了のお知らせ 

軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

今年も宇科連で軌道エレベーター関連の発表多数

2015-10-09 18:48:17 | ニュース
 「第59回宇宙科学技術連合講演会」が7~9日の3日間、鹿児島市で開催され、初日に軌道(宇宙)エレベーターに関する多くの講演が行われた。
 
 今年は昨年よりも大幅に多い11の発表があり、最初に国際宇宙航行アカデミー(IAA)の軌道エレベーター研究グループが、将来の軌道エレベーター実現の上で必要になると予想される様々な課題や要素のうち、ミッション定義書及びシステム要求書案の作成について進捗状況を発表。定義書などの起草には「宇宙エレベーター建設構想」を打ち出している大林組も参加しており、同社の構想モデルも取り入れて進めていることを報告した。今後は軌道エレベーターを構成するシステムのうち、定義書などでカバーする範囲や用語統一などが課題とし、2017年には公開を目指したいとした。

 続いて、同社や静岡大などから、軌道エレベーターのケーブル挙動のうち、気流など大気圏内における影響についての研究結果が示された。長大な軌道エレベーターの構造体のうち、大気の影響を直接受けるのは全体の数千分の一程度にすぎないが、天体の引力などに比べて短期的な変化が激しく、全体の振動の原因になりうるなど、システムの長期的安定重要な位置を占める。
 今回は赤道上の成層圏までを対象として、過去の気象データを用いてシミュレーションを実施。この結果、ケーブルは東西、南北両方向とも大気の影響によるレスポンスが早く、直接的な変動を受けやすいこと、またケーブルに沿って直線的に伝達・分布することなどがわかった一方、変動が長期的に蓄積・成長する傾向は認められなかったという。

 このほか、初日は軌道エレベーターの建造案の中では最も古典的な手法である、静止軌道から上下にケーブルを展開するやり方の研究や、ケーブルの素材別のクライマーの運動解析、軌道上でケーブル展開やクライマー走行などの実験を行う「STARSプロジェクト」の紹介などが行われた。また大林組などは、構想発表時には触れられていなかったクライマー技術についても、研究に着手し進めていることを伝えた。

 2日目には、大林組などによる、国際宇宙ステーションで行うCNTの真空曝露実験の発表などもなされた。これまでのところ、地上での対照実験では、引っ張り強度の若干の低下が見られており、実際の曝露結果と慎重に比較したいとしている。
 軌道エレベーター以外の分野では、民間での月面探査計画を募集する "Google Lunar X Prize" にエントリーしているチーム「HAKUTO(ハクト)」による特別講演や、技術的な発表も行われた。(軌道エレベーター派 2015/10/9)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2015 Space Elevator Conference閉幕

2015-08-30 12:53:00 | ニュース
 米シアトルの "Museaum of Flight" で21日から始まった "2015 Space Elevator Conference" (SEC'15) は、宇宙エレベーター協会(JSEA)による発表や、軌道エレベーターに関するサブカルチャーの紹介、細部検討を盛り込んだ総合的ロードマップについての話し合いなどが行われ、23日に幕を閉じた。

 JSEAの大野修一会長は2日の終盤に急遽登壇。短時間だが活動内容の動画を上映したり、活動の展望を報告したりした。さらに3日目には "JSEA SPIDER Lightweight Climber Challenge" と題したプレゼンテーションで、JSEAの沿革を紹介した後、宇宙エレベーターのテザーを昇降するクライマーの開発や競技において、新たに設けた "SPPDER" について詳細を説明した。
 SPPDERは、市販のブロックで作る500g級の "LASER"、300g級の「マウス」に次ぐ1.5kg級クライマーのカテゴリーで、毎年8月に開催している「宇宙エレベーターチャレンジ」(SPEC) で用いられる20kg級クライマーとの中間に位置付けられる。主に高校生を参加対象とし、ラジコンカーのキットなどを利用してクライマー製作を行い、クライマー開発の基礎や問題解決などを学ぶのが目的。
 大野会長は、12チームが参加した神奈川県でのSPIDER競技イベントの様子や、自律性を高めたSPIDERなどの発展性を紹介しながら「SPIDERは購入しやすく安価な部品で作れる。我々は機体の仕様や見本を掲載した説明書をウェブ上で公開している。現在は日本語だけだが、誰でもSPIDERを作ることができる」と語り、参加者の裾野を広げていく意欲を示した。最後に28mのテザーを6m毎秒で37回昇降する最速モデルの動画を上映すると、会議参加者から驚きの声が上がった。

 このほかの日本人勢では、軌道エレベーターのロードマップ作成チームのメンバーによる詳細検討の結果発表や、大林組の石川洋二氏の「宇宙エレベーター建設構想」と、日本人による発表が続いた。

 また、主催団体の "International Space Elevator Consortium"(ISEC)は2日目に、将来の実現を目指して進める建造までのロードマップに関する発表や意見交換に多くの時間が割き、エレベーターの全体構造や宇宙と地上をつなぐテザーを昇降するシステム、基部となる海上プラットフォームなど、分野別検討の成果が報告された。
 このテーマのうち海上の施設についてのワークショップでは、①テザーの終端施設 ②浮体式作業施設 ③システム全体のデモンストレーション──の3テーマで、参加者がグループに分かれて討論。各グループ代表は「拠点施設の建設は環境に大きなインパクトを持つことから熟慮が必要」などと話し、逆に構造に影響を与える自然現象の様々な要素を挙げるなど、議論を深めた。

 このほか、"The Space Elevator/Launch Loop/Space Fountain in Science Fiction"と題した最初の発表では、旧約聖書のバベルの塔やヤコブの階段までさかのぼり、砲弾を打ち出す方法で人を月に送る『月世界旅行』(1865年~)のような古典作品をはじめ、宇宙エレベーターを特に有名にした『楽園の泉』(1979年)をはじめ、『星ぼしに架ける橋』(同)など宇宙エレベーター、あるいはマスドライバー(電磁気的な力などにより質量を加速・射出するカタパルト)などが登場した数多くのSF作品を紹介。ビジネス展開を目指すベンチャー企業によるプレゼンテーションもあり、参加者による様々な議題の討論などを経て、今年の会議を終えた。(軌道エレベーター派 2015/8/30)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2015 Space Elevator Conference 始まる

2015-08-23 13:40:54 | ニュース
 軌道エレベーターにかかわる研究者、技術者などによる国際会議 "2015 Space Elevator Conference" (SEC'15) が、米ワシントン州シアトルの "Museum of Flight" で21日(現地時間)から始まった。初日は約50人が参加し、最新の研究成果を発表したり、意見を交わしたりした。

 米国での国際会議は、2002~04年にワシントンD.C.などで開かれたことがあったが、一時中断。しかしその後再び機運が高まって08年に再開し、現在は "International Space Elevator Consortium"(ISEC)の主催で、毎年夏に開催されている。08年に日本宇宙エレベーター協会(現・宇宙エレベーター協会)が設立されて以降は、日本からも例年参加が続いている。

 開会にあたり、今回の司会を務めるISECの David Horn 氏が「将来、軌道エレベーターを実現するために、我々はきょうここに集まった」とあいさつ。続いてBryan Laubscher氏が、軌道エレベーターの概略や基本構造、機能などについてひもとき、研究史を振り返った。地球の重力を振り切るコストにおいて、ケーブルを増設していくことで、1kgあたり30ドルにまで低減することも可能と見積もり、ロケットに比べて軌道エレベーターがいかに効率的かを強調。また、歴史的大事業だった米国の大陸間横断鉄道開通の歴史を紹介し、「軌道エレベーターの実現はこれに匹敵する巨大事業になる」と訴えた。

 実現の最重要課題とも言える素材分野では、シンシナティ大学のMark Haase博士が基礎構造となるケーブルに求められる素材について ①どの素材が充分な強度を持つか ②何が強度を高めるか ③エレベーターのケーブルとして使えるまでどのくらいかかるか──の観点で発表を行った。氏は従来からの素材の筆頭候補であるカーボンナノチューブと、グラフェン、窒化ホウ素ナノチューブの三つを「コアマテリアル」と位置付け、素材の物性や破断条件、研究の成熟度などを比較。このうちカーボンナノチューブを「化学的安定性があり、一番発見が早く研究が進んでいる」などとして、現状で一番有望という見方を示した。
 一方、Laubscher氏はカーボンナノチューブの模型を手にしながら、現行の化学気相成長法(CVD法)の課題を伝えるなどした。初日はこうした発表に加え、コンピュータシミュレーションの重要性を示す発表や、テーマごとにグループに分かれた討論などが行われた。

 SEC'15 は23日までの3日間続き、研究発表やテーマ別ワークショップなどが行われる。最終日にはJSEAの大野修一会長が、協会活動や日本における研究の進捗などを報告するほか、大林組の石川洋二氏が同社の「宇宙エレベーター建設構想」について発表する予定。(軌道エレベーター派 2015/8/22=現地時間)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第7回「宇宙エレベーターチャレンジ」(SPEC015)開催中

2015-08-13 21:53:57 | ニュース
 軌道エレベーターの関連技術開発に挑む「宇宙エレベーターチャレンジ」(SPEC2015)が、11日から、福島県いわき市で行われている。
 昨年まで静岡県富士宮市で実施していたが、今年は東北地方で初めての開催となった。今年は大学の研究室や社会人などの計約15チームが、自作の昇降機器「クライマー」を携えて参加。高度約200mのヘリウムバルーンを掲揚してクライマーを昇降させる。規定時間内にバルーンまでの往復を数回安定して行えたチームは、1000m級の高高度昇降に挑戦できるルールで実施した。
  12日までに数チームが高高度へのチャレンジ資格を得たが、13日は断続的に雨に見舞われ、1000m級バルーンは条件が整わず600mに抑えて実施。常連チームの "The 4th Laboratory" が300mを無事昇降した。主催の宇宙エレベーター協会(JSEA)は、14日には条件を整えたいとしている。(軌道エレベーター派 2015/8/13)


(ここからは軌道エレベーター派の雑記です)
 先日からSPEC会場に来てます。もう毎年書いていて、写真も似た構図になりがちで、パターン化してきています。私もスタッフとして来訪者への対応に追われていることもあって、今回は細かく書き込まず、概報におさめます。
 今年の一番の違いは、福島県で開催していることですね。協会関係者の協力で実現しました。遠くはなりましたが、我々も手馴れてきていているので、つつがなく開催しております。また軌道エレベーター派としての見方では、大学機関などによる実証研究の方が進んできた以上、技術開発の本道はそちらで進め、SPECは一定の役割は終えて、スポーツとして定着していけばいいのだと考えています。我々JSEAメンバーとしては、年に数回の顔合わせイベントでもあり、楽しめればと思います。
 しかし福島も暑いな (;´Д`) みんな熱中症に気を付けましょう。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

STARSプロジェクトシンポ 軌道エレベーターの実験について発表

2015-07-03 12:08:26 | ニュース
 小型衛星によるテザー展開などの実験を行う「STARSプロジェクト」の成果や展望を発表するシンポジウムが2日、静岡大学で行われ、軌道エレベータ-の技術にかかわる実験などについて発表が行われた。
 STARSプロジェクトは 対になった2基の衛星をくっついた状態で放出。テザーを繰り出して間を結びながら親と子の衛星を分離し、約100m以上延ばして、地磁気を利用したローレンツ力による姿勢制御の実証実験や影響を調べるなどする。これまでに香川大学によるSTARS衛星が運用されている。

 このうち軌道エレベータ-の基礎技術の実験を行う「STARS-E(Eはエレベータ-の頭文字)」は、展開したテザーの間を小型クライマーが昇降する実験を行うもので、日本大学の青木義男教授らが、進捗状況や展望について説明。現時点での構想では、高さ計50cmの親子衛星を分離し、親子の間を結ぶテザーを「孫」にあたるクライマーで往復させ、クライマーの性能や衛星の安定度、テザーへの影響の評価などを行う。
 この実験の場合、クライマーの昇降運動の反動が親子の衛星の位置を変化させてしまうため、クライマーは極力小型化し、重量150gに収めたいとしているほか、テザーを挟み込んで駆動するローラーを多数用いることで、接触面への摩擦と負荷を軽減することなどを想定しているという。青木教授は「学内での実験とあわせて、このSTARSプロジェクトでエレベーター研究にできるだけ貢献したい」と話した。
 衛星軌道上からのテザー展開は、想定される軌道エレベーターの建造プランの、建造の最初期に求められる関連技術であるだけに、深いかかわり、軌道エレベータ-に関する軌道上での実証実験は初めてでもある。

 この日はこのほかに、静岡大の学生チームが、テザーのたるみを抑えるリール機構などを備えた「STARS-C」や、デブリの除去を目的とする「STARS-D」などについて発表が行われた。(関連記事:宇宙での軌道エレベーター実験計画採択

(軌道エレベーター派 2015/7/2)

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする