半透明記録

もやもや日記

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巻貝の家

2012年06月14日 | 夢の記録





またしても、夢。
夢を記録し続けていると、私の夢にはやはりある一定のパターンがあるということに気がつきます。今朝の夢もいつかとよく似た状況、よく似た風景。

舞台は、長崎。私は実際には行ったことのない土地なので、現実の長崎とは別の、たぶん夢の長崎。島尾敏雄の「摩天楼」と同じく、夢の、「Nangasaki」かもしれない。

長い列車での移動。乗り換え。そして、その乗り換えに失敗するところがいつものパターン。

乗り換えのために町を彷徨うと、ある見知らぬ人(芸術家夫婦)の家に招かれる。その円形をした家の通路を延々と歩く。反時計回りの回廊が無限に続くイメージも、私のひとつの夢のパターン。

今朝の夢は、私の夢にありがちな要素に溢れていましたが、いつも通り面白かった。



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私は仕事で長崎へ向かっている。列車に揺られ続けた末にようやく到着した。脇には大きな黒い図面ケースを抱えていたかもしれない。しかし、ここが終着ではなく、私はまだ列車を乗り継がねばならない。ホームに降りると、乗り換え口に続くはずの下り階段が見えたのでそこを下りると、どういうわけか長崎の市街に出てしまう。そしていつの間にか目的地を同じくするらしい見知らぬ男性と並んで歩いていた(もしかするとこれは同僚で、ここまで一緒に旅してきたのかもしれない)。

初めて降り立つ長崎の町は、小規模だった駅とは異なり、駅前には広く真直ぐな道、ずらりと赤いレンガの建物が並ぶ美しい賑やかな町だった。商店の2階部分に掲げられた看板の太い文字は右から左へと書かれている。大勢の人が行き来し、静かな活気に満ちていた。

連れが言うには、乗り換えにはここから少し歩かなければならないのだという。彼の指差す方へ目をやると、建物と建物の間の狭い路地をぞろぞろと歩いていく人の姿が見える。あれについていけばいいのだ。

人々が並んで歩くその路地はごく狭く、壁も地面も灰色で、向こうへ行く人は沢山いるのに、こちらへやってくる人はひとりもいない。我々も最後尾からついて歩いていく。すると、道は次第に上り坂になる。

坂の途中の左手に、立派なお屋敷があった。白く高い塀には大きな表札がかかっていて、その灰色の地には白薔薇の装飾が一面に施され、その上に真っ黒な華麗な装飾体で3人の名前が彫られていた。うち2人は近ごろ世に出たばかりの若い芸術家夫妻だそうで、連れはこの人たちと面識があるらしい。もうひとり、表札の一番上に書かれている名前は、彼らの父親のものだという。

顔見知りの家を見つけたということで、連れはここにちょっと立ち寄りたいと言って塀の中に入っていく。私もついていく。

迎えてくれたのは、若い、まだ少年と少女と言ってもいいくらいに若い夫婦だった。妻の方が私を案内してくれる。私は彼女に連れられて、お屋敷の内部を見て回ることにする。


お屋敷は、巻貝のように円い巨大なものだった。その内部のほとんどが人間がようやく二人並んで歩けるだけの狭い通路によって構成されている。中心に向かって曲がる壁が果てしなく続き、部屋らしい部屋はない。

先導する女の子(彼女はレースの付いた軽やかな白い服装、波打つ髪を額の真ん中で分けて腰まで垂らした美しい、まだほんの女の子だった)が私の手を取りながら説明する。この屋敷は、芸術家の彼ら夫婦の稼ぎではなくて、彼らの父(どちらの父親だかは忘れた)が宝くじを当てたお金で購入したらしい。その父親はどうやら不在のようだった。

「これは巻貝を模しているのではなくて、本当に大きな巻貝の中なのよ」。

私と女の子はその巨大な巻貝の内部の狭い通路を中心に向かって辿っていくのだが、その天井は高く、壁には窓がひとつもないが、壁の全面が外の日の光を透かして薄白く輝いているのだった。巻貝の殻は硬くて非常に薄いらしい。私は左手を彼女と繋ぎ、右手で温かく白く輝く壁に触りながら進んでいく。

どこまでもどこまでも貝殻の中を歩いていく。長い長い時が過ぎていって、いつしか私と彼女とは溶け合うほどに親密になっていく。狭い通路の途中に向かい合って眠り、目覚めて頭を持ち上げる時に彼女の長い髪が本当の波のようにゆらゆらと動くのを見るのと、目を覚ましてすぐに彼女と微笑みを浮かべながらじっと見つめ合うのが私は好きだった。

彼女の夫と私の連れ(今やこの連れは私の恋人であることが分かる)の姿はもう随分前から見えないのだが、私たちとは真反対のルートを辿っているのだと確信している。あるいはこの貝殻は二重構造になっていてもう一つの壁の中を同じ方向に辿っているのかもしれない。いずれにせよ、彼らもこの長い回廊のどこかにいるに違いない。中心部で再び会えるのだろうか。


そうして、私と彼女はついに巻貝の中心部へと辿り着く。そこはやはり円い小部屋で天井は低く頭がつかえそうな真ん中に、小さな円い寝台がひとつ置かれている。それは大理石のように硬くて白い同じ径の円筒形の台によって支えられ、寝台と言っても真青の柔らかく薄い布地(これも円い)が一枚敷かれているばかりである。

私と女の子はその上に腰掛けて、互いの手を取り、身を寄せ合って、待つのだった。これからさらに長い時間をこうして待つのだ。誰を? おそらくは私の連れと彼女の夫とを。しかし、待ちながら私は待ち人は決して来ないような気もしている。来なくてもよいと思えてくる。ただ美しい彼女の手のさらさらとした温もりを、その波打つ長い髪が私の肩にもかかるのを感じていられさえすれば、時はこのまま過ぎてゆけばよいと私は思うのであった。


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列車の乗り換えは、仕事は、どうなったんですかね??

ともあれ、気持ちの良い夢でした。キーワードは、反時計回りに上っていく通路、白、美術。電車に乗り換えられない前半はともかく、後半はなかなか良さそうな内容でしたかね。

巻貝のイメージはしかし、ゆうべ「耳がきーんとする」とか思っていたら、そのうち「耳の中がズキズキする」となり、中耳炎になりかかっているのではという心配から生じたものかもしれません。一晩寝てみて治らなかったら耳鼻科へ行こうと思いましたが、寝て、夢を見て起きたら治っていました。助かった!