温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

三世寺温泉

2011年08月29日 | 青森県
 
津軽地方の温泉を特徴に従い分類せよ、そしてそれぞれの代表例を一か所ずつ挙げよ、と命ぜられたら、私は温泉共同浴場という部門の中で食塩泉という細分類を設定し、その好例として三世寺温泉を挙げるでしょう。
弘前中心部から板柳方面へショートカットできる県道37号線沿いのわかりやすい立地で、日帰り温泉を取り上げたガイドブックにも大抵取り上げられているほど知名度が高い浴場です。目の前の路傍には専用の路線バス待合室があります。

 
無駄に広くて薄暗く、B級感が強く、全体的に古ぼけており、館内では爺さん婆さんが強烈な訛りで喋りあっている…。これは津軽の共同浴場に共通している特徴だったりしますが、三世寺温泉はいつもその特徴が明確に現れている施設ではないかと、私は勝手に思っています。一応この施設の正式名称は「三世寺温泉ホテル」と称するらしく、実際に今でも宿泊できるようですが、果たしてここをホテルと認識している人はどれだけいるんでしょうか。でも宿泊施設としての矜持なのか、ロビーは矢鱈に広く、受付のおばちゃんも元気がよく笑顔で対応してくれます。
でも脱衣所に入ると途端に典型的な銭湯の雰囲気に包まれます。

 
浴室は広々しており天井が高くて開放的。浴室の中央に長方形のデカい浴槽がデーンと据えられ、それを囲むように古典的な押しバネ式カラン&固定式シャワーがズラリと並んでいます(37ヶ所)。この特徴って津軽の他の温泉浴場でも共通して言えることでして、つまり三世寺温泉は津軽の温泉公衆浴場の典型スタイルと言っても過言ではないわけです。ただ、カランから出てくるお湯は真湯を使っており、源泉が出てくることが多い他の浴場とはちょっと異なる点です。
浴槽は2分割されており、手前側が広くて15人近くは入れそうな大きさで、底からは機械仕掛けの泡がブクブクと上がっています。泡風呂も青森県では(津軽のみならず南部でも)非常によく見られる施設です。一方仕切りの奥側は小さ目でお湯が熱め。仕切りの上にはライオンの湯口が設けられ、そこから両方へお湯が投入されているのですが、ライオンの口から出るお湯はどちらかと言えばぬるい方でして、奥側の槽の底からかなり熱いお湯が供給されていました。ライオン湯口周辺や奥側浴槽の中心に大量のお湯がオーバーフローしています。大量オーバーフローのかけ流しという湯使いも青森県らしい点ですね。


お湯は無色透明ほぼ無臭ながら、成分総計9.143g/kgという数値が示す通りに結構濃い目で、そのほとんどが食塩によって占められています。当然ながら口に含むとしょっぱく、塩味以外の味はあまり感じられないようでした。オリジナルの湯桶(一般的にケロリン桶と呼ばれるものと同形)には「熱の湯」とプリントされているように、食塩パワーによって湯上りはかなり火照ります。津軽の厳しい冬にはもってこいです。

弘前市街から比較的近くてわかりやすい立地、また古いB級施設ながら使い勝手は良く、お湯も良質でかけ流し、そして典型的な津軽の温泉公衆浴場のスタイルが徹底されているので、青森県の湯めぐり入門編としておすすめしたい一湯だと思います。


鳴瀬温泉
ナトリウム-塩化物温泉 51.5℃ pH7.4(BTB溶液による測定) 345L/min(動力掘削・深度550m) 溶存物質9.127g/kg 成分総計9.143g/kg 
ナトリウムイオン3100mg/kg(93.61mval%)、塩素イオン4850mg/kg(93.53mval%)

弘前駅前(またはバスターミナル)から弘南バスの板柳行(または笹館行・天長園行)(40・41・42番)で三世寺温泉下車(弘前から約25分)
青森県弘前市大字三世寺字鳴瀬101  地図
0172-95-2662

5:30~22:00
(早朝営業というのも青森県の公衆浴場らしい特徴ですね)
300円
100円リターン式ロッカー・ドライヤーあり(青森県には珍しくドライヤーは無料)、石鹸などは販売

私の好み:★★
コメント (3)
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(黒石)岩木温泉

2011年08月29日 | 青森県
青森県には岩木温泉と称する温泉が二つあり、ひとつは岩木山神社の境内に、もうひとつは黒石市街の外れの河岸にそれぞれ位置しています。今回取り上げるのは黒石市街にある後者の方です。前者なら岩木山の象徴的な存在の傍にあるので岩木の名前を冠しても不思議ではありませんが、黒石の方は岩木山から離れていますし、目の前に流れている川は岩木川ではなく浅瀬石川ですし(岩木川の上流には違いありませんが)、なぜ岩木を名乗っているのか、よくわかりません。見晴らしの良い川沿いにあって岩木山がよく眺望できるってことなのかしら。名前はともかく、お湯の質は良いので紹介させていただきます。

 
上述のように市街地のはずれに立地し、あたかも民家のような浴場らしくない地味な外観であるため、予め場所がわかっていないと見逃してしまいがち。たったひとつの電照看板、そして隣接しているローソンが、探し当てる目印になるかと思います。駐車場は意外と広め。

 
外観も内部もまるで昭和から時が止まっているかのような雰囲気。玄関の上がり框とその奥の薄暗い休憩スペースとの間は、薄曇りのアクリル板のようなものを嵌め込んだ引き戸で仕切られており、これが独特の鄙び感を醸し出していました。
男女別の入り口の先には脱衣所があり、それを挟むように番台が据えられています。伝統的な銭湯スタイルですね。脱衣所には棚が無いので、積んである籐の籠に服を入れたら、それを床に置きっぱなしにします。ロッカーは無いので、貴重品は番台へ。


質実剛健と言うべきか、いかにも昭和30~40年代的銭湯のような中間色タイル貼りの浴室。洗い場と浴槽の他、サウナと水風呂があって、このサウナが人気を集め、土曜夕方で常時6~8人が出たり入ったりしていました。銭湯に必須なカランは、青森県では一般的な古いタイプの押しバネ式スパウトと固定式シャワーが、浴室の左右と中央の島に計23ヶ所設けられています(うち2ヶ所はシャワー無し)。洗い場の奥に据えられた浴槽は仕切りで2分割されており、広い左側は一般的な深さ、狭い右側は3~4人サイズでちょっと深く、立ち膝でちょうどよい感じです。両者は仕切り底の穴でつながっています。

津軽平野のお湯はえてして大なり小なり塩味を帯びていることが多いのですが、こちらのお湯はこの地域には珍しく無色澄明無味無臭で全く癖が無く、スベスベや引っかかりのような特徴的な浴感があるわけでもなく、ごくごく普通のお湯なのです。しかし、見惚れるくらいに綺麗に澄みきっており、しかもオーバーフローの量がかなり多く、洗い場はちょっとした洪水状態になっていました。知覚や浴感こそ没個性かもしれませんが、新鮮で清らかなお湯が大量掛け流されており、とっても爽快な湯浴みができました。湯巡りをして津軽の個性的なお湯に飽きたら、あえてここのお湯をワンクッションに置いて感覚をリセットさせるのも良いかと思います。日常の入浴でしたら、成分の濃い温泉より、ここのような味も匂いも無い薄いお湯の方が使い勝手が良いでしょうね。主張の強い温泉が良いとは限らないことを再認識させてくれた温泉です。


黒石岩木温泉(再分析)
単純温泉 43.5℃ pH8.02 湧出量不明(動力揚湯) 溶存物質0.304g/kg 成分総計0.306g/kg
(試験日平成20年12月18日)

弘南鉄道弘南線・黒石駅より徒歩15分(約1.1km)
青森県黒石市袋井2-33-34  地図
0172-52-3658

9:00~21:30
350円
ドライヤー有料、その他の備品なし、石鹸等は販売

私の好み:★★
コメント (2)
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