温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

アイスランド レイキャザルール(Reykjadalur)の温泉川

2011年08月08日 | アイスランド
(gooブログではアイスランド語の文字が表記できないようなので、普通のアルファベットで代用します)

●Introduction 地熱の街"クヴェーラゲルジ"
首都レイキャヴィクから車で約40~50分のところにある人口約2300人の街"クヴェーラゲルジ Hveragerdi"は地熱資源に恵まれており、街のど真ん中には日本で言うところの地獄谷みたいな地熱地帯があって、公園として開放されています。今回はこの街の奥に存在する「温泉が流れる川」を訪ねることが目的ですが、まずその前に、この地熱公園に立ち寄ってみることにします。

 地図

 
公園の名前は "GEOTHERMAL PARK" 。何の捻りも無いド直球なネーミングです。公園の入口は案内所とカフェを兼ねた小さなビニールハウスが建てられており、この建物に一旦入ってから公園内へと出ることになります。


そのビニールハウスでは生タマゴが販売されていました。1個100KR。さて、これは何に使うのでしょう…。

 
街のど真ん中にこんな感じで湯気を濛々と立てている公園があるんです。
入口付近には足湯らしき設備がありましたが、この日は雨天だったからか、あるいは整備中なのか、使われていませんでした。なお受付には "FEET SPA 500- (+ towel)" と書かれていたので、お金を払えば使わせてくれるのかも。

 
敷地内にはこのように穴ぼこの底でグツグツとお湯を煮え滾らせている温泉湧出孔がいくつもあります。

 
湧出孔にはひとつひとつ名前が付けられ、説明板が設置されています。単に湧出孔といっても、ひとつひとつに個性があって、性質が違うのであります。

 
公園の奥の方へ進むと、熱湯が流れる小さな川の源流があり、そこには "Boiling Eggs here" と書かれた札が立っていました。なるほど、先ほど売られていたタマゴはここで温泉卵を作るためのものだったんですね。


温泉卵をつくる場所の脇には、轟音を立てながら円筒からものすごい勢いで真白な湯気が立ち上っていました。ここで地熱を採取し、街で消費する熱エネルギーとして利用しているわけですね。


地熱のエネルギーは住民の生活に利用されているのみならず、このようにビニールハウスを温める熱源としても利用されており、野菜や花卉の栽培がおこなわれています。冷涼なアイスランドでは野菜の露地栽培ができませんから、このような温室栽培に頼らざるを得ないわけですが、その熱源が化石燃料ではなく地熱であるという点が、とってもクリーンですね。

このようにクヴェーラゲルジの街やその周辺は地熱エネルギーがとっても豊富なのです。そんなエネルギーが温泉となって湧きだして川になっている谷が今回目指すレイキャザルール(Reykjadalur)です。そこへ到達するには3kmほどのトレッキングが必要ですから、次にはそのトレッキングの様子を書いていきます。


●温泉の川へ向けてトレッキング
車に乗ってクヴェーラゲルジの街を突き抜け、北の山の方へ向かって走ると、途中で舗装路と砂利道に分かれるY字路につきあたりますが、ここは左の砂利道を進みます。やがて馬の牧場の敷地に入ってゆくと、再び道が二又に分かれるので、ここも左折。道のどん詰まりに駐車スペースがあるので、そこに車を止め、トレッキングを開始します。
 ・駐車スペースの地図 (リンク先で表示される白い道の一番先っちょが駐車スペースです)
 ・駐車スペースのGPS座標: N 64deg 1.356min, W 21deg 12.699min

 
この画像では分かりにくいのですが、駐車スペースから丸太橋で川を渡ります。


橋を渡った後は路傍に細い沢が流れる砂利道を進みます。この細い沢を触ってみると、ぬるいお湯が流れていました。家畜用のゲート越えて更に先へ。

 
ゲートの先には道しるべが立っていました。ここからレイキャザルールは3.0kmのようです。


しばらくは歩きやすいなだらかな坂です。先の方には温泉湧出孔から白い湯気がモクモクと上がっています。

 
やがて噴気孔の脇を通過。噴気孔は何箇所かあり、いずれも柵なんてありませんから、足元に注意して歩かないと、誤って熱湯地獄に踏み込んでしまうかもしれません。触ったら即座に火傷しそうだ…。さすがにここでの入浴は無理でしょうね。

 

振り返ってみると、このなだらかな丘の至るところで白い湯気が上っているのがわかります。なおこちら側の丘と反対側の東側の丘に挟まれた谷には "Rjupnabrekkur" という川(地図)が流れており、私が野湯探しで参考にした"EnjoyIceland"というサイトでは、この川が入浴スポットとして紹介されています

 
生憎、この日は一日中悪天で、この時も徐々に霧が辺りを覆い始めてきました。でも道端には赤と黄色でペイントされた目立ちやすい杭が随所に打たれているので、ガスっても道を見失うことはないでしょう。緩やかですが、ひたすら登りです。ちなみに午前10:20の時点で気温は11.6℃。

 
やばいぞ、霧が濃くなってきた…。視界不良のため、先ほどの杭を目指して先に進みます。いままで広かった道も登ってゆくうちに細い獣道へと変貌。下手すると谷底へ落ちてしまいそうなガレの斜面を乗り越えていきました。

 
スタートして30分ほどで登り勾配がほぼ終わり、フラットな草原地帯に突入。路傍ではヤギ数頭が草をムシャムシャ食んでいました。
またこの道は観光乗馬のコースにもなっているらしく、私が歩いていると、画像のような乗馬グループに遭遇しました。この一行を避けてから再び歩き始めたのですが、前日からの雨でぬかるんでいた道は、何頭もの馬の蹄鉄によって更にグチャグチャになり、余計に歩きにくくなってしまいました。


スタートして35分。この川を渡ります。橋は架かっていないので、石を飛び越えてゆくか、潔く川にジャブジャブ入ってゆくか…。この日は雨で石の上は滑りやすく、滑って川に落ちて靴が濡れると精神的ダメージが大きいので、私は靴と靴下を脱いで、裸足で川を渡ることにしました。外気温が低いので川の水は冷たいかと思いきや、なんとその逆で、むしろ30℃はありそうな温かいお湯が流れていたのです。というのも、この先の種明かしになっちゃいますが、これから入浴する川は、この川の上流なので、川の水が温かいのは当然なのです。

 
川を越えるとガレを登って川を高巻き、上流へと向かいます。やがて温泉湧出地帯へと差し掛かり、登山道の右側(谷側)ではあちこちで熱湯が湧いていました。霧で分かりにくいのですが、たくさんの白い湯気柱が上がっています。

 
温泉ファン、とりわけ野湯ファンなら興奮して失禁しちゃいそうな風景の連続。もしかしたら入浴に適した湯溜まりがあったのかもしれませんが、臆病な私はそれを確認することなく、先へと進んでしまいました。

 
スタートして50分。道が川の方へと下りてゆくあたりで、画像のように、川に石の堰が段々に設けられている場所に行き当たります。ここが今回の目的地である入浴ポイントなのです。よかった! 一人でも無事辿りつけました。


●温泉の川に入浴

 地図(Google Map) (←おおよその位置です。正確ではありません)
 地図(現地の地図サイト)(←この地図の中央を南北に流れる川の真ん中が今回の入浴ポイント。GPS座標では N 64deg 2.163min, W 21deg 13.328min 付近 )

 
さぁ入浴してみましょう。私はかつて、湯加減を確認せずいきなり全裸になって野湯に入り、あまりの冷たさに震えあがった苦い経験があるので、はやる気持ちを落ち着かせ、まずは温度を測ってみました。すると温度計に表示された数値は31.8。外気温は11℃ですから、この温度じゃぬるすぎるよぉ…。いや、温度としては全然入れるのですが、一度入ったら外が寒くてお湯から上がれないでしょう。
石で堰を築いてダム湖っぽくしているのは、流れてくるお湯と冷たい沢水をうまくブレンドさせて温度を均衡させるためのようですが、たしかに上が熱くて底が冷たいという状況は避けられているものの、全体的にぬるい…。お湯は上流から流れてくるので、沢の水が混じらない更なる上流で、良いポイントを探してみることに…。

 
先ほどの入浴ポイントから数十メートル遡ったところにも小さな堰があったので、試しに温度を測ってみたら33.4℃。確実に上昇しています。もっと先に行けば更に上昇するのかもしれませんが、雨脚や風が強くなってきて、これ以上の探索は面倒になってきたので、ここで入浴することにしました。用意してきたビニール袋に衣類を詰め、水着に着替えて川へ突入。

 
おおーー! ぬるいとはいえ良い湯だ! 川の流れを感じながらの入浴は自然のマッサージを受けているようで、とっても気持ち良いです。 お湯は無色透明、ほぼ無味無臭、強いて言えば苔の生臭さが気になるかも。実際、川に踏み入れると、底に沈殿している泥や苔の破片がブワっと舞いあがり、入浴中にはそれらが体に付着します。画像に写っている私のように、ちょっと寝そべると肩まで浸かれて良い感じです。私はここで1時間もじっくりお湯に(というか川に)浸かりっぱなしでした。自然に囲まれた壮大な環境の中で入れる気持ちよい温泉であったこともさることながら、ぬるいのでお湯から出ると寒くてなかなか上がれないのも長湯の一因だったりします。
残念ながら降雨と強風の中での湯浴みとなってしまいましたが、大自然の恵みをたっぷり満喫することができました。野湯好きの私としては、ここに来られて本当に満足しています。トレッキングは大してきつくありませんし、ほぼ一本道なので迷うこともないでしょうから、どなたでも気軽に野湯を楽しめるかと思います。
コメント
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