実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

コロナウィルス 実戦教師塾通信六百九十号

2020-02-07 11:26:37 | 福島からの報告
 コロナウィルス
  ~常磐線全線開通前に~


 ☆初めに☆
不通だった常磐線の富岡~浪江の区間が、来月のダイヤ改正(14日)でつながり、都内から仙台までの常磐線が全面再開されます。10年目でなのです。
 ☆ ☆
コロナウィルスの勢いが止まりません。日本での拡がりもそうですが、企業や生産者の胸の内もただならぬものではないと思います。楢葉でいつも元気をもらうばかりの私でも、農家の胸の内ぐらいは分かります。

 1 「お客」のタヌキ
 小雨がぱらついている日、楢葉は温かかった。渡部さんの娘さんの職場を通り掛かったら、ばったり出会った。来てるんですかの声に、なぜかホッとする。

庭先の畑。今年の白菜、やはり玉が小さくなった?
やっと雨だよ、と外を見ながらおばあちゃんが言う。関東は雨ばっかりの一月だったというのに、楢葉は全く降らなかったらしい。
「米中の貿易摩擦の影響をかぶっちまったよ」
渡部さんが、良くない和牛の入札状況を話す。でも先行きは、それほど暗いと思えないと言う。米中の緊張緩和に加えて和牛の品質を見越して、渡部さんは楽観的な見通しを持っているようだった。でも、この話は1月下旬。新型コロナウィルスは、発表からまだ二週間の頃だ。

昨年の大晦日に生まれた子牛。美味しそうにミルクに吸いついてます。牛用の粉ミルクだそうです。


牛舎の奥のケージに気がついた。イノシシ用かと思ったら、なんとタヌキを捕獲するためのものだった。
「牛のエサを食べに来るんだよ」
奥さんが言う。朝、牛と一緒に寝てたりするのだそうだ。エサには草ばかりでなく、穀物も混ぜてある。肉にサシを入れるために必要なんだという。その穀物が連中の目当てだそうだ。捕まえたらタヌキ汁にでもするんだろうか。
「いや、山奥に行って放してやるんだよ」
奥さんが笑う。タヌキにいる虫や病気の移るのが一番困るんだとか。動物同士での感染ということで、またコロナウィルスを思い出した。どこで何が起こるか分からない。

 2 「出て行け」「戻るな」
 一瞬のうちに武漢の街が封鎖されたニュースを見たら、そして住民の「出て行け」「戻るな」の罵(ののし)りを聞いたら、たまたま渡部さん家で出た震災時の話を思い出した。
 あの時、都内の駐車場に停めた福島県内の車が、出て行けと貼り紙をされたことなどがニュースになった。
「スクリーニングしねえことには、移動が許されなかった」
という渡部さんの言葉に、私は耳を疑う。スクリーニングは、被曝した住民の健康不安や、PTSDに配慮したのものだったはずだ。しかし、これも何度か書いたが、茨城県つくば市に避難で転居を申し出た福島の住民が、スクリーニングの証明書が必要だと窓口で言われた話。後にこれらはエライ人たちから「科学的根拠がない」と諭(さと)されるのである。当時、スクリーニングをしないと移動は許されないという煽(あお)り情報が大手を振っていたのかも知れない。「原爆病は伝染する」という、75年前の広島・長崎の人たちに向けられた眼差しが、60年も過ぎたあとの日本に蘇(よみがえ)ったことを思い出し、私は黙ってしまった。

昨年9月にレポートしたが、演出家・谷賢一による演劇『語られたがる言葉たち』での「近づくな、放射能!」という言葉。本当の話だ。忘れてはいけない。

 3 双葉郡
 大熊町に比べ、双葉町が話題に登ることは少ない。町の面積や人口の小ささ、そして線量の高さが災いしているという。しかし、双葉・浪江を常磐線が開通することで、仙台は一気に近くなる。
 昔、楢葉の住民が用向きで向かうのは、水戸や東京でなく仙台だった。渡部さんの話には歴史がある。つまりこれは、明治は廃藩置県以前の「藩の文化」が尾を引いている。伊達・仙台藩と、相馬氏の拮抗(きっこう)がある。相馬のお膝元が双葉郡となったのも、「楢葉郷(郡)」と「標葉(しねは)郷(郡)」の「双つ」の「葉」が合わされたからだ。そして、「楢葉と標葉の境界が夜ノ森である」(岡本哲志『奥州相馬の文化学』より)のは象徴的と思える。夜ノ森は言うまでもないが、先だって避難準備を解除された富岡町だ。
 渡部さんたちは、この標葉と楢葉の歴史を背負いこむ「野馬追祭」には、ひとかたならぬ思い入れで語るのだ。

「祭の日は、車より馬の通行が優先だ」
と渡部さんが言い、私が会場は「雀が原」でしたねと言えば、間を置かずに、
「雲雀(ひばり)が原だ」
と、おばあちゃんが突っ込むのだ。


 ☆後記☆
「春は名のみ」の寒さですねえ。春の訪れをふたつばかり。

少し光ってしまいましたが、4月柏場所のお知らせ。今年も大相撲がやって来ます。チケット入手しました。
手前の酒ですが、茨城県取手は利根川県境大橋を渡ってすぐの蔵元『君萬代』。今年も新酒が出ました。これは純米吟醸生酒。このラベルは、地元にある東京芸大の学生がデザイン。ずっしりした酒を好みの方にお勧めですよ。

藤井君、快進撃続いてますね。

春よ来い!

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