昨日書くつもりが、永六輔さんの追悼を先に書いた。どっちが僕にとって大事かなと思ったら、まず永さんの追悼かなと…。先月の追悼特集も用意してあるのだが、なかなか書くヒマがない。参院選の結果も、多くの人がすでにいろいろ書いているが、まあ恒例なのでやはり書いておきたいと思う。
今回の参院選に関しては、安倍首相は「改選議席(121)の過半数をめざす」と言っていた。1人区が多いということと政権支持率がなお高いということから、これはまあ簡単にクリアするだろうと思われていた。もちろん参議院全体の過半数は、非改選の議員がものすごく多い(65議席)ので、絶対に取れるに決まってる。だから、大方の見るところ、「改憲志向の4党で3分の2を獲得するか」(78議席)、「自民党単独で過半数を獲得するか」(57議席)が焦点となっていたわけである。
そこで自民党の獲得議席を見てみると、神奈川県の追加公認を入れて、「56議席」だった。公明党は14議席、おおさか維新は7議席、日本のこころを大切にする党はゼロだから、「合わせて77議席」である。おお、なんと、改憲4党で3分の2も、自民単独過半数も、実現しなかったのである。
えっ、そうだったの。それでは報道と違うではないか。例えば、11日の産経新聞は大喜びで「憲法改正 発議可能に」と大見出しを掲げている。さらに言うと、自民党の規定を変更して総裁3選を可能にして、安倍首相が2018年9月以後も首相でいられるようにせよと1面で主張している。(阿比留瑠比編集委員の「極言御免」)いや、さすがにそれはありえないでしょ。でも、もしかすると、あるのかも。
それは「改憲勢力」という風に考えるのである。「改憲4党+改憲支持の無所属議員」のことである。「みんなの党」や「日本維新の党」というものがなくなった後で、所属議員は星雲のごとく散らばってあちこちに存在する。無所属のうち、井上義行は前に書いたように、もう自民党会派に所属している。(「みんなの党」で比例区に当選しているので、法律上、選挙時にあった他党には入党できない。「会派」というのは、議会内でまとまって活動するときの名前。)他に、アントニオ猪木、松沢成文、渡辺美知太郎が改憲賛成派だという。(渡辺美知太郎は、渡辺喜美の甥にあたる。)無所属を含めて「4党」でまとまると、憲法改正を発議できる数字に達すると考えるわけである。
安倍首相はさっそく記者会見で「憲法改正の議論を進め、意見集約をめざす」と語っている。「わが党の案をベースにしながら、三分の二を構築していくの政治の技術」なんだそうである。安倍首相の下での憲法改正を掲げる民進党に対しては、「建設的な対応とはいえない」と批判した。しかしだなあ、「自民党草案」をベースにするというなら、そもそも「建設的な改憲」にならないのは判り切っている。国会で話し合うと言っても、議席の数が圧倒的に違うんだから、意味がない。
それにそもそも、選挙中に訴えていないじゃないか。だけど、それを今さら言う気も起きない。これが安倍首相であり、経済を掲げて勝って、選挙が終われば改憲を言う。誰でも判るだろ。だまされたなどというわけにはいかない。そうそう何度もだまされては、だまされる方の責任の方が大きい。それに、「アベノミクス」と言ったって、財源もないのに公共投資をばらまくという昔の自民に戻っただけ。リニア新幹線の早期完成など、後世に膨大な借金を残すだけである。未来を先取りして今使って、かりそめの支持を獲得するというやり方で、亡国的である。
とにかく、今回自民党が「大勝」したことは間違いない。比例区で、20,114,748票を獲得している。2千万票を超えたのである。2001年の小泉首相誕生直後の参院選で、2011万票。2003年の総選挙では、2066万。2005年の「郵政民営化解散」の時は、2588万票。自民党が今までに2千万票を超えたのは、この3回しかない。参院選は選ぶ議員が少ないし、選挙区が広いので、どうしても投票率が衆院選より下がる。だから、参院選で2千万票を獲得したのは、15年ぶりなのである。3年前の参院選は、1846万。2年前の衆院選は、1766万票だった。
今回改選の議員は、2010年の参院選で当選した人々である。その時は民主党政権だった。だから、比例区の第一党は民主党だったのである。今回民進党が少し党勢を回復したとは言っても、6年前に比べて議席を減らすのは仕方ない。そして、2010年の参院選は非常に大きな特徴があった。今回もそうだが、この50年ぐらい、大体選挙結果の一番は自民党、2番は社会党か民主党(民進党)である。そして、3番目は公明党。それが定例である。「新進党」というのがあった短い時期を除いて、大体そうである。(新進党時代には、公明党議員も新進党から出馬していた。)ところが、2010年には「みんなの党」が公明党を上回ったのである。
もうなくなっちゃったから忘れている人が多いだろうけど、「みんなの党」が794万票で7議席。公明党は764万票で6議席。公明党は一時は8議席獲得したこともあり、その時までは大体重点候補を7人立てて、細かい地域割りをして票が均等に出るように運動していた。このときに1人落としたことで、以後は重点候補を6人に絞っている。7人当選すると、すごく少ない得票の党職員が当選する。今回は宮崎勝という人が、18,571票で当選になった。しかし、票数はいつも大体同じ。2005年、2009年の衆院選のように投票率が高いときは、800万票に行くこともある。だけど、参院選の場合、ここ4回を見ると、777万、764万、757万、757万となる。あれ、前回と今回は同じか。
くわしくみてみると、2013年が「7,568,082.149」票(14.22%)。2016年が「7,572,960」票(13.52%)。細かくいうと、4878票違っている。だけど、全国で考えれば、驚くほど同じ数である。投票率が前回より2%多く、有権者も増えたので、割合で言えば減っている。選挙区であらたに愛知、兵庫、福岡で候補を立てて当選させたので、そっちに力を注いだことはあるだろう。だけど、要するに、勢力は固定されていて、選挙運動で獲得できる票数も決まっているということなのである。
野党勢力の方は別に見たいと思う。今回、自民が増えたのは、6年前の「みんなの党」、3年前の「日本維新の会」や「みんなの党」がなくなったことによるものだろう。みんなの党が解体し、今回民進党から出ている人もある。だから、民進党にも流れただろうが、結局元は保守票であり、今回も自民から出た人もいる。与党支持でも公明にはいかないから、結局自民党に入れるしかない。
もう一つ大きいのは、完全に「郵政票が自民に戻った」ことである。自民党比例区でトップは旧全特(全国郵便局長会=昔は特定郵便局長会の略で全特といったが今は「特定」がなくなった)の徳茂雅之という人である。自見庄三郎(国民新党に所属し、民主党政権で金融相を務めた)の娘、自見英子(はなこ)も自民党比例区から当選している。こうしてみると、郵政民営化とはなんだったのだろう。郵政票が自民を離れたことも、民主党政権成立の大きな原因だったのである。郵政票がすっかり自民に回収されたことも、今回自民票が2千万を超えた大きな理由だと思う。
今回の参院選に関しては、安倍首相は「改選議席(121)の過半数をめざす」と言っていた。1人区が多いということと政権支持率がなお高いということから、これはまあ簡単にクリアするだろうと思われていた。もちろん参議院全体の過半数は、非改選の議員がものすごく多い(65議席)ので、絶対に取れるに決まってる。だから、大方の見るところ、「改憲志向の4党で3分の2を獲得するか」(78議席)、「自民党単独で過半数を獲得するか」(57議席)が焦点となっていたわけである。
そこで自民党の獲得議席を見てみると、神奈川県の追加公認を入れて、「56議席」だった。公明党は14議席、おおさか維新は7議席、日本のこころを大切にする党はゼロだから、「合わせて77議席」である。おお、なんと、改憲4党で3分の2も、自民単独過半数も、実現しなかったのである。
えっ、そうだったの。それでは報道と違うではないか。例えば、11日の産経新聞は大喜びで「憲法改正 発議可能に」と大見出しを掲げている。さらに言うと、自民党の規定を変更して総裁3選を可能にして、安倍首相が2018年9月以後も首相でいられるようにせよと1面で主張している。(阿比留瑠比編集委員の「極言御免」)いや、さすがにそれはありえないでしょ。でも、もしかすると、あるのかも。
それは「改憲勢力」という風に考えるのである。「改憲4党+改憲支持の無所属議員」のことである。「みんなの党」や「日本維新の党」というものがなくなった後で、所属議員は星雲のごとく散らばってあちこちに存在する。無所属のうち、井上義行は前に書いたように、もう自民党会派に所属している。(「みんなの党」で比例区に当選しているので、法律上、選挙時にあった他党には入党できない。「会派」というのは、議会内でまとまって活動するときの名前。)他に、アントニオ猪木、松沢成文、渡辺美知太郎が改憲賛成派だという。(渡辺美知太郎は、渡辺喜美の甥にあたる。)無所属を含めて「4党」でまとまると、憲法改正を発議できる数字に達すると考えるわけである。
安倍首相はさっそく記者会見で「憲法改正の議論を進め、意見集約をめざす」と語っている。「わが党の案をベースにしながら、三分の二を構築していくの政治の技術」なんだそうである。安倍首相の下での憲法改正を掲げる民進党に対しては、「建設的な対応とはいえない」と批判した。しかしだなあ、「自民党草案」をベースにするというなら、そもそも「建設的な改憲」にならないのは判り切っている。国会で話し合うと言っても、議席の数が圧倒的に違うんだから、意味がない。
それにそもそも、選挙中に訴えていないじゃないか。だけど、それを今さら言う気も起きない。これが安倍首相であり、経済を掲げて勝って、選挙が終われば改憲を言う。誰でも判るだろ。だまされたなどというわけにはいかない。そうそう何度もだまされては、だまされる方の責任の方が大きい。それに、「アベノミクス」と言ったって、財源もないのに公共投資をばらまくという昔の自民に戻っただけ。リニア新幹線の早期完成など、後世に膨大な借金を残すだけである。未来を先取りして今使って、かりそめの支持を獲得するというやり方で、亡国的である。
とにかく、今回自民党が「大勝」したことは間違いない。比例区で、20,114,748票を獲得している。2千万票を超えたのである。2001年の小泉首相誕生直後の参院選で、2011万票。2003年の総選挙では、2066万。2005年の「郵政民営化解散」の時は、2588万票。自民党が今までに2千万票を超えたのは、この3回しかない。参院選は選ぶ議員が少ないし、選挙区が広いので、どうしても投票率が衆院選より下がる。だから、参院選で2千万票を獲得したのは、15年ぶりなのである。3年前の参院選は、1846万。2年前の衆院選は、1766万票だった。
今回改選の議員は、2010年の参院選で当選した人々である。その時は民主党政権だった。だから、比例区の第一党は民主党だったのである。今回民進党が少し党勢を回復したとは言っても、6年前に比べて議席を減らすのは仕方ない。そして、2010年の参院選は非常に大きな特徴があった。今回もそうだが、この50年ぐらい、大体選挙結果の一番は自民党、2番は社会党か民主党(民進党)である。そして、3番目は公明党。それが定例である。「新進党」というのがあった短い時期を除いて、大体そうである。(新進党時代には、公明党議員も新進党から出馬していた。)ところが、2010年には「みんなの党」が公明党を上回ったのである。
もうなくなっちゃったから忘れている人が多いだろうけど、「みんなの党」が794万票で7議席。公明党は764万票で6議席。公明党は一時は8議席獲得したこともあり、その時までは大体重点候補を7人立てて、細かい地域割りをして票が均等に出るように運動していた。このときに1人落としたことで、以後は重点候補を6人に絞っている。7人当選すると、すごく少ない得票の党職員が当選する。今回は宮崎勝という人が、18,571票で当選になった。しかし、票数はいつも大体同じ。2005年、2009年の衆院選のように投票率が高いときは、800万票に行くこともある。だけど、参院選の場合、ここ4回を見ると、777万、764万、757万、757万となる。あれ、前回と今回は同じか。
くわしくみてみると、2013年が「7,568,082.149」票(14.22%)。2016年が「7,572,960」票(13.52%)。細かくいうと、4878票違っている。だけど、全国で考えれば、驚くほど同じ数である。投票率が前回より2%多く、有権者も増えたので、割合で言えば減っている。選挙区であらたに愛知、兵庫、福岡で候補を立てて当選させたので、そっちに力を注いだことはあるだろう。だけど、要するに、勢力は固定されていて、選挙運動で獲得できる票数も決まっているということなのである。
野党勢力の方は別に見たいと思う。今回、自民が増えたのは、6年前の「みんなの党」、3年前の「日本維新の会」や「みんなの党」がなくなったことによるものだろう。みんなの党が解体し、今回民進党から出ている人もある。だから、民進党にも流れただろうが、結局元は保守票であり、今回も自民から出た人もいる。与党支持でも公明にはいかないから、結局自民党に入れるしかない。
もう一つ大きいのは、完全に「郵政票が自民に戻った」ことである。自民党比例区でトップは旧全特(全国郵便局長会=昔は特定郵便局長会の略で全特といったが今は「特定」がなくなった)の徳茂雅之という人である。自見庄三郎(国民新党に所属し、民主党政権で金融相を務めた)の娘、自見英子(はなこ)も自民党比例区から当選している。こうしてみると、郵政民営化とはなんだったのだろう。郵政票が自民を離れたことも、民主党政権成立の大きな原因だったのである。郵政票がすっかり自民に回収されたことも、今回自民票が2千万を超えた大きな理由だと思う。