イワン・アサノヴィッチの一日  畑と映画の好きな卒サラ男。

政官業癒着体質の某公共事業職場を定年退職。鞍馬天狗・鉄腕アトムの人類愛に未だに影響を受けっ放し。孫には目がない。(笑い)

映画「グラントリノ」を観て 水天一碧

2009-05-11 15:11:39 | 映画

   新藤兼人(映画監督)・山田和夫(映画評論家)ら5人の評論を読んだ。

新藤兼人が、この映画のラストシーンは各人が各様に感じれば良いとしていた。山田和夫と鳥越俊太郎(ジャーナリスト)が主人公・ウオルト(C・イーストウッド)の朝鮮戦争時に少年兵を殺戮して勲章を貰ったことへの原罪意識とトラウマに触れていた。

     ウオルトは『米喰い虫のイエロー』などと燐家の東洋人を毛嫌いしたりする、一見は人種的偏見の持ち主である。のみならず、黒人・ヒスパニック系などに対する人種的偏見も同様であるが、卑怯な白人青年や祖先・先人を敬わない肉親も容赦なく軽蔑する。

頑固で単刀直入なものの言い方をする。しかし、真摯な他人の声に耳を傾ける度量とか公平感・正義感も併せ持っている男である。即ち肌の色如何に拘わらず、正義を踏みにじり弱者を苦しめる強者の卑怯や非道を許さないと言うことである。

鳥越俊太郎が『人種間の対立と交流の中、共に生活していくうちに根っこの部分が馴染んで行くこともあるというのが、この映画のメインテーマになっている。』と良いところを突いていた。

…ラストシーン、ウオルトは自分自身の人生の中でさんざん用いた銃やガンによる物事の解決方法を今度は執らない。

エンデイングのサウンドトラックが素晴らしい。

ピアノの静かな旋律でエンデイングテーマ曲が流れて、配役のテロップが映し出されてくる。

画面は都市近郊の海岸通りのハイウエー。

静かに車が流れて行く、大きな緑の並木と外洋から絶え間なく押し寄せる柔らかな波。

甘くかすれた若い男性の歌声。あのウオルトが愛したグラントリノも心地よいエンジン音と共に走り去る。

外洋ははるか遠くの水平線の彼方で青い空と一体化する。

その時イワン・アサノヴィッチは、友人であるわが町の市長・小池正孝氏が好んで使う言葉”水天一碧”という言葉を思いだした。

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