温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

知本温泉 雲山湯屋 (台湾東部)

2012年04月23日 | 台湾
 
知本温泉を訪れた日は、内温泉地区の施設を時間の許す限り手当たり次第にハシゴしてやろうと意気込んでいまして、「開天宮」で日本語世代のお爺さんと別れた後は、入口に掲げられた「本店採用原湯」という看板に惹かれて「雲山湯屋」に立ち寄って入浴してみることにしました。こちらは元々キャンプ場だったそうですが、5~6年前にロッジ群を主体とした温泉宿泊施設として生まれ変わって現在に至っているんだとか。



建物の後背にはメインストリートである滝泉路が通っているのですが、山の鬱蒼とした緑に覆われているので、画像を見る限りでは道路が殆ど写っていませんね。平屋の建物の前には砂利敷きの広い駐車場が広がっています。でも車は一台も停まっていません。オフシーズンの平日だからかフロントは閉ざされており、「あれれ、休業しているのかな」とドアが閉まったフロント前でキョロキョロしていたら、ログハウスの方からキャップを被ったプユマ族のチャーミングな女性が駆け寄ってきて、ニコニコ笑顔で対応してくれました。入浴料350元という幾分高めな料金に軽くたじろいだのですが、女性の満面の笑みに押し切られて、気づけば私はOKという言葉を連発。相変わらず気の弱い私…。


 
道路の上から敷地内を見たとき、露天SPAらしき施設が全く使われておらずに放置されていたので、どこで入浴できるのかと疑問に思っていたら、受付棟の並びに位置する家族風呂(個室風呂)へと案内されました。落ち着いた雰囲気が漂う小洒落た建屋です。


 
今回あてがわれた個室内の様子。台湾の個室風呂は狭くビショビショな洗い場で着替えをしなきゃいけない場合が多いのですが、こちらは休憩&更衣スペースの奥に浴室があり、両者がセパレートされているので、更衣時の不快感や不便さを感じることは無く、この点は大いに評価したいところです。休憩スペースには大きな鏡の他、ドライヤーや2人掛けの腰掛が用意されています。また2人分のミネラルウォーターや使い捨てのタオル(不織布)が無料で利用できるのも有難いところです。


 
浴槽は余裕のある2人サイズの岩風呂テイストな造りで、右側には打たせ湯が設けられています。また、洗い場にはシャワー付き混合栓が1基設置され、ボディーソープとシャンプーが備え付けられています。


 
浴槽内をシャワーでゴシゴシ洗ってお湯を溜めます。浴槽縁にあるコックを捻ると、それぞれの吐水口からお湯や水が勢いよく出てきました。吐水口は二つあり、浴槽の側面からシャワーのように真横へ噴出するのが冷水、浴槽の縁に取り付けられた金属配管から出てくるのが源泉です。湯口でお湯の温度を計測してみたら、なんと61.5℃もありました。しかも硫黄由来のタマゴ的な匂いもはっきり漂ってきます。なるほど「本店採用原湯」という文言に偽りはないようです。このように源泉そのままだと熱すぎるので、いくらか水で薄めました。


 
吐湯量が多いので、数分でいい感じの嵩まで溜まりました。さて準備完了、いざ入浴。湯船は2人でも余裕のあるサイズなので、一人で利用するとかなり悠々と入れました。お湯は無色透明ながらごくごく僅かに白濁しているようにも見えます。上述のようにタマゴ臭がはっきりと漂い、口に含むとタマゴ味がほんのりと舌に伝わってきます。「開天宮」のお湯には及ばないものの、ヌルヌルを伴うツルスベ感が気持ち良く、かなり上質なお湯でした。
石材の落ち着いた雰囲気と木材の温かさをうまくミックスさせている室内空間の中で、ツルツルスベスベの心地よいお湯を堪能でき、ゆったりと寛ぐことができました。尤も、350元も支払っているのだから、リラックスさせてくれないと割に合いませんけどね。なお、天井には蓮の花みたいなシャワーが取り付けられていましたが、水栓を見つけられなかったので、今回は使用していません。



個室風呂の反対側には宿泊ロッジが並んでいます。ロッジには単に寝泊りする棟の他、露天風呂などが付帯している棟もあるんだそうです。

若干高い料金設定ですが、綺麗で雰囲気の良い個室風呂全裸入浴ができ、しかもお湯の質はなかなか良好。大規模なSPAは水着を着なきゃいけないから遠慮したいけど、小規模なB級施設もちょっと…という方にはバランスが丁度良い施設だと思います。内温泉で全裸入浴したい方には第一選択の候補に挙げてもよいかもしれません。


鼎東客運(山線)・知本温泉(内温泉)行バスで「内温泉」または「泓泉飯店」バス停下車、徒歩3~4分
台東県卑南郷温泉村龍泉路146巷1  地図
(089)510769
ホームページ

350元
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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知本温泉 開天宮 (台湾東部)

2012年04月22日 | 台湾
※残念ながら「開天宮」は解体されて、その跡地は更地になっていました(2017年3月に現地で確認)。

 
内温泉へ向かうバスに乗って窓の外の景色をキョロキョロと眺めていたとき、道端で気になる看板を目にしたので、「龍泉山荘」を出た後に龍泉路を下って、その看板があるところへ向かってみました。位置としては泓泉飯店の入口付近です。


 
気になる看板とはこれ。「開天宮」というお寺の黄色い看板に赤字で「泡澡」と記されているのです。お寺で入浴できるってことか? 四重渓温泉の「玉泉寺」でも入浴できたから、きっと似たようなものなのだろうと推測し、訪ってみることにしました。



龍泉路から急坂の路地に入り、途中地味な民宿を左手に見ながら坂を登りきるとお寺に到着です。道路の看板が無ければ絶対に見逃していた、とても小さな寺廟ですね。こんなところに温泉なんかあるのかな。私の姿を確認した番犬が吠えたててきます。及び腰だと益々威嚇してきますから、内心はビクビクしながらも毅然とした態度で境内へと入っていきました。


 
紅色を基調にしたいかにも中華風な雰囲気ですが、よく見ればとても質素な造りです。
香炉の手前ではランニングシャツに短パン姿のお爺さんが、胡坐をかきながら足の裏に薬を塗っている最中。私の気配に気づいているのかいないのか、あるいは塗薬に一心不乱なのか、こちらを振り向こうとしません。おそるおそる声をかけてみました・・・
私「你好。可以不可以泡湯?」
爺「可以」
私「多少銭?」
爺「一百塊」
私「在哪裡?」
爺「左邊」
この問答の間、お爺さんは薬を塗る手を止めることなく俯きながら頷き、不機嫌そうに呟いて、本堂の左側を指さすだけでした。バックヤードみたいなスペースにお風呂があるみたいです。あんまりウェルカムじゃなさそうだけど、好奇心が頻りに私の背中を押すので、奥へ進んでみることに。


 
まさに倉庫。いろんなものが雑然と置かれています。画像ではちゃんと整理されているように写っていますが、実際にはかなりゴチャゴチャしており、枯葉やごみも散乱しています。荷物を置こうとした台の上ではトカゲがひっくり返った状態で干からびていました。地面に放られている青い実はグァバでしょうね。
この奥の仕切られた区画がお風呂のようです。



そこには個室のお風呂が3つ並んでいました。
しかし一番手前の浴室にはビショビショの洗濯物が放置され、バスタブにも半分近くお湯が溜められたままだったので、さすがにここは使えませんが、残る2室も全然手入れされておらず、シャワーヘッドが外れっぱなし、桶に水が溜まりっぱなし、カミソリやシャンプーの空容器が捨てられっぱなし、などなど惨憺たる有様です。入浴しないでそのまま帰っちゃおうかとも思いましたが、ここで再び私のヘンテコな好奇心が「入浴しちゃえよ。面白エピソードを作ろうぜ」と囁いてくるので、2室のうち状態がマシな真ん中の部屋を使うことにしました。


 
こちらがその室内です。ユニットバスそのものですね。窓は無いのですが、建てつけが悪いので、隙間によって換気はできており、またそこから落ち葉なども多少入り込んでいます。洗面台の上の鏡には興信所(探偵)の広告が入っていました。台湾のバス停では興信所の広告をよく見かけますが、まさかこんなところでお目にかかるとは思いませんでした。台湾の興信所の主な業務は浮気調査ですが、男女の色恋沙汰に対しては神仏の力も及ばないということなのでしょうか。
室内はバスタブを中心にして全体的に湿っていましたが、ということは、意外と最近誰かがここで入浴したってことだな。こんなところでも利用する客がいるってことだ(私みたいに)。


 
室内からゴミを摘み出し、シャワーヘッドを直し、槽内をよく掃除してからお湯を溜めます。シャワー付き混合栓から出てくるお湯は38℃で、出し続けていればもっと上昇するのではないかと期待していたのですが、この温度が限界でした。このためちょっとぬるいのですが、この日はちょっと汗ばむような陽気でしたから、むしろぬるめでちょうど良い感じでした。

さて驚くべきはこのお湯の質感です。この日、私は知本で4ヶ所の温泉浴場をハシゴしたのですが、その中でこのお湯は質感が群を抜いて素晴らしい。いや、あまりにボロくて汚い施設だから、お湯に対する判断が甘くなって相対的に高評価になったのかもしれないが、そんなことを割り引いてもブリリアントなのです。
見た目は無色透明で何の変哲もないのですが、茹でタマゴの卵黄臭がはっきりと漂い、タマゴ味に微かな塩味を混ぜたような味が感じられます。そしてヌルヌル感を伴ったツルツルスベスベ感が非常に強いのです。お湯にグリセリンか水溶性ポリマーかあるいは特殊な化粧品でも混ぜているのではないかと勘違いしてしまうほどのヌル&ツル感は、知本のみならず、数ある台湾の温泉の中でも屈指ではないかと思われ、感動のあまりお湯の中では何度も肌をさすって「こりゃすげぇ」と口に出して呟いてしまいました。日本でここと肩を並べるヌルヌルな温泉を挙げるならば秋田県の「下の岱温泉 やまの湯っこ」や宮城県の中山平温泉あたりでしょうか。いわゆるウナギ湯ってやつですね。好奇心に背中を押されてこのお風呂に入って正解でした。


 
想像を裏切る良いお湯に感動し、湯上りにお爺さんへ一礼してからここを立ち去ろうとすると、お爺さんは私をまじまじと見つめてから、
「君は日本人か?」
と質問し、「はい、そうです」と答えると、いままでの仏頂面が急に笑顔になって、
「そうか、日本人か、わざわざ来てくれたか、ありがとう、さぁお茶でも飲んでいきなさい」
と流暢な日本語で茶卓へと招いてくれました。入浴をお願いした時に、台湾人らしくない風貌の私が中国語で話したのでおかしいなと思ったそうです。
「私は日本に感情がある(←思い入れがあるという意味でしょう)」
このフレーズを頻りに繰り返すお爺さんは今年で御年81。国民学校初等科6年生の時に光復を迎えたんだそうですが、日本の教育を受けていた嘗てのご自身の境遇を「幸せだった」と回顧し、「日本の教育は本当に素晴らしかった」と語ってとりわけ「修身」の授業を懐かしんでいらっしゃいました。幸いにして私は大学時代の専攻が江戸から昭和にかけての日本史でしたから、話をお爺さんと合わせることは割と得意。私から敢えて古い言葉を振ったりして話を盛り上げると、
「日本語が話せるなんて嬉しいなぁ」
とお爺さんは至極ご満悦でした。このお爺さんに限らず台湾でご存命の日本語世代は、こうして日本時代を懐かしく思ってくださる方が多いので、生粋な日本人の血をひく一人として本当に嬉しい限りです。

お爺さんは更に、この知本温泉についてもいろいろと教えてくれました。曰く、日本時代から温泉地として拓かれていたものの、お爺さんがこの地へ移住してきた50年前には旅館が1軒しか無く、辺りは人の手が入らない山だらけ。そんな知本温泉でみかんを栽培するために当時の価格で3万元を支払って土地を購入。しかし病害に遭ってあえなく頓挫。やがて観光ブームが到来し、自分の土地で200mボーリングしたところ、温泉が自噴したので民宿の営業をはじめるとともに、観光開発需要によって地価がウナギ昇りになり、購入時の何倍ものキャピタルゲインを手に入れて資産を形成。しかし大規模旅館が次々とオープンするにつれ客足を奪われてゆき、現在は静かに余生を送っているとのこと。なお、お寺の手前にあった鄙びた民宿「松泉山荘」はお爺さんが経営しており、25室の客室を有しているんだそうです。

「私のところの温泉が(知本で)一番」と豪語するお爺さんですが、おっしゃるようにお湯の質感には感動してしまいました。これで施設がもう少し綺麗だったら皆さんにもおすすめしたいのですが…。お寺とお風呂をメンテナンスすることは、高齢のお爺さんにとっては荷が重いのかもしれません。
でも、お湯の質はもちろんのこと、お爺さんと日本語でお話しでき、知本温泉の歴史をはじめとして昔の様々なお話を伺えたことが、私にとっては大きな収穫でした。一期一会に感謝。お爺さんがこれからもお元気でお寺とお風呂を守っていかれることを心から願っています。多少汚いお風呂でも問題ないという方は、是非お爺さんのお話し相手になってあげてください。


鼎東客運(山線)・知本温泉(内温泉)行バスで「泓泉飯店」バス停下車、徒歩2~3分
台東県卑南郷温泉村龍泉路135巷 地図

入浴可能時間不明
100元
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (4)
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知本温泉 龍泉山荘 (台湾東部)

2012年04月21日 | 台湾
 
この日は台湾東部最大の温泉地である知本温泉を目指します。
金崙温泉の「美の濱温泉渡暇村」をチェックアウト。目の前にある「賓茂國小」バス停から鼎東客運(山線)バスの台東行に乗車です。


 
バスは金崙の集落から南廻公路(9号線)を北上。胸がすくほど美しい紺碧の海岸線に沿って走ります。この道は険しい断崖が連続する地形に沿っているため、急なカーブ急勾配が連続し、しかもバスの運ちゃんはアグレッシブなハンドル捌きをするので、シートに座っていても体が前後左右へ頻りに動き、ちょっとした絶叫マシーン状態でした。台湾のバスの運転ってどこでも攻撃的なんですよね。


 
台東までは行かず、途中の崎仔頭というバス停で下車。ここは台東~金崙方面と台東~知本温泉方面の路線バスがクロスする接続点なのです。 (地図)

 
崎仔頭は知本温泉の麓にあたる街で、商店や行政機関などが集まり、それなりの規模の市街が形成されています。日本も昭和30年代まではこんな感じだったんだろうな、と想像させてくれる懐かしい佇まいの街並みです。
セブンイレブンのATMで現金をおろして本日の旅の準備も万端。



三叉路には石敢當が置かれていました。沖縄と台湾は文化的に一続きであることを教えてくれます。


 
知本温泉行のバス停はセブンイレブンの前にありました。約20分待って、台東からやってきたバスへ乗り換えます。


 
マイクロバスの車内。
乗客は老人ばかり。



橋を渡って川を遡りながら温泉地の奥へと進んでゆきます。
知本温泉の温泉街はこの知本渓という川に沿って細長く分布しているのですが、下流側の外温泉と上流側の内温泉の2エリアに分かれており、↑画像に写っているのは大規模旅館が建ち並んでいる外温泉地域です。外温泉には日本人観光客にも人気のある「知本老爺大酒店」などがありますが、今回はパスしました。


 
崎仔頭から約15分バスに揺られ、終点の内温泉で下車。


 
最初に訪れたのは、日本人の温泉ファンが多く訪れ、お湯の良さが絶賛されている「龍泉山荘」です。
受付ではおばあちゃんがソファーに座って気持ちよさそうに夢の国へお出かけ中。起こすのは忍びなかったのですが、無銭入浴するわけにもいかなかったので、声をかけて起きてもらい、入浴をお願いしました。おばあちゃんは日本人客の対応に慣れているのか、片言の日本語で説明してくれました。



壁には料金表が掲示されていました。入浴料の数字が訂正されていますが、ネット上の情報では100元と紹介されていましたから、最近値上げされたみたいです。


 
玄関脇の外階段で2階へ上がります。途中カラオケ場の跡と思しき部屋を通るのですが、しばらく使われず放置されたままのようで、ボロボロの吹きっ晒し、廃墟同然の惨憺たる状況でした。B級感どころかC級感たっぷりです。本当にここは営業中の施設なのかねぇ。


 
カラオケルームの廃墟を通り抜けたら一旦屋上に出ます。この屋上も荒れ放題、廃墟ビル状態でした。
屋上の向こうにあるエリアが浴室の入口。通路の両側に3室ずつ個室風呂が並んでいますが、突き当たりにあるのは、もしかして小便器じゃないの? 



個室はどこも同じような造りをしており、任意の場所が使えるみたいなので、最も状態が良さそうな部屋を選びます。といってもどこも大差ないのですけどね。室内は台湾の個室風呂でよく見られるスタイルでして、1人サイズのタイル貼り浴槽があるだけの至ってシンプルな構造です。この室内で更衣を掛け湯を行うのですから、台湾スタイルの入浴に慣れない人には窮屈で不衛生に思われるかもしれません。尤も、私は他に誰もいないのをいいことに、広々とした屋上にすべての荷物を置き、日光降り注ぐ開放感たっぷりの環境ですっぽんぽんになって、伸び伸びとお風呂へと向かいましたけど。


 
浴槽のタイルはうっすらと温泉成分の白い析出でコーティングされていましたが、しばらく利用されていなかったのか、槽内はカピカピに乾いており、お湯のコックを捻ってもしばらくは冷たい水しか出てきませんでした。数分出しっ放しにしていると、徐々に温度が上がって熱くなり、温度計を突っ込んでみたら47.5℃。ここまで上がれば問題ありませんから、浴槽に栓をしてお湯を溜めます。小さい槽なのですぐに溜まりました。

浴槽が浅いお皿のような形状をしているため、腰を落とした時の安定感が得られず、肩まで浸かろうとするとお尻が浮いちゃうところが難点ですが、お湯のクオリティは聞きしに勝る素晴らしいもので、見た目は無色透明、ほんのりとした塩味とともに重曹味や石膏味が感じられ、アルカリ性泉にありがちな微かな収斂も感知できました。そしてここを訪れた日本人温泉ファンが誰しも絶賛するヌルヌル浴感も実感できました。建物も風呂もボロいけど、お湯はホンモノですね。このギャップこそ温泉ファンを惹きつける魅力なわけです。

でもお湯の質感に対して見られるネット上での絶賛には、素直に首肯できないところがあり、そんなに強烈にヌルヌルするほどでもなければ、個性的な味や匂いがあるわけでもない。成績表で例えれば、評価としては確かに「優」であるけど、施設面のB級感を一切無視したとしても、100点や95点ではなく、80点ギリギリなのではないかと個人的には思いました。もしかしたらこちらのお湯のコンディションには波があって、私の訪れたタイミングが悪かっただけなのでしょうか。



敷地内には展望台があり、記念撮影用のプレートが置かれていました。


 
展望台の上からは知本渓を一望。河原では重機やダンプが忙しそうに河川整備工事の真っ最中。



「龍泉山荘」は知本渓の谷の急傾斜面に建てられており、玄関があるのは実は建物の上層階だったんですね。展望台からはマンションのような建物の全容、そして沢山並ぶ客室が見られました。
こちらのお湯に感動した方の記事を拝見しますと、宿泊して客室に備え付けられているお風呂を利用している場合が多いようです。同じ源泉を用いていても、湯使い・浴室構造・配管方法などによってお湯の質感が変わってしまうことは多々あるので、個室風呂よりも客室の方がお湯が良いということは十分に考えられます。宿泊しないと本当の価値がわからないのかな。


台東市街や知本駅から鼎東客運(山線)バス・知本温泉行バスで終点下車、徒歩1分
台東県卑南郷温泉村龍泉路216  地図
(089)513930

入浴受付時間不明
入浴150元
備品類なし

私の好み:★★
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金崙温泉 河原の野渓温泉 (台湾東部)

2012年04月20日 | 台湾
※河川工事のため、この野湯は消失してしまいました(2017年3月に現地で確認)。

金崙温泉を流れる川(金崙渓)の河原では温泉が湧いており、野渓温泉(日本でいう野湯)が楽しめるらしい…
台湾の熱心な温泉ファンのサイトを見ていたら、そんな情報を入手しました(リンク先のサイトは繁体字中文です)。でもそのサイトの記事は2009年11月時点の様子を記録したものなんです。3年前かぁ。野湯が存在するような場所は、大雨などによる地形の変化をたやすく受けるので、ちょっとしたことで忽然と姿を消えてしまうことがあります。このため3年前の情報をそのまま鵜呑みにすることはできませんが、現地に行って探してみる価値はありそうなので、朝6時に宿泊先の「美の濱温泉渡暇村」で自転車を借り、宿の前の一本道を西へ進んで、野湯探しへと出かけてみました。


 
途中「米之谷温泉民宿」という民宿を通過。敷地内からは朦々とすごい湯けむりが立ち上っています。ここに泊まっても良かったなぁ。



やがて赤い鉄橋にさしかかりました。この鉄橋は金崙温泉を紹介する書籍やサイトでは必ずといってよいほど紹介され、そうした書籍には「鉄橋の傍に鄙びた民宿が2軒ほど存在している」とも述べられていますが、2009年8月に台湾南部を襲った所謂「88水害」によって金崙渓流域も深刻な被害を受け、鉄橋付近の民宿は流失してしまい、現在は跡形も残っていません。



鉄橋の上から川の上流を眺めます。ネット上の情報によれば、この画像の右側の河原、つまり鉄橋より上流側の左岸に温泉が湧きだしているらしいのです。



鉄橋付近は洪水の被害が甚大だったようで、民宿流出の他、道路は一部崩壊し、河岸もえぐれて土砂崩れが発生したようです。復旧工事はかなり進捗しているものの、左岸の道路はいまだに仮設状態で、朝早くから重機が唸りを上げていました。
仮設道路から礫が広がる河原へと下りてゆくと、重機が入って作業できるよう、河原の形状が人工的になっており、ネットで見た3年前の画像とは全く異なる状況に変貌していました。


 
礫からは伏流していた川の水が沁み出ているものの、あくまで川水であって、温泉らしい気配はなし。温泉湧出ポイントは河川工事で埋められちゃったみたいです。
はぁ、無駄足だったかぁ、そう落胆しながら、来た道を戻り、川下へ向かってトボトボと自転車を押していると…



鉄橋の下流側の左岸、賓茂3号橋(鉄橋ではない)付近の河原から白い湯気が上がっているのを発見。しかもシューシューという蒸気が噴出していると思しき音も聞こえてくるではありませんか。
(この画像は鉄橋の川下左岸から川上に向かって撮っています)


 
堤防から河原へ下りてみると、河原に突き出た金属の配管らしき物体から、湯気とともに熱湯が勢いよく噴出していました。おそらく元々はどこかの温泉施設の源泉井だったのでしょうが、施設は水害で悉く流出し、源泉井だけが損壊しながらも辛うじて残ったものと思われます。


シューシューと音を立てて噴出している様子を動画で記録しました。




噴き出るお湯に温度計を突っ込んでみると、なんと87.5℃という数値が計測されました。直接触れたら大火傷ですね。


 
源泉井のみならず、河原の砂利の下からもお湯が湧出しており、湯中の石には硫黄が付着して白いものがユラユラしていました。この辺りの河原は源泉地帯なんですね。


 
源泉井や湧出地帯の近くはお湯がかなり高温なのですが、ちょっと下流へ行けば直接触れるくらいに冷めていました。入浴できそうな湯溜りを見つけました。ちょっと浅いのですが、寝そべれば肩まで浸かれそうです。



温度をチェック。湯加減は最高ですね。



というわけで、水着に着替えて入浴だ!
うひゃーー! 最高に気持ちいいぞ!
お湯は無色透明。焼けた石膏の匂いに加え、硫黄の匂いが少々混ざりながらあたりに漂っています。特筆すべきはその浴感でして、アルカリ性に傾いているのか、ヌルヌル感がとても強いのです。いわゆる美肌の湯によくある浴感ですね。野湯なのにこんな素敵な浴感に出会えるなんて、とっても感動。私が入った湯溜まりは少々浅かったのですが、周囲は砂利ですから、手掘りで湯溜りを大きくすることだって可能です。



土手に上がって川下を臨めば、河口の向こうに太平洋の大海原。
野湯は現地へ到達するまでに困難を伴う場所がほとんどですが、この野湯でしたら容易に発見できて手軽にアクセスできちゃいます。ワイルドで、お湯の質も良好です。
はじめは挫折しかけましたが、幸運にもこの野湯を発見できて、本当に嬉しかった!


南廻線・金崙駅より徒歩40分(約3km)もしくは台東市街より鼎東客運山線(バス)の歴丘(いずれの字にも土偏がつく)行で金崙温泉バス停下車
台東県太麻里郷金崙村温泉 地図

24時間入浴可能
野湯につき無料

私の好み:★★★
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金崙温泉 美の濱温泉渡暇村(台湾東部)

2012年04月19日 | 台湾

「太平洋鹹水温泉」から金崙駅へ戻ってきました。実はこの日の宿を決めていなかったので、これから宿探しをしなければなりません。




(画像クリックで拡大)
駅前には宿泊施設と地図を掲示している案内板が立っており、ひとまずこれを眺めて思案してみます。駅前の道をまっすぐ進めば宿が点在するエリアに行き当たるようので、とりあえずあてもないまま歩き出すことにしました。ま、なんとかなるでしょう。


 
駅から緩い坂を登って南廻公路(9号線)に近づくにつれ人家が徐々に増え、金崙の集落へと入っていきます。道路では覇気の無い野良犬がウロウロ。民家からは鍋をふるう音が聞こえ、夕餉の香りが漂ってきます。


 
夜の帳が下りてどんどん暗くなってゆく金崙。民家はあるものの、田舎らしく質素な建物ばかり。人影もまばら。本当に宿は見つかるのかな…。暗くなるにつれて不安が増してゆきます。
この一帯ではパイワン族が多く暮らしており、集落入口の道路上にはゲートがかかっていました。賓茂社区という名前の集落のようです。道端の店からはカラオケの大音響が聞こえてきます。


 
やがて目の前にはこんな新しくて立派な宿泊施設が現れました。「太麻里城堡温泉」という温泉民宿で、「空室あり」という看板も出ていました。「もう暗いし歩くのも面倒だから、ここに決めるか」と心が動いたものの、でもこんなラブホテルみたいな新しくて綺麗な施設って、オイラみたいなバックパッカーに似合わないんじゃないか、もっと質素な民宿に泊まってみたい、という変な願望がもたげ、後ろ髪が引かれながらもこちらをパスして、更に奥へと進むことに。



駅から歩くこと約20分で周囲の民家はいよいよまばらになり、これ以上進んでゆくと集落から外れてゆくことは明白。これ以上時間が遅くなると完全に真っ暗になってしまう…。もっと奥に行けば鄙びた温泉民宿がありそうな予感もするのですが、初めての土地で無理をしても良いことはないので、誘蛾灯に導かれる蛾の如く、たまたま目に入った「美の濱温泉渡暇村」の玄関の光に吸い込まれていきました。


 
玄関に入るとフロントロビーでは経営者夫婦がソファーでテレビを鑑賞中。「今夜一泊したいのですが」と尋ねると、メガネをかけたご主人が対応してくれました。こちらはいわゆる民宿のようですね。料金別に分かれた3種類のお部屋を見せてくれ、そこそこ広くて窓もある真ん中のランクに決めました。


 
こちらがその客室。ちゃんと綺麗に手入れされており、テレビ・冷蔵庫・冷房も完備されている立派なお部屋です。しかもパスワード不要の無線LANが飛んでいたので便利でした。


 
お部屋のシャワーとトイレは仕切りが無いため(シャワーカーテンも無い)、シャワーを使うとトイレまでビショビショになってしまう点がちょっと残念。シャンプーやハブラシなどアメニティー類は用意されています。

部屋に荷物を置いてロビーに出ると、ご主人がお茶を淹れてくださったので、摘んだばかりのミニトマトやイカの燻製をつまみにしながら、おばさんを混ぜて3人でしばし語らいのひととき。私の旅のこと、そしてちょうど発生から1年を迎えた東日本大震災にかんすることなどを話題に、虫のすだきやヤモリの鳴き声をBGMにしながら、のんびりとした時間を過ごしました。語らうといっても、私の中国語(普通話)はカタコトにも程がある非常に低レベルなものなので、単語の羅列や筆談を駆使することによって、辛うじてコミュニケーションが図れたのですが、私の稚拙な表現に根気よく付き合ってくれたこのご夫婦のおかげでもあります。こうしたふれあいは民宿ならではですね。


 
お茶飲み話は1時間ほど続いたでしょうか。まだ私が夕食を摂っていないことをご主人に伝えると、外に停めてある自転車を使っても良いと言ってくれたので、ありがたくお借りして、先程歩いてきた道を戻って金崙の集落へ向かい、9号線沿いに建つ食堂に入って羊肉炒麺とハマグリのスープを注文しました。この店は夫婦で営んでおり、旦那さんはとっても愛想が良く、笑顔を絶やさず接客しているのですが、一方の奥さんは終始憮然としたままでニコリともせず、私が座る卓の前にその奥さんが食事を持ってきたとき、お皿を持つ手をふと見たら、全ての指の爪の間が真っ黒けだったので、ゾッとしてしまいました。ま、火が通してあるから大丈夫かな。夫婦って大抵対照的な性格同士だったりしますけど、ここはその典型かもしれませんね。ちなみに味の方は…。決して不味くはないのですが、麺はベチャベチャだし、スープはお湯みたいだし…。食後は同じく9号線沿いにあるセブンイレブンへ寄って口直しを求めてしまいました。余談ですが、台湾はどんな田舎の集落でもコンビニがあるから便利です。過疎地に対する出店率は、北海道におけるセイコーマートのような感じかもしれません。



宿に戻ってご主人に「SPAは何時まで?」と訊くと、「夜10時まで」とのこと。せっかくですから、夜はこちらのSPAで時間いっぱいまでくつろぎたいので、急いで部屋で水着と水泳帽へ着替えました。
独りで利用するのがもったいないほど、とっても広くて立派なSPA。宿の外観だけでは、こんな広い温泉プールがあるとは想像できません。



ご主人は機械室に立ち寄って電灯やポンプ類のスイッチをONにしながら、私を奥にあるシャワー室へと案内してくれました。


 
シャワー個室が並んだ室内は比較的綺麗に保たれています。ロッカーやドライヤーもあるので、日帰り利用でも不便を覚えることはないでしょう。



ロッカー部分の壁紙には、コアラのイラストとともに平仮名で「たのしい」とプリントされていました。どういう意味?



大きなプールには41~2℃の温泉が張られています。全体を高い屋根が覆っているので、雨の日でも入浴可能。プールには打たせ湯4本、ジェットバス、寝湯ジャグジーなど、SPAらしい装置が設けられており、いずれもボタンを押せば作動します。



中でもとりわけ目を惹くのが、プール内に4か所ある岩の湯口です。まるで間欠泉のようにボコボコと音を立てながら熱い湯を噴き上げており、お湯の流路には鱗状の析出が付着し、一部は焼けただれたような褐色に変色しています。プール槽内のお湯は上述のように41~2度ですが、この湯口付近は50℃近くあるので、お湯の流れる方向によってはあまり近寄ることができません。でもこの湯口を見た私は思わず興奮してしまい、しばらく湯口の傍から離れることができませんでした。

お湯の見た目は、わずかに白く霞みがかっているもののほぼ無色透明と言って差し支えなく、口に含むと石膏味にほんのりとしま甘味、そして微かな塩味が感じられました。また焼けた石膏のような匂いや硫黄のような匂いがふんわりと湯面から漂っていました。



せっかくご主人が機械のスイッチを入れてくれたので、打たせ湯を作動させてみました。台湾ではおなじみの、体がぶっ壊れそうになるほど強い勢いでお湯が吐き出されるタイプですが、この強さに慣れると病み付きになっちゃうのが不思議です。特に慢性的な肩こり・首筋凝りに悩まされている私にとっては、むしろ日本の打たせ湯だと弱すぎちゃいます。

湯口付近こそ熱いものの、プールの表面積が広いために、程よく冷めて長湯に適した湯加減となっており、いくらでも入浴していられました。静かで鄙びた山間で、ゆっくり流れる時間に身を任せ、絶え間なく噴出するお湯に惚れ惚れしながら、広いプールで温泉を独り占め。しかもそのお湯はしっかりとした質感を有する掛け流しの本格派。温泉ファン冥利に尽きます。こんなに贅沢な時間を過ごしていいのかねぇ。俺、いずれ罰が当たるんじゃないかな…。


 
プールの傍にはロッジやバーベキュー場などがありましたが、さすがにこの日は利用者ゼロ。



プールサイドには温泉卵をつくる槽らしきものがありましたが、しばらく使われていないらしく、内部はカラッカラに乾いていました。



プールのみならず個室風呂もあります(今回は利用しませんでした)。



部屋の番号札には和室と書かれていますね。畳敷きなのかしら?


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これまでの画像は暗い状態で撮影したため、かなり見難かったですよね。ごめんなさい。
ということで翌朝改めて各所を撮影しました。まずは宿の外観から。


 
こちらは温泉プールです。



テラスから温泉プールを俯瞰してみました。



析出コンモリの間欠泉的な湯口。何度見ても興奮しちゃいます。温泉プールには誰も入っていないのに、お湯は止まることなくどんどん噴き上がっており、プールは昨夜よりも熱い44度くらいまで上昇していました。表面積が広いプールを熱くしてしまうのですから、湧出量は相当豊富なのでしょう。



温泉プールの隣には冷水プールも。



「児童SPA池」と称する池。この時は、児童ではなく、カエルが泳いでいましたけど…。



離れのロッジは明るい時間に見るとこんな感じ。結構な傾斜地に建てられているんですね。



お客さんが多い日には宿に併設されている食堂がオープンになるのでしょうけど、この日の客は私一人だったためクローズ。そのかわり朝食は宿の隣にある別経営者の食堂でサンドイッチと温かいミルクコーヒーをいただくことに。食堂のおじさんは頻りに「日本一番」と口にしていました。台湾は親日的な方が多くて嬉しいですね。なお宿賃には朝食代が含まれているため、朝食代は宿の奥さんが支払ってくれました。

民宿ならではのふれあい、ゆったり流れる時間、山中の閑村らしい静かで清らかな環境、そして広く本格的な温泉。行き当たりばったりで選んだ民宿でしたが、深く印象に残る一夜を過ごすことができました。道沿いにはこの他にも「遠山功夫民宿」「米之谷温泉民宿」など、自家源泉を持つ温泉民宿が点在しているので、どこかに泊りながら温泉をハシゴしてみるのも良いかもしれませんね。金崙温泉、おすすめです。


南廻線・金崙駅より徒歩20分(約1.5km)もしくは台東市街より鼎東客運山線(バス)の歴丘(いずれの字にも土偏がつく)で賓茂國小バス停下車すぐ
台東県太麻里郷金崙村温泉25  地図
(089)772179 

入浴可能時間?~22:00
宿泊1000元~
入浴150元

私の好み:★★★
コメント (6)
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