「14歳の栞(しおり)」という映画を見た。中学2年生に密着した記録映画である。そのぐらいの事前知識しかない。PARCOが製作し、初めは渋谷PARCOの上にあるシネ・クイントという映画館だけで上映された。ここには僕はほとんど行かないから、そんな映画をやってるとは知らなかった。それがジワジワと評判が広がって、そういう映画があるのかと気になっていた。上映館が限られるので、なかなか見られないと思うけれど、どんな映画か紹介しておきたい。
映画館では今どきザラ紙に片面印刷の「14歳の栞便り」というチラシを渡された。下の方に「お願い」が書いてある。「この映画に登場する生徒たちは、これからもそれぞれの人生を歩んでいきます。SNS等を通じて、個人に対するプライバシーの侵害やネガティブな感想、誹謗中傷を発信することはご遠慮ください。どうかご協力をお願い致します。」また「あの頃、一度も話さなかったあの人は、何を考えていたんだろう。」と書かれている。
これはある中学校の2年6組の3学期に密着した映画である。特徴は35人の全員がカメラに向かい合って語ることである。何か「事件」が起きるとか、すごく強い部活があるとか、特徴的な何人かを取り上げる映画ではない。一人一人と「面談」をするように「思い」を聞き、様々な場面を撮影し巧みに編集している。栗林和明(33)企画、竹林亮(36)監督。それぞれ初めての長編で、竹林監督は「ハロー!ブランニューワールド」というYouTubeで公開された短編があるという。
(左=竹林亮、右=栗林和明)
何でこのような映画を作ったのか、作れたのか、僕にはよく判らない。ホームページを見ても出ていない。撮影に対して妨害があるような学校では撮れない。それでも顔を出して全員が撮影されることには心配な親がいたはずだ。だから、生徒たちはもちろん、学校や教育委員会、各家庭の全面的な了解がないと撮影出来ないと思う。なんでこのクラスが選ばれたのかも情報がない。ただ学校名は途中で判る。埼玉県東部の春日部(かすかべ)市にある。撮影出来たという時点で、この映画には大きないじめや暴力事件が起きるクラスではないことは予想出来る。
それでも35人のクラスにはいろんなことがある。部活に一生懸命な子が多い。最初は運動部ばかりが紹介されるが、その後吹奏楽部や美術部、文芸部もあることが判る。自分もそうだったかもしれないが、クラスの全員と話すことは難しい。性別が違うと、なかなか話さない年齢だ。話せる関係の人もあるし、班が同じだと掃除当番などで少しは話す機会がある。だけど、深い話をする関係の人は性別を問わず、何人もいないだろう。同じグループ以外だとよく知らないままの人が多い。この映画を見て、初めてそんなことを思っていたんだと知る。そういうこともあっただろう。その驚きを誰もが共有できるのが、この映画の面白いところだ。
このクラスには不登校の生徒が一人いる。2学期までは来ていたらしい。現在は保健室登校で、給食を食べに来るようだ。その生徒もきちんと撮影している。最後の修了式後にクラス写真を撮るという。ある生徒が撮影に来て欲しいと手紙を渡す。その生徒は来られるか。またバスケには優秀な生徒がいるが、現在は疲労骨折と診断されて部活が出来ない。その生徒は「県選抜」に選ばれているという。埼玉県には県選抜チームがあるのか。その生徒は部活に復帰できるのか。また3学期の隠れた大イベントはバレンタインデーである。クラス内にも渡した生徒がいる。果たして「ホワイトデー」はどうなる? そんないろんなことが毎日何かは起こっている。
その「あるある感」が評判を呼んでいる。しかし、自分はさすがに半世紀前の14歳の頃は思い出さなかった。忘れたことが多いが、後に中学教員になったので、どうしても教師目線で見てしまうのである。進路選択をどうすればいいのか。どうアドバイスするべきか。こんな生徒もいたな、こういうケースは経験ないな、とそんなことを思い出してしまう映画だった。あえてかどうか、出て来ない話題も多い。例えば塾や習い事は出て来ない。他のクラスも出てこないから、「問題児」がいるのも判らない。教師も担任以外はほぼ出て来ない。部活でも顧問教師は出て来ない。
考えさせられたのは、かなりの生徒が「自分が嫌い」だったり、人と「合わせたり」していること。自尊感情が低い生徒が多いのは、多くの教師が感じていることではないか。進路活動などが早くなって、将来どうするなどと日々問われることも背景にあるだろう。昔はそんなに早く言われなかったし、高校にも大学にも「自己推薦」みたいな仕組みはなかった。
それでも中学2年は「凪の季節」だ。すぐに最後のクラス替えがあり、そのメンバーで修学旅行に行く。帰ってくれば部活の最後の大会も近い。その間に中間、期末のテストがあり、高校受験を控えて今まで以上に真剣に取り組み必要がある。もうすぐそうなると判っているからこそ、中2の3学期は愛おしく懐かしい。部活などで一番接してきた「一個上の先輩」がもうすぐいなくなって、自分たちが最上級生になるのだ。なお、いつ撮ったかだが、映り込んだカレンダーを見ると2017年ではないかと思う。もう高校も卒業になるという時期に公開されたのかと思う。
映画館では今どきザラ紙に片面印刷の「14歳の栞便り」というチラシを渡された。下の方に「お願い」が書いてある。「この映画に登場する生徒たちは、これからもそれぞれの人生を歩んでいきます。SNS等を通じて、個人に対するプライバシーの侵害やネガティブな感想、誹謗中傷を発信することはご遠慮ください。どうかご協力をお願い致します。」また「あの頃、一度も話さなかったあの人は、何を考えていたんだろう。」と書かれている。
これはある中学校の2年6組の3学期に密着した映画である。特徴は35人の全員がカメラに向かい合って語ることである。何か「事件」が起きるとか、すごく強い部活があるとか、特徴的な何人かを取り上げる映画ではない。一人一人と「面談」をするように「思い」を聞き、様々な場面を撮影し巧みに編集している。栗林和明(33)企画、竹林亮(36)監督。それぞれ初めての長編で、竹林監督は「ハロー!ブランニューワールド」というYouTubeで公開された短編があるという。
(左=竹林亮、右=栗林和明)
何でこのような映画を作ったのか、作れたのか、僕にはよく判らない。ホームページを見ても出ていない。撮影に対して妨害があるような学校では撮れない。それでも顔を出して全員が撮影されることには心配な親がいたはずだ。だから、生徒たちはもちろん、学校や教育委員会、各家庭の全面的な了解がないと撮影出来ないと思う。なんでこのクラスが選ばれたのかも情報がない。ただ学校名は途中で判る。埼玉県東部の春日部(かすかべ)市にある。撮影出来たという時点で、この映画には大きないじめや暴力事件が起きるクラスではないことは予想出来る。
それでも35人のクラスにはいろんなことがある。部活に一生懸命な子が多い。最初は運動部ばかりが紹介されるが、その後吹奏楽部や美術部、文芸部もあることが判る。自分もそうだったかもしれないが、クラスの全員と話すことは難しい。性別が違うと、なかなか話さない年齢だ。話せる関係の人もあるし、班が同じだと掃除当番などで少しは話す機会がある。だけど、深い話をする関係の人は性別を問わず、何人もいないだろう。同じグループ以外だとよく知らないままの人が多い。この映画を見て、初めてそんなことを思っていたんだと知る。そういうこともあっただろう。その驚きを誰もが共有できるのが、この映画の面白いところだ。
このクラスには不登校の生徒が一人いる。2学期までは来ていたらしい。現在は保健室登校で、給食を食べに来るようだ。その生徒もきちんと撮影している。最後の修了式後にクラス写真を撮るという。ある生徒が撮影に来て欲しいと手紙を渡す。その生徒は来られるか。またバスケには優秀な生徒がいるが、現在は疲労骨折と診断されて部活が出来ない。その生徒は「県選抜」に選ばれているという。埼玉県には県選抜チームがあるのか。その生徒は部活に復帰できるのか。また3学期の隠れた大イベントはバレンタインデーである。クラス内にも渡した生徒がいる。果たして「ホワイトデー」はどうなる? そんないろんなことが毎日何かは起こっている。
その「あるある感」が評判を呼んでいる。しかし、自分はさすがに半世紀前の14歳の頃は思い出さなかった。忘れたことが多いが、後に中学教員になったので、どうしても教師目線で見てしまうのである。進路選択をどうすればいいのか。どうアドバイスするべきか。こんな生徒もいたな、こういうケースは経験ないな、とそんなことを思い出してしまう映画だった。あえてかどうか、出て来ない話題も多い。例えば塾や習い事は出て来ない。他のクラスも出てこないから、「問題児」がいるのも判らない。教師も担任以外はほぼ出て来ない。部活でも顧問教師は出て来ない。
考えさせられたのは、かなりの生徒が「自分が嫌い」だったり、人と「合わせたり」していること。自尊感情が低い生徒が多いのは、多くの教師が感じていることではないか。進路活動などが早くなって、将来どうするなどと日々問われることも背景にあるだろう。昔はそんなに早く言われなかったし、高校にも大学にも「自己推薦」みたいな仕組みはなかった。
それでも中学2年は「凪の季節」だ。すぐに最後のクラス替えがあり、そのメンバーで修学旅行に行く。帰ってくれば部活の最後の大会も近い。その間に中間、期末のテストがあり、高校受験を控えて今まで以上に真剣に取り組み必要がある。もうすぐそうなると判っているからこそ、中2の3学期は愛おしく懐かしい。部活などで一番接してきた「一個上の先輩」がもうすぐいなくなって、自分たちが最上級生になるのだ。なお、いつ撮ったかだが、映り込んだカレンダーを見ると2017年ではないかと思う。もう高校も卒業になるという時期に公開されたのかと思う。
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