工藤鍼灸院・院長のひとりごと2

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映画「仕掛人・藤枝梅安」を鍼灸師として考察する(ネタバレなし)

2023年02月08日 19時37分00秒 | 鍼灸・東洋医学
本日14時、なでしこリーグ1部&2部の全日程がリリースされました。ただ2部に関して言えば、福岡J・アンクラスさんとつくばFCレディースのホームゲーム日程はまだ未定とのことです。


つくばFCレディースは全18試合のうち日時と開催場所が決まっているのは7試合のみです。未定となっている試合も土日のいずれかにはなると思いますが、これが早いうちにハッキリしないと観戦予定が立てられません。出来る限り早めに日時を確定させてほしいものです。



こんばんは、院長でございます。



さて、今日は先日観てきた映画「仕掛人・藤枝梅安」をネタバレなしで語ります。



物語は池波正太郎氏の原作で1972年に発表された「仕掛人・藤枝梅按」シリーズの第1作でもあった「おんなごろし」。過去にはさいとう・たかを氏、武村勇治氏により漫画化もされていますが、映像化はおそらく今作が初だと思います。

原作では梅安より年上だった彦次郎の年齢が年下になるという設定変更以外、ほぼ原作を忠実に再現。池波正太郎ファン、原作ファンには必見の映画だと思います。
一緒に観ていた紘子さんはポカーンでしたが(笑)、私はとーっても楽しめました。2月にして今年の最高傑作に出会ってしまった感すらありますけど、この作品は賛否が分かれるところ。某映画サイトのレビューをざっと拝見しましたが、原作を知る層からは圧倒的に支持される一方、原作を知らない方々には響かない映画なのかも知れません。

それでは本題へ参りましょう。これを知れば映画をもっと楽しめる!本職の鍼灸師から見た、映画「仕掛人・藤枝梅安」医療シーン、仕掛けシーンの考察!



CG加工などの最先端技術でクリアしている部分もあるでしょうけど、鍼を管に通して打つ施術法である「管鍼法」で患者に切皮弾入する(鍼を打つ)シーン、そして打った鍼を抜くシーンは実際に俳優さんが行っているのだと思われます。もちろん豊川悦司さんは国家資格である「はり師」の免許証は持っていないでしょうけど、映画の撮影での刺鍼はいわゆる業(ごう・継続的に治療する意思がある施術)には当たらないので免許がなくても問題にはならないはずです。



あ、仕掛けのシーンで長鍼をブスッと刺しているシーンはもちろんCGや特撮だと思いますよ(;^^)

実際の臨床では私は主に0.14mmの極細の鍼を用いていますが、撮影用の鍼にはある程度の太さと長さ、刺入深度がなければ、そのシーンで何が起こっているのか観客は認識できません。鍼は細くなければリアリティが出ないものの、細過ぎるとスクリーンでは認識できなくなります。これは河毛監督のこだわりらしいのですが、その辺の兼ね合いは非常に上手くやっているなぁという印象を受けました。

物語中盤、おもん役の菅野美穂さんに頚肩部に座位で置鍼した鍼を抜鍼するというシーンがありました。実は肩背部、特に頚肩部は筋肉層の下にすぐ肺尖が迫っており、深刺厳禁の場所です。鍼が立つほどの太い番手で頚肩部に深刺しするのは通常ではあり得ない医療行為ですし、下向きに深刺しすると気胸を起こす危険性がありますけど、女優さんの顔を映しながら治療中の鍼をスクリーンを通じてはっきりと認識できるように観客に見せるためには座位で頚肩部に施術するのが最適です。そのため、もっとも肺尖部に近く危険な肩井穴(頚肩部中央)にはおそらく5番鍼(0.24mm)くらいの太めの番手を横刺で上向きに刺入し、安全性とカメラ映りを両立させているものと思われます。

では、仕掛けのシーンに関して。

心臓を長鍼で一刺しするという仕掛けのシーンが何度かありましたが、実は昔の有名な鍼の大家が心臓に鍼を刺すと死ぬか死なないかで大いにもめて、実際にやってみたが死ななかったというエピソードが残っています(しばらく胸の辺りがスースーしたという後日談があります)。ですから実際には確実に死ぬ、殺せるかどうかは未知数ですけど、演出としては亜門穴(後頭部)や神蔵穴(胸部)を一刺しという殺り方が最もわかりやすいのは間違いありません。



ただ、今まで映像化されてきた作品のように千枚通しのような太い針だとどうしても出血してしまいます。河毛監督は演出上のこだわりとして「原作を読むと血が出ちゃいけない」「何で死んだかわからないというのが大事」と語っておりました。でも細い鍼だと映像として捉えにくくなるため、アップで針が映る際には“太くない鍼”として5寸15番(長さおよそ15cm、太さ0.44mm)くらいの鍼で仕掛けを行っているように思います。引きの映像の際にはかなり太めの針を映しているように見えますが、手元がアップで映るシーンでは映像ではっきり認識できるギリギリの細さの番手が15番鍼くらいなんだろうなぁと。



これに近いサイズだと、私は5寸10番(太さ0.34mm)の鍼を持っていますが、実際の臨床でもこの番手なら出血はしません。おそらく15番でも上手く刺せば出血はしないと思いますが・・・どうでしょうね?



ちなみにこの鍼、私は10年ほど前まで男性のインポテンツの治療で使っていた時期がありました。今はほとんど使っていません。



まぁそういう意味ではよく考察された仕掛けのシーンとなっておりますが、管鍼法ではなく捻鍼術(鍼管を使わず指で押し込む刺鍼技術)、しかも竜頭(鍼の頭)を逆手で持って動く相手の体に押し込むというのはよほどの名人芸だと思います。私は5寸10番の鍼も鍼管を使っていましたから。



脈の診方、ツボの取り方、鍼の刺し方、鍼の研ぎ方など、医療監修が甘い部分は正直多々あります。梅安先生のあの切皮は正直下手ですし、かなり痛いだろうなぁとは思いますけどね(笑)、でもそれを本職が騒ぐのは野暮というもの。スクリーンにどう映れば「鍼」と「俳優」が際立つか、かなり計算され尽くした演出になっていたと感じました。
物語のテイスト、医療シーン、そして仕掛けシーンも含め、河毛監督&大森脚本のおかげでこれまでのどの梅安作品よりも原作に忠実な世界観でした。劇中音楽も素晴らしく、とてもよく出来たエンタメ時代劇です。ぜひ皆さんも劇場でご覧ください!4月公開の第二作が待ち遠しいです!
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