リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

忘れるか、赦すか、それが問題

2014年05月16日 | 日々の風の吹くまま
ニューヨークのグラウンドゼロ記念館がやっとオープンにこぎつけた。演説するオバマ大統
領の後ろの壁に書かれていた言葉に胸が熱くなった。「No day shall erase you from the
memory of time (いかなる日もあなたを時の記憶から消し去ることはない)」。ラテン語の
「Nulla dies Umguam memori vos eximet aevo」はウェルギリウスの叙事詩に出て来る。
たまたま早起きしたあの日、ふとテレビを見上げた瞬間にWTCのタワーが崩れて行くのを
リアルタイムで見てしまった。そのとき、聞こえるはずがないのに、ワタシの耳にはたくさん
の悲鳴が聞こえた。それと同時にワタシの中で何かが目を覚ましたと思う。いつか行きたい。
どうしても・・・。

あのとき、改めてワタシの心に強く響いてきたのが、イギリスの有力紙The Guardianの編
集長の「世界を歴史という大きな枠の中で見てごらん」という言葉だった。まるで孫娘に説き
聞かせるような手紙はその後のワタシの視座を大きく変えた。あのときにもうひとつ教えら
れたことがある。「We forgive but not forget(赦すけれども忘れない)」。赦そう。でも忘れ
ない。それは同じ轍を踏まないためであって、遺恨を引きずることではない。赦すことで心
が自由になり、経緯を負の感情に邪魔されることなく見ることができる、と。

あの日、世界には赦すことも忘れることも頑なに拒否する人たちがいるのだと知った。でき
ないのか、しないのか、宗教や文化がそう教えるのかは知る由もない。キリスト教の「隣人
を汝自身のごとく愛せよ」という教えは、言い換えれば「隣人を汝自身のごとく赦せ」というこ
とで、人を赦すということは実は自分を赦すこと、つまり自己嫌悪から自らを解放することで
もある。屈辱的な謝罪を要求したり、復讐を企てたりしても、自分を赦せなければ何の慰め
にもならず、よけいに負の感情を強めて悶々とするだけのように思える。まあ、少なくともワ
タシには・・・。

過ぎたことは水に流して忘れるという考えもあるけど、心の痛みは「時の記憶」から消えるこ
とはあっても、「心の記憶」は支配しきれないから容易に消せないし、恨みつらみは忘れた
つもりでも思い出されて来る。でも、赦すことは恨みつらみを手放す(心の記憶から切り離
す)と自分で決めて実行することだから、究極的には重い負の感情を捨てて自分の心を解
放することで、その時点で忘れるかどうかはどうでも良くなる。思い出したら「繰り返さない
から」と自分に約束するだけ。少なくともワタシにはそうすることで人生が幸せに感じられる
ようになったと思えるんだけど・・・。


2 コメント

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Unknown (モズライト)
2014-05-17 18:06:38
ビルが崩れ落ちてから何年経ったのかな 10年以上か
あの衝撃的な場面はすごかった ビルが上から一気に
崩れてきた時の驚きときたら。
あんな構造になってるなんて なんて脆い。

いろんな感情 普段は忘れてても ふとした時に
蘇るし 決して忘れてない 忘れてくれれば
気持ちが楽になるのにな~ 昔の事いつまでも。
人に対する事でも自分の事でも
10年経ったら負の記憶をリセットして欲しい?
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Unknown (lyra)
2014-05-17 18:31:33
今年で13年です。エンパイアステートビルの展望台から見たとき、WTCのあったあたりだけぽかっと大きな空が広がっていて、すごく悲しい気持になりました。

人間の記憶は、感情も含めてその人の歴史ですからねえ。
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