河田恵昭『津波災害ーー減災社会を築く』(岩波新書、2010年12月17日、720円+税)
これほどわかりやすく、貴重な教訓にもとづく実践的な本が、3.11に東北をおそった大津波の直前に出ていたのですね。
わたしの常識的な理解の間違いにもたくさん気が付きました。また、災害にそなえることの大切さもあらためて学びました。
著者は、「まえがき」で、「近い将来必ず起きると予想されている、東海・東南海・南海地震津波や三陸津波の襲来に際して、万を超える犠牲者が発生しかねない」と警告していました。
あらためてわたしが知ったいくつかのことを、メモにしておきます。
1、津波は地球規模の広大な空間に長時間にわたって危険をもたらす他の災害にない特徴がある。
2、避難すれば助かる!
多くの犠牲者がでた例では、ほとんど避難行動をしていないという。
10メートルの津波の場合、統計上は、はやく避難すれば99%の人が助かり、避難がおくれると90%の人が犠牲になるという。
3、津波は盛り上がって乗り越えてくる。深さ10メートルの海の海面上高さ1.5メートルの岸壁に2メートルの津波がやってきたとき、路面上1.9メートルにももりあがり、秒速0.9メートルですすみ、陸上100メートル先でもスピードも波の高さもあまりかわらないという。
高さ5メートルの津波が、5メートルの高さの防波堤にぶつかると、1・5倍の高さ7.5メートルに盛り上がり、あふれるように乗り越えてくる。7.5メートルの落差で流れ込んでくるので、これは恐ろしい。防波堤が、津波の高さを押し上げる。
4、津波は見えない。
津波の大半は、海岸にやってくるまで見えない。遠くからやってくると、波長100キロになることもある。
5、津波は、はやい流れ。
被害は、深さよりも流れによって発生する場合が多い。
6、大きな津波は、6回続き、6時間は要注意。第二波が第一波の2倍以上のこともある。ときには、最初の津波の3時間後に最大の津波がきたことがある。
7、まず海が引くとは限らない。95%の人が、まず潮が引くと信じているが、きわめて危険。
8、一般的な護岸や堤防の高さは、30年に1度くらいやってくる大きな波を対象に決定している。津波は考慮されていない。
それを知っていなければならない。だから、避難しなければならない。
高さ10メートルの津波は、ほとんどどのような護岸や堤防ものりこえていく。1896年の明治三陸大津波は30メートルに達した。
9、新しい住民に津波の教訓が伝わっていない。
10、立っておれないような地震では、震源が近いと考え、ただちに徒歩で避難する。
車で渋滞にまきこまれて犠牲になったひとも多い。
11、ゆれが小さいと津波が小さいと考え犠牲になることが多い。ゆれが小さく津波が大きい津波地震があるので、ゆれが小さくても避難が必要。1分以上ゆれる場合は、ゆれが小さくても危険性がある。このゆれが小さい津波地震は、津波のおよそ30%にもなる。
12、木造住宅は流される。
浸水の深さが2メートルをこえ、流速が4メートルをこえると、木造住宅は流される。
13、海の水深が浅くなると津波は大きくなる。リアス式海岸でも、津波は大きくなる。
14、島の存在は、まるで光のレンズのように、津波を集めたり散乱させたりする。
15、歴史上、文明をほろぼした津波はいくつもある。
16、震源の深さが浅いほうが、一般に津波は大きい。
17、津波情報には限界がある。避難勧告や情報待ちでなく、自主的な判断で自分を守る必要もある。判断をまちがうと、最悪の場合命をうしなう。指示を待つのでなく、自分で判断して自分の命をまもる。
18、浸水した市街地でも火災が発生することを知っていなければならない。
19、津波に地震被害が先行する。
20、津波警報=2メートルをこえるおそれ。大津波警報=3メートル以上。
21、津波来襲の歴史はくりかえす。過去の言い伝えをしっかり教訓にする。
22、首都圏の場合、ゼロメートル地帯の浸水、石油タンクの火災、有毒ガスの漏えい、多数の地下鉄の駅の水没のおそれ。ゼロメートル地帯だけで70の駅がある。2002年チェコの河川の洪水ではすべての地下鉄路線が水没した。60万人におよぶ避難民の可能性。
23、釜石市の津波防波堤は、市民1人当たり300万円をかけてつくったものだった。
24、われわれは、津波多発時代の真っただ中にいる。
25、被災後の街づくりは、事前に計画を用意しておかないといけない。
昨年12月に刊行されたこの本の「あとがき」には、われわれは、「津波多発時代の真っただ中にいる」という警告がある。
これほどわかりやすく、貴重な教訓にもとづく実践的な本が、3.11に東北をおそった大津波の直前に出ていたのですね。
わたしの常識的な理解の間違いにもたくさん気が付きました。また、災害にそなえることの大切さもあらためて学びました。
著者は、「まえがき」で、「近い将来必ず起きると予想されている、東海・東南海・南海地震津波や三陸津波の襲来に際して、万を超える犠牲者が発生しかねない」と警告していました。
あらためてわたしが知ったいくつかのことを、メモにしておきます。
1、津波は地球規模の広大な空間に長時間にわたって危険をもたらす他の災害にない特徴がある。
2、避難すれば助かる!
多くの犠牲者がでた例では、ほとんど避難行動をしていないという。
10メートルの津波の場合、統計上は、はやく避難すれば99%の人が助かり、避難がおくれると90%の人が犠牲になるという。
3、津波は盛り上がって乗り越えてくる。深さ10メートルの海の海面上高さ1.5メートルの岸壁に2メートルの津波がやってきたとき、路面上1.9メートルにももりあがり、秒速0.9メートルですすみ、陸上100メートル先でもスピードも波の高さもあまりかわらないという。
高さ5メートルの津波が、5メートルの高さの防波堤にぶつかると、1・5倍の高さ7.5メートルに盛り上がり、あふれるように乗り越えてくる。7.5メートルの落差で流れ込んでくるので、これは恐ろしい。防波堤が、津波の高さを押し上げる。
4、津波は見えない。
津波の大半は、海岸にやってくるまで見えない。遠くからやってくると、波長100キロになることもある。
5、津波は、はやい流れ。
被害は、深さよりも流れによって発生する場合が多い。
6、大きな津波は、6回続き、6時間は要注意。第二波が第一波の2倍以上のこともある。ときには、最初の津波の3時間後に最大の津波がきたことがある。
7、まず海が引くとは限らない。95%の人が、まず潮が引くと信じているが、きわめて危険。
8、一般的な護岸や堤防の高さは、30年に1度くらいやってくる大きな波を対象に決定している。津波は考慮されていない。
それを知っていなければならない。だから、避難しなければならない。
高さ10メートルの津波は、ほとんどどのような護岸や堤防ものりこえていく。1896年の明治三陸大津波は30メートルに達した。
9、新しい住民に津波の教訓が伝わっていない。
10、立っておれないような地震では、震源が近いと考え、ただちに徒歩で避難する。
車で渋滞にまきこまれて犠牲になったひとも多い。
11、ゆれが小さいと津波が小さいと考え犠牲になることが多い。ゆれが小さく津波が大きい津波地震があるので、ゆれが小さくても避難が必要。1分以上ゆれる場合は、ゆれが小さくても危険性がある。このゆれが小さい津波地震は、津波のおよそ30%にもなる。
12、木造住宅は流される。
浸水の深さが2メートルをこえ、流速が4メートルをこえると、木造住宅は流される。
13、海の水深が浅くなると津波は大きくなる。リアス式海岸でも、津波は大きくなる。
14、島の存在は、まるで光のレンズのように、津波を集めたり散乱させたりする。
15、歴史上、文明をほろぼした津波はいくつもある。
16、震源の深さが浅いほうが、一般に津波は大きい。
17、津波情報には限界がある。避難勧告や情報待ちでなく、自主的な判断で自分を守る必要もある。判断をまちがうと、最悪の場合命をうしなう。指示を待つのでなく、自分で判断して自分の命をまもる。
18、浸水した市街地でも火災が発生することを知っていなければならない。
19、津波に地震被害が先行する。
20、津波警報=2メートルをこえるおそれ。大津波警報=3メートル以上。
21、津波来襲の歴史はくりかえす。過去の言い伝えをしっかり教訓にする。
22、首都圏の場合、ゼロメートル地帯の浸水、石油タンクの火災、有毒ガスの漏えい、多数の地下鉄の駅の水没のおそれ。ゼロメートル地帯だけで70の駅がある。2002年チェコの河川の洪水ではすべての地下鉄路線が水没した。60万人におよぶ避難民の可能性。
23、釜石市の津波防波堤は、市民1人当たり300万円をかけてつくったものだった。
24、われわれは、津波多発時代の真っただ中にいる。
25、被災後の街づくりは、事前に計画を用意しておかないといけない。
昨年12月に刊行されたこの本の「あとがき」には、われわれは、「津波多発時代の真っただ中にいる」という警告がある。