津軽地方の温泉を特徴に従い分類せよ、そしてそれぞれの代表例を一か所ずつ挙げよ、と命ぜられたら、私は温泉共同浴場という部門の中で食塩泉という細分類を設定し、その好例として三世寺温泉を挙げるでしょう。
弘前中心部から板柳方面へショートカットできる県道37号線沿いのわかりやすい立地で、日帰り温泉を取り上げたガイドブックにも大抵取り上げられているほど知名度が高い浴場です。目の前の路傍には専用の路線バス待合室があります。
無駄に広くて薄暗く、B級感が強く、全体的に古ぼけており、館内では爺さん婆さんが強烈な訛りで喋りあっている…。これは津軽の共同浴場に共通している特徴だったりしますが、三世寺温泉はいつもその特徴が明確に現れている施設ではないかと、私は勝手に思っています。一応この施設の正式名称は「三世寺温泉ホテル」と称するらしく、実際に今でも宿泊できるようですが、果たしてここをホテルと認識している人はどれだけいるんでしょうか。でも宿泊施設としての矜持なのか、ロビーは矢鱈に広く、受付のおばちゃんも元気がよく笑顔で対応してくれます。
でも脱衣所に入ると途端に典型的な銭湯の雰囲気に包まれます。
浴室は広々しており天井が高くて開放的。浴室の中央に長方形のデカい浴槽がデーンと据えられ、それを囲むように古典的な押しバネ式カラン&固定式シャワーがズラリと並んでいます(37ヶ所)。この特徴って津軽の他の温泉浴場でも共通して言えることでして、つまり三世寺温泉は津軽の温泉公衆浴場の典型スタイルと言っても過言ではないわけです。ただ、カランから出てくるお湯は真湯を使っており、源泉が出てくることが多い他の浴場とはちょっと異なる点です。
浴槽は2分割されており、手前側が広くて15人近くは入れそうな大きさで、底からは機械仕掛けの泡がブクブクと上がっています。泡風呂も青森県では(津軽のみならず南部でも)非常によく見られる施設です。一方仕切りの奥側は小さ目でお湯が熱め。仕切りの上にはライオンの湯口が設けられ、そこから両方へお湯が投入されているのですが、ライオンの口から出るお湯はどちらかと言えばぬるい方でして、奥側の槽の底からかなり熱いお湯が供給されていました。ライオン湯口周辺や奥側浴槽の中心に大量のお湯がオーバーフローしています。大量オーバーフローのかけ流しという湯使いも青森県らしい点ですね。
お湯は無色透明ほぼ無臭ながら、成分総計9.143g/kgという数値が示す通りに結構濃い目で、そのほとんどが食塩によって占められています。当然ながら口に含むとしょっぱく、塩味以外の味はあまり感じられないようでした。オリジナルの湯桶(一般的にケロリン桶と呼ばれるものと同形)には「熱の湯」とプリントされているように、食塩パワーによって湯上りはかなり火照ります。津軽の厳しい冬にはもってこいです。
弘前市街から比較的近くてわかりやすい立地、また古いB級施設ながら使い勝手は良く、お湯も良質でかけ流し、そして典型的な津軽の温泉公衆浴場のスタイルが徹底されているので、青森県の湯めぐり入門編としておすすめしたい一湯だと思います。
鳴瀬温泉
ナトリウム-塩化物温泉 51.5℃ pH7.4(BTB溶液による測定) 345L/min(動力掘削・深度550m) 溶存物質9.127g/kg 成分総計9.143g/kg
ナトリウムイオン3100mg/kg(93.61mval%)、塩素イオン4850mg/kg(93.53mval%)
弘前駅前(またはバスターミナル)から弘南バスの板柳行(または笹館行・天長園行)(40・41・42番)で三世寺温泉下車(弘前から約25分)
青森県弘前市大字三世寺字鳴瀬101 地図
0172-95-2662
5:30~22:00
(早朝営業というのも青森県の公衆浴場らしい特徴ですね)
300円
100円リターン式ロッカー・ドライヤーあり(青森県には珍しくドライヤーは無料)、石鹸などは販売
私の好み:★★