尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

大雪山黒岳からトムラウシへ縦走-日本の山⑤

2019年05月21日 22時31分58秒 |  〃 (日本の山・日本の温泉)
 どうも最近は政治関係など書いても空しい感じがして、つい読書優先で投稿が昔に比べて減っているな。頑張って現実世界を書く前に、月末になってきたので思い出の山シリーズ。今までで一番大変で、同時に一番充実していた山行を書いてみたい。それは北海道大雪山黒岳から登って、山中泊しながらトムラウシを目指すという大縦走である。本州だと縦走コースの多い日本アルプスや八ヶ岳などは、夏は山小屋で泊まれるし食事も出ることが多い。でも大雪山だとけっこう人は多いんだけど、無人の避難小屋しかない。だから食料を全部持たないといけないし、テントも必要だ。荷物がものすごく重くなって、一度座ると立ち上がれないぐらいだった。30年ほど前の話。
 (白雲岳から見たトムラウシ)
 大雪山のあたりは周囲にいくつも温泉がある。どこから登っても温泉から登ることになる。大雪山の、というか北海道の最高峰は大雪山の旭岳だが、そこはまた後で登りに来た。このときは夜行列車で北海道に行き、旭川から層雲峡温泉へ。一日目は大函・小函などの柱状節理の壮観に見入った。次の日に黒岳ロープウェイリフトで一気に高度を稼いで七合目まで(1500m)。大雪山には旭岳と黒岳にロープウェイがあるが、荷が重いのでロープウェイを使わないと大変すぎる。そこからエッチラオッチラ一歩ずつ慎重に登って、黒岳頂上(1984m)へ。そこではシマリスがいっぱいいて心和む。
 (黒岳のシマリス)
 その日は黒岳石室のキャンプ地泊まりなので、まずテントを作って重い荷物を置いて散歩。そんなに起伏もなくて、北鎮岳のあたりまで。ホントは一気に旭岳までいければと思ってたんだけど、時間も迫るし地形的に一度下るので、まあいいやと黒岳に戻った。次の日は気持ちのいい歩きで白雲岳避難小屋まで。半日もかからないコースだが、実は日にちを一日勘違いしていたのである。下山した日の宿を取るときに一日先を予約してしまった。だからこの時は後から気づいて山中泊5日という長い登山で、食料が重いわけ。その分ゆっくりノンビリお花畑を楽しみながら進む。

 次の日は忠別岳避難小屋、そしてヒサゴ沼避難小屋は2泊。超ユックリである。まあ起伏がないわけじゃないけど、割と気楽に進める。忠別岳もヒサゴ沼もキャンプ指定地が下ったところにあるので、そこが少し大変。でもヒサゴ沼周辺など、本当に夢のように美しい大自然だったなあ。山奥すぎて、ちょっともう行けないと思う。大変なのは風呂がないことで、夜はけっこう涼しいけれど、やはり昼間は夏だから行動すれば汗をかく。速乾性のTシャツはいいが、パンツは替えたいな。そんな山の中なんだけど、僕は本がなければ生きてけない。重いから何冊も持てないが、この時は岩波文庫「カフカ短編集」(池内紀訳)を持っていって山のテントで読んだことをよく覚えている。
 (ヒサゴ沼)
 そして、いよいよ最終日。その日は憧れのトムラウシに登って、一気に天人峡温泉へ下る。順調に行っても、休憩を入れれば半日ぐらいかかる。最初のうちは残雪を横切って快調で、「日本庭園」と呼ばれる美しい景観に見とれつつ進む。お花畑の中に奇岩怪石が続き、飽きない風景の連続。気持ちがいい、面白いという点では日本でも有数の山だと思う。やがて岩だらけになって、いよいよトムラウシ山頂(2141m)へ。北海道にはアイヌ語由来の山名がいくつかあり、なんとなく北方への憧れを誘う。「トムラウシ」をウィキペディアで見てみると、「花の多いところ」とも「水垢の多いところ」とも言われるとある。ロックガーデンみたいな場所が多いので、ナキウサギが住む。声はすれども、ほとんど姿が見えない動物で、数回見たけどすばしこすぎて写真は撮れなかった。
 (トムラウシ遠望)
 そこからの延々の下りはあまり思い出したくない。ただ下ればいいわけだが、この日の行動時間が長すぎて途中で水が尽きた。道は歩きにくく、もう足が疲れてしまう。上の方は涼しいんだけど、下るにつれて暑くなりヘトヘトになって天人峡温泉にたどり着いた。まずは水分補給。その頃飲んだことがなかったアセロラ飲料やグアバジュースの缶が自販機にあって、立て続けに飲んだときの体のうれしさを今もよく覚えている。天人峡は素晴らしい温泉で、疲れが飛ぶ感じがした。次の日に洞爺湖温泉まで行き、次は函館の湯の川温泉と終わった後の北海道観光も楽しかった。
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