南斗屋のブログ

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労災申請と厚生労働省昭和41年通達

2007年09月21日 | 労働関係
 前回、「通勤時の交通事故と労災申請」という題で、労災申請で会社側が申請自体を渋ることがあることを書きましたが、なぜそのようなことが起こるのか、考えてみました。
 
 本来、会社側は労災申請の適用要件があれば、申請自体を拒否できないのですが、申請を渋るには何か理由があるのではないかと思ったのです。

 実際には、労災の担当者が本心を話してくれなければ、わからないことなので、以下は、推測ですが、厚生労働省の通達に原因があるのではないかと思うに至りました。 

 問題の通達は、労災からの支払いと自賠責保険の支払いとのどちらを先にするべきかということに関するもので、厚生労働省の通達では、
 「原則として自賠責保険の支払を労災保険の給付に先行させるよう取り扱うこと」(昭41.12.16基発1305号)
となっています。

 「通達」というのは、役所と役所の間の取り決めをいうもので、被害者(労働者)は通達にしばられることはありません。

 しかし、労働基準監督局は、この通達に縛られるため、労災と自賠責保険とでは自賠責保険の支払いを労災保険の給付に先行させるようにします。そして、そのことは労働基準監督局から、会社の労災担当者にも運用上伝わっているのではないでしょうか。 
 
 上記の通達は、あくまで労災と「自賠」のどちらを先に支払うかに関するものであり、任意保険についてのものではありませんが、この通達がもたらす影響が、会社の方にまで及んでおり、正確に会社の担当者が通達の趣旨を理解していないと、通勤時の交通事故での労災申請に及び腰になってしまうのではないかと思います。

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4 コメント

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Unknown (世逃げ屋)
2007-09-21 23:57:37
初めまして。

僕も、過去に何度かいわゆる通勤労災の申請で、会社担当者とお会いしたことがあります。しかし、労災申請に最初から協力的だった例は記憶にほとんどありません。たいていは、加害者側の任意保険を使えばいいだろうというものでした。

担当者が協力しない理由は、労災申請をすると、労働基準監督署からお叱りをうけたり、罰金を食らったり、次回の保険料が上がったりするのでは…と思い込んでいるふしがあったように思いました。現に、今回は労災と言っても通勤途上の事故によるものであり、会社に落ち度があるわけではないこと、したがって、労働基準監督署から目をつけられたり、罰金を食らったり、次回の保険料があがったりすることはありませんよと説得すると、たいていの担当者は、それなら仕方がないかというような態度で申請に応じていただける例が多かったように思いました。それでも頑なに拒否する例もありましたけれどもね。先生の言われるような通達を気にしてということもあるのかもしれませんが。
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ご指摘ありがとうございます (管理人)
2007-09-24 20:15:13
ご指摘ありがとうございます。

>担当者が協力しない理由は、労災申請をすると、労働基準監督署からお叱りをうけたり、罰金を食らったり、次回の保険料が上がったりするのでは…と思い込んでいるふしがあったように思いました。

なるほど、あまり深い考えに基づくわけではなく、単純にそんなような考えで動いている可能性もありますね。

それにしても、このような実態があるとすると、被害者は、会社からも手続き拒絶あうということになりますね。実態が改められればと思います。
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メリット制。 (コスモス)
2007-09-25 10:11:03
労災保険の保険料は、会社が負担しますが、「業務」災害の場合には、メリット制で保険料が上がることもありますが、「通勤」災害ではそのようなことはないわけですね。

夜逃げ屋さんのご指摘は、いくつかの本の中で見かけましたが、本当にそうなのかな?と確信がもてませんでしたが、納得いたしました。
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Unknown (世逃げ屋)
2007-09-26 23:36:47
管理人さん、コスモスさん。お返事ありがとうございます。

労災についてあらためて調べてみましたら、前回の僕のコメントにやや不正確な箇所がありましたので、訂正します。申し訳ありませんでした。

通勤災害については保険料は上がりませんが、業務災害についても、保険料がアップしないケースがあるようです。すなわち、常時使用する労働者が20人未満の会社や、一括有期事業(建設業など)で確定保険料の額が100万円未満の会社の場合、労災保険を使っても保険料が高くならないそうです。インタネットで複数のサイトで確認しましたから、間違いないと思います。
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