”Sanctuary”by radiosonde
気象観測のために上げられる気球をユニット名とした二人組のデビュー・アルバム。悠然たるペースで、”存在しないはずの音楽”を奏でる。そういえば、ラジオゾンデという言葉自体も、ずいぶん久しぶりに聞いた気がする。
ギター、オートハープ等の楽器とディレイなどのユニットを駆使して、遥か高みをさまよう気球の旅が、その気球の目線で描かれて行く。素朴な、と呼んでいいのか屈折したと呼ぶべきなのかよく分からない、イマジネイティヴな演奏が繰り広げられる。
吹きつける風や、高速度で目の下を飛び去って行く大地のイメージが音の向こうから伝わってくる。まるで彼等が空に登って行き、風や雲と合奏しているような。
思えば、観測気球の打ち上げなんてのは、ずいぶん素敵な大気への語りかけだった。ラジオゾンデの音楽が繰り広げる、空の旅のイメージに身を任せるのが心地よい。まるで大気という大海を行く帆船にでも乗って、地球の淵を見下ろしているかのようだ。
なんて心地よい地球との対話なんだろう。