温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

アイスランド クラプラ(Krafla)の地熱発電所・地熱地帯・そして野湯

2011年08月16日 | アイスランド
●クラプラ地熱発電所
 現地の位置(Google Map)
 
アイスランドは国内で供給される電力を水力と地熱で賄っており、なかでも地熱はその約3割を占めているんだそうです。温泉好きが高じて日本国内の地熱発電所巡りもしている私は、ご当地の地熱発電所がどういうものか関心を抱き、北部アイスランドのミーヴァトン湖東側にあるクラプラ(Krafla)地熱発電所を訪れてみました。クラプラ火山麓に建設されたこの発電所は1975年に稼働を開始し、60MWhの発電能力を有しています。単一ユニットとして考えた場合の日本最大の地熱発電所は、福島県会津地方にある柳津西山地熱発電所が65MWhですから、それにほぼ匹敵する能力があるわけです。

 
道路に面したこの白い建物は冷却塔。タービンを回転させた熱い蒸気は復水器で凝縮され、そしてこの冷却塔で外気に接触させることにより冷却されて、再び復水器へ戻ってタービンの回転に利用されたり、あるいは還元井から地中へ戻されます。

 
冷却塔に隣接したこの赤い建物にはタービンと発電機が設置されています。いわば発電所の心臓部ですね。日本の地熱発電所はセキュリティー等を理由に、発電所内部への立ち入りはできず、敷地内の端っこにちょこっと設けられたPR館で模型や映像が見られるだけですが、この発電所は内部に立ち入って実物を見学することができるのです。しかも予約不要で無料。なお開館時間は毎日10:00~16:00です。


エントランスホールはこじんまりとしており、展示物も必要最低限といった感じですが、映像ルームが設けられており、発電所の説明やクラプラの火山活動・噴火に関するビデオを見ることができます。事前に申し出れば英語版で見ることが可能。言葉がわからずとも映像だけでも理解できる構成ですので、訪問の際には是非見ていきましょう。


エントランスホールにはボーリング掘削の際に使用された(と思しき)ピットが展示されていました。

 
係員のお姉さんの引率により、階段を上がっていきます。踊り場にはタービンを中心とした発電所関係の写真が掲示されていました。その多くは建設当時の様子を撮影した物のようですが、タービンを据え付けようとしている写真には、極東人らしき人物がその作業を指示監督している状況が写っています。

 
階段を上がりきると、そこは広大なホールを見下ろすデッキのようなところでした。室内にはものすごい音が響き渡っています。案内のおねえさんは階段を登る途中に騒音対策の耳当てを装着していましたが、見学客は数分滞在するだけなので、特に何か装備するようなことはありません。このホールの中央には濃紺に塗られたタービンと発電機が据え付けられていました。ものすごい騒音はタービンから発せられているわけですね。


この見学デッキにもいろんな機器が設置されているのですが、特に立ち入り禁止になっているわけでもなく、触りたい放題だったりします。大丈夫なのかしら。

 
さきほど、建設中の写真に極東人が写っていると述べましたが、それもそのはず、この発電所は日本の技術供与によって建設されたのであり、つまり件の極東人は日本人なのであります。更に言えば、実際に関与したのは三菱重工でして、タービンケースにはお馴染みの三菱の家紋、そして"MITSUBISHI HEAVY INDUSTRIES"という銘板が誇らしげに輝いていました。館内には三菱が携わった世界の地熱発電所の一覧も掲示されています。脱原発&CO2削減という課題に直面している我が国ですが、地熱資源は豊富にあるんですから(その量たるや世界3位)、他所の国の発電に貢献しているのなら、自分の国にも積極的に造って有効活用していただきたいものです。

さて、地熱発電所は当然ながらマグマの熱を利用しており、その特性上、どうしても活動中の火山や地熱地帯の傍に建設する必要があります。ということは、火山の噴火に襲われてしまう可能性があり、実際にこのクラプラ地熱発電所は、1981年にすぐ傍のレイルフニュークルが、そして1984年にはクラプラ火山が噴火して、とっても危ない状況に陥ったんだとか。


そこで発電所見学を終えたあと、簡単なトレッキングが楽しめるレイルフニュークルという火山の丘に登ってみることにしました。道の途中では蒸気を通す配管がクネクネ曲がりながら路上を跨っているので、そこを潜っていきます。


●レイルフニュークル(Leirhnjúkur)
 地図(Google Map)
 
駐車場に車を置いて約1時間のお散歩開始。前方に盛り上がっている小高い丘に登りながら一周するコースを歩きます。駐車場には簡易トイレとホットドッグを売っている屋台がありました。

 
ここは活発な地熱地帯で、発電所の箇所で記した通り、1981年に真っ赤な溶岩を噴出させており、その時に冷えて固まった溶岩が、黒光りしながら台地のような形状をなして広がっています。

 
黒い溶岩の上を歩いてゆくと、やがて現役の地熱地帯へと導かれていきます。温泉湧出箇所には木道が設置されているので、その上を歩きます。湧出地ではフツフツと音を立てながら白濁した温泉が池をつくっていました。入浴してみたい気持ちは山々ですが、多分熱湯でしょうし、そもそも立入禁止なので、ここはすんなり諦めました。

 
あたり一帯は黒い溶岩だらけ。日本も火山国ですから、国内を旅行していれば溶岩を目にする機会は多いのですが、ここまで大規模に真っ黒い多孔質の溶岩が広がっている場所ってあるでしょうか。溶岩が冷えて固まったそのままの姿を見て、そして触れることができるんです。ついさっきまで溶岩が流れ、そしてたった今目の前で固まったばかりのような、ものすごい迫力が感じられました。溶岩に触れると今でも温かいんです。いや、熱いと表現すべき温度でした。路傍のあちこちで蒸気が噴き上がっています。


(↑画像クリックで拡大)
見渡す限り黒光りする溶岩の台地が広がっています。溶岩が流れて平地を焼き尽くしたんでしょうね。

 
(↑画像クリックで拡大)
スタートから35分ほどで丘の上に到達。360度の大パノラマです。しかも目に入ってくる光景は、すべて溶岩によって焼き尽くされた黒い不毛の大地。この異様な景色を何と表現、形容したらいいのでしょう。SF映画に出てきそうな、実に不思議かつ壮大な眺めです。



(↑画像クリックで拡大)
駐車場側を眺めてみると、新しくて真っ黒い溶岩、それより古い褐色を帯びた溶岩、そして緑の草原がトリコロールとなって、はっきり色別されているのが確認できます。荒々しい自然の色彩美とでも言いましょうか。特に黒い溶岩は流れていった様子が形となって残っているため、とても生々しいのです。いまにも草地を襲いそうな迫力でした。


●クラプラの野湯
1時間のお散歩で軽く汗をかいたので、ちょっとサッパリしていきたいものですね。どこか良い場所はないかしら…。そこで、このページ最上部に載せた画像に再登場してもらいましょう。


この画像です。クラプラ発電所を眺めているこの画像の下には小さな川が流れていますね。


クラプラへの一本道の路傍にはこのような案内看板が立っていますが、上の画像の撮影場所は、この看板が立っているところのちょっと手前(1号線側)です(地図)。一本道から砂利の路地が右に伸びています。


川面からは湯気が上がっているので、水の温度を測ってみると、35.7℃でした。これは十分に入浴できる温度ですね。

 
その路地は丸い大きなFRPの管で川を跨いでおり、その管の川下にはちょっとした堰ができていました。上の2枚の画像は同じところをアングルを変えて写しています。軽く堰きとめられていることにより、その部分だけ川は程々の深さになっており、しかも温度が入浴に適している…

 
ならば入っちゃえ! ということで車で水着に着替えて川へ入っちゃいました。無機質なFRP管のおかげで排水路っぽく見えちゃいますし、事実、発電所で使われた温水が捨てられている川なんだと思いますが、川自体は汚れておらず、生活排水が流れているわけではないでしょうから、私としては無問題。むしろ、入浴している時には川下方面に壮大な眺望が得られるので、とっても爽快でした。私が写っている画像の手前には不気味な泡がかたまっていますが、これって何かしら…。でも気にしない気にしない。


お湯(というか川)からは軟式テニスボール臭とタマゴ臭を足して2で割ったような硫黄的な匂いが漂い、弱いツルスベ浴感があります。pH計は8.8を表示していました。アルカリ性の硫黄泉なんだと思います。
景色は良いし、ぬる湯で長湯できるし、硫黄感はしっかりしているし、お湯は川だからどんどん流れてくるし、とっても気持ちよい野湯でした。
しかしながら、川の流れが管で集められて一気に解放されるポイントですから、ここの流れの勢いは結構強く、場所によっては流されちゃいそうになる。川の温度は時間や天候など諸条件により上下する(実は入浴する前日にもここを訪れて温度を測ったのですが、その時は31℃しかありませんでした)。また、川底は白い硫黄分が付着した苔が生えているため非常に滑りやすい。そしてその苔がはがれてたくさん舞いあがっているので、川に入ると全身に苔の破片が付着しちゃって気味悪い。更にはクラプラへの一本道から丸見えなので、道路を走る車から「こいつ、ここで何やってんの?」という好奇の目で見られる。極めつけは、川面に怪しい泡が浮いているので、衛生面が気になる…などなど、諸々の問題点も挙げられるため、特に衛生面が気になる方はNGかと思います。逆に「野湯はそういうものだ」と開き直っている温泉ファンの御仁でしたらおすすめです。

※なお、この野湯を探し当てるには、Takemaさんのサイトこのページを参考にさせていただきました(同じ場所で入浴させていただきました)。

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東南アジアの目次

2011年08月15日 | 東南アジア旅行記
2015.12.16更新

当ブログで記事にしてきた東南アジアの温泉や旅行記を一覧にしました。


●東南アジア旅行記
マレー半島 鉄道北上記 その1
マレー半島 鉄道北上記 その2
マレー半島 鉄道北上記 その3
マレー半島を格安航空会社で南下 その1
マレー半島を格安航空会社で南下 その2
ミャンマー 国境の街タチレクへ2時間の小旅行 その1
ミャンマー 国境の街タチレクへ2時間の小旅行 その2
ミャンマー 国境の街タチレクへ2時間の小旅行 その3
カンボジア トンレサップ湖のスポードボート(2014年) 前編
カンボジア トンレサップ湖のスポードボート(2014年) 後編
カンボジア現代史の暗黒 その1 キリング・フィールド
カンボジア現代史の暗黒 その2 S21(トゥール・スレン)
プノンペンの街をせわしなく逍遥 前編
プノンペンの街をせわしなく逍遥 後編


●タイ北部
チェンマイ県メーオーン郡 サンカムペーン温泉
チェンマイ県メーオーン郡 ルンアルン温泉
チェンマイ県ドーイサケット郡 ドーイサケット温泉
チェンマイ県プラーオ郡 ノーンクロック温泉
チェンマイ県プラーオ郡 ポーン・ブア・バーン温泉
チェンマイ県サムーン郡 ポーンクワーン温泉
チェンマイ県サムーン郡 メートー温泉
チェンマイ県メーテーン郡 ポーンドゥアット温泉 その1
チェンマイ県メーテーン郡 ポーンドゥアット温泉 その2
チェンマイ県チェンダオ郡 チェンダオ温泉(土管温泉)
チェンマイ県チェンダオ郡 ピン川の川原で野湯
チェンマイ県チェンダオ郡 ポーンアーン温泉
チェンマイ県チャイプラーカーン郡 熱水塘温泉
チェンマイ県ファーン郡 ファーン温泉 前編
チェンマイ県ファーン郡 ファーン温泉 後編
メーホンソーン県 ターパイ温泉
メーホンソーン県 パーイ・メモリアルブリッジ下の土管風呂
メーホンソーン県パーイ Pripta Resort その1
メーホンソーン県パーイ Pripta Resort その2
チェンライ県メースワイ郡 ランナー温泉
チェンライ県ムアンチェンライ郡 パースー温泉
チェンライ県ムアンチェンライ郡 ポーンプラバート(バンドゥ)温泉
チェンライ県メーチャン郡 パートゥン(ファイヒンフォン)温泉
 

●タイ南部
タイ クラビ クロントム温泉(及びクリスタルプール)
ビーチリゾート・男一人旅 タイ・クラビ その1
ビーチリゾート・男一人旅 タイ・クラビ その2


●マレーシア
マレーシアの温泉巡りに役立つ情報
ペラ州 ルブクティマー温泉 Lubuk Timah Hot Spring
イポー郊外 スンガイクラー温泉 Sungai Klah Hot Springs Park
クアラルンプール近郊 スラヤン温泉 Selayang Hot Spring
ヌグリ・スンビラン州 ウェットワールド アイルパナス ペダス リゾート
マラッカ州 ガデク温泉 Gadek Hot Spring
マレーシアのレンタカー初体験
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アイスランド ミーヴァトン・ネイチャーバス(Myvatn Nature Baths)

2011年08月14日 | アイスランド
 
アイスランドの温泉といえば、世界最大の露天風呂「ブルーラグーン」が超有名ですが、北アイスランドにもこれに勝るとも劣らない立派な観光客向けの露天風呂があると聞き、行ってみることにしました。その名もミーヴァトン・ネイチャーバス(Myvatn Nature Baths)。実にストレートなネーミングです。なおアイスランド語では"Jarðböðin við Mývatn"と表記するんだそうでして(私にゃ読めませんけど…)、道路の標識もこの現地語で表記されていますから、自分で行かれる方はそのことを念頭に置かれるとよいかと思います。
場所はミーヴァトン湖畔の観光拠点レイキャフリーズ(Reykjahlíð)から1号線を東進し、約2.7km進んだら丁字路を右折、未舗装の路地を南下してゆけば、その突き当たりが目的地です。1号線の丁字路には上に出したロゴがプリントされた小さな標識が立っていますので、それを見逃さないように。レイキャフリーズから大した距離じゃありませんから、当地の宿泊施設などで自転車を借りてサイクリングしても良いかと思います。

 
不毛な溶岩地形の丘の上に位置するこの露天風呂は、2004年6月に開業した比較的新しい施設で、界隈では屈指の観光名所になっており、訪問時にも駐車場にはたくさんの車がとまっていました。ガラスを多用した建物は明るく開放的で、内部にはカフェテリアも併設されています。

 
駐車場と露天風呂の境には、このような円形の源泉施設があり、熱湯を湧出させながら、濛々と白い湯気を上げていました。地下2500mから汲み上げているんだそうです。


(↑クリックで拡大)
レセプションで料金を支払うとコインを1枚受け取ります。このコインを手にして更衣室へ。
なおレセプション前にはお土産が陳列されていますが、品揃えはそんなに多くありません。でもその中で注目すべきは、無料でもらえる日本語リーフレット。紙面ではこの温泉に関する説明が述べられています。アイスランドでは滅多に日本語を目にしないため、とっても貴重な存在です。ここで記されている内容を要約してみると…

・湯温は36~40℃で安定。
・含有ミネラルが温泉内の不衛生なバクテリアや藻の発生を生育を妨げるので、衛生管理のために化学的な薬剤を使う必要がないのが自慢。
・主要ミネラルを含んでいるので薬効がある。硫黄分を含んだ源泉は喘息や老人性の疾患に良いとされており、ある種の微量元素は肌の疾患に効き目あり。
・湧出口は3か所あり、それぞれ常時50人ほどの客が楽しめる。いずれも地下から垂直に湧出する清潔で汚染されていない源泉である。
・ミーヴァトンの人々は10世紀の植民開始当初より、健康管理と増進のために温泉浴に親しんできた。

などなど。ご覧いただければわかりますが、外国によくある不自然な日本語ではなく、ちゃんとした言葉使いですので読みやすく、また簡潔にまとめられているので、入浴前に一読すると、理解を深めながら湯あみすることができるかと思います。

男女別の更衣室は、まず入口で靴を脱いでから室内へ。客の多さの割にはスペースが狭く、ロッカーは自分の好きな場所を使うことができるのですが、この時はほぼすべてが使用中でして、私はかろうじて残りのひとつを確保することができましたが、後客はロッカーが使えずに途方に暮れていました。なお受付でもらったコインはロッカーの施錠の際に使用します。ロッカー扉の裏にある投入口にコインを入れることにより、鍵が回せる(施錠可能な)状態になります。鍵を開けると返却口にコインが戻ってきますので、何度でも施錠と開錠が可能。帰るときは返却口にコインを置きっぱなしにしておけば、係員さんが定期的に回収してくれます(コインは置きっぱなしにしておいて、という注意書きがあります)。
ロッカーのみならず、シャワーの数も少なく、シャワー前には全裸のお客さんが行列をなしていました。ロッカールームとシャワールームとの間は仕切りがなく床がフラットなので、ロッカールームの床はビショビショ。この国に限らずこうした状況は海外でよく遭遇しますが(台湾はその典型)、その点、入浴文化先進国の日本(やドイツ・オーストリア)はちゃんとしているなぁと感心させられます。
後で知ったのですが、さすがに施設側もこの混雑を放置しているわけではないようでして、メイン棟の下足場から一旦露天風呂側へ出た左側にも別棟のシャワールームが増設されており、そこでも着替えができるようです。

 
おお! 更衣室を出ると目の前には溶岩台地の上に青白く濁ったお湯を湛える広大な露天風呂が広がっていました。本当にデカい! お風呂だけで5000㎡もあるんだとか。露天風呂は3つあり、一番手前はちいさくて目立たず、あまりお客さんもいない模様。3つあるうちで一番湯温が高いため、日本人向きではありますが、欧米人にはちょっと熱すぎるみたいです。中央は36~7℃くらいの長湯向けで、ここにみなさん集中しています。見晴らしの良い奥の浴槽は、広さも一番の規模なのですが、ぬるすぎるためか、ガキンチョお子様以外はあまり利用していませんでした。

 
↑左(上)画像は中央の浴槽から建物を撮った様子。画像ではほとんど移っていませんが、露天風呂のプールサイドには長方形のホットタブがあり、こちらにも白濁の温泉が引かれ、温度も40℃以上あるので、しっかり温まりたい人はこちらをどうぞ(でも結構小さくて、同時に10人入れるかどうか)。またサウナも完備。夏でも外気温度が15℃ありませんから、ホットタブやサウナなど、しっかり温まれる設備はありがたいです。

 
こちらは湯口。火傷しそうになる程かなり熱いお湯が大量に出てきますので、あまりこの付近には近寄らないように。常時熱いお湯が出ているわけではなく、熱かったりぬるかったりと、出てくるお湯の温度にはムラがありました。おそらく人為的に温度管理をすべく、そのような出方をしているのではないかと思います。
浴槽はコンクリや木材、石材などの建材で固められているわけではなく、単に溶岩の土地を掘ってお湯を貯めているだけ、といった感じで、これも敢えてそうすることによって自然な感じを醸し出しているんでしょう。従いまして、整備されていない湯口周りのプールサイドを裸足で歩くと、トゲトゲの溶岩が足の裏に刺さって歩きづらいんです(勿論脱衣所側のプールサイドは歩きやすく整備されていますよ)。また泉質由来のヌルヌルが底に付着しているため、けっこう滑りやすいので、その点もご注意を。

お湯は上述の通り、青白くきれいに濁っており、透明度は50~60cmといったところでしょうか。ツルツルスベスベ感がとても強い気持ち良い浴感で、リーフレットにも書かれていたように、たしかにお肌にはとっても良さそうです。湯面からは硫黄の香りが漂い、とりわけ湯口付近では刺激のある硫化水素臭が感じられます。口に含むと苦みが強く、いつまでも口腔内に残る苦さと渋みが印象的で、これに焦げたような味も若干加わります。

中央の露天の湯加減は先に述べたとおり不感温度帯である36~7℃くらいなので、いつまでも長湯していられます。本当に気持ち良い! 私も2時間ほど入りっぱなしでした。他のお客さんもじっとお湯に浸かって、瞑目しながら静かにリラックスしていました。不感温度帯のお湯は日本人にはぬるく感じてしまうかもしれませんが、この温度のお湯に長く使っていると、副交感神経が働き、精神・神経がリラックスするのみならず、身体の自己回復力も増進されるので、心身の健康にはとっても良いのです。余談ですが、日本人はお風呂が大好きですが、その割には熱いお湯を好む傾向にあり、熱いお湯は交感神経が働いてしまうので、心身の緊張状態を招いていることになります。日本人は温泉資源に恵まれていながら、それをうまく活用していないような気がしてなりません。

ま、私の余計な薀蓄と私見はともかく、このお風呂は本当に気持ちよく爽快でした。北アイスランド訪問の際には、入湯必須です。冬でも夜10時まで営業しているので、運が良ければ露天風呂に浸かりながらオーロラを鑑賞できるかもしれませんね。


6月1日~8月31日→9:00~24:00(最終受付23:30)
9月1日~5月31日→12:00~22:00(最終受付21:30)
大人2500kr、12~15歳1000kr、11歳以下無料
レンタルタオル・水着:各500kr
ホームページ

所在地: Jarðbaðshólar  地図
電話:+354-464-4411
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アイスランド グリョゥタギャウ(Grjotagja) 洞窟温泉

2011年08月14日 | アイスランド
地球の表面はいくつものプレートに分かれており、このプレートが少しずつ動いていることは皆さまご存じの通りです。世界の最高峰ヒマラヤ山脈はユーラシアプレートにインド・オーストラリアプレートが沈み込んだことによる造山運動があのような高い山々を生み出したのであり、また、先日の東日本大震災におけるM9.0の東北関東太平洋沖地震は、北米プレートに太平洋プレートが沈み込む際に蓄積していたひずみが地震発生の原因になりました。
4つの大きなプレートが集中する日本は海洋プレートが沈降する場所ですが、アイスランドはその逆でして、島の中央で地中から大西洋中央海嶺が盛り上がり、北米プレートとユーラシアプレートがパックリ二つに分かれてゆく、地球の裂け目が現れている場所であります。この地球の裂け目の代表例が世界遺産にもなっているシングヴェトリル国立公園ですが、北アイスランドの観光名所集中地域であるミーヴァトン湖周辺にも地球の裂け目を幾筋か見ることができ、その中の一つが今回取り上げるグリョゥタギャウ(Grjótagjá)です。ここには、単に裂け目があるだけでなく、神秘的で素敵な温泉が存在しているらしく、どんなところか自分の目で確かめるため、行ってみることにしました。


ミーヴァトン湖畔の観光拠点の街レイキャフリーズ(Reykjahlíð)から環状道路1号線を東進し、約2kmで右折して未舗装路の860号線に入ります。辺りは地熱の噴気地帯なので、車窓にはところどころで白い蒸気が上がる様子が望めます。道なりに走って2km程進むと、やがて駐車スペースが確保された広場に到着。道の右側には岩の長い壁がずっと向こうへ続いています。まずはここに車をとめてこの岩の上に登ってみましょう。なおここへは車で無くとも、レイキャフリーズから平坦な遊歩道を約2km歩いても辿りつけます。

 
上に登ると、岩がパックリと二つに裂けており、その裂け目が延々と続いています。これこそ地球の裂け目なんですね。地中深くから盛り上がったマグマのパワーがここで二手に分かれ、それぞれ北米プレートとユーラシアプレートとなって少しずつ移動してゆくわけです。ここに立つと地球の神秘に立ち会えたような気がします。

 
常日頃から自己嫌悪に陥っている私は、いつもは自画撮りが大嫌いなのですが、この時は思わず興奮してしまい、地球の裂け目に跨って記念撮影してしまいました。三脚を立てて構図に迷っている私を見かね、ご親切にカメラのシャッターを切ってくださったイタリア人のおばさま、ありがとうございました。なお、これら写真で私は北を向いており、左足(画像右側)は北米プレートに、右足(画像左側)はユーラシアプレートに、それぞれ立っていることになります。
ちなみに、ここで分かれた北米プレートとユーラシアプレートは一体どこで邂逅するのでしょうか。その場所こそ我が日本列島なのであります! 糸魚川静岡構造線で有名なフォッサマグナが両者の境界に当たるんだそうです(糸静線はその西側の縁)。つまりグリョゥタギャウは遠い日本と決して無縁ではないのです。

 
さて、ここでの目的は裂け目を見学することだけではありません。駐車スペースの真ん前に位置する岩の下にはこんな穴が口を開けています。ちょっと中に入ってみましょう。なお傍に立てられている札には落石危険の注意喚起が書かれています。たしかに岩が今にも崩れてきそうな状況ですから、ここから先の行動は自己責任で。

 
岩の口の下には洞窟が広がっており、そこにはコバルトブルーの水が湛えられています。とっても神秘的な雰囲気です。この洞窟内はけっこう蒸し暑く、なぜそのような状況なのかといえば、このコバルトブルーの水に原因がありました。


洞窟内のコバルトブルーの水はなんと温泉なのであります。湯温を計測すると45.3℃。入浴できないこともないのですが、ちょっと熱いですね。洞窟内のお湯をじっと観察していると、どうやら北から南へゆっくり流れているようです。もし源泉が北にあり、そこから単純に流下しているのであれば、下流の方が温度が下がっているはず。そこで、この穴での入浴は諦め、別の場所を探してみることにしました。


駐車スペースから数十メートル南へ移動すると、別の洞窟の穴が開いていました。先ほどの穴は見学する観光客の姿が多いのですが、わずか数十メートル離れただけなのに、こちらの穴には誰も訪れようとしません。ではさっそく中へ。

 
この洞窟内にもコバルトブルーの綺麗なお湯が溜まっていました。明らかに先ほどの洞窟から流れてきているようです。外の光が入ってくるので洞窟といえどもあまり暗くなく、しかも広い空間が広がり、絶妙な岩の配列により、湯面下が段々になっていて、少しずつ安全にお湯に入りやすい構造になっていました。まさに自然の妙であります。

 
温度は43.5℃でした。予想通り、先ほどの穴よりは温度は下がって、日本人には入浴しやすいコンディションとなっています。ついでにpHも計測したら7.8でした。アルカリ泉の多いアイスランドにしては珍しく中性です。この穴にはあまり観光客が来ないので、人目を気にせず行動できるのも嬉しいところ。良い湯加減であることが確認できたので、水着に着替えて入浴してみることに。


最高! その一言に尽きます。日本にも洞窟風呂と称するものはありますが、そのほとんどは人工か、あるいは崖の下を無理やり洞窟に見立てている代物が殆どです。でも、ここは正真正銘の洞窟、しかも地球の裂け目でもあるのです。こんな温泉は他にありますでしょうか。
お湯はやや暗い感じの神秘的な青色透明で、肉眼ではそれほどでもありませんが、ご覧頂いているように画像に写すと外の光の影響で綺麗なコバルトブルーに発色します。芒硝的な匂いとともに、何かが焦げたような香ばしい匂いが漂い、味はほぼ無味。上述のように中性のお湯で、浴感にはあまり特徴はありません(ツルスベでも引っかかるわけでもない)。私がお湯に入ると湯面は小さく波立つのですが、それが岩の隙間に入ると、波と岩がぶつかって独特の音が洞窟内に反響し続けます。色、雰囲気、音、そして地理的特徴、その全てがこの上なく幻想的である、素晴らしい温泉です。


地図  GPSコード:N65°37.586, W16°52.949
無料 野湯につき何らの備品もありません
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アイスランド ヴァルマフリーズ(Valmahlid)のホテルやプールに供給されている温泉水

2011年08月13日 | アイスランド
世界最北の首都レイキャヴィクでは、市内に地熱エネルギーを利用した暖房・給湯システムが整備されており、蛇口をひねると硫黄の香りがするツルスベ感の強いアルカリ性の温泉が出てきます。温泉好きな人間にとっては何とも羨ましい話ですが、これはレイキャヴィクに限ったことではなく、アイスランド国内でも地熱が得られる場所であれば、小さな集落であっても同じような暖房熱や温泉(お湯)の供給が行われています。今回は旅行の途中で宿泊した北アイスランド西部の小さな街ヴァルマフリーズ(Valmahlíð) における事例を取り上げてみます。


●ホテル・ヴァルマフリーズ

環状道路1号線沿いの小さな街ヴァルマフリーズは人口が約140人で、この地名には「熱い温泉の山の斜面」という意味があるんだそうです(出典「アイスランド観光文化研究所」)。1号線と75号線の分岐点という立地ゆえ、小さな街ながらちょっとした観光拠点になっており、何軒かの宿泊施設があるのですが、私が泊まったのは、その名もズバリ「ホテル・ヴァルマフリーズ」。本来は少々質素でいいから安い宿にしたかったのですが、ハイシーズンであるためか、なかなか希望に沿ったお宿が見つからなかったため、料金がちょっと高めでしたがこのホテルを予約しました。1号と75号の交差点にスーパーマーケットが併設されているGSのN1がありますが、その真上に位置しており、とっても分かりやすくて便利なロケーションです。


ホテルの場所は若干小高くなっているため、眺めは良好。フィヨルドの入江から続く緑の平原が目の前に広がり、その向こうには青い山脈は連なっています。


腹が減っては戦どころか湯浴みすらできぬ…というわけでもないのですが、この時やたらと腹が減っていたので、チェックイン後にすぐレストランへ直行してしまいました。チョイスしたのは、地元産の塩鱈ソテー(マッシュポテト添え)。肉厚でプリプリの鱈はめちゃくちゃ美味かったですよ。


今回宛がわれた部屋は、ご覧のダブルルーム。一人で泊まるには無駄に広い部屋でした。テレビはあるけど冷蔵庫は無し。1階レセプション付近ではWi-Fiが使えますが、客室では不可でした。この日はかなり暖かく、窓を開けないと室内では汗をうっすらかいてしまうほどでした。


そうそう、このブログの趣旨は温泉を取り上げることでしたね。客室にはそれぞれバス・シャワーがついています。バスタブはありません。シャワーにはちゃんと引き戸が閉められる仕切りが付いているので、トイレまでビショビショになることはありませんでした。


シャワールームにはこんなシールが貼ってありました。文章を抜粋してみると…
A Few facts about Iceland's natural water
Cold water comes directly from underground springs. It is pure and refreshing and perfectly suited for drinking. It meets all international standardsfor pottable water.
Hot water. Geothermal water that comes from deep boreholes has a slight natural smell of sulphur. It is excellent for bathing and washing. Silver jewellery may tarnish if worn while bathing.
Caution: The hot water can be over 80℃ hot (175°F)
Water in Iceland is a renewable natural pure source but do not waste it.
Conserve water - conserve energy
Federation of Icelandic Energy & Waterworks, The Icelandic Travel Industry Association

意訳すると…「冷たい水道水は地下水を利用しており、とってもピュアで飲用に適していますよ。温水はボーリングにより地下深くから得られた地熱の温水(つまり温泉)であり、ちょっと硫黄の匂いを有していますが、入浴や洗濯にはもってこいです、シルバーの宝飾品を身につけて入浴すると(硫黄のため)変色しちゃいます。温水は摂氏80度(華氏175度)以上になることがあるから注意してね。アイスランドの水は再生可能な純粋の天然資源であり環境を汚染しません・・・」という感じになるでしょうか。このシールの発行者がFederation of Icelandic Energy & WaterworksとThe Icelandic Travel Industry Associationの連名になっていますので、このホテルのオリジナルではなく、国全体として水道や温泉の供給事情が共通しているんだと思います。
実際、アイスランドの水道水は冷たくてとっても美味しい軟水ですから、旅行中はごくごく飲んじゃいました。海外旅行では訪問先の水事情が気になりますが、アイスランドでは何らの心配も要りません。


シャワーのコックをひねると出てくる温泉水は、上記の通りボーリング掘削によって得られたもので、動力揚湯なのか、あるいは上記に水を当てて作る造成泉なのか、その辺りの詳しい事情はよくわかりませんが、お湯の特徴としては無色透明で、明瞭なタマゴ臭&味が感じられます。ややほろ苦さも帯びていました。そしてツルツルスベスベ感も強く、とっても気持ちよい浴感です。pHを測ったら9.3というアルカリ性の数値が表示されました。硫黄感たっぷりのアルカリ泉なんですね。シャワーだけじゃなくて、そのお湯に全身浸かりたいなぁ…。

Hótel Varmahlíð
所在地 560 Varmahlíð  地図
電話番号 +354 453 8170
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●温泉プール

あぁ、温泉に全身どっぷり浸かりたい…。ホテルにはプールやホットタブ(温浴槽)が無いらしいので、ホテルの真裏の坂を登ってすぐのところにある公営プールへ行ってみることにしました。どうやらここは温泉を使った温水プールらしいのです。


料金は400KRですから日本円にして僅か280円ほど。めちゃくちゃ安いですね。玄関で靴を脱ぎ、受付窓口で料金を支払うと、こんなコインが1枚手渡されます。


通路を進んで更衣室へ。男性用は手前側、女性用は通路の奥です。


通路の途中には卓球台が置かれていました。とっても清潔なんですが、ちょっと無機質すぎる空間かも。

 
更衣室のロッカーもとっても綺麗で清潔。受付でもらったコインはここで使います。ロッカー扉の裏にコイン投入口があり、そこにコインを入れて扉を閉めると、鍵がかかるようになっています(ロッカーに使用方法が図示されていますので心配ご無用)。
一旦全裸になってシャワーで全身を洗い、それから水着に着替えて、いざプールへ。

 
プールは25m?のものと、滑り台が設置された子供用の浅いものの2つに分かれています。
ぱっと見ただけではただのプールですが、そこに張られている水は無色透明ながらも立派な温泉水でして、水からはしっかりタマゴ臭が漂っているのです。しかも気持ちよいヌルスベ感もちゃんと有しています。温度は30℃くらいでしょうか。ホテルのシャワーと同じお湯が引かれているものと思われます。


プールサイドから階段を下りたところにはサウナあり(画像奥の木のドア)。温水プールとはいえ、アイスランドの外気は冷涼ですから、体が冷えた時のサウナはとってもありがたいです。


またプールサイドには40℃くらいのお湯が張られたホットタブもあり、こちらでも暖を採ることができます。お湯だからプール同様の温泉的な知覚が感じられるかと思いきや、お湯からは塩素臭ばかりが漂い、ヌルスベ浴感もタマゴ臭もありませんでした。循環消毒しすぎているのかもしれません。
なおこの画像だけはプール内に掲示されていた写真を撮ったものですが、実物は撮影できませんでした。というのも、温水プールとはいえ、やっぱり寒いからか、利用客はみんなこのホットタブに集中して長湯しており、撮影できるような状況ではなかったんです。熱い温泉水はたくさん引けるんでしょうから、どうせなら大きなホットタブを作っちゃえばいいのに…。

ガラガラのプールでしばらく泳いでいた私は、次第に体が温まってきて、久しぶりの水泳が楽しくなってきたので、旅先なのに平泳ぎ・クロールをメインに背泳・バタフライを混ぜながら1.5kmも泳いじゃいました。運動不足の体に急な負荷を与えて良いわけなく、翌日は軽い筋肉痛に悩まされてしまいました…。

ヴァルマフリーズの温水プール
電話番号 +354 453 8824
地図
月曜~金曜→10:30~21:00
土曜・日曜→10:30~18:00
大人400KR、子供200KR
コメント
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