イワン・アサノヴィッチの一日  畑と映画の好きな卒サラ男。

政官業癒着体質の某公共事業職場を定年退職。鞍馬天狗・鉄腕アトムの人類愛に未だに影響を受けっ放し。孫には目がない。(笑い)

ガマン癌

2007-08-29 23:45:50 | テレビ番組

  歌謡曲の作詞家である遠藤実が過日TV出演し(NHK:この人トキメキ5月25日9時)自身の半生を語った。

話は亡くなった奥さんとの出会いに及んだ。

当時はご多聞にもれず遠藤も食うや食わずの売れない作家だった。ときどき出入りする食堂で結婚前の奥さんは店員として働いていたそうだ。

その食堂で遠藤は安い定食やソバを食べ、糊口をしのいでいたとのこと。少し実入りがあった時だけ、奮発して好きなカツ丼を注文しほお張っていたそうだ。

そんな遠藤の貧乏ぶりを、のちに遠藤と結婚する食堂の女店員は静かに見守っていたのである。

ある日、腹を減らした遠藤がいつもの食堂に行き、ソバを注文した。カツ丼を注文する金がなかったのである。

ところが暫くして出されてきたものはソバではなく、カツ丼だった。女店員が間違えたと思い、問いただそうとしたら『間違いじゃない、いいから、食べてちょうだい。』とそっと告げられた。

そんな二人はやがて結婚するが、遠藤の作品はヒットせず貧乏生活は相変わらず続いたそうだ。しかし、遠藤より年上の奥さんは『あなたが諦めずに、いまの仕事を続けてくれれば、私も頑張れる』と言って働き続けたそうだ。

そんな奥さんの長い間の物心両面に亘る支えがあっていまの私がある。と遠藤は言う。

やがて彼女も癌で亡くなった。遠藤は言う。

『家内は、癌は癌でも、ガマン癌で亡くなったのですよ』と。

成る程、考えてみればアサノヴィッチの周囲でも、ストレスが原因の癌で亡くなったとしか言いようのない友人・知人が少なからずいる。

遠藤実の言葉は何とも思慕に満ちている。