「あの方」との対局

2012-03-18 08:35:00 | タナカ君的日常
 「あの方は顔の表情が暗いでしょ」、「僕も前にあの方と喧嘩したことあるんです」そんな風に公民館囲碁クラブで「会長さん」と称されるシオダさんが声を掛けて来た。 「あの方」そんな呼び方をするとハリー・ポッターの敵となる暗黒世界を支配する「あの方」について話している気分がしてきますねー。

 その「あの方」と初めて対局したのは5日前、最近顔をだした新人かと思っていましたが、予想に反して以前には公民館囲碁に頻繁に顔を出して居た人だったそうです。

 そんな「あの方」の棋力を僕は知らなかったので、会長さんに「どんな手合いで打てば良いですか?」と聞き、「あの方」の2子の置碁で対局が始まりました。 

 なんの世界にもマナーが有って、碁笥の中の石を持つのは考慮が済んで着手を決めてからなんてのもあるけれど、多くの人は守っちゃいない、僕も同じです。 碁笥の中の石をガチャガチャ言わせるし、指に摘んだ石を盤面上空に持って行って、なを再考慮して見たり。 そんな時に「上手(ウワテ)がそんな事するもんじゃない!!」と空中に漂わせていた手がすくむ様な叱責言葉を「あの方」は浴びせて来た。

 そしてしばらく時が過ぎ、「あの方」の手番になった時のこと、「あの方」はなかなか打たない。 最初は考慮中かと想い暫く黙って待っていたのですが... 「あの方」が上目遣いの睨めつける様な視線を僕の顔に飛ばして来ました、1度そして2度と。 「あれっ! 俺にまだ打たないのかと催促しているのか?」 そう感じたものだから「僕はここに置いて、今はそちらの手番ですよね・・・」と口にした瞬間「判ってるよ!!」と語調鋭い5文字言葉が返って来た。

 その日以降「ふん、お前なんかと遊んでもらわないよ」と心に決めて、「あの方」が対局相手を待って碁盤の前に一人座っているのなんか無視して、他のメンバーの対局を観戦する態度を取りました。 当然、対局相手を待つ「あの方」は観戦している僕に気付き、立ち上がって来て、小さなハッキリしない言葉で”対局しないか”と声を掛けて来ますけれど、 「この対局観戦してるから」と断りました。

 しかし何日も過ぎ、 空いている碁盤を前に独り座っている姿や、他の対局者の横に座って見ている事の多い「あの方」の姿が哀しく見えて来ちゃいました。 それで昨日は他の人との対局を終えてから、碁盤を前にして独り座っていた「あの方」に「1局お願い出来ますか?」と声を掛けました。 少し歪んではいるけれど笑顔だって作れる人じゃないですか・・・
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