尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

役所は壊れても、学校は壊れなかった!?

2016年04月22日 23時27分57秒 |  〃 (震災)
 熊本の大地震から一週間ほど経つが、未だ余震が続きながら、大分県や県南部の方にも広がる気配もある。一方でインフラの復興も少しづつ進み、物資も届きつつあるようだ。空港も再開し、鹿児島本線も全線で開通している。九州新幹線は、新水俣以南が開通し、博多―熊本間も明日には開通する。こういうニュースを聞くと、東日本大震災の時もそうだったけど、多くの関係者の不眠不休の復旧作業があったんだろうなあと思う。その前提として、社会インフラの多くが基本的にしっかりと作られていて、完全に崩壊したわけではないんだと思う。「当たり前のことを当たり前にしっかり仕事をしていてくれた先人」のおかげである。まだ熊本駅から新水俣駅間が不通だし、大分県に通じる在来線も見通しが立たない。高速道路もまだである。いろいろ大変な部分もあるとしても、「緊急事態」期から「今後を見通した中長期的展望を考え始める時期」になってきたということだ。

 今回は「続けて2回の震度7を記録する」という、歴史上に類例がない揺れを記録した。だから、一度目の地震に耐えた家屋が2回目で倒壊したりした。写真で伝えられた「宇土市役所」の状況にもビックリした。宇土市だけでなく、八代市、人吉市、益城町の4自治体の役場庁舎が使用不能になっている。救援、復興の司令塔になるはずの役場がつぶれてしまった。だけど、考えてみれば学校はそこまで壊れなかった。2回の地震はいずれも夜に起こったので、学校が倒壊しても子どもに被害が出たはずがない。そうだけど、役場が大丈夫なのに学校が倒壊したら、猛烈な非難にさらされただろう。

 東京新聞では「地震で役所壊れても学校無事 中国ネット上で熊本の自治体に称賛」(4.21朝刊)という記事があった。中国のネット上で、「『市の財政が厳しい中、庁舎より学校の建て替えを優先した』という宇土市民の声も紹介され、『役人の既得権や治安維持が優先される国とは大違い』『日本のような地方政府だったら、四川大地震でどれだけの子どもの命が救われたことか』との意見もあった。」とのことだ。別に日本社会だから素晴らしいわけではないだろう。「普通選挙」で市長を選ぶわけだから、学校の耐震化をさておいて、市役所を建て直したりしたら、当選がおぼつかない。批判も出てくるし、それを報道する自由もある。「選挙」と「報道の自由」が何よりも大切なのである。普段は当たり前すぎて気づかないけれど、実はそういう「民主主義の仕組み」が世の中を支えているわけである。

 中国の習近平主席は、2014年のAPEC時のオバマ米大統領との会談で、「我々の民主に対するこだわりは“一人一票”に限らない」と述べたそうである。でも、やっぱり「一人一票」が大切なのであると思う。時に人気取り的な政策が出てくるとしても、どんな人でも投票権があるということが重要なのである。だけど…「一票の価値の格差は」「日本の報道の自由は」といくらでも話は広げられるけれど、ここでは中国や日本の政権批判のために書いているわけではないので止めておく。

 そもそも、その日本でも「震度7」が2回くるということも想定されていなかった。だから、学校も倒壊まではしないまでも、ひび割れなどが相次いだ。避難所になっていた学校が閉鎖されたりしている。これは全く想定外で、学校というところは「大災害時には避難所になる」と教員も思っているし、地域住民も思っている。それなのに…ということで、全国的にも大きな影響を与えるのではないかと思う。

 また、熊本城の石垣が崩れたり、しゃちほこが落ちたりしたのも驚きだった。加藤清正が築城した熊本城は、明治10年の西南戦争で焼失した。昭和30年(1955年)に再建されたということだが、その際当然のこととしてコンクリ製になった。木造建築の城に比べて重いということも、石垣に負荷を掛けてきた可能性もあるという。東日本大震災で被災した福島県白河市の小峰城の復元が進められている。(白河藩というのは、松平定信の居城だったところで、僕も行ったことがある。)今回、熊本城の復元に関して、小峰城の経験が役立っているという。具体的なアドバイスも行っているようだ。ニュースを検索していたら、「石工職人・遅澤晴永さん」の話というのが出ていた。「昔、(石を)積んだ人の積みグセがあるのでそれを忠実に再現する。しかも再び崩落しないように強度を保ちながら復元しています」。いやあ、すごいなあと思う。こういう職人さんがいて、「文化」が継承されていくということだろう。
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