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尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

星由里子、朝丘雪路、木下忠司、田村正毅等-2018年5月の訃報①

2018年06月06日 22時38分38秒 | 追悼
 2018年5月はかなり多くの訃報が伝えられた。一回目には映画関係にしぼって。映画は1950年代、60年代に最大の娯楽だった。キャストは20代、30代ぐらいだったから、当時活躍した人の訃報が毎月のように聞かれる。中には4月に亡くなったが、訃報の公表がずれて5月になった人もいる。最近はそういう人がかなり多い。まず女優として活躍した星由里子朝丘雪路
  (星由里子、若いころと近年)
 星由里子(1943~2018.5.16 74歳)は1959年に東宝映画でデビューした。その後、加山雄三主演の若大将シリーズで相手役を演じて人気となった。と言われているわけだけど、このシリーズは同時代には知らない。70年代に一時リバイバルブームが起こったけど、僕はパスしたので一本ぐらいしか見てない。最近星由里子の映画を見たなあと思ったら、神保町シアターで「沈丁花」(1966)という映画を見たんだった。これは4人姉妹の結婚物語で、上から京マチ子、司葉子、団令子、星由里子。下二人が結婚して上二人が残るという設定。こういう風に60年代東宝映画では「妹」的な役柄で、清楚可憐な役をやっていた。代表作を演じる前に映画界が斜陽になった世代。

 この世代の女優は大体、その後「テレビ」か「舞台」に行くが、星由里子は菊田一夫演劇賞を受けたように東宝大衆演劇で活躍した。二度目の夫が花登筺(はなと・こばこ)で、今じゃ知る人も少ないだろうけど、「細うで繫盛記」「どてらい男」などで大ヒットした脚本家で、大阪を中心に演劇・テレビで大活躍していた。1975年の結婚当時は週刊誌の広告に大きく出ていた。僕にはむしろそれで名前を知った感じ。若いころの清楚な魅力は、古い映画をいっぱい見るようになって最近初めて知った感じがする。獅子文六原作の「箱根山」などすごくいいと思う。

 朝丘雪路(1935~2018.4.27 82歳)は、名前で判るように宝塚出身。父親は日本画家の伊東深水、夫が津川雅彦で、もう完全にお嬢様育ちだったらしい。その「天然ボケ」が受けて、僕が知った時はほとんどテレビの司会者だった。先ごろ亡くなった高畑勲監督の「ホーホケキョ となりの山田くん」では声優を務めたけど、顔を出す俳優としてはテレビ、映画にいっぱい出たがあまり思い出すものがない。むしろ歌手としての活動の方が有名で、紅白歌合戦に10回出ている。1971年の「雨がやんだら」は大ヒットした。深水流と名付けた日本舞踊の家元で、その活動で芸術祭賞を取っている。すごく有名な人だったけど、テレビの活動が多いと思い出せなくなってしまう。
 
 映画音楽家の木下忠司(1916~2018.4.30、102歳)は巨匠木下恵介監督の弟で、木下作品のほとんどの音楽を担当した。そんな人がまだ生きてたのかと思ったのは2年前、フィルムセンター(当時)で特集「生誕100年 木下忠司の映画音楽」をやった時だった。本人があいさつした会もあったから驚き。「二十四の瞳」や「喜びも悲しみも幾年月」など有名な木下作品を担当したのは知ってたけど、他にも東映でずいぶん担当した。マキノ雅弘「関東緋桜一家」や、「ゴルゴ13」「トラック野郎」シリーズなんかもやってた。テレビの「水戸黄門」のテーマ曲「ああ人生に涙あり」、あの「人生楽ありゃ苦もあるさ」も作曲した。戦後文化に重大な影響を与えた人である。
 (木下忠司)
 映画カメラマンのたむら まさき田村正毅、1939~2018.5.23、79歳)は晩年に監督デビューしたけど、70年代、80年代の名撮影監督という印象が強い。その当時は本名である漢字表記だった。最初は小川紳介監督の三里塚シリーズを撮っていた。成田空港反対運動に寄り添うドキュメンタリーシリーズである。「三里塚 第二砦の人々」や「三里塚 辺田」などの驚くべき成功は田村カメラマンの力が大きい。僕もその頃から注目していたけど、その後劇映画に進出して大成功した。「龍馬暗殺」「さらば愛しき大地」「火まつり」「タンポポ」などである。21世紀に入ってからも、青山真治監督の「EUREKA」「サッド・ヴァケイション」などで素晴らしい出来栄えを示した。2014年の「ドライブイン蒲生」で監督もしたけど、まあこれは大成功とは言えなかった。
 (たむらまさき)
 イタリア映画の巨匠、エルマンノ・オルミの訃報もあった。(1931~2018.5.7、86歳)1978年のカンヌ映画祭パルムドール「木靴の樹」が翌年に日本でも岩波ホールで上映された。186分もある長い長い映画だったけど、19世紀北イタリアの厳しき農民生活を圧倒的な迫力で描いて忘れがたい。最近デジタル版がリバイバルされたので、今後も見る機会はあるだろう。ベストテン2位になったけど、1位はさらに長い4時間の「旅芸人の記録」だったから、これはやむを得ない。その後も「聖なる酔っ払いの伝説」などがあり、近年も「ポー川のひかり」「緑はよみがえる」など、まあ傑作とまでは言えないだろうが骨太の佳作を送り出している。
 (カンヌ受賞時のオルミ監督)
 他にも芸能界で映画にも出たという意味では西城秀樹がいるわけだが、まあ次回に回す。スーパーマンシリーズに出たマーゴット・キダー(5.12没、69歳)、毎日新聞の映画記者で「日活ロマンポルノ全史」を書いた松島利行(11日没、80歳)などの訃報もあった。
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