ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

はなのうてなに

2012-08-06 03:10:56 | アンビエント、その他

 ”Ambessence piano & drones”by Bruno Sanfilippo & Mathias Grassow

 あれは私がまだほんのガキの頃。親に連れられて行った、多分、親戚の法事の席ではなかったかと思う。ガキのことであるからもちろん、そのようなものには3秒で飽きて、寺のあちこちを探検して回った。

 裏部屋の仏具などを置いてある部屋に入ると、壁に1張りの仏画が張り出してあり、そこには「仏教の立場から言えば、人が死んで召される天国というのは、まあだいたいこのような場所だ」みたいな絵があった。つまり、淡いタッチで空の上の雲のあいだに光に包まれた人影がある、みたいな。

 その絵に添えられていた文章の末尾の一言がなぜか印象に残った。「はなのうてなに むらさきのくも」というのだが。何となくその文章だけのちのちまで覚えていて、なるほどつまり天国というのは鼻のあたりに紫色の雲がたなびいているところなのだな、と思ってみたりするのだが、特にそれで何ごとかご利益がある気配もなし。そりゃそうだね。

 今回の盤は、アルゼンチン出身で現在はスペインに本拠を置いて活動しているアンビエント・ミュージックの達人、 Bruno Sanfilippo の2008年度作品。ドイツの同じくアンビエント・ミュージック作家である Mathias Grassowとの共演で、まさに「はなのうてなに むらさきのくも」状態のアルバムをモノにした。

  Mathias Grassowの奏でるシンセが悠然と、天界に浮かぶ雲の流れみたいな音群をたなびかせ、その狭間にSanfilippo はピアノで、ポツリポツリと誰に当てるでもない呟きみたいなフレーズを置いて行く。
 リズムは刻まれずメロディは流れない。歌うべき歌はすでになく、時の流れさえ、遠いどこかに置き忘れられている。静まり返った空間だけがそこにあり、音はただ、ひと時たゆたい、そして消えてゆく。

 いやあ、暑いっスねえ。日本の夏って、こんなに暑かったでしたっけ?もうすっかり、何をする気もなしで、こんな音楽ばかり聴きつつ、ただひたすらダレダレの日々をただ送るのみ・・・




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