温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯坪温泉 ふだんぎの湯

2014年10月06日 | 大分県
 
湯坪温泉を散策中、民家の軒先に掲示されている「露天ぶろ」という看板に惹かれて、「ふだんぎの湯」という施設へ立ち寄ってみました。場所は前回取り上げた共同浴場「河原湯温泉」の傍に架かる橋を渡ってすぐのところです。某公共放送の番組を思い起こすようなネーミングからは、素朴で質素なお風呂を想像しますが、外観はごく普通の農家そのものでして、お客さんを招き入れる看板が立っているとはいえ、ふらっと立ち寄って良いものか、ちょっと戸惑ってしまいました。


 
普段着という言葉の通り、敷地内は全く着飾っておらず、本当に見ず知らずの農家へお邪魔してしまったかのようです。納屋の軒先では腰の曲がったお婆ちゃんが何やら作業をしており、このおばあちゃんに入浴できるか伺ってみたところ、とびっきりの笑顔でどうぞどうぞと迎え入れてくださいました。おばあちゃんの後ろでは、子供用の腰掛けにちょこんと座ったぬいぐるみが、その様子を見守っていました。


 
おばあちゃんが指差す方へ向かうと、トタンの倉庫の奥に隠れるようにして、露天風呂の小屋が建っていました。おばあちゃん曰く、お風呂は熱いけど水を入れたらすぐ良くなりますよ、とのこと。
なお小屋には黄色い料金入れが括り付けられており、無人時にはここへ湯銭を入れれば良いみたいです。


 
こちらの施設には一つの露天風呂しかないらしく、私のような一人客が利用しても貸切となってしまいます。脱衣小屋には屋根や壁があるものの、露天風呂に向かってドアが無い開放的な造りとなっているため、殆ど吹きさらしのような感じです。室内には訪問客が一言コメントを残してゆくノートがぶら下がっていました。


 
露天風呂は岩風呂風のコンクリ造で、すぐ目の前を川が流れているのですが、何も無いと周囲から丸見えになってしまうため、川に面して目隠しが立てられており、右側には納屋の壁が屹立しているため、中庭のような閉塞感は否めませんが、目隠し越しに周辺の田園風景や山林の美しい緑を眺めることができますので、周りを囲まれている環境にもかかわらず、意外と開放感が得られるかもしれません。特に私は今回独りで利用しましたから尚更です。



露天での入浴を楽しむことを目的にして作られたのか、浴場内にカランは設けられていないのですが、その代わりシャンプー類はちゃんと用意されていました。


 
湯船の一番奥で塩ビ配管が槽内へ潜っており、その口からボコボコと音を上げながらお湯が吐出されていました。槽内へ潜る塩ビ管には2本あるのですが、両者に違いあるのでしょうか。と申しますのも、施設内には2種類の温泉分析表が掲示されているのですが、いずれも平成21年分析のものであり、どちらが正しいのか、あるいは両方共引いているのか、そのあたりの違いが判然としないのです。2本あるのですから、2種類の源泉を同時利用しているってことなのでしょうか。あるいは、2種類の源泉のうちどちらか一つだけを引いているのでしょうか。

なお、先ほどおばあちゃんは、熱ければ水を入れたら良いと教えてくださいましたが、私がお風呂へ入ろうとするタイミングで、既に水道の蛇口は開かれて加水されており、そのおかげか、特に何もせずとも、抜群の湯加減となっていました。湯船を満たしたお湯は、中央で潜望鏡のように突き出ているオーバーフロー管より排湯されています。


 
湯船の内部は薄っすら緑色を帯びているように見えます。中央には岩が島のように頭を覗かせており、入浴中はここにもたれかかったり、あるいは上に腰掛けで一休みしたりと、いろんな用途に使えます。浴槽は川に向かって右側が浅く、左側が一般的な深さとなっているのですが、これは子供と大人が一緒に入浴できるようにという配慮なんだそうです。
お湯は無色透明で、軟式テニスボールのようなゴム的知覚(味と匂い)を有し、ほんのりとした甘みを伴っています。癖の無い穏やかで優しい浴感です。甘みを除けば、わかりやすい典型的な造成泉(水に蒸気を当てて造った温泉)の特徴と言えるでしょう。

私が入浴している最中も、おばあちゃんは作業の手をとめて「湯加減はいかがですか、熱くないですか」と気をかけてくださいました。そして湯上がりにはお湯の良さを誇っていらっしゃいました。身も心もあたたまる、長閑な田舎ならではのノンビリとしたお風呂でした。露天風呂を独りで貸し切れるのですから、ありがたいものですね。


※施設内には2種類の温泉分析表が掲示されていましたので、その両方を転記(一部省略)致します。

湯坪引湯組合(九重町大字湯坪字横尾411)
単純温泉 76.8℃ pH6.7 湧出量測定せず 溶存物質0.138g/kg 成分総計0.164g/kg
Na+:5.7mg(31.16mval%), Mg++:1.7mg(17.81mval%), Ca++:6.1mg(38.35mval%),
Cl-:3.0mg(8.28mval%), SO4--:15.8mg(32.19mval%), HCO3-:37mg(59.35mval%),
H2SiO3:66mg, CO2:26mg,
(平成21年11月4日)

湯坪温泉(九重町大字湯坪415)
単純温泉 91.0℃ pH7.0 湧出量測定せず(掘削100m自噴) 溶存物質0.165g/kg 成分総計0.194g/kg
Na+:12.8mg(44.09mval%), Mg++:0.9mg(5.51mval%), Ca++:9.0mg(35.43mval%),
Cl-:2.7mg(6.84mval%), HS-:0.2mg, S2O3--:0.1mg, SO4--:17.8mg(31.62mval%), HCO3-:42.8mg(59.83mval%),
H2SiO3:73.1mg, CO2:28.6mg, H2S:0.2mg,
(平成21年11月11日)

久大本線・豊後森駅および豊後中村駅より日田バスの牧の戸峠もしくは九重登山口行で「河原湯」バス停下車徒歩1~2分(大将軍経由のバスは「河原湯」を通らないので注意)
大分県玖珠郡九重町大字湯坪890  地図

営業時間不明
400円
シャンプー類あり

私の好み:★★+0.5
コメント
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