半透明記録

もやもや日記

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『アンダーグラウンド』

2005年09月05日 | 映像
製作: 1995年
監督: エミール・クストリッツァ
出演: ミキ・マノイロヴィチ/ラザル・リストフスキー/ミリャナ・ヤコヴィチ/スラヴコ・スティマチ


《あらすじ》

旧ユーゴスラビア50余年の激動の歴史を描いた映像絵巻。武器商人マルコは、戦争が終わっても避難民にそのことを知らせず武器を作らせていた…。
監督は『パパは出張中!』『アリゾナ・ドリーム』『黒猫白猫』のエミール・クストリッツァ。



とんでもない映画を観てしまいました。

クストリッツァは『黒猫白猫』の底抜けの明るさと独特の音楽の魅力によって好きになったのですが、それに先立つこの『アンダーグラウンド』は何というか、はちゃめちゃな楽しさと、どうしようもない暗さと悲しみが驚くべき表現力によって共存しているという、何を言ってるのか自分でもよくわかりませんが、とにかく凄い映画です。あまりの衝撃に、もう再び観ようという気になりません。観なくても、きっと忘れられません。およそ2時間40分の長さですが、全然中弛みさせずに最後まで持ってゆく力量は恐るべきものです。というか、よくこの時間内に収まったな、というくらい密度が濃いです。色々な意味で。そして、かなり象徴的なお話なので、何が何を表しているのかを、じっくり考えてみるのも興味深いでしょう。

劇中には、マルコが道端を歩く黒い猫を捕まえて、それで靴を磨いたり、いつでもクロ(マルコの親友)の後をついてゆく音楽隊といった笑える描写がとても多く、地下社会での賑やかな結婚式、世界中に通じているかもしれない不思議な地下道のような幻想的な場面も散りばめられています。それなのに、観終えると、非常に沢山の問題に直面させられていることに急に気付かされてしまいます。全然笑えなくなっています。と言うより、面白可笑しかった前半は巧妙な伏線となっていて、最後の痛ましさにつながっていることが分かると、面白かった分、より一層痛みが増すように出来ています。上手い。上手過ぎる。凄まじい表現力に、私はすっかり打ちのめされました。この監督の作品には、いつも感極まってしまいます。圧倒的なエネルギーの塊。『パパは出張中!』も観ようと思いましたが、立ち直るまでしばらくはお預けになりそうです。