温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

中山平温泉 あすか旅館

2014年10月18日 | 宮城県
 
中山平温泉には国道47号から陸羽東線の線路に向かうように南側へぐるっと迂回する細い道があり、温泉地内の各旅館を大まかに分けると、国道沿いかこの細い道沿いのいずれかに分布しています。今回は細い道から更に坂を下った窪地にある「あすか旅館」にて日帰り入浴してまいりました。周囲は青々とした田んぼが水を湛えており、それを囲むように針葉樹林が広がっていました。実に長閑な田園風景です。
この「あすか旅館」のお湯は持ち帰ることができ、しかもそのお湯が結構な人気らしく、私の訪問時にはお湯を汲むために駐車場待ちの車列ができていました。


 
玄関の左側では木彫の大黒天が、右側ではクマの剥製が、来客を出迎えてくれます。
鳴子温泉郷の湯めぐり手形(シール)で入浴すべく、帳場にいた女将さんにその旨を申し出ますと「シールだと損しちゃうからイヤなのよね」と本音とも冗談とも聞き取れることを仰り、私としてはただニタニタと愛想笑いをする他なかったのですが、たしかに現金ならば600円であるところ、シールだと2枚(1枚200円相当なので、2枚で400円)で設定されていますから、私のようなシール利用客が増えちゃうと、ちょっとソロバンが狂ってくるのかもしれません。近いうちにシールの枚数設定が変更されることも考えられます。


 
まるで血管のように、配湯用の鉄管が館内に張り巡らされていました。その配管を脇に見ながら通路を進んで浴室へと向かいます。浴室入口のドアには、レジオネラ菌の検査済みステッカーが何枚も貼られていて、それを目にした時には思わず笑ってしまいました。この手のシール類って性格により、発行される度に一回一回剥がして貼り直す人と、以前のもの残しつつ他のスペースに新たなシールを貼っていく人に分かれますよね。玄関などに貼る犬の注射済票も、同じようなパターンが見られます。



先ほど女将さんがシールに関して渋いことを口にしていたと申し上げましたが、掲示されてまだ間もないと思しき館内の張り紙には「サービスの温泉水はなくなりました(以下省略)」と書かれているように、最近になって入浴やお湯の持ち帰りに関する料金設定が以前よりもシビアになったことが窺え、そのためにシールに関して上述のようなことを仰られたものと思われます。以前は入浴すればお湯の持ち帰りが可能だったのでしょうか。


 

湯治宿のようにシンプルで簡素な脱衣室を抜けて浴室へ。かなり年季の入った渋い佇まいの室内には、真ん中に太い円柱がドンと立っており、その左右に大小の浴槽が1つずつ据えられています。そして一番奥にはかつて打たせ湯があったと想像されるスペースがありました(現在は使用停止?)。


 

カランは2箇所、それぞれ別箇に設けられており、中央の円柱付近には水とお湯の蛇口のペアが1組、後述する小浴槽の右側にシャワー付き混合水栓が1基といった取り合わせです。カランのお湯は源泉らしく、お湯だけを出すと火傷しそうになるほど激熱ですから、使用の際には要注意です。


 
駐車場側のガラス窓に面して据えられているのが総木造の主浴槽。縁も底の板も、全て鋲で固定されており、その金属の小さな光沢がちょっとした模様になっています。目算で2.5m×3.5m、おおよそ7~8人サイズといったところでしょうか。縁よりしっかりとお湯が溢れ出ています。


 
 
源泉から引かれているバルブの傍には「お湯は止めない」と書かれた小さな札が立てかけられていました。このバルブや配管は全体的に白っぽく、特にバルブや吐出口の周りには析出が付着しています。この湯口から投入されるお湯はカランと同様に激熱で、出し過ぎると湯船に入れなくなってしまいますが、止めるとお湯が鈍ってしまうので、一定量に絞ってお湯を出し続けておくわけですね。なお私の温度計で湯口を計測すると、68.5℃でした。


 

この主浴槽で目を引くのが、普通は屋外の池に用いる照明器具付きの循環用ポンプです。なんでこんなところに設置されているのか不思議ですが、投入されるお湯が熱いとなれば、注がれているうちに湯船の上ばかりがアツアツになってしまいますから、この機器で常に掻き混ぜる(循環させる)ことによって温度の均衡を図っているのでしょう。なお備え付けの温度計によれば、湯船の温度は42℃と表示されていましたが、実際にはもっと高かったように思います。


 
もうひとつの浴槽である小浴槽は、古いコンクリ造で1~2人サイズ。かなり劣化が進んでおり、表面がゴツゴツしているのですが、循環ポンプのような設備は無く、お湯の蛇口から源泉のお湯がダイレクトに注がれてジャンジャン溢れでているため、お湯の鮮度感は良好です。しかも浴槽縁にもたれかかると、縁の曲線がうまい具合に体にフィットしてくれるので、小さいながらも落ち着いて湯浴みすることができました。私個人としてはこの小浴槽の方が好きです。

お湯は無色透明でほぼ無味無臭ですが、シリカの存在を思わせるようなやや鉱物(砂)っぽい風味がありました。同じ中山平温泉でも「しんとろの湯」のようなニュルニュル&トロトロのウナギ湯ではなく、スルスルスベスベのサッパリとした浴感であり、湯中で肌を擦るとハッキリと滑らかな感触が得られました。癖がなくアッサリとした優しいお湯です。それでいて、湯上がりには体の芯までしっかり温まる、爽快感も持続するのですから、温泉のパワーってすごいですね。

なお屋外には混浴の露天風呂があるらしいのですが、訪問時はその存在をすっかり忘れて、利用せずに退館してしまいました。露天風呂に関心がおありの方は、お手数ですがご自身でググってみてください。


アルカリ性単純温泉 78.4℃ pH8.5 蒸発残留物213.5mg/kg 溶存物質274.9mg/kg  
Na+:41.2mg(96.76mval%),
Cl-:4.7mg(7.14mval%), HS-:0.4mg, SO4--:11.5mg(13.19mval%), HCO3-:48.0mg(43.41mval%), CO3--:17.5mg(31.87mval%),
H2SiO3:146.3mg,
加温消毒なし
加水あり(湯張りの場合のみ)
循環あり(浴槽の温度管理のため。掛け流しを併用)

JR陸羽東線・中山平温泉駅から徒歩15分(1.2km)
宮城県大崎市鳴子温泉字星沼68-1  地図
0229-87-2131

日帰り入浴10:00~16:00
600円(もしくは湯めぐりシール2枚)
石鹸のみ備え付けあり、他備品類なし

私の好み:★★
コメント
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