南斗屋のブログ

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被害者参加制度~参加できる事件

2007年07月02日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 犯罪被害者の刑事裁判への参加等ができるようになる刑事訴訟法の改正などが成立し(2007年6月20日)、この改正が2008年12月までに施行されることや、この被害者参加制度がどのような意味をもつのかについては、既に、過去記事「被害者参加制度(改正刑事訴訟法)の成立」で書いたのですが、被害者参加制度というものは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

 被害者は、これまで刑事裁判に当事者として参加できませんでした。
 「当事者として参加できない」ということは、実際には法廷を傍聴するしかできなかった、発言しようと思っても、自分から主体的に発言することはできなかったということです。

 これが今回の改正によって可能となります。

 ただ、あらゆる事件に適用されるというわけではありません。
 このブログは交通事故関係なので、その関係だけにしぼりますと、
  危険運転致死傷
  自動車運転致死傷
は参加することが可能です。
 しかし、道路交通法違反事件だけの事件、たとえば、無免許運転・酒気帯び運転・酒酔い運転・救護義務違反といった事件については、被害者参加をすることができません。

 このように被害者参加できな事件があるということは、たとえば、このようなケースが生じる可能性があります。

 たとえば、無免許、酒気帯び自動車を運転していた人が、被害者をはねて死亡させたという場合、犯罪としては
 1 無免許・酒気帯び運転
 2 自動車運転致死
というものが成立する可能性がありますが、捜査の結果、加害者には過失がない(たとえば、被害者がいきなり飛び出してきたので避けることが不可能だった)と検察官が判断した場合、検察官は、
 無免許・酒気帯び運転
のみで起訴し、
 自動車運転致死
は不起訴にすると思います。
 このケースでは、無免許・酒気帯び運転のみが起訴されているため、被害者参加はできないということになります。

 つまり、被害者参加できるかどうかは、検察官がどのように起訴されるかによって決められてしまうことになります。

コメント (3)    この記事についてブログを書く
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3 コメント

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ちょっとした疑問。 (コスモス)
2007-07-02 09:51:57
私が刑法を勉強していたころには、「危険運転致死傷」「自動車運転致死傷」はございませんでした。厳罰化の要請を受けた立法ですね。
従来は、「業務上過失致死傷罪」で処理されていました。
ところで、業務上過失致死の適用場面は、やはり「残る」という理解でよろしいでしょうか。それとも、自動車事故での死亡は、新設された両罪のみということでしょうか。
業務上過失致死の適用場面が残るとすると、「生命・身体」法益ですので、被害者参加制度の利用が可能となってきそうな…。
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Unknown (管理者)
2007-07-02 20:28:46
>ところで、業務上過失致死の適用場面は、やはり「残る」という理解でよろしいでしょうか。それとも、自動車事故での死亡は、新設された両罪のみということでしょうか。

 自動車事故の場合は、基本的には「自動車運転致死傷罪」での立件が問題となり、「危険運転致死傷」の要件に当たる場合は、そちらで立件されるのではないかと考えています。
 業務上過失致死傷は、自動車事故以外の事故(鉄道など)での適用に限定されるのではないでしょうか。
返信する
解説ありがとうございます。 (コスモス)
2007-07-04 09:55:50
当罰性が高くないケース?では、従来通り業務上過失致死傷の適用もあるのかな、と考えたしだいです。
立法の経緯からすると、やはり自動車運転致死傷「一本」で、ということなのですね。わかりました。解説ありがとうございます。

ところで、本文の話題から外れますが、今朝の(北海道新聞)で、「脳脊髄液減少症」の記事がございました(生活面なので、ホームページでは取り上げていません)。
ブラッドパッチ治療を実践している先生の話です。
市立小樽第二病院脳神経外科高橋明弘先生の話では「これまでに約120人の治療をし、7~8割で効果があった」とのこと。「診察・治療には6日程度の入院が必要」「健康保険が適用されないため1回約30万円で、3回で約70万円の費用がかかる」(「 」部分道新引用)。
以上、本文の話題からズレましたが…。
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