5月26日に足立区長選と足立区議選が行われた。4月末に行われた統一地方選とどうしてずれているのか。それには20年前の事情がある。1996年の区長選で保守が分裂して、共産党系候補が当選した。その後の政争の結果なんだけど、これ以上細かい話は面倒だから省略。
先に書いたように、その日は旅行していた。(期日前投票に行った。)今年は開票が翌日になったので、旅行から帰ってネットで結果を調べてみた。そうしたら「加陽まりの」という候補が最下位で「0票」となっていた。この人の所属は「NHKから国民を守る党」となっている。先の統一地方選で候補があちこちの市区議会選で当選したことで話題になった党である。投票率は42%ぐらいで、約22万人が投票した。常識で考えてゼロのはずがない。一体何があったのだろうか。僕はそう思ったわけである。
(加陽[かよう]候補と選挙ポスター)
区長選の結果は一応全国紙には載ると思うけど、区議選は他地域では報道されないだろう。こんな問題も知らないだろうから、書いておきたいと思う。この後報道もされたけど、そのゼロ票の意味は足立区選管が以下のように発表している。
「選挙長が全立候補者の被選挙権の有無について調査した結果、届出番号57番の加陽まりの候補は、被選挙権が認められるために必要な住所要件(足立区内に引き続き3か月以上住所を有すること)を満たさないことが判明しました。そのため選挙長は、公職選挙法の規定に基づき、5月27日の開票において選挙立会人の意見を聞いて、同候補は被選挙権を有しないと判断し、これにより同候補の氏名を記載した投票(5,548票)を無効(得票数0)とすることを決定しました。」
加陽候補は5548票を獲得していて、8位で当選できたはずだった。立候補受付段階では形式的な審査に止まるし、選挙期間中に発表するのは違法だと選管は言っている。この5千票は全く無意味な投票になってしまった。一体どこに問題があるのかと思ったら、こういうことだった。加陽候補は足立区選管に申立書を提出し、それに先だった都庁で記者会見した。それを報じる朝日新聞地方版の記事によると、「区外在住なので、公職選挙法の規定から得票が無効になることは承知していた」という。「区民でないと区議になれないという規定に合理的な理由が存在しない。公職選挙法を変えたいと思い、区議選に臨んだ」と話したとある。
つまり「確信犯」だったのだ。これをどう理解すればいいんだろうか。「NHKから国民を守る党」そのものが地方の抱える課題に向き合うのではなく、ワン・イシューに絞って訴える政治党派だ。区議選は非常に大きな大選挙区制(足立区は45人)だから、小党派でも当選しやすい。だから地方議会選挙に立候補するという戦略そのものは、否定できない。だけど、当選無効になると判っていて、それを事前に明らかにしないというのはおかしいんじゃないか。あまりにも足立区民を軽視するやり方だと思う。
今までも「在住」をめぐる争いは時々起こっている。しかし、「区外在住と判っていて立候補」というケースは聞いたことがない。住民票が足立区にないと立候補出来ないだろうから、立候補するためだけに3ヶ月以上前に住民票を移していたんだろうか。それでは「選挙違反」にならないだろうか。「区民でないと区議になれない」のは当然すぎる規定だろう。まあ特に都市部では住宅が区境と無関係に立ち並び、道路一本向こうは他の自治体と言いつつも生活実態では同じ地域ということはよくある。だから義務教育で通う学校なんかでは柔軟な対応があっていい。
日本国憲法にはこうある。
第九十二条【地方自治の基本原則】
地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
第九十三条【地方公共団体の議会】
1 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
確かに議員そのものが住民じゃなければならないとは規定されていない。「地方自治の本旨」とは今ひとつ判りにくいが、「自治」とある以上は「自ら治める」わけだから、当然議員も住民に限られると解されるのではないだろうか。というか、当たり前すぎて今まで誰もそんなことを考えた人がない。どこかの自治体の議員になりたければ、居住・転居の自由はあるんだから引っ越せばいいだけだ。その地域で集めた地方税の使い道を決めるのが地方議会である。住んでないところの議員になる意味がないし、お金のムダである。本人にとっても、地方議会にとっても。NHKに言いたいことは僕にも一杯あるけど、「NHKから国民を守る」以前に「NHKから国民を守る党から地方自治を守る」必要があるようだ。
先に書いたように、その日は旅行していた。(期日前投票に行った。)今年は開票が翌日になったので、旅行から帰ってネットで結果を調べてみた。そうしたら「加陽まりの」という候補が最下位で「0票」となっていた。この人の所属は「NHKから国民を守る党」となっている。先の統一地方選で候補があちこちの市区議会選で当選したことで話題になった党である。投票率は42%ぐらいで、約22万人が投票した。常識で考えてゼロのはずがない。一体何があったのだろうか。僕はそう思ったわけである。
(加陽[かよう]候補と選挙ポスター)
区長選の結果は一応全国紙には載ると思うけど、区議選は他地域では報道されないだろう。こんな問題も知らないだろうから、書いておきたいと思う。この後報道もされたけど、そのゼロ票の意味は足立区選管が以下のように発表している。
「選挙長が全立候補者の被選挙権の有無について調査した結果、届出番号57番の加陽まりの候補は、被選挙権が認められるために必要な住所要件(足立区内に引き続き3か月以上住所を有すること)を満たさないことが判明しました。そのため選挙長は、公職選挙法の規定に基づき、5月27日の開票において選挙立会人の意見を聞いて、同候補は被選挙権を有しないと判断し、これにより同候補の氏名を記載した投票(5,548票)を無効(得票数0)とすることを決定しました。」
加陽候補は5548票を獲得していて、8位で当選できたはずだった。立候補受付段階では形式的な審査に止まるし、選挙期間中に発表するのは違法だと選管は言っている。この5千票は全く無意味な投票になってしまった。一体どこに問題があるのかと思ったら、こういうことだった。加陽候補は足立区選管に申立書を提出し、それに先だった都庁で記者会見した。それを報じる朝日新聞地方版の記事によると、「区外在住なので、公職選挙法の規定から得票が無効になることは承知していた」という。「区民でないと区議になれないという規定に合理的な理由が存在しない。公職選挙法を変えたいと思い、区議選に臨んだ」と話したとある。
つまり「確信犯」だったのだ。これをどう理解すればいいんだろうか。「NHKから国民を守る党」そのものが地方の抱える課題に向き合うのではなく、ワン・イシューに絞って訴える政治党派だ。区議選は非常に大きな大選挙区制(足立区は45人)だから、小党派でも当選しやすい。だから地方議会選挙に立候補するという戦略そのものは、否定できない。だけど、当選無効になると判っていて、それを事前に明らかにしないというのはおかしいんじゃないか。あまりにも足立区民を軽視するやり方だと思う。
今までも「在住」をめぐる争いは時々起こっている。しかし、「区外在住と判っていて立候補」というケースは聞いたことがない。住民票が足立区にないと立候補出来ないだろうから、立候補するためだけに3ヶ月以上前に住民票を移していたんだろうか。それでは「選挙違反」にならないだろうか。「区民でないと区議になれない」のは当然すぎる規定だろう。まあ特に都市部では住宅が区境と無関係に立ち並び、道路一本向こうは他の自治体と言いつつも生活実態では同じ地域ということはよくある。だから義務教育で通う学校なんかでは柔軟な対応があっていい。
日本国憲法にはこうある。
第九十二条【地方自治の基本原則】
地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
第九十三条【地方公共団体の議会】
1 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
確かに議員そのものが住民じゃなければならないとは規定されていない。「地方自治の本旨」とは今ひとつ判りにくいが、「自治」とある以上は「自ら治める」わけだから、当然議員も住民に限られると解されるのではないだろうか。というか、当たり前すぎて今まで誰もそんなことを考えた人がない。どこかの自治体の議員になりたければ、居住・転居の自由はあるんだから引っ越せばいいだけだ。その地域で集めた地方税の使い道を決めるのが地方議会である。住んでないところの議員になる意味がないし、お金のムダである。本人にとっても、地方議会にとっても。NHKに言いたいことは僕にも一杯あるけど、「NHKから国民を守る」以前に「NHKから国民を守る党から地方自治を守る」必要があるようだ。