温泉ファンにはお馴染みの有名な温泉宿。信州秘湯会のリーダー的な存在でもあるこのお宿は、既に多くの方によって賞賛されており、あるいは詳しく紹介されていますから、何度か立ち寄り入浴で訪れただけの私がいまさら能書きを垂れても意味がありませんが、個人的な入湯記録として僭越ながら書かせていただきます。
玄関前には「沢かにのから揚げここは奥しなの」と篆刻された苔むした句碑があります。竹山という号はこの宿のご主人の俳号なんだそうです。山奥の鄙びた宿の質素な情景が思い起こされます。
浴室は玄関を入って左手に進み、階段を下りてゆきます。途中、いまどき珍しい瓶コーラの自動販売機が設置されており、お風呂上りに飲むと最高に美味い。瓶の王冠をグイっと開ける瞬間が何とも言えません。
(右(下)サムネイルはクリックで拡大)
階段は途中で分岐しており、画面前方へ進むと内湯、手前側へ折り返すと露天風呂につながっています。構内地図も貼ってあるので無問題。まずは内湯から。
いろいろな額縁で飾られた階段を下りてゆくと…
内湯前に到着。昔ながらの湯屋風情たっぷりですね。脱衣所は超コンパクトで、左右シンメトリに造られた棚しかありません。
木のほぼ正方形の浴槽。カランはありません。洗い場はスノコ状の板敷きで、それぞれの板は浴槽から放射状に広がる形状になっています。バスクリンを入れたような綺麗な黄緑色に強く濁るお湯には、白い羽根状の湯華がたくさん浮遊しており、また湯中では白いコロイドが無数に見られ、黒いコロイドも少々混ざっています。これらのコロイドのコンディション、温度、光の反射の違いによって、お湯はこの日のような黄緑色以外にも、いろんな色に変化するんでしょうね。五色温泉の名前の由来であります。浴室に漂う強い硫化水素臭にクレゾールを彷彿とさせる消毒液のような刺激臭(無論薬品ではなく泉質由来)が混ざって匂い、口に含むと硫黄味(やや砂消しゴム的な味も含む)+石膏味+強い苦み&渋みが感じられます。特に苦みと渋みは口腔にしぶとく残ります。
湯口から投入されるお湯はかなり熱く、そのままでは入れなかったのですが、ちょっと加水して湯もみしたら、すぐに入れるようになりました。
硫黄のお湯っていいですね。何とも言えない心地でじっくり湯に浸かり、ふと高い天井を見上げると、柱や梁が立派なこと! この雰囲気に包まれながら、いつまでも浸かっていたいなぁ。
続いて露天へ。トンネル状の通路を進んでいきます。途中硫黄の鉱床らしき岩を迂回。
屋外に出ると、ポツンと小さな脱衣小屋が建っています。脱衣小屋というより納屋みたいな質素なものですね。
露天風呂は混浴でして、この小屋も男女共用ですが、この小屋の右手には女性専用の露天と小屋もあるので心配ご無用。
なおトンネル通路から屋外へ出てステップを下りた通路左脇下には、小さな源泉井と思しきコンクリ製の枡があり、そこからホースが何本も出ていました。
松川に開けた渓谷の露天風呂は開放感抜群。内湯とは全く異なるお湯で、黒いホースがかなり熱い源泉が投入され、冷ますための水も一緒に注がれています。浴槽のお湯は川へ向かってしっかりオーバーフロー。
お湯はほぼ無色透明ですが、暗いグレーの湯華が湯中でたくさん舞い、そして沈殿し、湯船足を入れるとブワっと舞い上がって、たちまち灰色に濁ります。ツンと鼻孔を刺激するような硫化水素臭と軟式テニスボールのような臭いが混ざって匂い、口に含むとやはり軟式テニスボール的な味、そして石膏味、さらに遅れて苦みが感じられ、渋みがしぶとく舌に残ります。目の前が川ですから、夏などはお湯で火照った体を川に入ってクールダウンさせたら気持ちよさそうですが、危険防止の観点でしょうか、川に入るな、という注意書きが露天風呂のまわりにはたくさん見られました。
私が余計なことを申し上げると却って泥を塗りそうな気がするので、もうこれ以上は何も書きません。内湯露天ともにいい湯です。
内湯:五色の湯源泉
含硫黄-カルシウム・ナトリウム-塩化物・硫酸塩・炭酸水素塩泉(硫化水素型)
60.9℃ pH7.0 湧出量不明(掘削自噴) 溶存物質1063mg/kg 成分総計1169mg/kg (遊離硫化水素48.0mg) 加水加温循環消毒なし
露天:五色温泉元湯
単純硫黄温泉 57.5℃ pH7.7 57.2L/min(自然湧出) 溶存物質981.6mg/kg 成分総計1013mg/kg
加水加温循環消毒なし
長野県上高井郡高山村大字奥山田3682-6 地図
026-242-2500
ホームページ
10:00~16:00(受付は15:00まで)
500円
内湯にシャンプー類あり、他の備品なし
私の好み:★★★