温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

強羅 箱根町老人福祉センター やまなみ荘

2014年10月10日 | 神奈川県
 
全国の温泉を巡っていると、温泉浴場を設置している老人福祉施設が意外と多いことに気付きます。温泉入浴は健康増進に役立つのですから、温泉を引ける環境にあるならば、保健施策の一貫として主たる利用者である老人に温泉を提供しようと発想するのは、自然なことなのかもしれません。しかも公営施設の場合は外来入浴が可能なケースがあり、温泉ファンを満足させる湯使いを実践している施設も多いので、どこか地方で温泉めぐりをする際、私は共同浴場や旅館等の他、福祉施設もチェックするようになりました。

関東屈指の観光地・箱根を擁する神奈川県にもそのような例の施設がありますので、先日箱根をぶらぶらした際に立ち寄ってみました。今回の目的地である「箱根町老人福祉センター やまなみ荘」がある場所はなんと強羅駅の真裏であり、ケーブルカーの駅下を潜る地下通路を通れば徒歩1分未満で行けちゃいそうな素晴らしい立地ですが、観光客で賑わう駅前の喧騒が嘘であるかのように、駅裏はひっそりと静まり返っており、この建物自体もいかにも公共施設らしく、まるで病院のような無機質な外観です。



表には外来入浴できるような看板や幟の類は一切ありませんが、玄関を入った正面にある窓口には、ちゃんと外来入浴に関する案内が掲示されており、実際に私が入浴をお願いしますと、受付のおじさんは快く対応してくださいました。なお町営施設ですので、箱根町に住民登録している人とそれ以外(町外)の人では料金が異なりますから、窓口では町外から来たことを申告します。
館内は昭和の面影が強く残る地味で実用的な雰囲気。あくまで地元老人のための施設ですから、行楽的要素はあまり見当たりません。



お風呂は男女別の内湯のみで、浴室入口には一応暖簾がかかっているものの、それが無ければ診療所内のようです。そればかりか、箱根町公式サイト内にあるこの施設の紹介ページを見ても、コメントとして「老人福祉の増進を図るため、各種サービスを総合的に提供しています。」という一文が記載されているだけで、対外的なアピールにおいても潔いというか、素っ気ないんです。でも、素っ気ないのは施設面だけであり、窓口のおじさんは親切に、町外者の私をわざわざ浴室の入口前まで案内してくださいました。

浴室内は撮影禁止なので、ここからは文章のみで説明させていただきます。
脱衣室には棚や洗面台など基本的な物の他、コインロッカーや扇風機なども備え付けられており、小上がりも設置されているので、お風呂から上がった後、ちょっと休憩したい時に役立ちます。古い造りですがよく手入れされており、室内面積も十分に確保されているので、ストレスなく利用できました。

浴室は2方向がガラス窓なのですが、正面に当たる北側にはお隣の旅館が接近しているため、建物の壁しか目に入ってきません。でも宮城野方面(東側)の谷側は明かりを遮るものが無いので、そこから外光が室内に降り注いで、日中でしたら照明要らずで十分な照度が確保できていました。ただ、2方向とも曇りガラスとなっているため、明るいとは言え、入浴しながらの景観眺望は全く期待できません。

室内には落ち着きを醸し出す黒色タイルが多用されていますが、経年変化のため退色しかかっており、どことなく草臥れた感じが伝わってきました。洗い場にはシャワー付き混合水栓が3基並んでいて、それぞれには手摺が取り付けられおり、水栓同士の間隔が広く確保されています。老人施設ですから、体が不自由な方でも他のお客さんと干渉することなく利用できるよう、配慮されているわけですね。

四角い浴槽は7~8人サイズで、一見すると特にこれと言った特徴は無いのですが、転倒せずに湯船入れるよう、手摺が付いた階段状のステップが槽内に設けられていたり、また浴槽周りにも手摺が完備されていたりと、洗い場同様に老人向けの配慮がなされています。

お湯は浴槽右奥のホースから投入されており、底から立ち上がっているオーバーフロー管より排湯されています。なお、浴槽縁には溢湯を受けるための溝が設けられているのですが、こちらは現在使われておらず、オーバーフローのみで排湯しているようです。でもこのオーバーフロー管は、湯口のお湯が落とされるすぐ傍に立てられているんです。湯口のそばに排湯口を設けちゃうと、新鮮なお湯がすぐ捨てられちゃって、浴槽内のお湯の巡りがよろしくないのではないかと、余計な心配をしたくなりました。実際のところはどうなんでしょう…。

浴槽内には白い粉状の湯の華が大量に沈殿しており、底面全てを覆い尽くしています。そして私が湯船に入ると、湯の華が忽ちボワッと舞い上がり、お湯を白く濁らせました。湯の華が撹拌される前のお湯はほぼ無色透明ですが、舞い上がらずとも微細な湯の華が湯中に存在しているため、微かに白く懸濁しているように見えます。館内表示によれば加水加温循環消毒の無い完全掛け流しとのこと。冒頭で申し上げましたように、老人福祉施設のお湯は得てして湯使いが良いのですが、観光地箱根でもその例に漏れないようです。お湯からは鼻孔を刺激するイオウ臭、そして口腔を収斂させるレモン汁的な酸っぱさが感じられました。酸っぱいとはいえ、草津や蔵王のような強烈な刺激ではなく、口に含んで数秒後に酸味で口の中が収斂し、やがて歯の表面もザラザラするような感じになります。大雑把に申し上げれば、優しい酸味であります。

こちらで引いているお湯は、拙ブログでも取り上げたことのある早雲山駅近くのお宿「五彩館」で使っているお湯と全く同じ、大涌谷の蒸気造成泉であり、懸濁の具合や湯の華の多さ、匂いや酸味など、ほぼ共通しているのですが、「やまなみ荘」の方が引湯距離が長い分、お湯が若干こなれており、知覚や肌への当たりがややマイルドになっているように思われます。

湯船に浸かって湯の華まみれになっていたら、マイルドなお湯とはいえ全身にしっかりイオウの匂いがこびりつき、湯上がり後もしばらくは体からイオウ臭が放たれ続けました。造成泉ですが、完全掛け流しですから、イオウのパワーが実感できるんですね。


大涌谷温泉 蒸気造成混合泉3号線(強羅方面)
酸性-カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 59.2℃ pH2.2 成分総計1.226g/kg
H+:6.36mg, Na+:39.0mg, Mg++:37.3mg, Ca++:114mg, Fe++:9.50mg, Al+++:14.5mg,
Cl-:216mg, HSO4-:114mg, SO4--:540mg,
H2SiO3:123mg, H2S:0.03mg, H2SO4:1.96mg,
(平成21年8月14日分析)
加水加温循環消毒なし

箱根登山鉄道・強羅駅より徒歩1~2分
神奈川県足柄下郡箱根町強羅1320-185  地図
0460-82-1211
箱根町公式サイト内の紹介ページ

町外入浴者9:00~15:00 水曜および祝日定休
650円
ロッカー(有料100円)・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
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