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軌道エレベーター派

伝統ある「軌道エレベーター」の名の復権を目指すサイト(記事、画像の転載は出典を明記してください)

大林組などが宇宙でのCNT素材の曝露実験を実施

2015-05-12 15:10:40 | ニュース
 「宇宙エレベーター建設構想」を打ち出した大林組(東京都港区)が、軌道エレベーターの素材となりうるカーボンナノチューブ(CNT)の真空曝露実験を国際宇宙ステーション(ISS)で行う。これまで建造方法が中心だった軌道エレベーター研究に、宇宙での素材の実験が加わることで、この分野での発展が期待される。

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が募集した、ISSの日本実験棟「きぼう」の曝露部 "ExHAM" を利用する実験テーマとして採択されたもので、同社と静岡大、有人宇宙システム(東京都千代田区)の共同実験。CNTの素材を収納した約10cm四方の容器をExHAMに取り付け、長期の真空曝露の影響を調べる。実験容器はすでに米国から打ち上げられており、同社によると、14日頃から取り付け作業にかかるという。
 軌道エレベーターの素材としてのCNTは過酷な条件で使用されることから、原子状酸素による腐食、紫外線や宇宙放射線などの影響下で利用できることが求められる。特に原子状に遊離して宇宙空間(正確には高層大気中)に存在する酸素は素材に結合しやすく、損耗を進める大きな要因になると考えられている。ISSが周回する高度350~400kmの環境はこの影響が比較的大きい。

 今回の実験では、CNTを撚り合わせた直径約20マイクロメートル(1本は約20ナノメートル)の繊維と、シート状のCNT複合材料などを収めた容器を3個設置し、このうち2個は1年、残る1個は2年で回収。素材の腐食や欠損などを確認したり、地上の施設で似た条件に曝した素材と比較したりして、耐性などを調査する予定。
 同社宇宙エレベーター要素技術実証研究開発チーム幹事の石川洋二氏は「炭素繊維は幅広い用途に使われ、宇宙機にも導入されてきており、宇宙環境への耐性が重要になっている。今回の実験でそれを調べ、大規模な宇宙建築など、今後の研究に役立てたい」と話し、今後条件を変えた実験も行っていきたいとした。

 同社は2012年、2050年の完成を想定した「宇宙エレベーター建設構想」を発表。総合建設会社による本格的な建造プランとして、この分野の研究を大きく前進させ、現在も注目されている。(軌道エレベーター派 2015/5/12)

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第7回宇宙エレベーター学会(JpSEC2014)

2015-03-29 10:37:43 | ニュース
 軌道エレベータ-に関する研究発表などを行う、宇宙エレベータ-協会(JSEA)主催の「宇宙エレベーター学会(JpSEC2014)」が28日、東京都千代田区で開かれた。

 今回は、はじめに川崎工科高の尾花建司教諭が高校生向けの簡易クライマー「SPIDER」を使った昇降実験や教室の取り組みを説明。続いて『宇宙エレベータ-の物理学』(オーム社)の著書もある東海大の佐藤実氏が軌道エレベータ-を地球上に造る意義について講演。「地球は建造の適地かも知れない」と述べ、将来の宇宙進出で大量の人口を運ぶためには必須のシステムと訴えた。

 このほか、日本大の高野忠氏が電磁波、レーザーなど、ピラーを昇降するクライマーへの、様々な給電手段と実現可能性について検証。ケーブルを通じたクライマーへの直接の給電は困難であり、途中の高さまでであれば地上からの電磁波などで供給可能性があるとした。
 来年、国際宇宙ステーション(ISS)から実験衛星を放出し、軌道上でのテザー展開の実験を行う静岡大の山極芳樹氏は、想定しているシステムを詳しく説明。「学術の大型研究計画に関するマスタープラン(マスタープラン2014)」に採択され、軌道エレベータ-の研究分野では初めての宇宙空間での実証実験となる取り組みに「宇宙で実証しなければならない」意気込みを見せた。出席した会員らは興味深そうな表情で聞き入り、軌道エレベータ-の可能性について各講演者に質問を寄せるなどしていた。終盤では大野修一会長が、今年度の活動報告や今後の展望などを説明した。

 JpSECは、JSEAが発足した2008年から毎年開催しており(「宇宙エレベーター会議」から改称)、今年で7回目を迎える。
(軌道エレベーター派 2015/3/29)

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火星飛行、月面探査・・・宇宙開発に日本の学生や民間からのチャレンジ続々

2015-02-01 12:20:44 | ニュース
 宇宙開発計画を募るコンテストで、日本の学生や民間有志のチームが目覚ましい活躍を見せている。火星の有人飛行や月探査など、国家や大企業に依らない民間主導の力で宇宙を目指す試みが高まりを見せている。

 2018年、男女1組が宇宙船で火星へ出発。2人は鏡で空間を広く見せるなど、ストレス軽減を試みた船内で生活しながら、約500日をかけて火星周回軌道を回り、地球へ帰還する・・・日米の大学の合同チーム「Kanau(協)」が提案したこのプランが、低コストの有人火星飛行計画案を募るコンテスト "Inspiration Mars" で昨年、優勝を果たした。
 「既存の技術を活用しつつ、1年以上の長期宇宙滞在となる搭乗員のメンタルヘルスため、快適性を確保する工夫をした」と、リーダーで慶応大大学院の飯野翔太さん。火星への飛行は、「窓」とも呼ばれるホーマン遷移軌道突入のタイミングが定期的に訪れる。18年12月の「窓」が開く時期に向け、海外の宇宙機関が探査計画を進める中、学生から安価な有人計画案を募ろうと、民間で初の宇宙旅行をしたデニス・チトー氏の財団の援助で Inspiration Mars が開かれ、チーム協は約40チームを勝ち抜いた。
 低コストで安全に人を火星周回軌道に送り、帰還させるため、チーム協の計画では、打ち上げ実績のある「枯れた技術」によるロケットや宇宙機を利用し、電力・熱制御を効率化したモジュールを打ち上げて、低軌道上で宇宙船を完成させる。船内では3Dプリンタで簡単な修理部品を作れるようにしたり、鏡や間接照明で視界の広さや変化を与えてストレスを抑えたりして過ごすなどの発想が評価された。
 「参加する以上は優勝。私たちでも勝てると思っていた」と飯野さん。指導した東京女学館大の宮嶋宏行教授(宇宙工学)は「国際宇宙コンペの常連校もいたが、そうした所に勝てたのは見事」と話した。チーム協のサイトはこちら。


 一方、月探査計画を募集する "Google Lunar X Prize" に勝ち進んでいるのが、民間企業や東北大などの混成チーム「HAKUTO(ハクト)」。こちらは実際にロケットに探査機を積んで打ち上げ、月面に送り込むことを目指している。2015年末までに探査機を送り、月面を500m以上移動して動画を記録、送信するのが条件。貴重な発見などがあれば賞金が増額される。
 ハクトはこれに挑み、探査車(ローバー)の開発を進めている。ローバーは4輪の「ムーンレイカー」(約8kg)と小型で2輪の「テトリス」(約2kg)の2種類を開発しており、テトリスはムーンレイカーを母機として、「命綱」代わりのテザーを伸ばして急斜面などを下り、上空からの観測ではわかりにくい場所の走査も想定している。リーダーの袴田武史さんは「民生の部品を利用して、低コストで軽量化をはかっている。国や大企業のように金がかかる宇宙開発の考え方を変えたい」と自信を見せる。
 今月26日、ハクトはX Prize の「中間賞」も受賞。IHIなどのスポンサーも獲得し、着々と準備を進めている。また「月面を500m以上走って記録を取る」というX Prize の主旨に加え、追加のミッションも視野に入れている。2009年に月面探査機「かぐや」が発見した縦穴の探査を、テトリスの特性を生かして挑むことや、人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場した「ロンギヌスの槍」のミニチュアを月面に突き立てるという余興も企画。打ち上げを目指し、チームは資金集めやロケットの手配などに奔走している。ハクトのサイトはこちら。

 こうした動きについて、科学ジャーナリストの松浦晋也さんは「かつては国家・軍事主導だった宇宙開発に、民需が乗り出す流れは逆行することはないだろう。フロンティアは国家レベル、探査の進んだ地球近傍は民間という棲み分けができれば理想的。将来は民間の宇宙ステーションも誕生するかも」と話している。
(軌道エレベーター派 2015/2/1)

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遺灰を打ち上げる「宇宙葬」、日本でも申し込み受け付け

2014-12-05 20:54:03 | ニュース
遺灰を打ち上げる「宇宙葬」、日本でも申し込み受け付け

 亡くなったあの人が星になり、地球の周りを回っている--遺灰のカプセルを積んだ人工衛星を打ち上げる「宇宙葬」のサービスが日本でも募集を行い、話題を呼んでいる。スマートフォンのアプリで軌道を追跡でき、大気圏に再突入する時期や位置も把握可能だ。

 宇宙葬は、1997年に米国の企業が実施して以降、民間宇宙ロケットの打ち上げが盛んになるのに伴い、徐々に希望者を増やしている。このうち、米カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置くエリジウム・スペース社は、日本でも申し込みの受け付けを行っている。
 申込者の元には約1cm四方のアルミ製容器が送られ、遺灰を封入。これを大勢の申込者の容器と合わせて小型衛星に最大約400個収納し、ほかの宇宙計画の宇宙機など相乗りでロケットに積み込んで打ち上げ、高度数百kmで地球を周回する低軌道に乗せられる。
 1件1990ドル(12/5のUSDJPY終値換算でおよそ23万8000円)で、容器には3文字まで刻印ができる。打ち上げられた衛星は、スマートフォンやタブレットに無料のアプリをダウンロードすれば、常に位置が確認でき、肉眼では見えないものの、自宅の上空付近を通過する時刻にはアラームで知らせてくれる。衛星は数か月~1年ほどで大気圏に再突入して燃え尽きる。必ずしも自分の住む土地の上空になるとは限らないが、運が良ければ流れ星となって光る様子が見られる可能性も。

 同社は近く最初の打ち上げを目指しており、今年6月に都内で開かれた宇宙関連イベントに出席した同社CEOのトマ・シベ氏は「今、多くの起業家たちが次々に宇宙へ行く新しい方法を生み出しているが、我々は宇宙の美しさやロマンを生かしたい。天の川や流れ星など、星空の美しいイメージを持つ宇宙葬は、日本の葬送文化にも合っていると思う」と語った。焼却された遺灰は、税関の検疫を問題なく通過できることから、現在打ち上げを扱うのは遺灰のみだが、将来は遺品や思い出の品なども打ち上げるサービスも検討したいという。
 関連会社「スペースシフト」の金本成生さんは「きょう、おじいちゃんが夜空に上がってくるといった感じで、新しい故人のしのび方ができるようになる」と話し、日本でも事業を広く展開し、宇宙葬の文化を定着させていきたいとしている。エリジウムスペース社のホームページ(日本語版)はこちら。(軌道エレベーター派 2014/12/5)

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宇科連で軌道エレベーターに関する複数の講演

2014-11-16 12:16:34 | ニュース
 宇宙開発・観測などの分野で活躍する研究者が集まり講演を行う「宇宙科学技術連合講演会」が、12~14日の3日間、長崎市で開催された。
 58回目の今年は、ロケットや探査機の開発の現状、観測技術の新しいアプローチや最新の機器、宇宙政策など、10会場で多くの研究者、技術者らが多彩な研究成果を発表。最終日の14日には「宇宙エレベータ」の枠で4講演が行われた。
 このうち静岡大と大林組による「宇宙エレベーターにおける複数クライマー昇降に対するケーブルの応答」では、10万km弱に展開した軌道エレベーターで、複数のクライマーが昇降運動を行った際のケーブルの挙動解析を発表。研究チームは静止軌道を挟んで2基のクライマーを同速で運行するなど、数パターンでシミュレーションを実施した。この結果、地上とカウンターウェイトの両端から、静止軌道に同時に到着するように速度調整して運行した場合が特に安定したという。
 また同チームの別の発表者が、エレベーター建造の初期段階でのプライマリーケーブル(本格的建造の足場となる最初の1本のケーブル)の展開について講演。作業用のロケットが静止軌道からプライマリーケーブルを繰り出しながら、スパイラル軌道を経て上昇していくという、いわゆるエドワーズプランに沿った計画に対し、静止軌道から上下に同時展開した時のケーブルの挙動解析を紹介した。
 この試算ではケーブルにかかる応力が、軌道エレベーターに必要とされ、またカーボンナノチューブの引っ張り強度の一般的な予想値(もしくは期待値)である約60GPaを上回る、80GPa超の箇所が一時的に生じるといい、今後のさらなる研究や解決策の模索が待たれる。静止軌道からの上下同時のケーブル展開という選択は、軌道エレベーターの研究史において最も古典的な手法であり、研究者が世代交代し、視点も一巡して回帰したことを示していると言えるかも知れない。
 同日はこのほかに、神奈川工科大や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などのチームが、折りたたまれた導電性テープテザーを宇宙空間で展開するメカニズムについて、湘南工科大と大林組がクライマーの駆動について、それぞれ講演した。また初日に九州大と帝京大が対流圏でのケーブル挙動について発表を行っている。(軌道エレベーター派 2014/11/16)

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