そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

規模拡大、攻めの農業というが

2013-04-19 | 政治と金

自民党が農家所得を倍にするとブチ上げた。意欲のある農家・攻めの農業には支援をするということである。意欲があるとは規模を拡大することである。TPP参入を前提にした、農業政策の方向を示そうとしているのである。

規模拡大は、どんな農業にあっても農業の本質、生命を司るエネルギーの生産には無関係のことである。規模拡大をしても、単位農地面積当たりの生産が増えることはない。むしろ減少する。

ただ単位労働あたりの生産量が増えるだけである。それは一定の規模までは有効ではある。ある規模を超えると、生産コストがかかりリスクが高くなるからである。その規模は、農業の種類や地域の風土や個人の能力や考え方によって異なる。規模拡大は資金の投入と、化石エネルギーの投入の増加が前提になるが、それが上記のネックになる。

攻めの農業とは、日本の農産物は品質が良く、特に東南アジアでは評価が高いので、輸出をしようというのである。とても高価なイチゴやナシなどを、富裕層をターゲットにして輸出しようというのである。

僅かに成功したかに見えても、中国との関係が石原慎太郎が一方的に尖閣を買うぞと言い出して以降、どれもゼロに近い。上手く売れていた台湾にしても、嗜好や評判などでどうにでもなる、極めて不安定な需給関係にある。更に、原発事故で一昨年は全く、日本の農産物の市場は閉ざされてしまった。攻めの農業とは、僅かな評判や事故などで、皆無に近い状態になってしまう、極めて不安定なものである。

いずれにしても、政府が言う攻める農業・輸出できる農業が、金額や生産量で日本農業の主軸になることなどあり得ない。極めて限られた農家が生産する、珍品に近い製品である上に、ちょっとしたことでほとんど売れなくなってしまう。

十勝の長芋は、味も品質も高く台湾に結構な数量が輸出されている。ところが、長芋は連作ができない。豆やジャガイモやキャベツなどを毎年作り変えて、5年目ほどでまた同じところで作付することになる。つまり、豆やジャガイモやキャベツなどが売れなければ、長芋は生産できないのである。

政府は農業の基本すら理解せずに、攻めの農業や規模拡大を進めようとしているのである。農家所得を倍にするという政策は、農家にお金をばら撒くことである。農家にばらまくのではなく、農産物の価格支持などに使用されるべきである。

日本の農業政策は、農家に金は出すが農産物には金を出さない。サボタージュをする農家も、様々な工夫をする農家にも、兼業農家にも均等にばら撒くのである。そのことが、農家の生産意欲を削ぐことにつながっている。

規模拡大や意欲のある農家の論議の中には、食糧の自給率を高める論議や食の安全論議が抜けているのである。

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6 コメント

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おはようございます。苦労知らずな政治家様たち、 (こるとれーんtone)
2013-04-20 06:56:08
おはようございます。苦労知らずな政治家様たち、
意欲があるとはまたなんと失礼な発言でしょう。
これは自給率とはなんら関係ない政策でしょうから
規模拡大すると農業大国にしてくれるんでしょうかね。
真意が無い放言が多い首相、
一年くらい自分で農業やってみたら良いのにと思います。
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“ノギャル”とやらは現在どうなってるんでしょうかね。 (AS)
2013-04-20 14:58:13
“ノギャル”とやらは現在どうなってるんでしょうかね。
返信する
いつも感心しながら読ませて頂いております。 (秋田の田子作)
2013-04-20 19:08:35
いつも感心しながら読ませて頂いております。
私は、秋田県で稲作農家をしております。

両親は80才を超え農作業はしておらず、妻はサラリーマンをしています。

子供達は都会に就職し、私1人で農業をしています。

最近の日本政府の掛け声は、第二次世界大戦中にB29を竹ヤリで落とせ!と豪語していたのと同じ。

アメリカ、オーストラリアなどの広大な農地での穀物生産。
ケタが違うと言っても、ひとケタふたケタの違いでは無い。

世界中が、経済をめぐる戦争状態。
金持ちはますます太り続け、低所得者はさらに増え続ける。


落ち着いて考えて見れば、我々が産まれる前に、日本はアメリカとの戦争において無条件降伏したと学校で習いました。

無条件降伏なのだから、いまだに日本各地に米軍基地が有る訳で、つまりはアメリカの植民地。

無条件降伏した時、アメリカ合衆国に併合して日本州にしなかった訳を考える。

日本をアメリカ合衆国に併合しないで、どこまでも絞り取る植民地支配の形を選択したと思える。


私は、余計な借金や設備投資はせず、ほそぼそと稲作を続けながら、時期を見て廃業しようと計画しています。

いつでも廃業出来るように、いっさい借金せずで10年になりました。
農機具も古い機械を整備修理しながら大事に使っている。

今の機械が修理不能になれば廃業です。


どんなに頭が良くて根性が有っても、爆撃機B29を竹ヤリで落とす事は不可能だと言うことに気が付いた私は、運が良いのかも知れません。

歴史は繰り返すと言いますが、世界一の経済大国アメリカも、やがては衰退し無くなると思います。

世界中の富を搾取し続けながら、やがては自滅する定め。
返信する
“ 秋田の田子作 ”さん (AS)
2013-04-21 00:48:47
“ 秋田の田子作 ”さん

厳密には「B29を竹槍で撃墜」ではないですね。
庶民は米軍が上陸して来たら白兵戦で遣り合え、という事だったんです。
江戸時代じゃあるまいし、槍で突く前に自動拳銃や8連発半自動ライフル・M1ガーランドで撃たれて一巻の終わり、という事実に気づいたのは戦後です。
返信する
 私は農協の役員を為てます。責めの農業で輸出と... (settyan)
2013-04-21 19:22:58
 私は農協の役員を為てます。責めの農業で輸出と言いますが、品質格差は園芸作物だけで米や小麦は直ぐに同じ物が世界では流通します。TPPで砂糖や乳製品が自由化されて価格が下がると、経費倒れになり農家は借金に苦しむでしょう。家庭菜園の様な農家だけが、直売など付加価値農業で生き延びれますが、担い手と持てはやされてる様な何十ヘクタールも作付けする農家は、海外とは到底太刀打ちが出来ません。安全保障の為にアメリカと同盟を結ぶと言うのも胡散臭い論理です。アメリカの石油禁輸で戦争を始めたのを忘れたのでしょうか。大豆の禁輸で豆腐が暴騰したのは戦後です。北朝鮮に輸出制限為てるのを何時日本にされないと保障できますか。アメリカはもともとそう言った帝国主義論理で戦略を練ってます。お金を豊富に持っている内に、自国の論理で世界を観る目を育てないと何れギリシャの様に騙されて破綻するでしょう。食べ物さえ有れば、今の時代生き延びれます。賢い選択をすることを望んでいますが、周りもテレビに汚染された人ばかりで希望も無くなります。
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出しゃばってコメントを書いていいほどの者ではな... (春於)
2013-04-26 17:40:25
出しゃばってコメントを書いていいほどの者ではないのですが、ちょっとだけ農政に興味があります。日本の農業どーしたらいいんだろう?って思っています。コメント書きます。
なるほど!なるほど!長芋は連作できないのか…云々
このページ、そりゃないぜ獣医さんの本文と、みなさまのコメント、多くの人に読んでもらいたいです。
私たちの命を支えてくださっている農業関係者の皆さま、いろいろ教えてくださいませ。
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