尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

エリザベス2世、アラン・タネール、イレーネ・パパス他ー2022年9月の訃報③

2022年10月11日 22時29分47秒 | 追悼
 2022年9月の訃報、外国人編。エリザベス女王以外は映画関係で知った名前が多い。「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」のエリザベス2世が9月8日死去、96歳。1926年4月21日に後のジョージ6世の長子として生まれた。1936年12月にエドワード8世が「世紀の恋」と騒がれた事件(既婚のアメリカ女性シンプソン夫人との恋愛問題)で退位し、弟のジョージ6世が即位した。(映画『英国王のスピーチ』のモデル。)その結果、エリザベスが10歳で王位継承順位第1位となったのである。1952年2月6日、父が死去しエリザベスが即位。以後、英国史上最長の在位70年に及んだ。今年春には在位70年式典も行われた。70年となれば、もうそれ以前を記憶している人はほとんどいない。トラス新首相の任命を9月6日に行い、8日に健康が懸念されると王室が発表。そしてその日に亡くなった。実に理想的な「死に方」なのに驚いた。世界中で高齢者の多くはこう死にたいものだと思っただろう。
 
 即位の時点ではインドは独立していたものの、ケニア、ガーナ、マレーシア、香港など世界中にまだ多くの植民地を持っていた。それを次々に手放す治世だったわけだが、女王の存在は連合王国にとって大きな意味があっただろう。一方、旧植民地側から見れば、やはり旧宗主国には複雑な感情がある。しかし、まあエリザベス女王に関しては多くの報道がなされたので、ここでは省略したい。(僕は日本の報道が実に大きいことに驚いた。)来日した時の日本中の熱狂ぶりは何となく覚えている。僕はエリザベス女王の訃報にあまり大きな関心がないのだが、まああれだけ犬を飼い続けたんだから「いい人」ではあるんだろう。僕は愛犬家には甘いのである。飼ったのは父が子ども時代に与えたウェルシュ・コーギー・ペンブロークだった。
(愛犬と)
 スイスの映画監督アラン・タネールが9月11日に死去。92歳。50年代には英仏で映画の仕事をしていたが、60年代にスイスに帰って記録映画を作り始めた。日本では『ジョナスは2000年に25才になる』(76)、『光年のかなた』(81、カンヌ映画祭審査員特別グランプリ)が84年、85年に旧ユーロスペースで連続公開された。『ジョナス…』は五月革命挫折後の若者たちが精神世界やエコロジーに惹かれながら生きていく様を描く。2000年に20歳になるジョナスは、つまり1975年生まれになる。新しい世代が生まれて映画が終わる。どういう21世紀になるんだろうと思ったが、今は47歳のジョナスの人生はどんなものだろう。『光年…』はアイルランドが舞台だが、まるでドン・ファンシリーズの映画化のような若者と老師の瞑想を描く。この2作の感銘は深く、僕は以後もタネール作品を見続けた。『白い町で』『幻の女』などがミニシアターで公開された時代のことである。
(アラン・タネール)
 ギリシャの女優、イレーネ・パパスが9月14日死去、96歳。国際的に活躍した大女優だったが、時間が経ちすぎて忘れられたかもしれない。62年の『エレクトラ』、64年の『その男ゾルバ』などマイケル・カコヤニス監督作品で世界に知られた。同時代的に見たのは、岩波ホールで77年に公開された『トロイアの女』(71)。もっとも主演とは言えないけれど。このようなギリシャ悲劇などばかかりでなく、『ナバロンの要塞』『1000日のアン』など世界の多くの映画に出演した。
(イレーネ・パパス)
 アメリカの女優、ルイーズ・フレッチャーが9月23日に死去、88歳。『カッコーの巣の上で』の看護婦長役でアカデミー主演女優賞を受賞した人である。もちろん『エクソシスト2』など他の作品、あるいは『スター・トレック』など多くのテレビドラマに出ているけど、結局は『カッコーの巣の上で』のド迫力で記憶される人である。
(ルイーズ・フレッチャー)
 アメリカの女優、マーシャ・ハントが9月17日に死去、104歳。30年代、40年代に愛らしい容貌で多くの映画の脇役として活躍した。しかし、この人はその事によってではなく、50年代初期のマッカーシズム時代にあくまでも自由主義的主張を曲げなかったことで知られている。ブラックリストに名前が載り、50年から56年までほとんど干されていた。「ハリウッド・テン」の一人、ダルトン・トランボが監督をした反戦映画『ジョニーは戦場に行った』(71)で主人公の母親を演じている。この間も公民権運動、環境保護運動、ホームレス支援などに積極的に関わってきた。
(マーシャ・ハント)
 アメリカの写真家、映画監督のウィリアム・クラインが9月10日死去、96歳。陸軍の軍人としてパリに滞在。除隊後にソルボンヌ大学で学んだ。50年代以後、常識を破る「ブレ・ボケ・アレ」の手法で都市を切り取る写真で評判になった。『ニューヨーク』(56)、『東京』(64)などで知られた。2012年にはロンドンの国立現代美術館で森山大道と2人展を開いている。60年代末からは映画監督としても活躍。『ポリー・マグーお前は誰だ? 』、『ベトナムから遠く離れて』(オムニバスの一編)、『モハメド・アリ/ザ・グレーテスト』などがある。
(ウィリアム・クライン)(「東京」)
フランク・ドレイク、2日死去、92歳没。アメリカの天文学者。地球外文明の数を推定する「ドレイクの方程式」の提唱者として知られる。
ピーター・ストラウヴ、4日死去、79歳。アメリカの幻想文学、ホラー作家。キングと共作した『タリスマン』、映画化された『ゴースト・ストーリー』などで知られる。ブラム・ストーカー賞を3回受賞している。
ジュスト・ジャカン、6日死去、82歳。フランスの映画監督。ファッション写真家として成功した後、映画界に進出した。1974年に『エマニュエル夫人』でデビューし、ソフトポルノとして世界的に大ヒットした。その後も『O嬢の物語』『マダム・クロード』『チャタレイ夫人の恋人』など同様のエロス路線の映画を監督した。ある種、忘れがたい監督である。
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