尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

野党共闘をどう考えるか-参院選の結果②

2016年07月13日 23時01分02秒 |  〃  (選挙)
 今回の参議院選挙で、野党4党、つまり「民進党」「共産党」「社会民主党」「生活の党と山本太郎と仲間たち」が、1人区で選挙協力を行った。その結果、一人区32の選挙結果は、自民党が21、野党系が11と3分の1で野党が勝利した。前回は岩手と沖縄以外はすべて自民党が勝った。(なお、岩手県の平野達男は民主を離党し、無所属で出馬し当選した。今日になって、自民党入党を申請し、自民党の参議院過半数が実現することになった。)

 そのことを考えると、「一定の成果があった」ということは間違いではない。だけど、それは「まとまれば勝てる」いくつかの選挙区で、「まとまったら自民を上回った」だけのことで、野党が弱いところでは全く歯が立たなかった。野党の結集に国民の期待がふくらんで、無党派や与党支持の有権者もワーッと寄り集まってきた、という状況はほとんど起きていないと思う。

 今回の選挙結果で印象的だったことは、各紙の事前調査報道はほとんどぴったり当たったことだった。1人区はもちろん、3人区、4人区や比例区もほぼ当たっている。生活の党は厳しいが、青木愛に勢いがあるとか、新党改革は議席が難しいが党首の荒井より山田太郎が1位になりそうだなどという予測まで、ぴったり当たっていのには、正直かなり驚いた。1人区に関しては、事前報道と選挙区の特性から、僕は事前記事で「12選挙区に野党勝利の可能性がある」と書いた。そのうち、愛媛を除いて野党系が勝った。もう少し落とす可能性があると思っていたので、協力した意味はある。

 この結果をもたらしたのは「投票率の上昇」である。僕は先に「甲信越がカギ」と書いた。全部野党が勝ったが、その中でも長野県は全国トップの62.86%。3年前より、5%上がっている。新潟も4%、山梨も2%上がった。敗れたとはいえ8千4百票差だった愛媛も、7%も上昇した。与野党一騎打ちで接戦を伝えられると、有権者の関心も深まり、無党派層が多く行くと野党票が増えるという「法則」があるのである。ただし、それは東日本の話。

 6年前の1人区では、岩手、山梨、三重、滋賀、奈良、岡山、高知、大分で民主党が勝った。(福島、新潟、長野は2人区だった。)つまり、民主党政権だった6年前は、結構西日本でも勝っていたのである。その中で、今回は三重と大分しか守れなかった。(6年前は自民が勝った青森、山形、沖縄で今回は非自民が勝った。)それどころか、長崎以外はどこも10万票以上の大差が付いていて、どうにも対策が思いつかない。現在の政権は、僕が時々書くように「長州藩閥」みたいな状態になっている。総裁、副総裁に加え、副総理、幹事長、前幹事長(地方創生相)など政権の要がほとんど西日本である。そういうこともあるだろうけど、他にも何か社会的、経済的な理由があるのだろうか。

 さて、比例区の票を確認しておきたい。自公は1回目に見た。
 民主党は、6年前の参院選では1845万を集めて第1党だった。その後、2012年の総選挙では963万、3年前の参院選は713万と最低を記録。2014年の衆院選では976万票。
 今回、民進党となって初の選挙で、1175万票
 以下、6年前の参院選から各党の比例区票を見ておきたい。

 共産党は、426万→369万→515万→606万。今回は601万票。前回衆院選より少ない。
 社民党は、224万→142万→126万→131万。今回は153万票。ここ数回では一番多いんだけど、6年前よりは70万票減らして、2議席あった現職が一人に減った。
 「生活の党」が、13年参院選で94万(議席ゼロ)、14年衆院選で103万票(議席ゼロ)だったのに対し、今回は106万票を獲得して、初めて比例で1議席を獲得した。民進党を3年前の民主党票と考え、得票を比べてみる。3年前の参院選に比べて、民進、共産、社民、生活、実は4党全部票を増やしているではないか。それは3年前の安倍政権が政権復帰直後で絶頂期にあったということだと思う。

 以上の4党を合計すると、2037万票
 自民、公明の与党合計は、約2770万票。ほぼ公明党分の差がついている。

 そして、野党ではあるが位置づけが難しい「おおさか維新の党」が515万票である。
 3年前の参院選では、「日本維新の会」が635万票「みんなの党」が475万票獲得している。その他、「みどりの風」が43万票、新党大地が52万票、緑の党が46万票。
 今回は他に、「日本のこころを大切にする党」が73万票、「支持なし」が65万票、新党改革が58万票、「国民怒りの声」が47万票という票の出方になっている。

 こうしてみても、前回の維新、みんな票がどこへ行ったかは、どうもよく判らない。
 与党は権力を持っているから、その権力を使って見たいと思う人が集まってくる性格がある。民主党が政権を握っていた時には、けっこう多くの自民党議員が民主党の方に参加したり、自民を見限ったりした。今回東京選挙区で出た浜田和幸という人は、6年前に鳥取から自民党で当選した人だが、当選後に自民を離れて国民新党に参加してしまった。かの舛添氏も「自民党の歴史的使命は終わった」と決めつけて、離党して「新党改革」の代表となった。(残っていれば有力な首相候補になっていたのかもしれない。)今は自民党政権がしばらくは続くのが確実な情勢である。だから、もともと保守的な人にとっては、自民党に吸い寄せられていくという行動を取りやすい。

 最初に触れた平野達男などもそうだろう。民主党政権で復興大臣を務めたが、元は岩手県だから小沢一郎系である。だけど、閣僚だったから民主党分裂時に小沢に付かず、その後無所属、自民となる。もう一人あげると、元杉並区長の山田宏。6年前の参院選では元横浜市長の中田宏らと「日本創新党」を立ち上げるも、東京選挙区で8位で落選。4年前の衆院選で「日本維新の会」から出馬して比例区で当選。しかし、2年前の衆院選では「維新」分裂後に属した「次世代の党」から出たが、比例区順位1位にも関わらず議席を獲得できなかった。今回は自民党比例区から出馬して、名前票が12位で当選した。要するに「寄らば大樹の陰」なのである。

 野党側は野党である限り、「理念」でまとまる。それがなければ与党に乗り換えた方が都合がいい。だけど、理念を掲げると、小さな違いに敏感になり、どんどん分裂していくことになりやすい。強いものに立ち向かうときは、一緒になれるところを探して協力を組む方がいい。一般論では僕はそう思うことが多い。今回、民進党と共産党が協力したことに対し、自民党政権は「野合」だと強く非難を繰り返した。この選挙協力に対しては、右からも左からも強い批判が浴びせられた。僕はそのことについて、ほとんど書いていない。まあ、「一定の効果」はあるだろうが、選挙の全体情勢をガラッと変えるほどにならないと踏んでいたからである。おおよそ、僕の予想した範囲の結果になったと思う。

 民進党、共産党が「野合」したとしても、西日本ではほとんど相手にならない。そういう現実があって、追い込まれて「選挙協力」したのである。「野合」かどうかなどというのは、与党側が勝手に設定したテーマであり、僕にはどうでもいいように思う。野党4党が協力しても、「一定の成果」しかあげられないという厳然たる事実。ここまで強大化した自民党とどう向き合うか。知恵と勇気がないと生き抜けないと強く思う。
コメント
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