という小説がありますが、以下の話とは全く関係がございません。あしからず。
さて、これまで私は失敗料理シリーズ(悪魔の豆乳雑煮、蚊の禿パンなど)を紹介してきたわけですが、実は料理はそんなに苦手というわけではないのです。記事を掲載した後日、それを読んだ実家の母からは「幼いころから、美味しいものを食べさせたり料理を教えてきたつもりだったのに……」という趣旨の嘆きメールが送られてきたりして、少し焦りました。繰り返しますが、私は料理は苦手ではないんです、それほどには。
あまりしつこく申し上げるとかえって怪しまれそうなので、早速本題へ。
昨夜は実家から送られてきた「名水ポーク」(故郷黒部市名産のおいしい豚肉)をトンカツにしました。贅沢なことに、厚くスライスされた肉を一人につき1枚も割り当てられます。なんと贅沢な!
いやはや素材が良いだけに調理には緊張いたしました。滅多にない御馳走ですから、いかに高価であるとは言えキャベツもちゃんと用意いたしました。いつもの2倍は集中して千切りをし、満足のゆく細さを実現。ふ、やれば出来る。そしていよいよパン粉をつけた肉を油の中へ投入。ほどよいところで取り出し、包丁で食べやすい大きさに切りました。うむ、ちゃんと出来たではないか!
このように私は豚肉料理は得意です。酢豚も大得意。今回はどんな失敗をしたのかというご期待には添えず残念ですが、立派な仕上がりに満足しつついただくことができました。塩で食っても、辛子醤油で食っても、うめーッ! さすがトンカツ!
しかし悲劇はこれからでございました。
稀にみる御馳走にひとしきり喰らいつき、我々はそれぞれの皿の上に残った最後の一切れをぼんやりと見つめておりました。も、もう食えない……。あと一切れなのに……。滅多に食事を残さない私ですが、昨日は限界に達していたので無理せず、後で美味しく食べることにして残しておくことにしました。と、K氏の顔色がみるみる白くなってゆくではないですか! 何!? 今回は私は何もやってないですよ!
どうやら彼は風邪気味だったようです。風邪を引いて具合がもうひとつだったところへ、普段はほとんど修行中のような粗食に耐えるストイックな彼の胃腸には厳しい高カロリーだったのですね。「………トンカツ、美味しかった……あとのことはよろしく……」という言葉を残し、自室へ消えてゆきました。さらば……。
一方、私も微妙な胃もたれを感じていました。このところ、どうも調子がよろしくない。年末年始休みで田舎に帰った時も、連日連夜の御馳走にすっかり参ってしまい、大阪へ帰って2日間ほどはほとんど何も食べられませんでした。3キロも激太りしていましたし。食べ過ぎたのは確かですが、おそらく胃弱でもあります。
美味しいものが食べたい。ですが、野菜やキノコが好きな私は、野菜のおかずがメインで、鶏や豚は少ししか食べません(得意の酢豚も肉は僅少。え?むしろ酢野菜?)。たまの贅沢もできぬ胃弱は悲しいことではありますが、1枚のトンカツを二人で分け合って食べる位が、我々にはちょうどよいのでしょう。1枚のトンカツ。哀しくも麗しい。
ところで、残ったトンカツ(私とK氏の分合わせて2切れ)は翌日の朝にでも食べようか、と言っていたのですが、朝になってもK氏の具合はいまひとつだった(ように見えた)ので、私が昼食にいただきました。そう、K氏の胃を気づかって、私も胃弱ですが(もうすっかりお腹が空いていたので)がんばりました……!
はあ、やっぱ美味しかったです。
まだ肉は2枚残っていて、冷凍してあるけれども二人で1枚なんて悠長なことは言ってられないですし、今度は大根おろしで食べようかな。タカジアスターゼ(だっけ?うろ覚え)に期待。私も調子が上がってきた気がするし、K氏が残しても私が食ってやるよ。
以上、豚の戦記(続くかも……)。