温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

由良温泉 由良温泉センター お釈迦さまの湯

2014年10月24日 | 山形県

民家が蝟集する漁村集落の中に、小規模の民宿がモザイク模様に点在している山形県庄内地方の由良温泉。
砂浜の堤防沿いに建っているピンク色の平屋の建物が、今回訪れる当地の公衆浴場「由良温泉センター お釈迦さまの湯」であります。ピンク色だからと言っても、別に林家ペー関連施設ではありません(なんじゃそりゃ)。


 
目の前に白い砂浜と青い海が広がる、まるで海の家のような立地は、関東人の私には静岡県伊豆半島土肥温泉の「屋形温泉共同浴場」を連想させます。外壁には「海水パンツのままでの入浴禁止します」と、当地のロケーションを象徴するような張り紙が掲示されていました。


 
海(路地)に面してサッシが開かれており、一見するとどこが入口なんだかわかりませんが、温泉マークが下っている右側が入口で、左側はオープンな感じの休憩用座敷が設けられています。入口の奥には番台代わりの小さな机があり、そこに座っているアイロンパーマのおじさんに湯銭を支払いました。この番台の手前にはロッカーが用意されています。


 
最近、庄内地方の温泉浴場を巡るとしばしば目にするのが、入浴中の事故防止を啓発するこれら「庄内41℃ふろジェクト(よいふろじぇくと)」のポスターです。なんと庄内地域での入浴事故死は、交通事故死の7倍に及ぶんだそうですよ。入浴事故死の多くは高齢者が熱い風呂に入ることによって起きる心肺停止・脳血管障害・失神・溺死などですから、2枚のポスターではいずれも、高齢者の入浴事故を未然に防ぐべく、デザインこそ異なるものの、脱衣室を暖房で暖めつつ、湯加減はぬるめにし、肩まで浸からず半身浴にしておきましょう、といった内容が訴えかけられていました。
庄内に限らず、東京都健康長寿医療センターによれば「不慮の事故による死亡は(死因の)第5位に位置する。不慮の事故というと交通事故などが多いように思われるが、実際にはその大半が交通事故以外によるものであり、その中でも家庭内での溺水・溺死の増加がめだっている。溺水・溺死は事故に分類されるが、入浴中に起こった心・脳疾患の発作による死亡は病死とされ、これらを含む入浴中の急死は相当数に上るであろうと指摘されてきた」とのこと。毎日の入浴が欠かせない日本の生活文化は、実は死と隣り合わせであったわけです。
参考: 「高齢者の入浴事故はどうして起こるのか?―特徴と対策―」(東京都健康長寿医療センター公式サイト内)


 
脱衣室にはその日の湯船の温度が記録されており、そこには42℃と記されていました。こちらで使っている源泉の湧出温度は58℃ですから、そのままですと熱すぎてしまい、ぬるま湯の入浴を推奨する庄内地方の方針にも背きますから、42℃まで加水しているのでしょう。なお当浴室においてトドは禁止とのこと。


 
お風呂は男女別の内湯があるのみ。白いタイル貼りの浴室は実用本位で温泉風情はありませんが、海に面して窓が開けられており、白く輝く壁のタイルと窓から降り注ぐ陽光によって、室内は明るい環境が保たれています。浴槽は大凡5人サイズで、縁は赤御影石、槽内は水色タイル貼りです。縁からはお湯が常時溢れ出ていました。


 
浴室の手前側に洗い場があり、左右にシャワー付き混合水栓が2基ずつ(計4基)取り付けられています。カランから吐出されるお湯は真湯です。なおシャワーの一部は最近更新されたのか、ピカピカに輝く新品でした。
この洗い場には石鹸とシャンプーが備え付けられているのですが、シャンプーのボトルにはマジックで「アタマ シャンプー」と手書きされているのがちょっとユニーク。



窓からは格子越しに青い海が臨めました。


 
こちらのお風呂を取り上げる温泉ファンの方が必ずと言って良いほど注目するのがこの湯口。隅っこに据えられた岩からホースが槽内底部へ伸び、先端には濾し取り網の袋が接続されていて、吐出されるお湯によって膨らんでいる袋からお湯が投入されているのですが、袋にはハート模様がプリントされており、お風呂で汗を流す武骨な男たちと、漁師イコール荒々しい男達というイメージとは全く逆ベクトルを示すその模様の両方を同時に目にして、そのギャップに思わず吹き出してしまいました。

お湯は無色透明でほぼ無味無臭ですが、少々の芒硝感があったように記憶しています。とにかく味も匂いも弱めです。脱衣室のボードに記入されていた通り、この時の湯船は(私の体感で)42℃前後だったのですが、お湯の知覚が弱めだったのは、温度調整のために実施されている加水の影響もあるのかもしれません。入浴中の肌には、弱いサラスベと硫酸塩泉らしい引っかかりが混在した浴感が伝わってきました。

ちなみに、私が訪れた夕方5時半過ぎには、男湯には先客が4人ほどいらっしゃり、私が湯船に浸かっている間に皆さん次々に退室され、最終的には私一人だけとなりましたが、女湯はその間、全く入浴客がいなかったようで、女湯の入口扉はずっと開けっ放しで、照明も不点灯のままでした。あくまで私の想像ですが、当地には伝統的な生活様式を営む家庭が多いのかも知れず、それならば夕食時の家事を始める前か済んだ後に入る以外、奥様方が湯浴みできる時間はありません。地方の共同浴場は、えてしてこのように、男女で混雑時間帯のピークが異なるケースが見られます。

私より早く出た地元の常連さん達は、湯上がりに番台横のお座敷で車座になって談笑なさっていました。地元の方々の憩いの場なんですね。


香頭源泉
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉 58.0℃ pH8.1 蒸発残留物2016mg/kg
Na+:397.8mg, Ca++:219.7mg,
Cl-:141.6mg, Br-:0.5mg, I-:0.3mg, SO4--:1097mg, HCO3-:25.9mg,
H2SiO3:42.7mg,
加水あり(源泉温度が高いため)
加温循環消毒なし

山形県鶴岡市由良2-21-1  地図
0235-73-2915

15:00~20:00(7~9月は13:00~20:00) 火曜定休
300円
ロッカー・石鹸&シャンプーあり、ドライヤーなし

私の好み:★★
コメント
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