コージーアンティークの日記

日記や修理・メンテナンス、アンティーク情報などもろもろをご紹介してゆきます。

砂漠の嵐作戦~その3

2008-07-11 02:56:16 | アンティークディーラーの日常


砂漠の嵐作戦~三日目


『借金してるお金を早く払ってくださいヨォ~、さもないと利息が増える事になりますよ!!!』

『エーーーーーッ?????』

『うそうそ、ジョークですよ。。。グッド・モーニング!!』

モーテル室内で鳴った電話の音に、眠っていたわたしは、なかば反射的に受話器を取り、状況が把握できなかった・・・。
あっ、そうだ、昨夜、フロントにモーニングコールを頼んでいたんだっけ・・・と思い出すまで約数十秒。

朝っぱらから、洒落が効き過ぎてる・・・アメリカ人は仕事も楽しんでいるようです(笑)





モーテルのチェックアウト前に、朝一で、U-Haulトラックの場所へ向かいました。昨日のいきさつを最初から全て説明しました。

しかし受付は最悪の対応。Drop Offできないというのです。結局、エンジニアを呼ぶからといわれ別の場所に電話をかけ、30分待ってくれと・・・。

U-Haulトラックのオフィスの中のイスに腰掛けて30分後・・・誰も来る気配なし。

わたしがオフィスの女性マネジャーに文句を言うと、もう一回電話をして、あと30分待ってくれと・・・。


『わたしの宿泊してるモーテルは、すぐ隣だから、30分したらまた来るよ。』

『いや、ダメです。そこに座って待っていてください・・・。あと、ここにあるトラックの鍵や書類もまだあなたのベイビーだからあなたが持っていてください。』


カチンときましたが、おとなしく従う事に・・・。
時間は午前10時。わたしの頭の中は、上がりつづけている外の気温の事で頭が一杯。


既にオフィスに来てから1時間半。

ようやく到着したエンジニアは、農作業からそのまま帰ってきたような風貌のメキシカン親子。

『ホントにエンジニア???』

わたしと彼らは、トラックに行き状況を説明。彼らはメーターをチェックし、オイル・ゲージを確認したり・・・で、異常は無しだと・・・。


オフィスに戻り、散々の口論。

『これからまだ400km近く、何の町も無い砂漠が続くのに、途中でトラックが止まったら、誰が助けてくれるんだ?あなたは保障してくれるの?』

『いや、それはできない。けれど、大丈夫だ、問題ないと思う。。。』

『それ、本気で言ってるの?信じられない・・・。』

わたしの考えは決まっていたので、オフィスのマネジャーに、契約もとの統括リージョナル・マネジャーに電話をかけさせ、最終的に、契約変更、違約金を払う事で成立。
契約終了となりました。


わたしは、アメリカのオフィスの人間が、自身の責任で何かを判断する事を極端に嫌う事を知っていましたし、逆に、上司の了解さえあれば、彼ら自身の意見はコロコロ変わるし、何でもいうとおりになることも知っていました。


不安を抱えてままのトラックで、砂漠の中で止まるよりはずっと良い、というわたしの勘です。

帰り際、オフィスのマネジャーの女性の態度が一変しました。

『ゴメンナサイねぇ~長時間お待たせしちゃって・・・ホントに。』

『いいよべつに、3時間だけだから。。。』

この時、なんか嫌~な予感がしていましたが、とりあえずモーテルに戻ることに。
時間は午前11時。U-Haulになんと3時間近くもいました(笑)






部屋に戻ってシャワーを浴び、コーヒーを飲みながら休憩。

2ガロン分の水を確保して、タクシー会社に電話し、チェックアウトすることに。






20分ほどして、タクシーがやってきました。

時刻は午前11:45.

バスの出発時間は12:05。

時間が迫っていたので、急いでIndioインディオという町のグレイハウンドのバス・ディーポに向かってもらう事に。

『運転手さん、グレイハウンドのバス・ディーポまで15分で行けるかな?』

『バスの時間だね?よし、急いでみるよ!!』

タクシーは、時速120kmで高速道路をすっ飛ばしました。




出発時間に間に合うように、バス・ディーポに到着。

『着いたよぉ~、11分で。』

『ありがとう、グッドジョブ!!』

ちょっとチップを弾んで、さりげない会話の後、バス・ディーポの建物の中へ。





建物の外の停留所には、既に、フェニックス行きのバスが待機していました。
チケット売り場で聞くと、もう売り切れとの事。せっかく、間に合ったと思ったのに・・・。

『次は、14:50発だよ。』

『わかった、じゃーそのチケットを買います。』

次のバスまで3時間待たなければなりませんが、仕方がありません。
グレイハウンドも満員になるんだぁ・・・と、不思議に思いましたが・・・。




バス・ディーポのある場所は、アメリカのどの都市でも共通して、古いダウンタウン地域にあり、あまり治安が良くありません。

このIndioの町のバス・ディーポの建物の中は、独特の澱んだ空気を醸し出しています。
エアコンもついておらず、大きな扇風機が回っています。屋根があるため日差しが無いので、暑くもないのですが涼しくも無い、そんな感じでした。



バスのタイム・スケジュールのボードを見ると、黒い木製のボードに、茶色をしたアルファベットや数字のピースがはめ込まれる昔ながらのタイプ。60~70年代にタイムスリップしたようです。行き先を見ると、San Bernardino、Riverside、Bakersfield、San Diegoといった有名なカリフォルニア南部の町に加え、メキシコ国境に程近いEl CentroやEl Pasoなども町もあります。


室内の写真を撮りたかったのですが、ちょっとデジカメを取り出せる雰囲気ではなかったので、写真はありません(笑)


建物の中には、ブラック・アメリカン、ヒスパニック、かなりいかれた風貌のヒッピー風白人(着ているのが、Ozzy OzborneのTシャツ!!)、そして日本人のわたし。

50名程は待っていたでしょう。フリーマーケットで買ったような60年代くらいのでかくてオンボロのスーツケースや手提げカバンを持っていたりする人もいますが、わたしのようなコンビニの袋数個だけ、という荷物の人も結構見かけます。


クッションの無い堅いイスに何時間も座って待っているのも退屈なので、建物の外に出ることにしました。






外は灼熱です。道を歩く人々の姿はありません。歩道に面して、手入れされた芝のある教会の木陰を探し、ゆっくりと腰をおろします。
わたしの荷物は、汚れた着替えが詰まったコンビニ袋に、命の次に大切な水のペットボトルや新聞紙と地図をいれた袋。貴重品やらタバコはウエスト・ポーチに入っています。


うーん、ぱっと見、ホームレスに思われても不思議ではありませんネ。数日、髭も剃っていませんから・・・(笑)


木陰にいても、ジリジリと暑い。水をのみ汗をかく。
しばらく、道路を眺めているも、通り過ぎる車もまばら・・・。仕方なくあたりを散策することに。


カフェやレストランさえありません。そういえば、バス・ディーポの中のお店も閉まっていて、自動販売機だけが動いていました。





歩いていると古本屋さんを発見!!職業柄、アンティーク・ショップや古本屋を見つけると中をのぞいてみたくなります。

中に入ると、おばさんが声をかけてきました。

すごい量の本なのですが、その大半がペーパーバック。これほど大量のペーパーバックを見る事も無いでしょう。

エアコンはありません。ひとつ扇風機が回っています。


『すごい、量ですね~もう、長いんですか?』


などと会話してると、気さくに返答してくるのですが、何やらわたしの所有物(よれよれ&パンパンのコンビニ袋2個)と手に持った大き目のふたの無いカップ(中には氷が溶けかかっている)が気になるようです・・・(笑)








ほどなくして、お店を出て歩いていると、近くにスリフト・ショップを発見!!

暑い中でじっとしていても、体力を消耗するので、店の中に入って見ました。

『ウワー涼しい。天国・・・。』

15分ほど呆然と古いソファーに腰掛けて、汗が引くのを待ちました。

売られているペーパー・バックを読みながらの時間つぶし。
うん、何でも安い!!LPレコード一枚50円。ハードカバーの本は75円。

1時間半ほど店内で過ごし、ハードカバーの本を一冊だけ買って、バス・ディーポに戻る事にしました。

バスの出発時刻まで、40分ほど。時刻は14:10。他人の視線を気にしつつも、堅いイスに座っていました。







しばらくすると、El Pasoエルパソ(テキサス州の西部)行きのバスがやってきました。このバスは、フェニックス経由でニューメキシコ州を通り、テキサスまで行くようです。


乗車する多くの人々の列に並んで、わたしも乗車しました。車内は、結構一杯です。でも、エアコンが効いていて快適。


それにもまして、バスの旅は、ボーッと車窓の風景を眺めながらのんびりできるのです。運転する必要も無いし、眠気がきたら、いつでも眠る事が出来ます。飛行機の旅だと景色が見えませんから・・・ネ。





バスは高速に乗り、ドライバーさんが途中の停車地の説明などをしていました。

わたしも、あまりの心地よさと安心からか眠りにつきました。










しばらくすると、だんだんとバスが減速するのを感じ、バスは路肩に停車してしまいました。







『えーーーーーーーーーーーっつ、マジ???』





わたしは、すぐさま危険を感じました。

スモークガラス越しに外を見ると、砂漠のど真ん中。そうです山越えの最中です。
遠くには高い山が見渡せ、一帯には砂漠特有の景色が広がっています。
誰も住みたくない、誰も住むことの出来ない、そんな広大な土地。



すぐに白人の身長の高いドライバーは、エアコンを切りました。

車内がざわつき始めます。



快適だった車内も、3分経ち、5分経ち、だんだんと車内の温度が上がってゆきます。
車内には小さい子供もいます。


ドライバーは、何度も車外に出て、エンジンをかけますが、一向にかかる気配無し。

『10分程待ってください。それで、もう一度エンジンをかけてみます。』

初めてのドライバーからの説明でした。



わたしは、Greyhoundだから大丈夫と安心していた反面、こういう最悪の状況も想定していましたので、水も十分に持っていました。




わたしの隣のウーピー・ゴールドバーグ似の黒人女性もぶつぶつ文句を言っています。

『暑い、暑い。オーバーヒートしたんだ、オーバーヒートしたんだ。。。』






車内の黒人達は、ただひたすらブツブツと文句を言っています。

白人女性の多くは、携帯電話片手に、家族に報告の電話をしたり、Greyhoundのバス会社に文句の電話をする人も。




サン・ディエゴから乗っていた女性は、

『だ・か・ら、Indioに着いた時に、ドライバーに言ったのよぉ~、このバスの車両を変更した方が良いって!!
だけど、大丈夫だって、ドライバーが聞かなかったのよぉ~』


ブツブツ言ってます。

どうやら、わたしが乗る前から、バスの調子が良くなかったようです。




よくよく考えてみると、私の乗ったIndioのバス停留所には、フェニックス行きの空のバスがドアを開けたまま止まっていました。

それは、エンジン不良で、Indioで運行をキャンセルした車両だったのです。そこで、降ろされた人々が、次の便を待っていた為に、こんなに混んでいるのだと理解しました。




ヒスパニックのメキシカンは、運賃を払い戻してもらうだの、勝手に車外へ出たりと、自分勝手な行動。

こういう危機的状況だと、国民性が出るものです(笑)
ただ、運賃の払い戻しは、生き延びてからの話になろうかと思いますが・・・。




わたしも普通なら文句も言いたくもなるのでしょうが、こういう事態を予測していた為に、ドライバーに同情していました。



10分経ち、エンジンをかけましたが、上手くいきません。

あきらかに、オーバー・ヒートです。
エンジン起動を試みる事数十回。上手くいきません。



皆汗をふき始めました。
しかし、パニックになって、ヒステリックに騒ぐ乗客がいないあたりが、アメリカ人の本領発揮でしょう。







ドライバーが、

『今、助けを呼びましたから、1時間ほどで来ます。』と。

こういう場合の、1時間など当てにならないのは、明白です。
また、このような場合でも、ドライバーは謝罪しません。

また、ドライバーは、乗客に対して、『外に出てください』とか『外は危険ですから、車内にいてください』といった指示は一切しません。


全ては、『自己責任』の国であり、『個人の自由は、最大限尊重されなければならない』からだと思います。







半数くらいの乗客が、水などの荷物をもって外に出ました。わたしも水などを持って、外に出ました。バスは、高速道路の走行車線のすぐ隣に停車しています。余計な路側帯など無い場所です。走行車線は、車や大型トレーラーが走行しています。


かなり危険です。



実際の気温は、車外の方が高いでしょうが、多少風が吹いている分、車外の体感気温は低いかもしれません。また、車内の圧迫感が無いので、気持ちが安らぎます。




車外は、砂漠のど真ん中。日陰になるシェードは何もありません。




白人の子供連れの女性に、わたしは持っていた新聞紙を何枚か手渡しました。

『小さい子供に、シェード代わりにしなよって・・・。』





さて、これから最低一時間、炎天下で待たなければなりません。45度以上はあるでしょう。

水はありますが、意識が持つかどうか・・・不安がよぎります。そんな中でも、メキシカンはカラッとしてました。

きっと、母国の車事情がもっと悪かったのかも知れませんし、もしくは、もっと過酷な状況がいくらでもあったのかもしれません(笑)




少し小高い離れた場所には、背の低いブッシュが生えていて、ちょとした木陰になっています。


『あのブッシュの木陰にいったらどう?』

『えーっ、ダメよ。あーいう木陰には、毒をもった蛇やさそりがいるから、かえって危険。』


なるほど、みんな冷静です。



しかし、わたしも冷静でした。

というのも、Indioに程近い場所で、緊急停車したわたしたちですが、Indioのような途中町にスペアになるバス車両など無いのです。もちろん、ドライバーも。なので、いったい誰が、どこから助けに来てくれるのかは、謎でした。



バスのすぐ脇を、ゆっくりした速度の大型トレーラーが過ぎてゆきます。

パトカーも全速力で通り過ぎてゆきます。

『うそぉ~、パトカーはレスキューしないの???』と思いましたが、レスキューより、違反車両を追跡する方が大切なのかもしれません。




車外で40分ほど過ぎた頃、ドライバーがエンジンの起動に成功しました。皆が、バスに乗り込みます。





皆の歓声が響きます。



わたしも隣の黒人女性と『Yeah, we did!! We are survived!!やった~、生き残った!!』といってハイタッチ!!


乗客同士の距離が、一気に縮まった瞬間でした。




それからは、山越えがあるたびに、のぼり道ではエアコンを止めて、負荷を減らし、ゆっくりと走行を続けました。

車内が落ち着きを取り戻してきました。話が弾みます。



『もう、カリフォルニアからアリゾナに入ったの??』

『ええ、そうよ、もうアリゾナよ。さっき、州刑務所を過ぎたでしょ?わたしの息子があそこに入ってたから、よく知ってるのよ~。』

カジュアルなトークに、雰囲気が和みます。




日が沈みかけ、気温もだんだんと下がり始め、ネオンが点き始めた頃、車内では、ざっくばらんな話に花が咲きます。



定刻を大幅に遅れてフェニックスのバス・ディーポに到着しました。あたりは真っ暗ですが、建物の中は多くの客で溢れ返っています。

大都市のバスディーポはさすがに違います。まさに旅人の交差点。いろいろな人間模様があるのでしょう。




ここまでのドライヴァーから別の人に交代して、あのバスは、さらに東を目指し、ツーソン、エルパソへと向かいました。
わたしの近くに座っていたメキシカンは、夜通しバスに乗って、テキサスのオースティンまで向かうそうです。フェニックスから更に20時間以上かかる遠くの町です。

皆のタフさには驚きます・・・。

『良い旅を!!これ以上、バスがBreak Downしない事を願ってるから・・・!!』



そして・・・

『頑張れ、Greyhound!!』


こうして、わたしの記憶に残る3日間が過ぎました(笑)
そして、Greyhoundでの旅の魅力を思い出しました。



部屋に無事に戻ったわたしは、顔を洗っていました。

『随分、日焼けしたなぁ・・・』



作戦は無事終了です。



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