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邦人拉致問題、チャンスか罠か(2)

2013-05-19 | ラジオ
それが事実であるのか、それともやはり拉致被害者たちは既に死亡しているのか、よくは分からない。どちらにせよ日本は、今後、拉致被害者が一人として祖国に還らない、ということを覚悟せねばならない。
なんという悲劇であろうか。
ですが恐らく、この問題が再び日朝関係正常化の途上の、克服困難な躓きの石になることは有り得ない。究極的には、日本もまた、朝鮮人民に対する自らの負債を完済してはいないのだ。この点について北朝鮮の新聞「ノドンシンムン」は極めてあけすけな論説を展開している。
日本の悪の歴史を過去のものとしてはならない、と題された評論のなかでノドンシンムンは、日本の朝鮮植民地支配に言及、さらに朝鮮人の強制移住、強制労働また売春強要などにも言及した。
植民地政策の犠牲になった人数、また独立を求め戦った朝鮮人に対する植民地政府の弾圧の犠牲になった人数は、数人や数十人ではなく、数千人という数に上る。
ノドンシンムンは、このことについて日本が朝鮮市民に負う債務は、まだ返済されていない、と指摘した。この論文には拉致問題については見られないが、もし日本側が拉致被害者の返還を要求した場合、この負債の全面的償却が引き合いに出されること明らかだ。そのとき関係正常化交渉は再び行き詰るだろう。

日本と北朝鮮が無事に歴史の罠にはまり込まずに済むか否か。鍵を握るのは安倍晋三首相だ。彼の賢明さと政治的意思に一重にかかっている。
彼の見せた近隣諸国との関係正常化に向けた決意、これは日朝がついに当該問題を過去のものとし、歴史家の手に譲り渡し、そして未来を目指した関係構築のチャンスを掴めるということに期待感を抱かせるものだった。

ルポ 拉致と人々――救う会・公安警察・朝鮮総連
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岩波書店


5月16日放送 ロシアの声・ラジオジャーナル