南斗屋のブログ

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将来の住宅改造費

2007年06月20日 | 交通事故民事
 前回、後遺障害に伴って、自宅購入が必要となった場合、その必要性が認められれば、自宅購入費用は認められるけれども、裁判所はその金額までは認めたがらない、という話をしました。(過去記事→「後遺障害に伴う自宅購入費用」)。

 その最後の方で、被害者が若い場合は、建物部分については、建替というところまで、視野に含めて損害賠償しなければならないのではないかと書きましたが、そのような請求をした裁判例を見かけました。

 名古屋高裁H19年2月16日(自保ジャーナル1688号2頁)のケースは、既にした住宅改造分以外に、将来の住宅改造費用を請求したものです。

 被害者側は「改造は木造家屋についての工事であるから、控えめに見積もっても耐用年数である22年ごとの改造が必要である」と主張しました。
この「22年」という数字は、木造家屋の減価償却期間であると思います。

 名古屋高裁は、将来の住宅改造費を認めませんでしたが、その理由は
「家屋あるいは上記改造部分が22年ごとに改築ないし、改造が必要であるとまでは認められないから、この将来分の住宅改造費は、認める事ができない」
というもので、理由になっているのか、いないのかよくわからない書き方です。

 このような歯切れの悪さは、裁判官が”確かに国税庁が出している減価償却表には、木造家屋は22年で償却するようにと書かれてはいるが、それはあくまで減価償却のためのものであり、実際に22年で改築されるというものではないだろう”という思考が働いているからかもしれませんが、もしそうだとしても、木造家屋はいつか改築が必要なのであり、その点を全く考慮しないのは、妥当ではないように思います。
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
少なくとも補修費用は認めるべき。 (コスモス)
2007-06-20 09:26:28
建物の寿命はメンテナンスしだいという印象を持っています。現に私はUターンで生まれ育った地に生活していますが、築30年を超える建物(子供の頃からある建物)は多いです。
従って、22年の減価償却期間を基準として改築を認めるのはどうかな?、とも思います。

ただ、将来の「補修」費用は必要となってくることは明らかと思います。我が家もそうですが、築30年を超える家はそれなりのメンテナンスをしているものです。その費用は「改築」費用まではいかないですが、相当なものです。
被害者が若い場合に全く考慮なしというのは妥当ではないというのは、同感です。
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制限の論理。 (コスモス)
2007-06-21 09:25:00
コメント後、気になり赤い本・青い本の判例を読みました。

改造・新築費用を制限する論理として、「家族が利益を受ける部分がある」「障害者用仕様部分とはいえない」「介護用の設備等に関する費用といえない」などを読みとれます。
大阪地裁H19年4月10日判決の「マンションは財産として残る」というのも、制限する方向の論理といえそうです。

これに対する反論としては、「家族が受ける利益は反射的なものにすぎない」「被害者の占有スペースが増えるので、同居者の快適空間が失われる面もある」などを読みとれます。

減価償却は、肯定する方向で働くといえそうですが、名古屋高裁は否定的です。

やはり、建物は一生のもの、という考えが根っこにあるのでしょうか。何も手を加えなければ、朽ちてしまうのですが…。

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