温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

七里川温泉

2011年08月18日 | 東京都・埼玉県・千葉県

私はあまり鉱泉の沸かし湯を好かないのですが、千葉県の房総半島には個性的な鉱泉があちこちに点在していると聞いたので、食わず嫌いをやめて行ってみることにしました。今回の行先は君津市の上総亀山周辺です。地元の観光協会では上総亀山に湧く3ヶ所の温泉を「参温泉」と称してアピールしており、上画像のようなパンフレットを作成していますので(パンフなのになぜか有料50円)、これを参考に3ヶ所すべて巡ってみました。まずはじめは温泉ファンの間で隠れた人気を有する七里川温泉です。

 
当地へのアクセスには自家用車や高速バスが便利ですが、私はあえてJR久留里線で終点の上総亀山を目指しました。
動労千葉のストライキによる運休が毎春の風物詩のようにもなっているこの久留里線は、その動労の影響なのかわかりませんが、とても東京近郊とは思えないほどローカル感の強い非電化路線で、国鉄時代の気動車がいまどき珍しいタブレット閉塞によってのんびり走っています。また軌道回路が無いため、車両にGPSを積ませることによって、運転指令が列車の位置を把握するという新旧渾然としたスタイルも、この路線ならではの特徴。
往路に乗った列車はキハ37とキハ38の2両編成。いずれも現在では久留里線でしか見られない車両ですね。キハ37には後付けの冷房が搭載されていますが、八高線からのお下がりのキハ38は21世紀の今日でも非冷房を貫き通しているので、猛暑にもかかわらず今回は敢えて非冷房のキハ38へ乗車し、窓を全開にして昔懐かしい列車の風情を堪能しました。昔は冷房がある車両の方が珍しく、みんな夏になると窓を全開にしていたもんです。車窓には夏空と青田が広がり、稲の青い匂いが車内に入ってきます。一部の早生の田んぼでは既に穂がこうべを垂れていました。列車の速度はMAXでも40km/h程度。頑張れば自転車でも追い抜けそうなほど緩慢なスピードです。
しかしながら、この久留里線も今年度の特殊自動閉塞化を皮切りに、ATS-P導入、キハE130による車両更新などが予定されており、昔ながらの鉄道風情も風前の灯となっているんだそうでして、その情報を耳にしたからこそ、今回は久留里線のお世話になったわけです。

 
木更津から1時間強で終点の上総亀山に到着。一応有人駅です。

 
駅前からは君津市コミュニティーバスに乗り換えます。便によっては七里川温泉まで行くバス(「風っ子号」)もあるのですが、たまたまこの時は七里川温泉行が来ない時間帯だったので、その手前まで行く黄和田車庫行(「せせらぎ号」)に乗ることのしました。バスといっても車幅の広いハイエースです。料金は200円均一。おつりはないので事前に小銭を用意しておきましょう。運転手さんに支払方法を聞くと「先払いでも後払いでもどちらでもいいですよ」とのこと。なんて長閑なんでしょう。乗客は私と地元のお爺さんの2人だけ。

 
駅から約15分で終点の黄和田車庫に到着。路線バスの車庫というより、昭和30年代からそのままのガレージや、あるいは納屋という感じがします。バス停から夏空のもとを先へ進みます。なおこの道は単なる田舎道ではなく、れっきとした国道465号線なのであります。


途中の分岐を右へ曲がって県道81号「清澄養老ライン」へ。

 
清澄養老ラインの沿道には今時珍しい現役の炭焼き小屋がありました。

 
黄和田車庫から歩いて10分ちょっとで七里川温泉につきました。正面では番をしているおとなしいワンコがお出迎え。

 
玄関脇には非加熱の源泉が流されているお湯汲み場があり、デカいボトルを手にしたお客さんが次から次へと汲んでいます。白い綿状の付着物がユラユラしていることからもわかるように、鉱泉水からはゆで卵の黄身みたいな匂いと味、そして弱い苦みとえぐみが感じられました。浴用のために加温するとこれらの知覚は若干弱くなりそうですが、匂い味とも強いので、お風呂での浴感も期待できそうです。


玄関には客の靴が散乱しており、玄関ホールに設置された炉端から上がる煙のため館内は朦々としています。昼間から酒と炉端焼きですっかり出来上がった客が、ロビーの椅子にけだるそうに腰かけており、私のような一見さんはたちまち不安に駆られるような、ちょっとハードルが高そうな雰囲気が漂っています。
ただでさえ狭い廊下にいろんな食品(売り物)が陳列されているので余計に狭く、とても雑然とした館内です。その廊下の途中にロッカーあり。廊下の奥にはカラオケルームがあるらしく、ダミ声のおばちゃんが欧陽菲菲の『ラヴ・イズ・オーヴァー』を大音響で唄っていました。1曲100円らしい…。食堂手前を右に曲がって階段を上がります。


階段の上には「天然硫黄泉 源泉かけ流し湯」と誇らしげに記されています。

 
玄関や廊下の雑然さから想像するに、脱衣所も惨憺たる状況かと覚悟していたのですが、いざ入ってみると意外にもシンプルでごくごく普通の造りでした。衣類や荷物は籠に入れます。


まずは内湯へ。洗い場にはシャワー付き混合栓が4基。ボイラーが古いのか、カランから出てくるお湯はやや重油臭い感じがします。浴槽は平行四辺形で5~6人サイズ、浴槽内は手前と奥の長辺サイドにそれぞれ段が設けられています。お湯はわずかに黄色を帯びた透明で、ゆで卵の黄身のような味と匂いが明瞭です。湯口の金属バルブは硫化して真っ黒に変色していました。加温されているものの、浴槽の切り欠けからしっかり放流されており、間違いなくかけ流しです。館内表示によれば加温以外、加水・消毒・循環いずれも該当なしとのこと。なお浴感はツルスベでも引っかかりでもない、あまり特徴のないものでした。


露天風呂へは脱衣所を経由し、階段を上って向かいます。


露天風呂の浴槽は2つあり、いずれも四阿がかけられています。画像は手前側の浴槽です。この浴槽に張られたお湯は内湯と異なり黄色が強い透明で、匂い味ともに特徴はなく、タマゴ感が全く感じられなかったのですが、それもそのはずで、これは鉱泉ではなく、井水を沸かしたものなんだとか。

もうひとつの浴槽には内湯同様、タマゴ感を帯びた源泉が使用されています。本当はこちらの画像も撮影したかったのですが、さすがに源泉使用のお湯は人気があって常に何人か入浴しているため、全く撮影できるタイミングに恵まれませんでした。露天源泉槽は4人サイズ、赤茶色のタイル貼りですが縁は木材が用いられています。かすかに白濁しているようにも見えるお湯は、長湯向きの湯加減で、竹の湯口から加温源泉が投入され、縁の切り欠けからちゃんとオーバーフローしています。
訪問時にいた先客の常連さんは四街道から通っているそうで、なんと5時間近くもここで湯浴みしているんだとか。その常連さんに「ここにはヤマビルがいるから気をつけな」と脅かし文句で手荒い歓迎を受けながら、私も入浴仲間に加えてもらいました。いまは浴槽前に板塀が立って視界が遮られているが、かつては何もなく、とても眺めがよかったんだそうです。とはいえ現状でも付近の山々の稜線がはっきり眺められ、開放感も良好、とても静かでいい雰囲気です。
私は平日に訪れたのですが、週末になると大混雑でイモ洗い状態になるんだそうです。この時でもかなり多くのお客さんがいましたから、休日はどうなってしまうんでしょう…。

内湯も露天もなかなか良い雰囲気で、お湯も千葉県にしてはかなり良質。しかも沸かし湯なのに放流式の湯使いを実現しているのは立派です。玄関や廊下・食堂まわりの雑然とした雰囲気さえなければ、皆さんにお勧めしたいところなんですが…。


温泉法上の温泉(温泉法第2条別表の総硫黄とメタケイ酸と炭酸水素ナトリウムの項による)
16.0℃ pH7.9 /min(動力揚水) 溶存物質0.69g/kg 成分総計0.69g/kg
ナトリウムイオン152.0mg/kg(74.63mval%)、炭酸水素イオン272.9mg/kg(51.12mval%)、硫化水素イオン1.1mg/kg(0.31mval%)、チオ硫酸イオン0.5mg/kg(0.10mval%)、遊離硫化水素0.2mg、メタケイ酸61.2mg/kg

JR久留里線・上総亀山駅から君津市コミュニティーバスの「風っ子号」で終点「七里川温泉」下車(「せせらぎ号」黄和田車庫行でもOK。その場合は当ページの上述参照)
千葉県君津市黄和田畑921-1  地図
0439-39-3211

9:00~22:00 第1・3水曜定休
800円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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アイスランド 泊まって良かったホテル(その2) Hotel Berg 

2011年08月18日 | アイスランド
アイスランド旅行で「うわ~、素敵!」と思わず声をあげてしまったホテルです。
今回のアイスランド旅行は帰路で早朝7:45発コペンハーゲン行の飛行機に乗りたかったので、最終日は国際空港を擁する街ケプラヴィーク(Keflavík)で宿泊したく、外観の画像に心惹かれて"Hótel Berg"を選びました。まだ新しいホテルであるためか、ネット上には口コミ評価が見当たらず、どんなところか不安だったのですが、結果的には大正解でした。

 
ケプラヴィークの街の北にある小さな船溜まりを見下ろす小高い丘の上に建っています。ホテルというより民家のような外観で、民宿やペンションなどのカテゴリーに分類される施設だと思います。ちょっと街から外れているのでとっても静か。海や街が展望できる絶好のロケーションです。


玄関ホールはアロマキャンドルの良い香りに包まれていました。ラグジュアリ感のある調度品やファブリックにより、とってもいい雰囲気。思わず「うわ~素敵」と口にしてしまいました。


レセプション前のラウンジ。こちらもクラシックな造りのソファーが置かれ落ち着いた雰囲気です。窓からはハーバーや街が眺められます。どうやらご家族で運営されているらしく、この時もご夫婦で対応してくれました。

 
料金はアイスランドのハイシーズンにしては比較的安めだったのですが、ここでいいの?というほど広い部屋に案内されました。一人で使うにはもったいない程の大きなベッドです。
室内はとっても落ち着いた色調でまとめられており、液晶テレビ、冷蔵庫完備。室内ではWi-Fiが使えます(室内の机に敷かれたデスクマットにパスワードが書いてあります)。クッション・枕などにはオリジナルロゴが刺繍されています。

 
各部屋には個別にトイレ・シャワーが付帯しており、アメニティー類もちゃんと備え付けられています。白と木目を活かした室内はまだ新しいためか、とっても綺麗で清潔。ただし、このシャワーはトイレとの仕切り(ガラス)がやや短めであるため、どうしてもトイレまでビショビショになってしまいます。

 
街の中心部までは余裕で歩いて行けます。アイスランド最後のディナーは「ヴァイキング・サーモン・レストラン」と書かれたお店に入ってみました。


 
海岸を臨む窓際の席で、サーモンづくしの料理をいただきました。ボリューム満点でとっても美味!

 
食後の散歩を済ませて宿へ戻ってきました。ホテルというより完全に民家ですよね。海岸の小さな家に帰宅したような感じでした。スタッフもとってもアットホームで親切に接してくれました。
上述のように翌朝は早い飛行機に乗る必要があったため、朝5時にチェックアウトしたのですが、ご主人は嫌な顔ひとつせず、笑顔で対応してくれたので、ホッとしました。予めメールで連絡しておけば、私のように早朝対応してくれます。良い部屋だったので、もう少し長く滞在したかったなぁ。
ロケーション、室内の雰囲気、親切なスタッフ、などなど全ての要素がとっても印象に残る素敵で温かい宿でした。空港までは車で5分程度なのでアクセスも良好。一般的に空港付近のホテルって実用的な施設が多いようですが、せっかくでしたら、このような良い雰囲気の宿に泊まれば、旅行の想い出がより一層厚くなるに違いありません。
旅の締めくくりにこんな宿に泊まれて幸せです…。


所在地:Bakkavegur17 230 Keflavík  地図
電話:+354-422-922
ホームページ
エクスペディアなどから予約可能

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アイスランド 泊まって良かったホテル(その1) Vatnsholt

2011年08月17日 | アイスランド
旅行先のホテルの良し悪しは、その旅の印象を大きく左右するものですよね。観光立国アイスランドにはたくさんの宿泊施設があり、私も旅の計画を練っているときにはどこに泊まったら良いのかかなり悩んだのですが、実際に泊まってみて、あまりの良さに感激したホテルがあったので、当ブログの趣旨である温泉紹介からはかけ離れてしまいますが、感動を分かち合っていただきたく、ここで紹介させていただきます。皆様の旅行の参考となれば幸いです。
今回取り上げるのは、セルフォス(Selfoss)の郊外にある農家民宿"Vatnsholt"です。

 
セルフォルから1号線を東へ進み、途中で右折して305号線へ入り、しばらく南下してから砂利道の309号へ右折すると、まもなく到着です。
広大な牧草地が広がる丘の上にポツンと建つ、「大草原の小さな家」という表現がピッタリなホテル。チェックインの際には、オーナーの夫妻が握手で出迎えてくれます。

 
宿泊する客室は、本棟の向かいにある別棟にあります。玄関で靴を脱いでから建物内に入ると、そこには宿泊者用のリビングルームとダイニングルームが広がっていました。ホテルというより民家を訪問しているかのようです。調度品はおそらくIKEAで買い揃えたのではないかと思われますが、白と木目を基調にした落ち着いた内装で、明るく清潔感に溢れ、とても綺麗です。
話の時系列が前後しますが、夕食後にここで私が地図を広げて翌日の計画を練っていると、ニューヨークからハネムーンでやってきた新婚さん、フランス人夫婦、そしてドイツ人ファミリーが集まってきて、みなさんで酒を酌み交わしながら、夜が更けるまでアイスランドの景色を絶賛しあいました。一期一会の出会いとそこで繰り広げられた会話は永遠の想い出です。


ダイニングルームの隣はキッチンです。こちらも明るくて広くて使い勝手良好。自炊に必要なものは一式揃っています。リビングもダイニングもキッチンも、宿泊者は自由に使えます。客室内には冷蔵庫がないので、飲み物などはキッチンの冷蔵庫を使うとよいでしょう。


ゲストハウスとは思えないほど綺麗で広い共用トイレ。


これが私が泊まった部屋。階段を上がった二階の一室です。屋根の直下なので天井が思いっきり斜めですが、私は一人旅ですから、2つあるうち画像左側のベッドを使いました。室内には必要最低限のものしかありませんが、清掃がよく行き届いており、申し分ありません。なおタオル以外のアメニティー類の備え付けはありませんので、事前に自分で用意する必要あり。


階下には共用シャワーがあるのですが、これもまたゲストハウスらしくないバスタブを兼ねた立派な設備で、普通のシャワーの他、スチームバスやAVなど、いろんな機能が備わっていました。シャワー室はかなり広いので、共用シャワーにありがちな窮屈な思いをせず、のびのびと使うことができました。
なお別の場所にはホットタブ(温浴槽)もあるのですが、生憎この日は故障中とのことでした。


キッチンでの自炊も可能ですが、併設されたレストランでディナーすることも可能。農場直送の食材をいただけます。
なおこのホテルではWi-Fiが利用できますが、利用可能な場所はこのレストラン内だけです(レストラン内にラウンジあり)


このレストランはコース制で、メインディッシュを魚にするかラムにするか選択ができます。まずはワインを。


トマトとパプリカのスープ。美味い!


メインはラムのグリルを選びました。ボリューム満点。アイスランドのラムは全くクセがなく、本当に美味い。ラムが苦手な人も、こちらへ来れば克服できるかもしれませんよ。マッシュルーム入りのクリームソースもラムに合って美味かった。


食後はパンナコッタとカプチーノ。
給仕してくれたお姉さんとお兄さんは常に笑顔で、私のメチャクチャな英語にも苦い顔一つせず、爽やかに対応してくれました。家族経営ならではのアットホームな温かさや優しさって、ありがたいですね。


朝食はバッフェ式です。品揃えはパン・ハム・ソーセージ・チーズ・シリアルなど欧州の標準的な内容ですが、それぞれが実においしく、朝から何度もおかわりしちゃいました。画像には写っていませんが、セルフで作るワッフル焼き器もありますよ。

 
果てしなく広い牧場には牛や馬が放牧されていました。

 
ここではワンコも馬も仔牛も子供たちもみんな仲良し。


特にジャージー種のこの仔牛はとっても人懐っこく、体を私に密着させて離れようとしませんでした。めちゃくちゃかわいいです。

 
子供用遊具もあり、客の子供たちが歓声をあげながら遊んでいました。動物に触れあったり、雄大な景色を眺めたり、遊具で遊べたりと、ファミリーにとっては至れり尽くせりですね。

壮大な景色、おいしい料理、清潔で綺麗な館内、アットホームな雰囲気、そして笑顔が素敵な従業員家族のみなさん、その全てが強く印象に残った素晴らしいホテルでした。日本にもこんな宿泊施設があったらいいなぁ。次回アイスランドへ旅行した際にも是非こちらでお世話になりたいと思っています。


所在地:Vatnsholt 2, Selfoss 801  地図
"farmholidays"内の紹介ページ(←ここに詳細が記されています)

Hotels.comBooking.comなどから予約可能


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アイスランド ブルーラグーン(Blue Lagoon)

2011年08月17日 | アイスランド
今回のアイスランド旅行の実質的な最終日は、世界最大の露天風呂にしてアイスランド屈指の観光名所である「ブルーラグーン」で入浴し、以て当地における温泉巡りの締めとすることにしました。以前に書籍のグラビアやテレビで、広大な敷地に青白い神秘的なお湯が湛えられているブルーラグーンを見て以来、一度でいいから行ってみたいという強い憧憬を抱いていたのですが、ついにその願いを叶える日がやってきたのです。私は食事の際に好物を残しておいて一番後にいただく性格なので、温泉巡りに関しても同じような予定の組み方にしてしまいました。こういう性格の人間は『若きウェルテルの悩み』の主人公ウェルテルみたいに、シャルロッテへの想いに煩悶しつづけるものの、いろんな事情が重なった挙句、結局願い叶わずバッドエンドを迎えることが多いわけでして、今回もブルーラグーンを一番最後に回して、もし当日天気が荒れたらどうするんだ、予定がメチャクチャになって立ち寄れない事態になるかもしれないのに、などと心配していたのですが、雨男の私の来訪にもかかわらず、車を駐車場に止めると、それまで降っていた霧雨がピタっと止んで、何らの支障なく入浴できるコンディションとなってくれました。

 
ブルーラグーンは現地語では"Bláa lónið"と表記するんだそうでして、道路標識もこの現地語表記でした。
訪問時には駐車場にはたくさんの車がとまっており、人気の程がうかがえます。溶岩で覆われた土地を切り拓いたアプローチを進んで本館へ。駐車場の前に建物がいきなり建っているのではなく、あえて溶岩に挟まれた通路を歩かせる演出は、まるでテーマパークのアトラクションに入場するかのような高揚感をもたらせてくれます。


エントランスは意外と小さいんですね。観光客がひっきりなしに出たり入ったりしています。


北欧らしいガラスを多用した明るい館内は、奥に長い構造をしており、エントランスの小ささとは裏腹に、内部はかなり広い空間。さすがは世界に名の知れた施設だけありますね。レセプションの奥はカフェテリア、その手前はお土産売り場。


レセプションは個人客用と団体客用に分かれていました。一人旅の私はもちろん個人客用の窓口へ。料金は4800kr(この日のレートでは日本円で約3200円)という観光客の足元を見ているようなバカ高い設定。ユーロ支払いも可能で、その場合は30ユーロなんですが、ケチ臭くレートを計算したらアイスランドクローネで支払った方が若干安いことがわかったので、現地通貨で支払いました。なおレンタルタオルは800kr。
入場料の支払いを済ませると、このようなリストバンドが手渡されます。これは入退場の管理の他、ロッカーの施錠開錠、また場内における飲食などの精算に使用します。まずこのバンドの白い部分(チップが埋め込まれている)をゲートの受信部に当てて改札を通過し、ロッカールーム(更衣室)へ。大勢の客を捌くべく、ロッカールームは男性の場合A・B・Cの3室に分かれており、好きなところが使えたので、私は空いていそうなCを利用しました(女性もほぼ同様)。


ロッカーも空いている任意のところを利用します。ロッカーの施錠には先ほどのリストバンドを使用するのですが、その方法は…
(1)まず着替えを済ませて衣服や荷物をロッカーに入れる
(2)扉を閉めると、そこから最も近い読み取り機(↑画像下部に写っています)にその扉の番号が表示される
(3)番号に間違いなければ、読み取り部分にリストバンドをタッチ
(4)機械の読み取りから5秒後に施錠完了
という流れです。尤も、ロッカーにはちゃんと図示されていますから、その通りに操作すれば問題なし。開錠は同じ機器に再びリストバンドをタッチすればOK。ただし、施錠後の自分のロッカー番号はどこにも表示されませんから、番号やおおよその位置はきちんと記憶しておく必要があるかと思います。

このロッカールームは係員さんが床を清掃してくれているのですが、シャワーエリアとフラットになっている上に客が多いため、床がビショビショで着替えしづらかった…。着替え後はシャワーで全身をくまなく洗います。なおシャワーには「ブルーラグーン」ブランドのシャワージェルが備え付けられていました。買うと結構高いものですが、ここでは使い放題なので、嬉しいあまり、入浴前も後も、このジェルでこれでもかという程、徹底的に体を洗っちゃいました。またシャワーエリアには入浴後の水着を入れるビニール袋が用意されていました。

 

おお! これが夢にまで見たブルーラグーンか! めちゃくちゃデカイ! そしてお湯が神秘的な色だ!
このラグーンはなんと5000平米もあるんだとか。そのうち浴用に開放されているのは約半分の約2,400平米ですが、それでも十分に広いですよね。

 
巨大な露天風呂のみならず、打たせ湯があったり、サウナがあったり、よりどりみどり…


プールサイドには露天風呂に入りながら飲み物などを購入できるスタンドがあり、みなさんビールなどを買って、グビグビ飲みながら湯浴みを楽しんでいました。

 
ブルーラグーンといえば、温泉泥パックが有名なので、さっそく実践してみました。プールサイドには白い泥が入っている箱が何箇所か置かれているので、そこから金属のオタマで泥を掬いあげ、手で顔など好きなところに塗ります。泥はちゃんと箱に入っているものを塗ってくださいね。浴槽の底に沈殿しているものは汚いから使っちゃダメ。
顔面を白い泥で塗りたくっている東洋人は、まぎれもなく私です。気味悪い写真でゴメンなさい。

 
露天風呂の奥の方には、湯口が石灰華に覆われ山のようになっている箇所がありました。これに寄りかかると、いい具合に体にフィットするので、ここに腰かけながらじっくりのんびりお湯を堪能。
湯温は38℃前後なので、日本人には若干ぬるめですが、長湯するにはちょうど良い湯加減。いつまでもお湯に浸かっていられます。気持ちよくて出たくない…。


蒸気に隠れて見えにくいのですが、ラグーンの向こうに建っているのはスヴァルトセンギ地熱発電所です。ブルーラグーンのお湯はこの地熱発電所でタービンを回すために使われた地熱海水が二次利用されたもので、人工的に造られたお湯なんだそうですが、珪素をはじめとするミネラルを豊富に含み、特にアトピーや湿疹など皮膚疾患に効能があるんだとか。海水由来のお湯なので、口に含むと苦みとしょっぱさが感じられました。ツルスベ浴感も気持ち良く、何度も肌をさすりたくなります。このラグーンには常に600万リットルもの地熱海水が貯められており、40時間ですべての海水(温泉水)が交換されてゆくそうです。

広さ、湯加減、お湯の質、そして神秘的なお湯の濁り方など、感動する要素が満載で、料金の高さなんか忘れてしまうほど、非常に気持ちよい露天風呂でした。念願のブルーラグーンに入浴できて本当に幸せ…。
ここは露天風呂に浸かるだけでなく、エステやレストランなどいろんなサービスがあるのですが、それはまた次の機会にでも。
なお、帰りにはお土産コーナーへ立ち寄り、世界的に有名なブルーラグーンのスキンケア用品をしこたま購入。帰国後方々へ差し上げたのですが、特に女性陣からは大好評でした。


所在地:Blue Lagoon 240 Grindavík  地図
電話番号:+354-20-800
ホームページ

9月1日~5月31日→10:00~20:00
6月1日~8月31日→9:00~21:00
年中無休

大人4800kr(30ユーロ)、14~15歳1600kr(10ユーロ)、13歳以下無料
レンタルタオル・レンタル水着:各800kr(5ユーロ)
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アイスランド クリースヴィーク(Krysuvik)の野湯Skatalaug

2011年08月16日 | アイスランド
★今回後半に登場する野湯は、日本語サイトでは当ブログが初めて取り上げるのではないかと思います。

アイスランドに初上陸したとき、荒涼な大地のあちこちから地熱の白い蒸気が上がっているのを目にした私は、噴気を見つける度に興奮していたのですが、やがてそれがこの国では当たり前なんだと気付きはじめると、それ以降は噴気を見かけても「あ、あそこにもあるのね」程度にしか気にしなくなってしまいました。それほどこの国は地熱活動が盛んなのですが、首都レイキャヴィクの南西に位置するレイキャネス半島はその典型でして、ユーラシアプレートと北米プレートが分かれてゆくこの地は地熱の活動が非常に活発で、あちこちから白い噴気が上がっています。
レイキャネス半島には世界最大の露天風呂にしてアイスランド屈指の観光名所である「ブルーラグーン」がありますが、今回はその東側にある地熱地帯クリースヴィーク(Krýsuvík)へ行きました。まずは地熱地帯を見学してみます。


●地熱地帯セルトゥーン(Seltún)
 
未舗装の427号線を辿って南部の海岸沿いを走行。黒い溶岩の上にモスグリーンの苔が生えている不思議な地形が広がっています。その苔はあたかも絨毯のようであり、上を歩くとフワフワです。


クリースヴィークに近づくと舗装路面になりました。前方の山からは白い噴気が上がっています。

 
(地図)
界隈でも屈指の地熱地帯であるセルトゥーンに到着。車を降りると、さっそく硫黄の匂いが鼻を刺激してきました。こういうところの硫黄の匂いって、日本もアイスランドも共通なんですね。駐車場からは木道が伸びているので、その上を歩いて探索してみます。

 
あたりは荒涼とした噴気帯となっており、硫黄の匂いとともに、あちこちからフツフツと温泉が煮え滾る音が聞こえてきます。また前方の山からも濛々と白い蒸気が上がっていました。

 
木道には説明プレートが設置されています(が、細かい英語を読むのが面倒だったので、どんな内容が記されているかはわかりません)。プレートの前では灰色の泥がプクプクと泡を立てています。地獄絵に出てきそうな風景ですね。

 
ここはかつて硫黄の採掘が行われていたようで、火山性の灰色の泥が湧出しているのみならず、黄色い硫黄で覆われた鉱床もところどころで露出していました。日本と違って過保護な柵やロープや注意看板が無いため、トレイルから外れなければ、安全にかつ余計な人工物を目にすることなく、地熱地帯の様子を観察することができます。一般的に地獄谷のような場所は、噴気孔から蒸気が噴出するため、その孔の真上で湯気が立ち上りますが、ここは孔のみならず一帯の地表から万遍無く湯気が上っているようでした。

 
日本だったらこれらの源泉に引湯用の黒いホースが何本も敷設され、付近には旅館が建ち並んでしまうのでしょうが、ここではそんな事態には陥らず、自然のままの姿が保たれています。


●野湯Skátalaug



(↑画像はクリックで拡大)
さて、この付近にある温泉ファンが好きそうな或る物を見つけに行きましょう。今回の旅でお世話になった"Enjoy Iceland"にはセルトゥーンの傍に入浴可能な野湯がある(このページ)と紹介されていたのです。是非とも行ってみなくては!
車のGPSの座標をN63°54.236,W22°02.599に設定し、42号線をクレイヴァルヴァトン湖方面に向け北上して走っていると、道は途中で未舗装となり、セルトゥーンから1km程で、道路から左の荒れ地へ車の轍が伸びている箇所を発見しました。その轍をたどって、車で行けるところまで行っちゃっても良いし、スタックが不安ならば路肩の広いところに車をとめて歩いてもOK。私は後者を選択しました。↑画像で小さく車が見えていますが、そこが路肩にあたります。目的地までは私の駐車場所から100~200mくらいです。

 
一帯はフワフワの柔らかな地表に短い草が生えている光景が広がっているのですが、東の山の方へ歩いていると、画像のような小さな沢とその湧出点を発見しました。この沢は流量が少ないため、川を形成できず、途中で地面に浸みこんで消えてしまっていますが、沢の周りは草の生育具合が良好なので、もしやと思って温度を測ってみると…


34.3℃もありました。立派な温泉です。しかし湧出量が少ないので、これでは入浴できませんね。


地図
歩く方向をちょっと南に転じてさらに進んでみると、突如目の前にこのような池が出現しました。池にしてはやけに形状が整っていますね。


池の上流には土管が埋設されており、そこから水が供給されているようです。この池は明らかに人工でしょうね。今回の目的地は、まさにこの池です。これが野湯Skátalaugであります。でも池面からは湯気が立っていないぞ…。しかも底には大きな水草が育っちゃってる…。


それもそのはず、池の温度は28.5℃しかありませんでした。冷たいわけじゃないのですが、入浴にはかなり低い温度です。しかもこの時の気温は12℃でしたから、もし入ったとしても湯上りに風邪をひいちゃいそうな予感がします。

 
土管の先をたどってみると、すぐに源泉にたどり着けました。土管から10mも離れていません。湧きたてのお湯の温度は34.4℃で、この温度なら入浴しても問題ありませんが、湧出地はちょっと浅すぎて、とても体が浸かれるような状態ではありません。


そこで、土管の傍ならギリギリ30℃あるかないかの温度でしたので、土管の脇で足湯を楽しみ、それで妥協することにしました。ご覧のように大自然に囲まれたとっても壮大な野湯です。"Enjoy Iceland"の紹介ページでは湯温が34℃と記されていますが、おそらく気候や地熱のコンディションによって上下するんでしょうね。もし再訪できる機会があれば、次回は晴天で気温の上がっている日を狙いたいと思います。
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