温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

箱根湯本温泉 かっぱ天国(2014年6月再訪)

2014年10月12日 | 神奈川県

旅行先で利用を検討している施設を事前にネットで調べ、どのような口コミがなされているかを確認することは、今や当たり前の行動パターンとなっていますが、その口コミの評価が極端に二極化している場合は、好き嫌いがはっきり分かれる何かしらの要素があり、その部分を許容できるかどうかが、大きな不安材料になってしまいます。拙ブログで以前取り上げたことのある箱根湯本温泉「かっぱ天国」に関して、某外資系大手旅行口コミサイトでこちらの施設の評価を見てみますと、良し悪しが真っ二つに分かれており、旅行者によって評価が大きく異なることがわかります。私個人としては「施設としてはB級だが、お湯は良い」という印象を抱いているのですが、ネット上の評価を読んでいるうちに、自分の判断に自信が持てなくなってしまいました。そこで、先日箱根を散策した際、自宅最寄り駅(小田急線)に停車するロマンスカーの時刻まで余裕があったので、口コミの内容や自分の印象を再確認すべく、再訪してみることにしました。箱根湯本駅の裏山に位置し、改札前のペデストリアンデッキからその全容を見ることができます。


 
線路沿いの路地を進んで入口ゲートを目指します。前回記事でも申し上げましたが、場末のストリップ劇場のような、何とも言えない怪しげなサイン類を目にして、その場でスマホを取り出して検索し、表示されたネット上のよろしくない評判を確認して、その場で踵を返してしまった人も多いことでしょう。新設当時は蠱惑的だったのかもしれませんが、古びて色褪せた今となっては、ただ怪しさと哀愁を醸し出しているに過ぎません。お風呂へ浸かりに行くのに、何故か風俗店へ入るような不思議な心境にさせてくれるこのゲートを潜って、目の前の階段を上がります。


 

長い階段の途中には分岐があり、その先には足湯が設けられています。でもこの足湯って有料なんですね。多くの足湯は無料で利用できますので、そのつもりでここを利用し、料金表示に目を丸くした方もいらっしゃるような気がします。近年の箱根はアジア圏を中心にして海外からの旅行者も多く、海外の足湯も大抵は無料ですから、トラブルにならないか心配です。日本へ旅行されたことのある海外の方が「日本は何でもお金をとるよね」と嘆いていたことを思い出します。


 
施設そのものが白石地蔵の急傾斜地に建てられているため、長い階段を上がらなくてはいけない点が口コミにおける悪評につながっているようです。しかもその階段をやっとのことで登りつめ、帳場へ上がって入浴をお願いすると、受付のおばちゃんがえらく無愛想で、挨拶もせずに一言も言わず、黙って私の手から料金だけをサッと取ったのですから、私と同じ体験をした方はマイナス評価を書きたくなるでしょう。そういえば前回訪問時も同じだったなぁ…。もしかしたら、受付にいたのはおばちゃんではなく、人型の料金収受ロボットで、感情表現の部分がまだ未完成なのかもしれませんね。でも、この時に奥から現れた施設のおじさんは好々爺でニコニコを絶やさず、受付前の下足箱は100円有料なのですが、「お金を入れなくても良いですよ」と愛想良く教えてくれました。尤も、それならはじめっから無料に設定しておけば良いのですが、ま、これはおじさんの厚意として受け止めておきます。



帳場の先も階段は続きます。通路の奥には内湯もあるらしいのですが、真相はよくわかりません。宿泊もできるそうですから、宿泊客専用なのかもしれませんが、泊まったお客さんからのコメントに辛辣なものが多いので、私は宿泊せず、事の真相も闇に葬りたいと思います。



後述する露天風呂を含め、館内は全体的にくすんだアクリル波板で屋根掛けされており、経年劣化している上に、周囲の森から降ってくる落ち葉などが積もっているため、結構草臥れて見えます。鶯張りではなく、単に軋んでキーキー鳴っている板張りの廊下を歩いて脱衣室へ。室内はまるで海の家のような、仮設っぽい風情です。


 
草臥れているどころか、ペンキがベタベタ塗られたコインロッカー、壁のコンパネが剥き出しな洗面台等など、DIY感がものすごい。この日も施設のおじさんがご自身で工具を手に取り、脱衣室内を修理していました。業者に頼まず自分でやるから、B級感が強くなってしまうのですが、このB級感を「味」と捉えることができるか否かが、評価を分けてしまいそう…。でも室内は決して汚いわけではなく、清掃はきちんとなされていますし、床面積もそれなりに確保されているので、混雑時にも他のお客さんとの干渉を気にすること無く着替えることができるかと思います。


 
田舎歌舞伎の舞台のような一段高い空間を経て入浴スペースへ。その舞台のようなスペースの右側には、かつて小露天風呂があったのですが、前回訪問時と同様、アクリル波板でカバーされており、使用不可能のままで、槽内はすっかり落ち葉に埋もれていました。


 
露天風呂はこんな感じ。逆アングルからも撮ってみました。画像を見る限りではなかなか良い趣きですよね。画像のみならず、実際も決して悪い雰囲気じゃありません。でも、いかにも観光地らしい高い料金設定でありながら、入れるのはこのお風呂一つしかないので、他の温泉地を知っていると、コストパフォーマンスの悪さに首を傾げてしまうかもしれませんね。


 
洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基並んでいます。カランから吐出されるお湯は、やたらに熱い上に芒硝っぽさが感じられたので、おそらく源泉が引かれているものと思われます。


 
農機具小屋を想像させる安っぽい屋根が視界を狭めており、せっかくの高台という立地が全く活きておらず、露天風呂といっても開放感や眺望はあまり期待できません。でも、屋根の隙間から、辛うじて奥湯本方面の稜線が覗けました。この僅かな景色が唯一の眺望です。


 
岩の上で直立不動の赤いかっぱがマヌケ面を晒しながら佇んでいる岩風呂は、おおよそ10人サイズで、浴槽内は青色を呈する鉄平石敷きです。洗い場側の塩ビ(湯面下)より排湯されている他、岩の縁の隙間からもお湯が溢れ出ていました。


 
槽内の湯面近くに金属製の吐出口が2個設けられている他、底面に塩ビ管が1本埋め込まれており、これら計3本からお湯が投入されています。金属製吐出口のお湯は適温なのですが、塩ビの方はかなり熱く、私の体感で50℃以上はありました。こちらの施設では2つの源泉を混合しているそうですが、投入時点で既に混合されているのか、あるいは温度が異なる源泉別の2本の湯口があるのか、その辺りの事情はよくわかりません。館内表示によれば、加水加温循環消毒の無い掛け流しの湯使いなんだそうですから、この記載を信じるならば、湯本の源泉はぬるいお湯も多いので、後者であるかも考えられますね(私の推測はあてになりませんので、見当違いな可能性は大です)。

お湯は無色透明で、弱いながらも明瞭な芒硝味、および石膏の味と匂い、そして微かにミシン油系の香りが感じられます。白眉なのはオイリーと表現しても過言ではないほどの、ニュルっとした滑らかな肌さわりであり、トロミがあるお湯に浸かると、何度も肌をさすりたくなるほどニュル&スベスベが気持ちよく、B級感溢れる施設のことなんて、全て許したくなってしまいました。もちろん硫酸塩泉的なキシキシ感も拮抗していますが、滑らかな浴感に比べれば劣勢です。湯上がり後もスベスベ感は続き、モチモチ感も出て、体の芯までしっかり保温効果が持続しました。湯本のお湯の良いところがはっきりと表れている良泉です。

私は宿泊利用したことがありませんから、客室等については何とも申し上げられませんが、お湯のクオリティが良ければ、他のことには目を瞑れるよ、という方でしたら、少なくとも日帰り入浴でしたら十分に楽しめるのではないでしょうか。はじめからB級感を楽しんで(あるいは見逃して)、お湯に専念することを念頭に置いて利用できる方におすすめです。逆に、サービスやホスピタリティを求めるのでしたら、近所の「箱根湯寮」を推奨します。


白石地蔵の湯(湯本第83・98号混合)
ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 54.7℃ pH8.64 成分総計1.010g/kg
Na+:317mg, Ca++:23.0mg,
Cl-:309mg, SO4--:248mg, HCO3-:38.0mg,
H2SiO3:45.5mg,
加水加温循環消毒なし

箱根登山鉄道・箱根湯本駅より徒歩2~3分
神奈川県足柄下郡箱根湯本777
0460-85-6121
ホームページ

10:00~22:00
800円
ロッカー(有料100円)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント
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