軌道エレベーター派

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火星飛行、月面探査・・・宇宙開発に日本の学生や民間からのチャレンジ続々

2015-02-01 12:20:44 | ニュース
 宇宙開発計画を募るコンテストで、日本の学生や民間有志のチームが目覚ましい活躍を見せている。火星の有人飛行や月探査など、国家や大企業に依らない民間主導の力で宇宙を目指す試みが高まりを見せている。

 2018年、男女1組が宇宙船で火星へ出発。2人は鏡で空間を広く見せるなど、ストレス軽減を試みた船内で生活しながら、約500日をかけて火星周回軌道を回り、地球へ帰還する・・・日米の大学の合同チーム「Kanau(協)」が提案したこのプランが、低コストの有人火星飛行計画案を募るコンテスト "Inspiration Mars" で昨年、優勝を果たした。
 「既存の技術を活用しつつ、1年以上の長期宇宙滞在となる搭乗員のメンタルヘルスため、快適性を確保する工夫をした」と、リーダーで慶応大大学院の飯野翔太さん。火星への飛行は、「窓」とも呼ばれるホーマン遷移軌道突入のタイミングが定期的に訪れる。18年12月の「窓」が開く時期に向け、海外の宇宙機関が探査計画を進める中、学生から安価な有人計画案を募ろうと、民間で初の宇宙旅行をしたデニス・チトー氏の財団の援助で Inspiration Mars が開かれ、チーム協は約40チームを勝ち抜いた。
 低コストで安全に人を火星周回軌道に送り、帰還させるため、チーム協の計画では、打ち上げ実績のある「枯れた技術」によるロケットや宇宙機を利用し、電力・熱制御を効率化したモジュールを打ち上げて、低軌道上で宇宙船を完成させる。船内では3Dプリンタで簡単な修理部品を作れるようにしたり、鏡や間接照明で視界の広さや変化を与えてストレスを抑えたりして過ごすなどの発想が評価された。
 「参加する以上は優勝。私たちでも勝てると思っていた」と飯野さん。指導した東京女学館大の宮嶋宏行教授(宇宙工学)は「国際宇宙コンペの常連校もいたが、そうした所に勝てたのは見事」と話した。チーム協のサイトはこちら。


 一方、月探査計画を募集する "Google Lunar X Prize" に勝ち進んでいるのが、民間企業や東北大などの混成チーム「HAKUTO(ハクト)」。こちらは実際にロケットに探査機を積んで打ち上げ、月面に送り込むことを目指している。2015年末までに探査機を送り、月面を500m以上移動して動画を記録、送信するのが条件。貴重な発見などがあれば賞金が増額される。
 ハクトはこれに挑み、探査車(ローバー)の開発を進めている。ローバーは4輪の「ムーンレイカー」(約8kg)と小型で2輪の「テトリス」(約2kg)の2種類を開発しており、テトリスはムーンレイカーを母機として、「命綱」代わりのテザーを伸ばして急斜面などを下り、上空からの観測ではわかりにくい場所の走査も想定している。リーダーの袴田武史さんは「民生の部品を利用して、低コストで軽量化をはかっている。国や大企業のように金がかかる宇宙開発の考え方を変えたい」と自信を見せる。
 今月26日、ハクトはX Prize の「中間賞」も受賞。IHIなどのスポンサーも獲得し、着々と準備を進めている。また「月面を500m以上走って記録を取る」というX Prize の主旨に加え、追加のミッションも視野に入れている。2009年に月面探査機「かぐや」が発見した縦穴の探査を、テトリスの特性を生かして挑むことや、人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場した「ロンギヌスの槍」のミニチュアを月面に突き立てるという余興も企画。打ち上げを目指し、チームは資金集めやロケットの手配などに奔走している。ハクトのサイトはこちら。

 こうした動きについて、科学ジャーナリストの松浦晋也さんは「かつては国家・軍事主導だった宇宙開発に、民需が乗り出す流れは逆行することはないだろう。フロンティアは国家レベル、探査の進んだ地球近傍は民間という棲み分けができれば理想的。将来は民間の宇宙ステーションも誕生するかも」と話している。
(軌道エレベーター派 2015/2/1)

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