リタイア暮らしは風の吹くまま

古希を迎えて働く奥さんからリタイア。人生の新ステージで
目指すは悠々自適で遊びたくさんの極楽とんぼ的シニア暮らし

2008年11月~その1

2008年11月16日 | 昔語り(2006~2013)
外国系日本人は日本人?

11月1日。ハロウィンから一夜明けると「万聖節」。といっても、カトリック教国以外では特に行事もなにもないけど、まあ、長い間にあまりにも大勢になった聖人たちをまとめてお祝いしようと言う日らしい。その前の夜に地獄の釜のふたを開けて、ひと晩だけもろもろの悪霊を「仮釈放」してしまうところがおもしろい。それで朝が来たら、もろもろの聖人たちがひと晩暴れまくってストレス解消した悪霊どもを地獄に戻して、「神、そらに知ろしめす。すべて世はこともなし」ってことかな。もろもろの人生もそうだといいんだけど・・・

読売新聞に、警察署が「話し口調で中国人と思い込んで日本国籍を持つ女性を逮捕」したという記事が載っていた。日本だからこそ起きそうな事件だなあ。今日は英語版にも記事が載っていたから、さっそくソーシャルブックマーキングサイトに投稿しておいた。記事によると、万引きの疑いで駆けつけた警官が任意で事情を聞いたら、話し方が「日本人」じゃなかったもので、外国人だと思ってパスポートの提示を求めたところ、持っていなかったので、本当ならそこで入管当局に問い合わせるべきなのに「外国人」という思い込みでそれをせずに入国管理難民法違反(旅券不携帯)で逮捕したんだそうな。パスポートを提示できなかったのは「日本国籍」だからとわかって、「女性の話した内容や口調から日本国籍を取得しているとわからなかった」と弁解。へえ、、そうなんですかぁ・・・

日本人らしく日本語を話して、日本人らしく行動しない人=外国人/外国籍。日本なんだなあ、ほんと。日本の警察は路上で「外国人」と思しき人間を呼び止めて「職務質問」して、パスポートやビザの提示を要求するとは聞いていたけど、外国籍の人が日本にいるときはいつもパスポートを持っていないと逮捕されるとは知らなかったなあ。東京での1週間、ワタシのパスポートはホテルの部屋の金庫の中にあった。つまり、日本で「犯罪」を犯していたわけか。日本語で話して、「変な日本語だから」と職務質問されたら、へたをすると逮捕されてしまっていたかもしれないわけか。まあ、「念のため」にとカナダ大使館の電話番号だけはを肌身離さず持っていたんだけど、ふ~ん、もしも逮捕されたら電話1本かけさせてくれないかもしれないなあ。日本はカナダじゃないもんなあ。はあ、こわ~。

それにしても、まさにxenophobia。そういえば、日本に長いこと住んでいる人で、たまたま「職務質問」されて、外国人登録証を持っていなかったために「始末書」を取られたという人がいたっけ。ユダヤ人を識別するために「ダビデの星」をつけさせたナチスと発想が似ていなくもない。日本も怖い国だなあ・・・。それよりもっと怖いのは、日本人一般がそれを「人種差別」とも「人権蹂躙」とも思っていないらしいこと。よそ者のことだから自分の世界とは関係ないということかもしれないけど、そういうのに限って一歩外へ出ると仮想的有能感を振り回したがるようなところがある。カナダに来て、期待に沿わないことがあると「日本人だから差別された~」と騒ぎたてて、「カナダには人種差別がある。差別のない日本に生まれてよかった~」とやるノー天気ぶり。あのさあ、そりゃあ日本では日本人を差別しないでしょうが・・・。

まあ、「差別のない平等社会」というのは建前であって、実際には日本人同士でも厳然たる「差別」が種々あるそうだけど、自分が不利益を体験しない限り、この人たちにはそれを認識するほどの想像力も視野も器量もないんだろうなあ。まあ、「日本はいい国、日本人でよかった~」と喜んでいる人たちは、日本で「平等」を謳歌できる恵まれた人たちなんだろうけど、「格差社会はけしからん」といって是正に立ち上がることはないんだろうなあ。何はともあれ、また日本に行く機会があったら、いつでもどこでもパスポートを持って歩くのを忘れないようにしよう。もしも、おまわりさんに呼び止められたら、「ワタクシ、ガイコクジン。美しい国日本におじゃまさせていただいてま~す」と、にっこり。効き目、あるかな・・・?

冬時間が来た

11月2日。今日からやっと「標準時」になった。PCの前に座っていると、午前1時59分がピッと午前1時に変わる。そこで家中の時計を1時間遅らせる作業にかなる。めんどくさい話。来年の3月初めまでのつかの間のなのに「標準」てのも変な話だよなあ。いっそのこと「標準時」を「冬時間」と呼ぶことにして、「夏時間」を標準時にしたらどうなんだろう。それよりももっといいのはどっちかに統一することなんだけど。

きのうは午後1時半というとんでもない時間に目が覚めたせいか、1日中なんとなく眠いような、だるいような。日本は三連休で1日余裕があるもので仕事はサボり。それでもディナーにでかけて俄然元気がでるからワタシはほんとに食いしんぼ。Gastropodはかなりにぎわっていた。ま、不況感が西の端っこまで波及するにはまだ間があるし、バンクーバーへは影響は小さいという強気の観測もあるらしいから。カクテルはバーテンダーの創作という「アールグレイフィズ」。シャンペンとポーランドのウォッカと紅茶のアールグレイのシロップ。ほんのりベルガモットの香りがして、かなりいける。

5コースの「味見メニュー」のスタートは松茸スープ。今年の松茸は豊作だそうだけど、クリームスープになって出てきた。ビーフとホタテのコンボの後に出てきたのが、ギンダラと豚の三段腹肉の組み合わせ。テーブルでダシをかけてくれる。(「ダーシ」と「だ」にアクセントがつくのがなんとも愉快。)何よりも興味をひかれたのが、魚の下にある「Cod udon(タラのうどん)」なるもの。たしかに「うどん」らしいけど、魚の身の味と舌触りもある。あんまりおいしかったもので、どうやって作るのかとサーバーのジャニスさんに聞いてみたら、わざわざシェフに聞いてきてくれた。「タラと白ワインでムースを作って、うどんの生地に混ぜ込んで、熱湯の中に絞り出す」。そうかあ、生地を切るんじゃなくて、ニョッキやシュペツレのように直接熱湯に落として作るわけだ。こうして手の内を明かしてくれるシェフはうれしい先生。デコレーションケーキ用の袋と口金を使えばいいかな。うん、いつか自分で試してみよう・・・

ご機嫌で帰ってきて、また眠くなった。オフィスのソファにころん。まじめに仕事をやっている夢を見た。男の声がして「知らない人」がオフィスに入ってきた。「え、誰、この人?なんでお母さんじゃないの?」と思ったら目が覚めて、カレシがいつものようにPCの前に座っていた。だけど、とっさにカレシと認識できなかったのはねぼけていたからなのかなあ。お母さんの声を期待していたのも不思議だけど、33年もいっしょに暮らしてきた人が夢の中で「知らない男」になっちゃったなんて・・・。

カレシがCDに焼いたラヴァーン・ベイカーを聞きながら、ナイトキャップのスコッチを傾けていたら、なぜか「めぐり会いそこねた人」の話になった。出会って「運命の人」と思った相手がほんとうは「その人」ではなかったことは簡単にわかるけど、「めぐり会うべきだった人」なのかどうかは添い遂げてみるまでわからないなあ、なんて言ったら、カレシはちょっと困惑した顔つき。カレシにとってワタシが「その人」でなかったことはわかっちゃったからねえ。でも、ワタシにとってカレシが「その人」だったのかどうかはまだわからない。他の誰かに心が傾いたことがないから、「その人だったんだろう」と思っているだけかもしれない。そこのところは「死が二人を別つまで」わからないだろうなあ。

体内時計が狂ったせいもあるのか、ナイトキャップを傾けすぎて、就寝は午前4時半(夏時間では午前5時半)。ベッドに入ってからも、また夢の中でせっせと仕事をしていたワタシ。Dream Dictionaryを見たら、「まじめに仕事に戻らなければ」という意味なんだそうな。はあ、そうですかぁ。それじゃあ・・・

昨日のブログに追記: 日本の「入国管理難民認定法」の第2節第23条に、日本に在留する外国人は「常に」パスポート(または外国人登録証)を携帯していなければならないと書いてあった。つまり、ワタシは1週間の日本滞在中に日本国法に違反していたわけ。カナダのパスポートオフィスの海外旅行者用のページには「パスポートはホテルの金庫に入れるなどして保護すること。ただし、外国人にパスポートの常時携帯を義務づけている国があるから注意」と書いてあった。は~い、これからは気をつけま~す。

蜜月はどのくらい甘いか

11月3日。今日はシーラとヴァルがお掃除に来るので、11時半に目覚ましをかけておいたら、11時29分に目が覚めてしまった。あと1分、寝なおす?まさか~。ということで、ごそごそと起き出して、朝食。

カレシは退職年金の口座をおいてある証券会社に電話して、他の銀行から移して、現金のままになっているのを定期に入れることにした。ワタシの口座はかなりの金額になっているもので、いくつもの金融機関に分けて入れないと預金保険でカバーしきれない。それで銀行から系列の証券会社に移したんだけど、投資の指図は「東部時間午後4時」までに出さなければならないので、けっこう早めに起きないと間に合わない。それで、いつものものぐさをしているうちにで金利がどんどん下がってしまった・・・

と、思っていたんだけど、ブローカーが2年の定期で4.5%というのを勧めてきた。あれ、なんか前より上がったみたいな感じだけどなあ。どこの国も中央銀行が公定金利を下げられるだけ下げているのに、どうしてなんだろう。たぶん、銀行は流動性を確保するためのお金がほしいということなんだろう。少し高めの利子を払うから、お金を預けてくれ~ってことか。そういえば、「貸し渋り」とか「貸しはがし」とかいう言葉も聞くなあ。日本ではバブルの後でしばらくBIS基準がどうのこうのとうるさかったけど、銀行は手元にお金を置いておきたいってことらしい。それにしても、2年定期で4.5%。ローンの金利とあまり開きがないように見えるけど、いいのかなあ。

シーラとヴァルが来て、オフィスから追い出されたカレシ。庭に野菜くずを埋めに行ったと思ったら、血相を変えて飛び込んできた。池に給水するパイプをシャベルで切断してしまったんだそうな。あらまあ。またなんでそんなところを掘ったのかと思ったら、「こんな浅いところにパイプがあると思わなかったし」。出て行ってみたら、ほんとに、せいぜい20センチくらいの深さのところに、みごとに分断されたパイプが見える。池と温室に給水する工事をやったときは、たしかにもっと深かったんだけど、いつのまにか踏み固められて「地盤沈下」したらしい。やれやれ。だけどさあ、野菜くずを直接埋めてコンポストにするなら、なんで菜園じゃなくて通り道なんかに埋めるのよ~?ま、カレシのことだから、思い立ったところにやおらシャベルを突っ込んだんだろうなあ。事故が起こってから「予防処置」を説いても意味がないか。配管屋に来てもらうことにして、作業しやすいように穴を広げてパイプを露出させておくことを「おススメ」しておいたけども・・・

アメリカの大統領選もやっと投票日が来て、これでテレビも少しは平穏になるかなあ。今度の選挙戦は、ユーチューブやコメディチャンネルなどでの「ユーモア」合戦が目新しいところだったそうだけど、う~ん、ユーモアにもいろいろあるからなあ。ネタにされていたのは共和党候補が圧倒的だったように思うけど、ユーモアとは言いがたいようなえげつないのも多かった。ご当人たちがユーモアだと思っているだけか、あるいはユーモアに名を借りた誹謗なのか、そこのところは良くわからないけど、民主党派にはそういう性格の人が多いのかもしれない。誹謗だと批判したら、「冗談がわからないのか」とかみつきそうだなあ。巷のブッシュ批判があまりにも憎しみがむき出しだったもので、民主党派は「ブッシュ勝利」を個人的な敗北と感じたのか、自分の心の奥にわだかまっている誰か、親なのか人間一般なのかわからないけど、「誰か」への個人的な遺恨を「ブッシュ」というはけ口に向けて一気に爆発させたのかと思った。それがあまりにもカレシの爆発とよく似ていたもので・・・。

ともあれ、「オバマ大統領」が誕生することは確実。アメリカはとにかく「変化」が必要なんだと思うから、それはそれで、少なくとも民主主義が曲がりなりにも機能している証拠と言える。でも、「Talk the talk, walk the walk」という言葉の通り、勝利の甘いハネムーンが過ぎたら、約束をどこまで実現できるか。それにしても、民主党派、活動家、リベラル、エコ派・・・まあ、何でもいいけど、少なくともこの人たちの露骨な憎悪の情は、はけ口がなくなってしまうわけで、またそれぞれの心の奥に淀んで行くんだろうか。てことは、やっぱりハネムーン期・・・?

極楽とんぼのやぶにらみ評論

11月4日。予期されたとおり、オバマ候補の勝利。やれやれ、これでやっと終わった、と言う感じがする。アメリカのテレビ局やケーブルのチャンネルはほとんどがカナダでも見られるから、いやでもアメリカさんの政治におつきあいをさせられる。でも、アメリカ人だったらマケイン/ペイリン派のワタシだって、アメリカはほんとうに変革の潮時、潮目にあると思うから、オバマ大統領に期待する気持はないでもない。それにしても、セーラ・ペイリンはすごい人だなあ。田舎町の市長から、だだっ広いばかりで人口の少ない州の知事になったばかりでいきなり百戦錬磨の猛者がごろごろいる中央政界に引っ張り出されて、マケイン候補を食ってしまった。いやあ、すごい。アメリカ初の女性大統領になれるか・・・と、ほのかな期待。

アメリカの選挙地図を見ると、共和党、民主党の住み分けパターンのようなものが見えるからおもしろい。おおざっぱに分けて、民主党は東海岸と西海岸で、共和党は真ん中から南という色分けがされている。東西の端はそれぞれに巨大都市をいくつも抱えているけど、真ん中はテキサス州以外は人口が希薄な農業地帯が多くて、一般に保守色が強い。こんなところに、都市対地方の構図も見えなくはないなあ。

先の連邦総選挙で、うちの選挙区は野党の現職がたった32票の差で当選したため、選挙法の規定で再集計が行われた。その結果、現職の当選が確認されたんだけど、票差は22票とさらに縮小。無効票だけ調べた結果と言うので、今度は落選した与党候補が投票用紙を全部数えなおす再々集計を要求。その結果、現職の再選が確定したんだけど、票差はなんと20票と、さらに縮小。集計のやり直しを続けたら、ひょっとして逆転・・・なんてのは冗談だけど、それぞれ1万6千票台の得票だから、20票差での落選はほ~んっとに惜しい。この選挙区はうなぎの寝床みたいに東西に長い形で、うちの前の道路を境に東西に分かれて、東はインド系が多く、西は中国系が多い。再選した現職は元州首相のインド系で、落選した保守党候補は中国系だった。選挙区の人種構成の影響はかなり大きいだろうと思う。

バンクーバーはあと10日で市長・市議会選挙の投票日。州議会議員をやめてまで立候補した左派の市長候補が、スカイトレインで2区間のところを「うっかり」1区間の料金で乗って交通警察につかまり、百何十ドルのチケットを切られて、「こんなに高いのはけしからん」と抗議するつもりで罰金を払わずにいたんだそうな。それが明るみに出たら、こんどは「低所得者に厳しすぎる法外な罰金だ」と裁判で争うらしい。改札のないスカイトレインは開業以来「ただ乗り天国」で、日本人も「改札をしないんだから払う必要ねぇだろ」とただ乗りしては捕まって、「将来のカナダ入国に差し支えるか」とあわてるけど、結局は払わないままで日本へ帰るのが多いらしい。低所得だから高い罰金は払わなくてもいいということなら、低所得者は万引きしても処罰すべきではないという理屈にならないのかなあ。活動家タイプというのはとかく不思議な論理を考えつくもんだ。

まあ、2008年は政治が熱かった年ということか。テレビはスーパーボウルの後みたいに「解説番組」が延々と続いている。だから、ワタシもつい評論家気取りになって解説してしまうんだけど、政治ってほんとにおもしろいから、あれこれ分析してみる。これはもうやめられないらしい。もちろん自分の国の将来を決めるとなれば大まじめに考えるけど、人さまの国のは野次馬をやっていられるからおもしろさ倍増。だけど、公人である政治家に自己の心の闇を投影するのはやっぱりいささか幼児的な行動だと思うなあ。生きるのが不安だからって、有名人をぶん殴っていいわけがないでしょうが。集団は個人が集まって構成するものだから、構成員の平均的な性格が反映されていると言えるのかもしれないけど、人類の全般的な幼児化傾向はブッシュ時代よりももっと前から始まっていたような感じもするなあ・・・

風雲急だよ、仕事戦線

11月5日。熱狂から一夜明けて、これからが本番ビジネスへの準備だなあ。初の「黒人大統領」と、オバマさんが黒人であることが強調されるけど、半分白人なんだから、人種の溝を越えて橋をかけられる存在であることを前面に出した欲しかったような気もする。まあ、黒人性を強調しているのはオバマ本人じゃなくて、周囲の思惑とも取れるかな。どっちにしてもホワイトハウスに入ってからが大変。期待感が高揚すればするほど、それが実現しなかったときの失望感は底なしに深いもんだからなあ。

ワシントン州では「尊厳死」を認める提案が通り、カリフォルニア州では州の最高裁が認めたばかりの同性婚を禁止する提案が通った。カリフォルニア州といえば、「何でもあり」のハリウッドがあり、かってヒッピーたちが集まったサンフランシスコがあり、エコ運動でも先進的で、まるでリベラルの牙城といった観があるけど、そのカリフォルニアの人たちが同性婚の合法化に「ノー」といったんだから、わからない。同性婚のカップルは「合法」だった結婚が「非合法」になってしまうのかなあ。そんなのないでしょうが。異人種混血の大統領を選んでおきながら、次は「異人種婚」も非合法にしようなんて言い出しかねないような矛盾を感じるなあ。昔は南部でそういう州法があって、勇敢に戦った異人種カップルがいた。その名もLoving夫妻。戦後の二十世紀後半のこと。もう二人とも故人になったけど、「愛のために戦った」と言っていた。

今日は昼過ぎに配管屋さんが来てくれて、カレシが切断した給水パイプを診察。どうやら、直せるらしいとわかって、カレシはほっ。部品を調達するのに23日かかるから、その間に穴を広げておいてくれとのこと。よかったねえ。この2日、カレシはあまりよく眠れなくて、ちょっぴりむずかっていたけど、今夜はきっとよ~く眠れるでしょ。カレシを見ていて思うのは、ネガティブな人の思考は「ダメだったらどうしよう」という悲観的な方向に配線されているらしいということ。しんどいだろうなあと思うこともあるけど、そういう性格だとあんがい特にしんどいってわけじゃないのかも。でも、気をつけていないと、こっちがそのネガティブなオーラに汚染?されそうになるんだけど・・・。

そんなことを言っているうちに、なんだか仕事の方が修羅場になりそうな気配。客先4つから一斉攻撃。大なだれに大津波だなあ、これ。ま、いっか。盛大に腕をまくって、ねじり鉢巻をしめて、やるか。

おまわりさんに叱られるよ

11月6日。暗いなあ、朝。雨、雨、雨の、まあ、典型的なバンクーバーの晩秋(というか、雨期の始まり・・・)。だけど、今日は目が覚めて暗いからといってベッドの中でぐずぐずしていられない。「起きよ!」と起きて、朝食もそこそこにオフィスに「ご出勤」。草稿を書いた人の顔を見たいくらいの文だけど、なんかずう~っと昔の法律みたいだから、「顔」は仏壇の中かなあ・・・なんてダークなこと考えて、あれ、隠れストレスかなあ。右へ左へすいすいの一見ノンシャランなワタシだけど、ほんとは「ここぞ」というときに俄然エンジン全開にして、すぱっとひと肌脱いでしまう。まあ、これは言葉のあやってものだけど、ある意味で姉御肌なのかなあ・・・と勝手に想像してほくそ笑んで、勝手に「いいじゃん」と自分をほめる。わりと俗に言う「money player」的なところがあるのは確かで、あんがい、大ばくちに向いているのかもしれないなあ。もっとも、いつも張り切りすぎて調子に乗っては身動きが取れないくらいに仕事を詰め込んでしまって、ムンクの「叫び」になるんだけど。「ま、いっか」もほどほどにしとかなきゃあ、とは、言うは易しで・・・。

ひと仕事終わったところでカレンダーを見ると、いつの間にか向こう1週間で締切が6つ。いいのかなあ。ふむ、木曜日の夜は日本では金曜日の午後で、翻訳会社のコーディネーターさんたちは週末にかかる翻訳注文を引き受ける翻訳者を探さなければならない。いわば「魔の時」ってところだけど、そこへワタシが「ま、いっか」と、すぃ~っと飛んで火に入るというわけ。同じオフィスのコーディネーターさんが「とんぼ採り合戦」を始めるという話も聞いたなあ。冗談であってくれればいいけど、なんか視界に白い網がヒラヒラ。や~だ・・・

ともかく、腕まくりとねじり鉢巻は明日ということにして、まず息抜き。はっ、深呼吸。で、世の中360度を見回してみると、オンタリオ州で感謝祭の日に親にXboxを取り上げられて家出して行方不明になっていた15才の少年が遺体で見つかった。凍死らしい。かなりのはにかみやだったそうだけど、スポーツの才はあったし、勉強もできたらしい。それが、オンラインゲームにのめり込んで、寝ても覚めてもゲーム。とうとう学校をサボるようになって、両親にゲーム機を取り上げられた。怒って家を飛び出した勢いで、きっと家に帰りづらかったんだろうなあ。現実の世界ではほとんどいなかった友達がゲームの世界では何百人もいたそうな。ゲームは相当な腕前だったらしいけど、互いが見えないサイバー社会で現実では実現したい「すごいボク」の人生を謳歌していたのかもしれない。ネット依存症やゲーム中毒は笑っていていいことではない。薬物中毒やアルコール依存症と同じ「心の病気」なんだから。

日本では人をはねて引きずって殺した若い男が捕まったけど、こいつ、被害者が死ぬとわかっていて、それでも「とにかく逃げるっきゃない」しか頭になかったというから、ほんとに「人間」なのかなあ。防犯カメラが捕らえたあの顔。仲間といっしょに楽しそうに笑っている顔。捕まりたくない。逃げてしまえばいい。幼児の自己中か悪魔の自己中かはわからないけど、「捕まらなければいい」というのは、昨今大流行の種々の不正の根底にある「バレなければいい」という判断に通じるなあ。日本人は清廉潔白という評判になっているので、ベールをめくってみると、これだもんなあ。どうしてなんだろう?

過去30余年の日本のことは実体験がないから見当さえつかないけど、ひとつ思い当たるのは子供の叱り方。日本では、これまでにどれだけの親が、「みんなに笑われるから」、「あの子が見ているから」、「あのおじちゃんが怒っているから」、「おまわりさんに叱られるから」と、子供を叱ってきたことだろうか。なぜ「悪いことだからやめなさい」と叱れないのか。それは叱る側としては子供を叱るという(たぶんに)不快な行為を「「怒っているのはママじゃない」と他人のせいにしたいのかもしれないし、「悪いことだ」と言える自信がないのかもしれないし、あるいは単に自分もそういう風に叱られてきたからかもしれない。理由はどうでもいいけど、そういう風に叱られる子供は、「人に見られなければ、ばれなければ、捕まらなければ」何をやってもいいんだと思ってしまわないんだろうか。これでもかというくらいの偽装事件の多発の裏には、そうやって連綿と伝えられてきた「責任転嫁意識」が深く根を張っているのかなあ・・・。

何語で考えようか

11月7日。いつもの寝酒の代わりにワインを開けようか、ということになって、「酒蔵」からボルドーを出して来た。玄関下の納戸にあるのが我が家の「酒蔵」。この納戸だけは完全な地下室なので、温度が比較的安定していて、ワインの保存にはうってつけ。といっても、金庫の上に9本くらいおける小さいワインラックがあるだけなんだけど。ラベルによるとボルドーのうちでもアントルドゥメール地区の産でぶどうはメルロー。成田空港に80トンだかのボジョレーヌーヴォーが到着したという記事の話が、なぜかずっと前に流れていたIBMのコマーシャルに飛んだ・・・

フランスのワイナリー。バイヤーが「時代が変わったんだよ」と去っていく。「もう終わりだ」と失意の父親。そこで若い娘が「インターネットでいい値段で売れたから大丈夫」。「どこへ」ときく父親。場面が変わってアメリカのどこか郊外のスーパーで「フランスワインの試飲販売セール」。マネジャーが部下に「もうあと千ケース注文だ」。すごい口ひげのごついおっちゃんが、小さい試飲カップをもって、「う~ん、ピーチの香り・・・」とやるところでワタシは笑い転げ、コマーシャルは終わり。なんかウォルマート風刺が見え隠れしているようでおもしろかった。ウォルマートはアメリカの「安売り大量消費主義」の象徴みたいなものだけど、それにしても、成田に今年のボジョレーヌーヴォーが到着したニュースと、バイヤーが拒否したワインをインターネットで売って大成功という話がどうして重なっちゃったのかなあ・・・

起きてみたら今日もまた雨。インドネシア料理を食べて、その向かいのスーパーで買い物をして、帰りに酒屋に寄ってこようという話だったのに、カレシ曰く、「うちで食べて、その後で野菜を買いに行って、その足で酒屋へ行こう」。ま、いいかということで、夕食もそこそこにまず野菜を買いに行き、スーパーに寄ってランチの食材を買ったまではいいけど、「酒屋は後にしようよ」と言い出す。まだ8時半。閉店まで2時間以上あるんだけど、ふむ、2時間後には「明日にしよう」と言い出すなあ、きっと。土曜日の外食も1週おきにして家で食べようと言うし、ふむ、なんか「引きこもり」っぽくなってきたぞ・・・と、ワタシのレーダーに暗点がポチッ。「どっちでも好きなようにしていいよ~」といったら、声に出して「考え」ながら酒屋まで行ったけど、落ち着いたと言えるようになって7年。7年目の何とかというし・・・

トライアルに同意したもので、久しぶりにみっちり英日翻訳。このブログのおかげなのか、一時のような抵抗感があまりない。いつでもそっちの方に戻れるような気もする。ただし、これは仕事の上でのこと。自分のブログを読み返すたびに、「日本人に受け入れられる日本人」に戻ることはできないんだなあという気持になってくる。今さらだけど、カナダに来てから「友達」と呼べる日本人がほとんどいなかったし、日本人の自分を探しているようなところもないではないけど、「日本」についての無知を思い知らされるばかりだし、元からして「JIS規格外」のワタシは「戻る」と言うよりは「なれない」というのが妥当なところかもしれないなあ・・・なんて、めずらしく羽ばたきも重く感じられていたんだけど、ふっと「英語でブログってみたら?」とひらめき。方向音痴のワタシにはいつもここぞというところで標識を指差してくれる守護天使がいるのだ。

自分を表現したい欲望が人一倍強くて、長い間、ひょっとしたら人生のほとんどかもしれないくらい長い間、その気持をいろんなこと、いろんな人に遮られてきたのではないかという思いがあるからこそ、精神だけでも外に解き放って自由にしてやりたいという願望が強いのは自分自身が一番よく知っていること。英語はワタシの養母国語じゃなかったの?日常の人との交流の言語じゃなかったの?自分を守るための言語じゃなかったの?そうなんだ。まあ、日本語のブログを英語にするところから始めてみてもいいかな。なんだかbusman’s holidayになっちゃうけど、両刀使いで行けばいいじゃないの。「地球人」の自分が見つかるかもしれない。今ここでちょっぴり迷子になっているワタシに輪をかけたような方向音痴の極楽とんぼだったら困るけどなあ・・・

オフィスの壁紙

11月8日。あ~あ、今日も雨。お気に入りのレミのナイトキャップで機嫌よくベッドに入ったはずなんだけど、なぜかよく眠れなかった。どっちに寝返りを打っても体が落ち着かない。そうやってうとうとしているうちに夜が過ぎてしまう感じがする。よくわからないけど、どうも漠然とした閉塞感があるような気もするなあ。ふむ、天気のせいか、季節のせいか、年を食ったせいか、それとも何となく疲れているだけか、何なんだろう。

カレシのリクエストでおこもりの土曜日。フリーザーに頭を突っ込んで、今夜のディナーメニューは何にしよ~。目が回るほど仕事があるんだけど、う~ん、やっぱり土曜日はちょっと手のかかったものが食べたい。どんなものを作ろうかなんて考えていると、仕事に気合が入らない。あせってもしょうがないからと、だらだらしているうちにソーシャルブックマーキングサイトのJAPUNDITに、ホンダが開発した歩行補助器、通訳技能試験会社の閉鎖、なつかしいレトロゲームの3つの記事リンクをまとめて投稿。日本関連の英語記事を集めるサイトで、日本語新聞サイトで見つけたこれはという記事の一拍遅れで出てくる英語版を探して投稿する。ワタシの常で調子に乗ってコメントしたり、投票したりするもので、現在のランクは13位だそうな。おかげで、顔見知りならぬ「ハンドル見知り」もできてきた。

歩行器はホンダが10年近くかけて開発したそうで、足腰の弱い年寄りやリハビリ中の人たちが自力で歩くために役に立ちそう。それだけではなく、ホンダは屈んだ姿勢をとることの多い組立工場に導入してより楽に作業ができるようにするという。なるほど、写真で見ると歩行器兼腰かけのような感じだ。別のサイトの記事には、この補助器を装着した組立工が、中腰になって車体の下に部品を取り付けている写真があった。椅子と違って屈伸が自在で、自由に歩きまわれるから、膝や腰の故障は過去のものになるかもしれないなあ。「ムダ」を省いて効率化、と景気が傾れば人間まで「ムダ」扱いしそうなトヨタとは「労力」に対する考え方がちょっと違うのかもしれない。(カナダで流していたトヨタのTVコマーシャルで、「ムーダ」、「ムーダ」と連呼された日には、秋葉原事件を思い出してムカついた。ムウ・・・)

通訳技能試験は「日本通訳協会」というところがやっていたそうで、「協会」というからNPOかと思ったら、れっきとした株式会社なんだそうな。同業者によると、検定試験のレベルはけっこう高くて合格すれば「通訳士」というタイトルの資格がもらえるとか。この同業者は「フリーとしてこの道に入ってやっていけるレベルかどうか」を知りたくて受験したと言っているけど、実際は「通訳士」というタイトルを目指す人の方が多いんじゃないかな。だって、外から眺めていると、日本人は無類の「資格好き」のように見える。ちょっと検索してみるだけでも、あるわ、あるわ。国家資格や公的な資格はそれなりの理由があることはわかるけど、へえ、こんなことにも「資格」がいるのか、とびっくりするのや、カタカナの「えっ、これ、なにするの」的な「資格」もぞろぞろ。まあ、判断の基準には目に見えるものが一番手っ取り早い。きれいな証書に「○○検定1級」とか書いてあったら、そういう紙を持たない人よりは仕事ができそうに見えるのかもしれない。だけど、大学の卒業証書と同じで、その先に発展がなければ、すばらしい資格もただの「壁紙」じゃないのかなあ。(額縁に入れて飾ればけっこう見栄えはするのが多いけど・・・)

ワタシもカナダの協会が認定した「資格」はあるんだけど、実際の仕事は認定対象とは逆の方向に発展してしまって、事実上の「壁紙」。ちっとも見栄えがしないし、名前も変わっている。これがあるから注文が来たり、客が増えたということもなかったけど、協会の名簿に正会員として名前が載って、それを見た引き合いはときどき来るから、まあ、間接的には役立っているんだろう。それに、「事務所」としては何が額縁に入ったものが壁にかかっていると箔が付くだろうし・・・ほんとは誰も来ないんだけど。

明日は元々わからない

11月10日。おや、外は久しぶりに明るい日差し・・・と思ったら、雨の「中休み」だそうな。なあ~んだ。まあ、仕事が集中豪雨なもので、外に出られるわけじゃないから、雨も晴れもないか。

明日は「Remembrance Day」の休日。英和辞書には「英霊記念日」と書いてある。戦没者慰霊の日なんだけど、実は第一次世界大戦が終わった日。その後の戦争での戦死者も合わせて、毎年11月の11日の午前11時に各地で慰霊祭がある。退役軍人会が赤いけしの花のバッジを売るのは、激戦地ったフランダースで、地中に長く眠っていたケシの種が目覚めて多くの戦士が倒れた野に血のように真っ赤な花を咲かせ、その光景を軍医として従軍したカナダの詩人マクレーが「フランダースの野に」という詩に描いたことに由来する。A time for war and a time for peace・・・戦わねばならない戦争もあるけど、平和は何ものにも代えがたい。でも、いつもすぐそこまで来ているようで平和は未だに遠い。いつになったら「平和の時」が来るやら・・・

いつもなら英語教室がある日だけど、ネイバーフッドハウスは祝日の休館日。カレシは生徒さんに電話をかけて、翌日の水曜日に代替レッスンをするから来てくださいと連絡。これが実に大変な仕事。だって、生徒さんは英語力が不十分だからカレシの教室に来ているわけで、すんなりと連絡事項が伝わるくらいならそんな必要はないわけ。そばで聞いていると、カレシはゆっくりとしゃべっている。気がつくと声が必要以上に大きい。ふ~ん、ひょっとしてアメリカ人の悪評は通じない英語という要素もあるんじゃないかなあ、とふと思った。言葉のよく通じない相手になんとかわかってもらおうと、ゆっくりとしゃべる。自然に声も大きくなるのかもれない。身振り手振りだって大きくなるだろうなあ。アメリカ人は図体もでかい方だし、相手にはとてつもなくがさつな野蛮人のように映ってしまうかもしれないなあ。ま、お澄ましで実はわりと気の小さい日本人が、「礼儀正しくて、控えめで、正直で・・・」と評されるのと似てるかもしれない。印象第一とはいうけれど、他人が受ける印象で人格を決められてしまうのはどうかなあ。人に良く思われたかったら良く思われるような言動をすればいい、と言う人もいるけど、人がどう思うかわからないのに、そんなことできるのかなあ。

同業協会のメーリングリストに、「翻訳会社勤務で、仕事が暇で会社が潰れるかもしれないと心配している29才」の話が出た。よく読んでみると翻訳業界の現状とはあまり関係がなくて、日本では男も女も「生存婚」の時代になっているという話。生存婚て、なんじゃ、それ。毎日新聞に載った記事を読むと、どうも結婚に「自分の生存」をかけることらしい。バブル時代にもてはやされた「三高」は、今や低姿勢、低依存、低リスクの「三低」に取って代わられたそうな。さらに読んでいくと、未婚の女性は将来の夫に「安定した仕事/収入」を求めるのに対して、男性は将来の妻に「稼ぎ手」を求めていると書いてある。女性にすがりたい男性が増えているとかいう話だけど、これじゃあ、お互いに「いい人がいない」はず。男も女もあさっての方を向いているような。生き残るための結婚で思いっきりすがりあうのもいいけど、「愛」はどうなっちゃったのかなあ。キューピッドも失業の危機・・・じゃないよね、まさか。

キューピッドが失業する世の中になったら人類も終わりだと思うけど、たかが結婚、されど結婚。利害が一致すればそれにこしたことはないけど、結婚てのは投資に似ていて、一か八かみたいなところもある。堅実な投資をする人もあれば、危ない投機に走る人もあるわけで・・・

まいった、まいった

11月11日。まいった、まいった、まいった~。久しぶりにど~っとまとめてきた日本語訳の仕事。ほんとにまいった。すごい英語なんだもん。知能指数3桁で、毎日むずかしいことばっかり考えている人たちのはずなんだけど、英語が母語でないアジア人やヨーロッパ人が書いた英語。いやあ、まいった。もう、頭がくたくた。そっか、日本語に訳さないとわかりませ~んてことでこっちにお鉢が回ってきたということらしい。

いや、たしかに英語。文法にいささか変なところがあっても、英語として読める。少々あいまいな文でも、「行間」を探って、埋めれば、言わんとすることは何とかわかる。じゃあ、何が問題なんだろうと思うけど、どうも、単語の選択じゃないのかなとうい気がする。「○英辞書」を引けばそうなんだろうけど・・・だけど、だけど、言語は1対1じゃないから、翻訳は単語の置き換えではない。もしそうだったら、ワタシはとっくにおまんまの食い上げ。こうやって食べていけるのは、「オレは神よりもエライのだ」とバベルの塔を作ろうとしたニムロデ王のおかげ。もっとも、バベルの塔事件がなくたって、人間てのは同じ言葉をしゃべっていても人の話を聞かないか、聞いているつもりでわかっていないのが多いんだから、神さまだって別にむかっ腹を立てることもなかったんじゃないかなあ。(Bad hair dayだったんだな、きっと。)

まあ、ちょっと息抜き。あれよあれよという間に積み上がった仕事が5件。何やってたんだろう。粋がって「よっしゃ~」なんて腕をまくるからこういうことになるんだけど、来月のカレンダーにまで納期のマークがついたと思ったら、来年の話まで出てきた。やらせてくれるならぜひやってみたいような大仕事だけど、落札できるかどうかはあちらしだい。でも、小さな会社だから、どうかなあ。でも、毎日連続でなにかしら納期というのもちょっときつい。かといって、1ヶ月とか2ヶ月とか余裕があるからといって、何万語もの仕事を毎日なし崩しに進めていくのもきついなあ。あ~あ、なんだかくたびれた・・・

今夜はヴィンテージのアルマニャックを楽しんで、ゆっくり眠るとするか。なにせ、1日7.5時間の睡眠をとらないと心臓病の危険が高まるそうだから。ふむ、残業だ、飲み会だと夜遅くに帰宅して、朝は定時に出社する日本のサラリーマンはみんな心臓病候補ってことになるのかな。これじゃあ、「生存婚」も何も、安定収入はあっても一寸先は闇の「悪条件」になってしまいそう。さて、気合を入れて寝るぞ・・・

8万4千円のローストチキン

11月12日。ちょっとだけいい天気。午後の気温は摂氏10度。トロントではもう雪が降ったんだって。11月も半ばとなれば、確実に冬の玄関口。外の庭木もほぼ素っ裸だもんなあ。日が差さないと昼なのか夕方なのかわからないくらいに暗い。だけど、年月のしわざなのか、毎日雨で暗くてもちっとも気にならない。「また雨かあ」と、少々辟易したのは最初の冬だけだったような。なんか、生まれてこの方ずっとこの気候の中で暮らして来たような気がするから不思議。

今日はごみの収集日。キッチンの窓から見ていたら、まずリサイクルのトラック。各戸に支給されているリサイクル箱「ブルーボックス」の中身を無造作にトラックに空けて行くから、ガシャン、ガチャン、カラン。次に普通のごみの収集トラックが通る。市が各戸に支給した容器を機械が持ち上げて、トラックの上でさかさまにして空ける。運転手が運転台からひとりで操作するから、人件費の節約になるし、重いごみ袋を持ち上げたりして怪我をすることもない。でも、アームは片側にしかないから、裏のレーンをあっち、こっちと2度轟音を上げて通る。高さ数メートルの植え込みの上に見えるトラックの屋根が南へ動いて行くのを見届けて、カレシが出て行って、ガレージの前に出してあったごみ容器とブルーボックスを回収。ごく、ごく平凡なごみ収集日のひとコマってところかな。

朝食後のコーヒーを飲んでいる頃に、「ガラン」とゲートハウスの鉄の門扉が開く音。今度は郵便配達。カレシが出て行って、郵便を取って来る。メールオーダーのカタログの山。クリスマスシーズンだ。今年はかなり厳しいという予想のせいか、やたらとたくさん来る。すごいのになると、内容は同じなのに表紙を変えて送ってくる。新しいのだと思わせて、よぶんの買い物をさせようという魂胆だろう。積んでおくとけっこうな山ができる。カタログのほとんどがアメリカのもので、どうもカナダはやっぱり広すぎて、人が少なすぎるんだろうなあ。スケールメリットでは初めから勝負にならない。カナダドル安でしばらく途絶えていたカタログもちらほら。去年からのカナダドル高で「売れる」と判断したらしい。レートはかなり下がってしまったけど、それでも、北米自由貿易協定のおかげでアメリカで買ったほうが安くつくものが多いし、市場が数倍大きいアメリカでは品揃えも比べものにならない。カタログをめくりながらしばしの「仮想ショッピング」。

ここ数年はギフトカードがすごい人気で、スーパーでもいろんな店のカードを売っている。誰に何を上げようかと考えなくてもすむから、プレゼントリストを片手にモールを走り回る人には便利この上ないんだけど、その売れ行きが落ちているというニュースが新聞に載っていた。スターバックスは大変な赤字だし、サーキットシティは倒産、他にも足元のおぼつかない小売業がいくつもあるらしいから、せっかくギフトカードをプレゼントしても、使おうとして店がなくなっていたら、フロントガラスの氷を削る道具になってしまうこともあり得るわけ。不況の先駆けみたいな兆候があった今年の1月には、ウォルマートでギフトカードを使って生活必需品を買っていく客がかなりいたという。そのときにその筋の人たちが気がついていれば・・・う~ん、後になってからなら、誰だって「千里眼」だよね。

日本では高島屋が「8万4千円!」のクリスマスチキンの予約を受け付けているというニュースがあった。トリュフとフォアグラとソーセージと栗を詰めたケイポン(去勢した雄鶏)で、フランスの「フォーション」という高級食品メーカーの特製品を12羽空輸するんだという。フォーションなんて知らないけど、ブランド知識が豊かな日本人には価値があるんだろうな。1羽で6~8人が食べられるから「パーティに完璧」というけど、3LDKとかの家で8万4千円なりのチキンを囲んでホームパーティって・・・な~んかちぐはぐ。でも、もう1羽予約が入っているそうな。8万4千円のローストチキンを食べて、パァ~ッと不況を忘れてしまおうというのかな。記事は、日本で1970年代初めからクリスマスの伝統になっているケンタッキーフライドチキンへ行けば、ローストチキンとケーキとサラダと記念のお皿つきのクリスマススペシャルが「5千3百円で買えるよ」と締めくくってあった。思い出すなあ、家族そろってケンタッキーフライドチキンでクリスマスをしたの。おいしかった・・・

値段10倍で満足感も10倍?

11月13日。まぶしいくらいにからっとした晴天。カレシがまず目を覚まして、「今日は配管屋が来る日だ」。次にワタシが目を覚まして、「午後4時までの仕事がある」。ついでに今日はカレシの英語教室の日というわけで、二人ともぐずぐずせずにぱっと起床。午前11時半のこと。

午後、配管屋が乳化した部品を持って来た。ゲートの外から「インタコムを鳴らしたけど返事がない」と電話。あらまあ。玄関から5、6メートル離れたゲートハウスにつけたカメラ付きのインタコムはときどきご機嫌ななめの「むっすりモード」になるから困る。トイレにこもっていたカレシに「来たよ~」と声をかけて、ゲートを開けに玄関から飛び出した。こんなときにはほんとに携帯さまさま。

カレシがシャベルで切断した給水パイプを切り取って、新しいT字型の継ぎ手を取り付けておわり。所要時間1時間15分と部品6個で税込み150ドルちょっと。労賃の方は1時間あたり110ドルになっている。もっとも、会社に所属しているからそれが「時給」ではないけど、配管工や電気工はかなり高収入なのだ。景気が悪くても修理しなければならないものは修理しなければならないから、高学歴のホワイトカラー職よりよっぽど安定しているといえそう。年収が1千万円以上というベテランも珍しくないそうな。たしかに、庭の泥んこのパイプを修理したり、詰まった排水管を掃除したりの、いわば「3K」なんだけど、結婚相手の「条件」としてはよさそうなんじゃないかなあと思うけど・・・。

トイレと入れば、カレシはこのところ消化器系統の調子が悪いと言ってトイレにこもってばかりいる。ぐちぐち、くだくだと続くから、「ドクターに相談したら」といっても、「うん。でもさぁ・・・」という返事が返って来るばかりだから、おなかにやさしそうなメニューを考えるだけ。あとはまあ、ひどくなるか、愚痴で対処しきれなくなったら自発的にドクターに行くでしょ、ってことで、成り行きを静観。(カレシのように何を提案しても「うん、でもさぁ(Yeah, but)」という天邪鬼のことを「Mr./Ms. Yeabut」と言うんだけど、行き過ぎれば「否定的(受動攻撃性)人格障害」の範疇に入ってしまう少々やっかいな性格だから要注意。)おなかのこのあたりが痛い、あのあたりが痛いとさわいでいたかと思うと、ネットで調べまくって「オレ、胃潰瘍かも」と言い出す。(おいおい、胃潰瘍だと思うなら、はよ医者へ行けっつうの。)「ま、気にするとよけいストレスになるから」とか何とか言いながら、落ち葉掃きに出て行ったと思うと、入って来るなり、「やっぱりストレスが原因だった」と自己診断。「運動不足はよくないなあ」とのたまうから、ワタシは笑い出したいのをこらえるのに必死で、なんかパチンと弾けてしまいそう。けさ方の大風で、家の周りは落ち葉だらけ。おなかのためにも、がんばってね。

きのうお高いチキンの話を書いたら、今日は読売に「1杯3000円のラーメン」の話が載っていた。えっ、ゼロがひとつよけいだ・・・と思ったら、やっぱりゼロが3つある。新宿で食べたラーメンは300円だった。昔ながらのラーメンらしいラーメンの味で感激したんだけど、10倍の値段のラーメンは10倍おいしくて、10倍も感動的なんだろうか。作る人は強い「こだわり」で作っていることはわかる。でも、食べるほうにも「こだわり」があるはず。300円のラーメンで幸せな気分になったのは、それが「夢に見た味」だったから。人間の価値観に基づく期待感は多様だから、「このラーメン、3000円もするのに・・・」という人もいれば、「さすが3000円もするラーメンだけあって・・・」という人もいるだろう。「3000円もする高級ラーメン」を食べたから満足という人はそれなりに幸せを感じたんだろう。でもなあ、庶民の食べ物がこんなすごい値段の「高級品」になったらどれくらいの違いがあるのか、一度は試してみたい気はあるけど、「う~ん、何かいまいち・・・」なんてことになったら、「オレがこんなにこだわって作っているのに、その味がわからないのか」と一喝されそうな気もする。こだわるのは人それぞれだから、好きなだけこだわってもらって一向にかまわないんだけど、ワタシには300円のラーメンのほうが「食べて幸せな気持になる味」ということもあるからなあ・・・

今日は夕食が早かったから、もう腹ペコ。ランチはお気に入りのインスタントラーメンにしようかなあ。

なかよく半分こする?

11月14日。午前11時に目覚まし。そうか、今日はカレシが元の前の職場のOB会に出かける日だった。退職する前にいた職場は州の「財務省消費税務局」とでもいうところ。BC州で買い物をしたら7%取られる「セールスタックス」の監査をやっていた。毎年他の州への出張監査があって、4人くらいのチームで1ヵ月出張していた。家に帰れるのは真ん中の週末だけで、同じホテルに泊って、朝食と夕食を共にし、帰れない週末は一緒に時間を潰したりの、いわば「同じ釜の飯を食った仲間」。カレシが同じ省の証券取引委員会に転職したのは21年前で、大半はもう引退して年金生活だけど、今もこうしてときどき昼食会に集まっては昔話に花を咲かせている。

カレシが朝食抜きなので、ワタシはまた眠ってしまって、正午を回った頃に起き出したら、テーブルに一人分の食器をセットして、ジュースも注いであったし、コーヒーメーカーはスイッチを入れるだけにしておいてくれていた。郵便受けに入っていたカタログをめくりながら、のんびり朝食。たまのおひとり様もいいもんだ、と思いきや、ふむ、なんだかちょっともの足りない。だって、365日で33年と半年・・・長期出張のとき、ワタシが一人で日本に行ったときや病気のときを差し引いても、二人いっしょの朝食はゆうに1万回を超えているはずだもんなあ。カレシが新聞を読みながら食べていて、ワタシの顔を見ようともしなかった時も10年くらいはあるけど、それでもテーブルをはさんでカレシと向き合って来た。

二人そろって出勤する前のあわただしかった朝食風景もなつかしい。考えてみると、共働き歴も30年を超えているなあ。そのうちの20年以上はワタシがひとりで家事をやっていた。カレシがイライラしているときに手を抜くと怒鳴られたっけなあ。手伝ってくれたのはお客がいるときだけだった。そのときの甲斐甲斐しさときたら。日本人のお客に「やさしいだんな様なのねえ」と羨ましがられて、返事に困窮したワタシ。「結婚は二人いて初めて成り立つもの」と共同参画制になって数年だけど、よ~く考えてみたら、分担について話し合ったことがない。カレシもけっこうがんばって「家庭運営」に参加しているけど、みんななんとなく、いつのまにか・・・。一番時間と労力がいる「掃除」を外注にしているせいもあるかもしれないけど、あんがい、「なんとなく、いつのまにか」方式で分担ができあがったら、それぞれやる人の裁量に任せておくのが効果的なのかもね。どっちの方が多く稼ぐか、忙しいかなんてことは、この際横においておいて、ちょっとくらい手抜きでもケチはつけない。自分もいっしょになって手抜きをする、と。

小町にはよく共働き夫婦の家事分担問題が登場する。結婚前に話し合ったはずなのに、分担を決めたはずなのに、相手がやってくれない。だけど、どうも「杓子定規」な分担にこだわりすぎているような観がある。共働きなら家事も折半。収入が6対4だから、家事もワタシ6割、あなた4割。ワタシの方が収入が多いんだから、少ない方にもっと家事を負担してもらわないと不公平。家事の項目を列挙して、これはあなた、これはワタシ。で、ワタシはちゃんと分担どおりにやっているのに、あなたはやってない、やってもいい加減、もうストレスが限界・・・。そんな構図が見えて来るんだけど、う~ん、家庭は学校の教室掃除の当番や給食当番とは違うから、いつもまんべんなく公平にってわけには行かないのだ。何でも手のすいている方がやるという手もあるけど、ここでも「損したくない」思考が前に出てきたら挫折は避けられないだろうなあ。あんがい、ボタンをかけ違えたような「平等意識」が「損はしたくない」主義の根底にあるのかもしれないけど、「家庭」は夫婦二人が基本単位だから、きっちり二分は離婚の時でもなければ無理かもなあ・・・

カレシは3時を回った頃にイアンに送られて帰ってきた。イアンが持ってきてくれたのは3人の孫の写真。うわっ、かわいい~!モントリオールに住む息子のロバートの長男はアンドレアス君。アーニャの双子はマテオ君とジュリアン君。こっちは二卵性双生児なので、マテオ君はフィリピン系のパパに似て、アジア系の丸顔に黒い髪、ジュリアン君は東欧系のママに似て、西洋系の顔に茶色の髪と、みごとに分かれたけと、けど、なぜかジュリアン君のほうが浅黒い肌をしているから、混血って不思議なものだ。3人とも抱き上げてムフフ~っと頬ずりしたくなるくらいにかわいい!バーバラはおばあちゃん業にフル活動で多忙らしいだけど、まだ出番のないおじいちゃんのイアンだって分厚いポケットアルバムの孫の写真を見せる表情はまんざらではなさそうな「おじじバカ」。うん、成長が楽しみ・・・

政治参加は疲れるよ

11月15日。早いなあ、11月がもう半分終わってしまった。今月はカレンダーに赤線で消した納期のマークがずらり。今週は2つも3つも重なった日がある。今日、あす、あさっても全部で5つ。忙しいのとだらけたい気分にはさまれて、なんかくたびている土曜日。来週は少し休めるかなあ・・・。

朝食が終わって、だらんとしている間、カレシは運動がてら庭の落ち葉掃き。今月から新方式?で今日はディナーにお出かけの日。はて、今日は15日。市長と市議会の選挙の日。二度出かけるのはめんどうだからと、早めに家を出て、まず投票。選挙区の候補者1人に投票すればいい連邦議会や州議会の選挙と違って、市町村選挙はややこしい。バンクーバーでは市長1人と市会議員10人の他に教育委員会9人、公園委員会7人の選挙と、今後3年の資金調達計画の賛否を問う住民投票がある。

投票所でくれる投票用紙はA4版くらいの大きな紙で、表が選挙、裏が住民投票。フォルダーのようなカバーに挟んである。連邦選挙のときには投票用の囲いが段ボール1個だったけど、今回は十何個もあって、椅子がおいてある。なにしろ、印刷してある候補者の名前の横の○をフェルトペンで、市議会は10人だから10個、教育委員会は9個、公園委員会は7個埋めなければならない。多すぎたら無効票だから、半分くらいのところで上から数えなおして、あと何個。それが終わったら、投票用紙を裏返して、今度は資金計画の内容を読まなければならない。今回は3つの提案があって、何がいくらと書いてあるから、ひと通り読んでイエスかノーの○を埋める。だから投票するのに「椅子」がいるというわけ。

カレシは市長は白紙にしたそうな。右派と左派と2つある会派の候補はどっちも気に食わないんだそうだけど、市長候補は15人もいたんだから、いっそヌードガーデン党(パーティ)の候補に入れたらよかったのにねえ。で、市議会は右と左と5人ずつ、教育委員会と公園委員会は右左同じ数に無所属1人ってぐあいに・・・。投票が終わってカバーにはさんだ用紙を「投票機」のところに持っていくと、係の人が突き出している上の部分をスロットに差し込む。投票用紙はスルッと機械に吸い込まれて終わり。機械が読み取るから即集計で、ディナーが終わって帰って来た頃にはもう結果が決まっていた。

2つの左派グループの共同戦線が市長も市議会も大勝して返り咲き。右派はほぼ壊滅。予想されてはいたけど、オリンピック選手村を建設中の民間開発業者に1億ドルもの資金援助をこっそり決めたのが災いしたんだろうなあ。投票区ごとの結果を地図で見ると、右派と左派が、バンクーバーに昔からあるウェストサイド、イーストサイドの境界線に沿って市をみごと二分している。左派一色のダウンタウンで一区だけ右派なのは高級コンドが建ち並ぶイェールタウンだけ。これがバンクーバー市の政治地図。さて、新市長はオーガニックジュースの会社の社長。若い起業家で、ハンサムではあるけど、なんだか作りものっぽい、いわゆる「プラスチック」な感じがしないでもない。まあ、オリンピックで旗を振るときはテレビ映りがいいかもしれないけど・・・。