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書面審議・オンライン会議は「会議」?

2021年08月23日 | 地方自治体と法律
(新型コロナ対策として多用されている書面審議、オンライン会議)
 新型コロナ対策として、多用されている書面審議、オンライン会議ですが、条例等で用いられる「会議」にあたるのかどうか考えてみました。

<会議についての規定>
 会議に関する条文は、概ね次のようなものです。
(会議)
第〇条 会議は、会長が招集し、会長が議長となる。
2 会議は、委員の過半数が出席しなければ開くことができない。
3 会議の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長が決する。
 2項には、会議は、委員の「出席」がなければ会議を開くことができない、と規定されています。
 「出席」という言葉は、会議を開催する場所に出てくることを意味するので、基本的には、その場に出席しなければ会議が不成立となってしまいます。
 国会議員が国会にリアルに出席し、バーチャルが許容されないのは同じ理屈です。
 憲法では、「両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。」と規定しており(56条1項)、ここでも「出席」という言葉が使用されているのです。実際に身を国会の議場の中に置かなければ議事は開けないと解釈されています。
 これは次のような考え方からです。人が一つの場所に集合して話し合いをもち、討論をすることによって、合議体である会の意見が決定されます。集まって会の中であれこれと話をすることで、ある意見をもっていた人も、別の人の意見がよいなと思うようになることもあるし、その逆もある。話し合いが必要なのであるから、持ち回り決議のように話し合いがその場でできないものについては、会議をもったとはいえないでしょう、という考え方です。


<書面審議は「会議」とはいえない>
 このような考え方からすると、書面審議は会議ではなく、議決は無効となります。
 実際、そのような最高裁判決もあり、持ち回り決議での書面審議は無効であるとの判断がだされています(昭和46年1月11日民集25・1・45)。最高裁は、次のように述べています。
「原判決の確定したところによれば、本件許可処分にあたり、温泉審議会は開かれず、知事による温泉審議会の意見聴取は持廻り決議の方法によりされたものであるというのであり、また、温泉法一九条、島根県温泉審議会条例(昭和二五年同県条例第三一号)六条等の規定に徴すれば、右審議会の意見は適法有効なものということはできず、右処分後に開かれた審議会の意見によつても、右のかしが補正されないことは、原判決の判示判断のとおりである。」
 この理由は割とそっけないものですが、原審の広島高裁松江支部昭和38年12月25日判決が実質的な理由付けをしてます。
「控訴人は、温泉審議会委員一九名中一〇名がいわゆる持廻り決議の方法により意見を表明し、その意見はいずれも許可を相当とするものであつたから、意見聴取の手続に欠けるところはないと主張する。しかし島根県温泉審議会条例によると、審議会は会長が招集し、審議会の委員の過半数が出席しなければ、議事を開き議決することができず、議事は出席委員の過半数で決し、可否同数のときには会長の決するところによることとなつているのであつて、持廻り審議による議事の審理、議決を許す旨の規定を定めていないから、委員が一定場所に集合して開会し、討論議決することにより、合議体たる温泉審議会の意見が決定されるわけであり、委員の過半数がいわゆる持廻り決議の方法によりある事項に賛成の意見を表明したとしても、これによつて、審議会の決議が有効に成立するものではなく、したがつて審議会の意見が決定されるものではないといわなければならない。」


<オンライン会議>
 このように書面審議は、話合いをしない方法でおこなれるため、「会議」とはいえないということになります。
 オンライン会議はどうでしょうか。
 オンライン会議では、話し合いがあり、会議に出席しているようにも思えます。
 しかし、現時点では「出席」とは、リアルに会議場に集まることを意味すると考えられていますので、会議についての条文はそのままにしてオンライン会議を開き、議決するのでは、議決が無効となるリスクがあります。
オンライン会議を適法とするためには、次のような規定を置いている例があります(杉並区教育委員会会議規則)。
第4条の2 委員又は職員は、教育長が必要があると認めるときは、教育長、委員及び職員が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によつて、会議に出席すること(次項において「オンライン出席」という。)ができる。
2 前項に定めるもののほか、オンライン出席について必要な事項は別に定める。
 この規則では、4条に会議についての規定があり、4条の2でオンライン出席について定めています。このように、会議についての規定とオンライン出席についての規定は、同じレベルの法規(条例であれば条例、規則であれば規則)で規定しておく必要があります。
 また、オンライン出席については、詳細な基準をもうける必要があります。例えば、どのような場合にオンライン出席を可とするのかや、回線が途絶したときはどのように扱うのかです。このような取扱い基準を設けているものとしては、板橋区教育委員会オンライン出席取扱基準があります。
 しかし、オンライン出席についての規定自体を設けているところも少なく、基準を設けているものはさらに少ないので、今後の規定の整備がまたれるところです。
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