2020年に行われる選挙で、世界で一番注目されるのはアメリカ大統領選挙だ。米大統領選挙は「11月の第1月曜日の翌日」に行われる。不思議な規定だが、19世紀に法律で決められている。2020年は11月3日になる。米大統領選は世界で一番古い「大規模な一般選挙」なので、農民が集まりやすいように農繁期と厳冬期を避けた11月上旬に設定された。日曜日はキリスト教の安息日だから、選挙日にはできない。この日に選ばれるのは「大統領選挙人」で、選挙人は「12月の第2水曜日の後の最初の月曜日」に集まって、本選挙を行う。
アメリカ大統領選は、現職の共和党ドナルド・トランプと民主党の前副大統領ジョー・バイデンの事実上の一騎打ちである。まだ正式に大統領候補の指名を受けていないが、他に候補はいないので党大会での指名は確実。去年暮れに書いた時は、トランプ再選有力かと書いた。その時点では経済指標が好調で、一方民主党は過去最多の立候補者がひしめき、誰が勝ち抜くのか予想が難しかった。その後、新型コロナウイルスの蔓延と警察官による黒人への暴力、「BLM」(Black Lives Matter)運動により、情勢は大きく変わりつつある。
(バイデン前副大統領)
前回は「隠れトランプ票」があったと言われる。今回も世論調査ではトランプに入れると答えない有権者がいると想定できる。しかし、それを考慮したとしても、接戦州でも「バイデン有利の有意差」が出てきている。共和党が強い州では、ウイルス危機よりも経済重視政策を取り、現在感染が爆発的に進行している。その状況が秋にどうなっているか。状況次第では、現職大統領として過去にないレベルの敗北が起きる可能性もある。
今後の問題としては、民主党の副大統領候補が誰になるかが焦点になる。バイデンはテレビ番組で「女性を選ぶ」と答えている。人種は指定していないが、白人男性のバイデンとの組み合わせで、黒人(またはヒスパニック、アジア系)との声が高い。女性候補でも左派系か、中道系かなどの選択肢がある。もう相当に絞られていると思うが、その選択は本選に大きな影響を与えると考えられる。トランプ(1946~)もバイデン(1942~)も高齢なので、任期途中で副大統領が昇格する可能性を考えておかいないといけないのである。
現職のマイク・ペンス(1959~)は、共和党内でもキリスト教保守派に属している。保守派内の信用が厚い。トランプが途中で辞めてペンスが昇格するシナリオは、保守派にベストである。そうなっても対抗できる副大統領候補をバイデンが選べるか。高齢のバイデンが途中で倒れたとして、その時に黒人の女性副大統領が昇格する(と仮定する。)それで逃げてしまう白人男性票と熱狂的に支持する有色人種票の差し引きを冷静に見極める必要がある。
(ペンス副大統領)
米大統領選挙は日本でも様々な報道がなされているが、アメリカでは大統領選と同日に上院選と下院選も行われる。他に知事選や州議会選挙、住民投票などを一斉に行うところもある。下院は2年ごとに全435議員を改選する。現時点では民主党が233議席、共和党が197議席で、民主党が過半数を獲得している。大統領選とも絡んでくるが、今のところ民主党の優位が続くのではないかと思う。一方、ある意味で大統領選でも重要なのが、上院選である。
日本ではほとんど上院選の情報が報道されていないので、少し書いておきたい。アメリカ政治で、上院の役割は大きい。特に最高裁判所判事の承認。現在トランプと共和党優位の上院によって、米最高裁は保守派5人、リベラル派4人になった。今後の米国政治を考えると、ここで民主党大統領と民主党優位の上院が実現するかは、数十年単位で大きな影響を与える。最高裁判事は終身で務めるが、リベラル派には80代の判事が二人いるのである。
さて、現在の上院は共和党53議席、民主党45議席、無所属2議席となっている。全100議席だが、任期6年で2年ごとに3分の1を改選する。今回は2014年に当選した33議席が改選になる。改選ごとの当選者を見ておくと、今年非改選の2016年組は、共和党22,民主党12で、2018年組は共和党10,民主党+無所属は23になる。合計で、民主党(無所属)が35,共和党が32。
改選組は民主党12,共和党21なので、民主党が数州で議席を奪還すると上院過半数を獲得する歴史的好機となる。ただし、上院では党派を超えて人気がある「名物議員」がいることも多い。そこでウィキペディアにあるアメリカ上院議員一覧を見てみる。大統領選挙に立候補するなどして日本でも知られている議員も多い。しかし、2020年改選議員には、そういう有名議員が少ない。僕が知っているのは、どちらも共和党のリンゼー・グラム(サウスカロライナ)とラマー・アレクサンダー(テネシー)だけ。
細かくなるが、両党が確保している州を列挙すると、以下の通り。
共和党は、アラバマ、アラスカ、アーカンソー、コロラド、ジョージア、アイダホ、アイオワ、カンザス、ケンタッキー、ルイジアナ、メイン、ミシシッピ、モンタナ、ネブラスカ、ノースカロライナ、オクラホマ、サウスカロライナ、サウスダコタ、テネシー、テキサス、ウエストバージニア、ワイオミング。
民主党は、デラウェア、イリノイ、マサチューセッツ、ミシガン、ミネソタ、ニューハンプシャー、ニュージャージー、ニューメキシコ、オレゴン、ロードアイランド、バージニア。確かに共和党優位が動かない州も多いけれど、果たして結果はどうなるだろうか。
アメリカ大統領選は、現職の共和党ドナルド・トランプと民主党の前副大統領ジョー・バイデンの事実上の一騎打ちである。まだ正式に大統領候補の指名を受けていないが、他に候補はいないので党大会での指名は確実。去年暮れに書いた時は、トランプ再選有力かと書いた。その時点では経済指標が好調で、一方民主党は過去最多の立候補者がひしめき、誰が勝ち抜くのか予想が難しかった。その後、新型コロナウイルスの蔓延と警察官による黒人への暴力、「BLM」(Black Lives Matter)運動により、情勢は大きく変わりつつある。

前回は「隠れトランプ票」があったと言われる。今回も世論調査ではトランプに入れると答えない有権者がいると想定できる。しかし、それを考慮したとしても、接戦州でも「バイデン有利の有意差」が出てきている。共和党が強い州では、ウイルス危機よりも経済重視政策を取り、現在感染が爆発的に進行している。その状況が秋にどうなっているか。状況次第では、現職大統領として過去にないレベルの敗北が起きる可能性もある。
今後の問題としては、民主党の副大統領候補が誰になるかが焦点になる。バイデンはテレビ番組で「女性を選ぶ」と答えている。人種は指定していないが、白人男性のバイデンとの組み合わせで、黒人(またはヒスパニック、アジア系)との声が高い。女性候補でも左派系か、中道系かなどの選択肢がある。もう相当に絞られていると思うが、その選択は本選に大きな影響を与えると考えられる。トランプ(1946~)もバイデン(1942~)も高齢なので、任期途中で副大統領が昇格する可能性を考えておかいないといけないのである。
現職のマイク・ペンス(1959~)は、共和党内でもキリスト教保守派に属している。保守派内の信用が厚い。トランプが途中で辞めてペンスが昇格するシナリオは、保守派にベストである。そうなっても対抗できる副大統領候補をバイデンが選べるか。高齢のバイデンが途中で倒れたとして、その時に黒人の女性副大統領が昇格する(と仮定する。)それで逃げてしまう白人男性票と熱狂的に支持する有色人種票の差し引きを冷静に見極める必要がある。

米大統領選挙は日本でも様々な報道がなされているが、アメリカでは大統領選と同日に上院選と下院選も行われる。他に知事選や州議会選挙、住民投票などを一斉に行うところもある。下院は2年ごとに全435議員を改選する。現時点では民主党が233議席、共和党が197議席で、民主党が過半数を獲得している。大統領選とも絡んでくるが、今のところ民主党の優位が続くのではないかと思う。一方、ある意味で大統領選でも重要なのが、上院選である。
日本ではほとんど上院選の情報が報道されていないので、少し書いておきたい。アメリカ政治で、上院の役割は大きい。特に最高裁判所判事の承認。現在トランプと共和党優位の上院によって、米最高裁は保守派5人、リベラル派4人になった。今後の米国政治を考えると、ここで民主党大統領と民主党優位の上院が実現するかは、数十年単位で大きな影響を与える。最高裁判事は終身で務めるが、リベラル派には80代の判事が二人いるのである。
さて、現在の上院は共和党53議席、民主党45議席、無所属2議席となっている。全100議席だが、任期6年で2年ごとに3分の1を改選する。今回は2014年に当選した33議席が改選になる。改選ごとの当選者を見ておくと、今年非改選の2016年組は、共和党22,民主党12で、2018年組は共和党10,民主党+無所属は23になる。合計で、民主党(無所属)が35,共和党が32。
改選組は民主党12,共和党21なので、民主党が数州で議席を奪還すると上院過半数を獲得する歴史的好機となる。ただし、上院では党派を超えて人気がある「名物議員」がいることも多い。そこでウィキペディアにあるアメリカ上院議員一覧を見てみる。大統領選挙に立候補するなどして日本でも知られている議員も多い。しかし、2020年改選議員には、そういう有名議員が少ない。僕が知っているのは、どちらも共和党のリンゼー・グラム(サウスカロライナ)とラマー・アレクサンダー(テネシー)だけ。
細かくなるが、両党が確保している州を列挙すると、以下の通り。
共和党は、アラバマ、アラスカ、アーカンソー、コロラド、ジョージア、アイダホ、アイオワ、カンザス、ケンタッキー、ルイジアナ、メイン、ミシシッピ、モンタナ、ネブラスカ、ノースカロライナ、オクラホマ、サウスカロライナ、サウスダコタ、テネシー、テキサス、ウエストバージニア、ワイオミング。
民主党は、デラウェア、イリノイ、マサチューセッツ、ミシガン、ミネソタ、ニューハンプシャー、ニュージャージー、ニューメキシコ、オレゴン、ロードアイランド、バージニア。確かに共和党優位が動かない州も多いけれど、果たして結果はどうなるだろうか。