温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

七味温泉 (渓山亭)恵の湯

2011年08月21日 | 長野県
※残念ながら閉館しました。

 
七味温泉の旅館「渓山亭」が運営する2009年にオープンしたばかりの新しい入浴施設です。一応「渓山亭」の別館的な位置づけのようですが、日帰り入浴施設としての機能も大いに有しており、週末はこの施設を目当てに七味を訪れるお客さんも多いんだとか。
七味温泉の旅館はみな松川の橋を越えたところに位置していますが、この「恵の湯」は橋の手前を右に曲がり、閉館してしまった牧泉館の方へ向かう道の途中にあります。特に大きな看板などはありませんが、広い駐車場や新しめの木造建築が目立つのですぐにわかるはず。受付(料金支払い用の小窓あり)のある棟には休憩室を兼ねた食堂が設けられています。この日はなぜかお客さんの姿が無く、係のおじさんが私の方へやってきたので、私はこのおじさんに直接料金を手渡しました。初めての訪問である旨を告げるとおじさんは「必ず足やお尻に硫化鉄が付着して黒くなりますけど、洗えば落ちますから心配しないでください」と説明するや否や、「ちょっと待ってて」と口にして小走りにお風呂の方へ向かい、お風呂のコンディションをチェックしてから戻ってきて、「外気温の関係で今日はもしかしたらちょっと熱く感じるかもしれないけど、その時は言ってください」と教えてくれました。
その後入浴中にわかったのですが、このおじさんは実にこまめに湯加減をチェックし、その都度バルブの開き具合を調整して、お客さんに常にベストコンディションのお湯を提供しようと心掛けているのです。おじさんの努力に感謝しながら男湯の暖簾が掛かっている小屋へと向かいます。


脱衣小屋へと向かう途中で、さっそくこれから入る露天風呂が姿を見せてくれました。いい雰囲気ですね。期待が持てます。

 
簡素ながらもシックで落ち着いた色調にまとめられた脱衣室。畳敷きなので素足でも快適です。また室内には温泉を利用した床暖房が設置されています。天井が低いため、吊ってあるぼんぼりのような照明器具に頭をぶつけがちで、実際に一部が丸く凹んでいました。

 
脱衣小屋の建物には内湯が付帯しています。オープン当初は無かったそうですが、後から増設したんだとか。石造りの四角い浴槽には白濁したお湯が張られています。夏など屋外の方が快適な時季だとあまり利用機会は無いかもしれませんが、冬の厳寒期にはこの内湯が大活躍しそうですね。なお洗い場にはシャワー付き混合栓が3基(2基だったかな?記憶が曖昧…)。

 
脱衣所へ入る前にもちょこっと拝見しましたが、露天風呂は実に爽快な雰囲気です。お風呂は松川に向かって開けており、開放的な空間の中で白樺や楓の木がいい塩梅の間隔で植えられ、また対岸の山を借景することによって、全体的に爽やかな景観を作り出しています。夏は木々の緑、お湯の白、そして空の青がトリコロールを為し、また秋にはその3色のうち緑が紅葉の赤へ、冬には真っ白なモノトーンへとそれぞれ変化し、四季折々の美しさが楽しめることでしょう。

 
湯口は竹筒と岩の2か所があり、竹筒から出てくるものは素手で触れるとやけどするほどの激熱で、一方の岩から流されるものは44~5℃まで下がっていましたが、おじさん曰く、岩からのお湯は床暖房で熱交換されて(つまり冷まされて)いるから、その温度になっているんだよ、とのこと。加温加水循環消毒は無く、投入されて浴槽に張られたお湯は、湯口と反対側にある湯面スレスレの位置に口をあけた塩ビ管から排湯されていきます。
やや灰色がかった乳白色に濁るお湯は、この日の青い空を映していたためか青みも帯びていて、とっても綺麗な色合いです。砂消しゴムのような匂いと、硫化水素から刺激を除いたようなマイルドな硫黄臭、そして砂消しゴム的な硫黄味+石膏味+口腔内に残るハッキリとした苦み・渋みが感じられます。強めのギシギシ浴感の中に弱いスベスベ感も含んでいるようでした。そしておじさんが言っていたように、本当にお尻や足の裏が真っ黒に染まります。私の足の裏をお見せして大変恐縮ですが、ご覧のとおり真っ黒です。白濁のお湯と足裏の黒というギャップが面白いですね。

 
露天風呂の傍には熱湯が注がれている鉢が置かれています。何に用いるのかよくわかりませんが、おじさん曰く、このお湯も床暖房と同じ源泉を引いていて、こちらは屋外の敷石を暖めているんだけれども、距離が短いから熱いままなんだそうです。同じ源泉だというのに、こちらのお湯は白濁しておらず、寧ろ黒っぽいですね。館内に掲示されている分析表にも記されていますが、このお湯ははじめのうちは無色透明なのですが、外気に触れたり冷めたりすると白濁するようです(全国の白濁する温泉も大抵の場合は同様です…)。

雰囲気といい、お湯の質といい、おじさんの温泉に対する愛着といい、実にすばらしい露天風呂でした。温泉ファンのみならず、白濁な温泉をご希望の女性にもおすすめです。なお真っ黒に染まった足裏は、ボディーソープでゴシゴシ洗えば大体落とせます(若干残りますが、数日で消えちゃいます)。今度は紅葉の時期に再訪したいなぁ。


七味温泉第2号井戸
単純温泉 62.5℃ pH6.6 150L/min(動力揚湯) 溶存物質826.4mg/kg 成分総計852.4mg/kg
カルシウムイオン131.0mg/kg(59.08mval%)、硫酸イオン446.0mg/kg(84.45mval%)

長野県上高井郡高山村七味  地図
026-242-2921(渓山亭)
ホームページ 

※残念ながら閉館しました。
10:00~17:00
500円
シャンプー類あり、他の備品類は無し

私の好み:★★★
コメント (6)
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七味温泉 山王荘

2011年08月21日 | 長野県

紅葉の名所として知られている信州の七味温泉は、お湯の質と秘湯感が素晴らしく、私も何度か足を運んでいます。ここには3軒ほどの旅館があり、その一番奥に位置しているのが今回記事にする「山王荘」です。


目の前の崖上には源泉があって、そこから道路へお湯が勿体ないほどたくさん溢れ出ています。

 
駐車場にはアツアツの源泉を引いた湯汲み場があって、自由に持ち帰って良いんだそうです。お湯からは硫黄のいい匂いが漂ってきます。コップが置かれているので飲泉も可。火傷には十分注意を。

 
広くヤケにガランとしたロビー。フロント台には「お風呂のお客様へ 席をはずして居ます 料金を入れてお入りください 係より」と書かれた紙とともに、ペン立てらしきものが置かれていました。ここのフロントは人がいない時間帯が多いらしく、入浴客はここにお金を納めて勝手に入っていいようですが…

 
私はいままで2度訪問していますが、2回とも宿のご主人が出てきて下さり、浴室へのルートやお湯の入り方など、愛想よく丁寧に教えてくれました。お風呂へはフロントから廊下を歩いて、旧館と思しき建物へと向かいます。


建物は古めですが、さすが旅館だけあって脱衣所は綺麗で良く手入れされています。

 
浴室に入った途端、硫黄の香りに包まれます。洗い場にはシャワー付き混合栓が7基設置され、水栓金具は硫化して黒く変色しています。

 
この画像の撮影時は私が一番風呂だったのか、内湯浴槽の湯面には石膏らしき膜が張っていました。こういうのを見ると興奮しちゃいます。お湯は加温加水循環消毒無しの完全掛け流し。浴槽はタイル貼りですが縁は木で作られ、その縁にあけられた2つの穴からお湯が排湯されています。
少々翠色を帯びつつ強く白濁したお湯からは、硫化水素型の硫黄泉らしいお馴染みの匂いが香ってきますが、鼻孔をツンと突くような刺激はあまり強くありません。口に含むと、硫黄味と石膏味、そして遅れながらもはっきり感じられしっかり後に残る苦みを有しています。湯中には羽毛のような白い湯の花が舞い、黒い羽根状の湯の花も少々混じっています。石膏の影響によりギシギシと肌に引っかかる浴感。丁度よい湯加減です。


湯口には鯉2匹を浮き彫りにした黒いお皿が置かれ、そこに源泉が落とされています。お湯の流路では白い羽毛状の湯の花がユラユラしていますが、お皿全体には石膏の白い析出がビッシリこびりつき、その上に黄色い硫黄が付着していて、なんだか凄いことになっています。

 
内湯から屋外に出て階段を下りると露天風呂です。源泉が滝状に落とされている露天風呂の湯口の岩は、薄い黄色を帯びた白色に完全にコーティングされていました。
渓流沿いなので川のせせらぎの音が聞こえますし、川からのそよ風も吹いてくるのでとっても爽快ですが、木が繁って視界を遮っているため、さほど眺望が得られるわけではありません。またお風呂の上にもまるで屋根のように枝が覆いかぶさっています。このように全体的に木に覆われた野趣溢れる露天風呂には、自然の仲間たちも湯あみに集まってくるのか、湯面には虫やら花やらいろんなものが浮かんでいました。湯面の広さや湯口の位置などに影響されるのか、露天風呂のお湯は場所によって湯加減にムラがあり、個人的には内湯の方が気に入りました。でも紅葉の時期になれば、露天風呂がまるごと紅葉に包まれるんでしょうね。
ここには夏にしか訪れたことが無いので、今度は是非紅葉の時期を狙ってみたいと思います。


牧新七味温泉(分湯槽)
単純硫黄温泉(硫化水素型) 46.3℃ pH6.3 湧出量不明 溶存物質808.7mg/kgkg 成分総計876.0mg/kg
カルシウムイオン146.2mg/kg(67.10mval%)、硫酸イオン353.4mg/kg(67.58mval%)、遊離二酸化炭素51.4mg/kg 遊離硫化水素15.6mg

新七味(分湯槽)
含硫黄-カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物温泉
71.4℃ pH7.1 150L/min 溶存物質1695.9mg/kg 成分総計1857.2mg/kg
ナトリウムイオン127.1mg/kg(23.81mval%)、カルシウムイオン298.2mg/kg(64.06mval%)、塩素イオン262.2mg/kg(31.79mval%)、硫酸イオン570.4mg/kg(51.03mval%)、遊離二酸化炭素135.8mg/kg 遊離硫化水素24.1mg

長野県上高井郡高山村奥山田七味2974-53  地図
0262-42-2627

日帰り入浴8:00~20:00 10:00~18:00
500円
貴重品用ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (4)
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